2006年6月13日 (火)

埠頭を渡る風

80_21978年11月発表の「流線形'80」/松任谷由実(画像参照)に収録。荒井由実時代に天才の名を欲しいままにした彼女の本格的な復活は、1981年11月発表の「昨晩お会いしましょう」まで待つことになったと記憶しているが、売れた売れないに関わらず70年代の日本の歌謡界からすれば、彼女はまさにニューウェーブであり続けていたことだろう。

フジテレビの深夜番組から生まれた奇書「音楽の正体」(渡辺健一/ヤマハミュージックメディア)を見ても、楽曲創作に関する彼女の斬新性や創意工夫は(理論というより感覚的なものかも知れないが)相当なものだということがわかる。

ほとんど全てをビブラートなしで歌う「歌手・松任谷由実」は決して満足のいく水準にないが、自作の楽曲を歌うシンガーにしか創れない世界をしっかりと築いていることも確か。そんな彼女が70年代の洋楽ばりにゴージャスで多彩な音色のアレンジで臨んだアルバムがこの「流線形'80」であり、「埠頭を渡る風」は中でも最も訴求力の高い楽曲の一つだ。緩まることのないスピードの中、高揚してエンディングに向かう2声の歌声がイカしてる。

「流線形'80」が発表された頃、私は中学生。コアなユーミン世代よりやや若年の世代の人間である。私は永らく日本の「歌謡曲」に興味がなく、和製ポップスに初めて魅かれたのは大学生になってからだったが、その楽曲こそは彼女のものだった。
歌詞の評価が高い彼女だが、私はメロディー、特にその展開に「おおーそうくるかー」と感心。彼女の楽曲の多くが聴き手の期待を裏切らぬ、満足度の高い構成を持っていることも評価している。(これには旦那さんの果たす役割が本当に大きいんだと思う。)

他の「流線形'80」収録曲では「12階のこいびと」「入江の午後3時」がお気に入り。

♪ 緩く締めた 蛇口の水の雫のように いつも不安だけが 重たくなってはこぼれる
(「12階のこいびと」)

・・・なんて普通のヒトでは決して書けない詞だ。

♪♪♪

学生時代には学園祭のイベントでこの「埠頭を渡る風」を演奏、バックバンドの一員を務めた想い出もある。失くした恋の想い出も・・・。

ヴォーカルだったあの彼女の姿も、もう、果てしなく遠い。

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