2008年10月22日 (水)

London Date / Benny Goodman

Benny_goodmanベニー・グッドマン(Benny Goodman 1909-1986)「スウィングの王様」と讃えられ、知らぬものはないクラリネットの名手。殊に、代表曲 ”シング・シング・シング”(Sing Sing Sing)はあまりにも有名である。

Benny_goodman_bestグッドマンのベスト・アルバムは、私が頻繁に聴く愛聴盤の一つ。
吹奏楽界においても彼のヒット曲はアレンジされて重要なレパートリーとなっているから、実演においてもその世界に多く触れることができた。
”クラリネットはバンドの主役です”は、かのビュッフェ・クランポン社の有名なキャッチコピーだが、クラリネットが主役のベニー・グッドマンの音楽が、吹奏楽にもマッチするのは当然なのだ。

♪♪♪

London_date”London Date”はそんなベニー・グッドマンがビッグバンドをバックに(またはオクテットで)1969年に録音した「歌モノ」アルバム。このたび、本邦限定で紙ジャケCDがリリースされたものである。
「イギリスのプレーヤーたちと演奏してみたい。」というグッドマンの希望で実現したセッションとのことだが、集められたプレーヤーはイギリスのベテラン・ジャズメンばかりであり、成熟した演奏を聴かせてくれる。

収録曲目は下記全11曲。
This Guy's in Love with You, Yesterday,
It's Easy to Remember,
 That My Love,
Octupus's Garden,  I Will Wait for You,
Liza, You Took Advantage of Me,
On a Clear Day,
(What I can Say) After I Say I'm Sorry,
I Talk to the Trees


バート・バカラックやビートルズといった当時流行のナンバーや、「シェルブールの雨傘」といった映画音楽、そしてガーシュウィンなどヒット・ソングの数々である -これにベニー・グッドマンが出遭ったらどうなるか?
そんなコンセプトのアルバムだが、これぞ正統というべきアレンジと、非常に美的感覚に優れた演奏とで、名旋律が存分に楽しめる。

もともとベニー・グッドマンの音楽は、自身のクラリネットをはじめとして”美しい音”で聴かせてくれる音楽である。
このアルバムも例外ではなく、クラシックにも通じそうなその美意識が徹底されている。例えば、Drums一つとっても音色やプレイ、アンサンブルにおけるバランスの良さといった”綺麗さ”が、極めてハイレベルなのである。
涼やかだが決して表面的でなく、音楽の愉しさや説得力を欠くことはない -実にカッコいい演奏がそこにはある。

♪♪♪

これもベニー・グッドマンのハイレベルな「余技」の一つというべきなのか・・・。聴き慣れた彼の世界とはちょっと異なるこのアルバムは、肩の力を抜いて、音楽の根源的な愉しみを与えてくれる。

もちろん、グッドマンのクラリネットが奏でる歌は文句なしにゴキゲン!私はこの”London Date”がとっても気に入ってしまったのだ。

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2007年10月 1日 (月)

TRANSIENCE

Insights私の大好きな Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band の名曲で、アルバム "Insights" (冒頭画像)収録。
敢えて訳すなら、「うつろい」ということになろうか。


すぅぅっと始まるイントロから既に独特の雰囲気があり、そこに登場するTrb.ソロからして大変にメロウなものである。固有のトシコ・サウンドや実に気の利いたカウンターが随所に現れ、またTrp.のハイ・ノートが形成するクライマックスでは、強い音楽的興奮に満たされる。

Transience_3しかし、この甘熟にして都会的なバラードの最大の個性は、全編にバリトン・サックス ソロをフィーチャーしていることであり、ソロを執るビル・パーキンスのプレイこそが聴きもの。
ビッグ・バンドの楽曲で、バリトン・サックスがこれほど存分に歌い上げるものは少ない。

美しく切ない旋律がバリトン・サックスの懐の深さ・魅力を引き出す一方、バリトン・サックスの音色が旋律に生命と個性を吹き込んでもおり、相乗的に音楽をとても味わい深いものとしている。

♪♪♪


Photo_2バリトン・サクソフォーン(Baritone Saxophone)
-。ビッグバンド・ジャズのみならず、吹奏楽でも不可欠な楽器であり、小編成のアンサンブルを含め、一般的な編成に於いてサクソフォーン・パートの最低音部をガッチリと務める。私ども楽団員は親しみを込めて”バリサク”の愛称で呼ぶことが多い。
木管楽器としては最大の部類に入るその堂々たる体躯から、迫力とリズミックさに溢れる低音を聴かせるかと思うと、時に切なく甘い中高音域の音色を繰り出す。

私は最近バリトン・サックス奏者のリーダー・アルバム(Jazz)にも手を伸ばしたのだが、これを聴いて、改めて”バリサク”に惚れ直してしまった。

Night_lightsGerry_mulligan_2Night Lights
ジェリー・マリガン
(Gerry Mulligan)








Blue_serge_1SergechaloffBlue Serge
サージ・チャロフ
(Serge Chaloff)









いずれも、とても素敵!
ジェリー・マリガンNight Lights はボサノバをフィーチャーしており親しみやすく、知的で洒脱との定評ある名盤。例えば2曲目の「黒いオルフェ」あたりは、原曲のポピュラーさとも相俟って、文句なく万人に受け入れられることだろう。
サージ・チャロフBlue Serge は渋さ極まる!こちらもセッション・メンバーの演奏を含め、実に”聴かせる”。

サックスは持ち替えが利くし、彼らの技量ならよりポピュラーな Alto でも Tenor でも当然イケただろう。
”でも俺はBaritoneじゃなきゃダメなんだ!”という想いが確りとあるんだと思う。音楽家の感性というのは不思議だし、それがこうして聴き手に伝わるのだから素晴らしい。

♪♪♪

こうした名曲・名演が再評価され、”バリサク”の魅力が改めてもっと広く伝わってほしいものだ。

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2007年5月30日 (水)

The Groove Merchant

Groove_merchant001

ザ・グルーヴ・マーチャント

Thad Jones Mel Lewis
Jazz Orchestra



Photo_3841965
年の結成から1978年の解散まで、当時のビッグバンド界のトップランナーとして存在していたのが、サド・ジョーンズ=メル・ルイス ジャズ・オーケストラ。(以下サド=メル)

カウント・ベイシー楽団のトランペッターとして活躍していたサド・ジョーンズ(かの”
April in Paris で彼が奏したソロは、もはや伝説的名フレーズ)が、ドラムス奏者のメル・ルイスとのco-lead で活動していたビッグバンドで、楽曲の中にはHornTubaなども加えた拡大編成のものもある。やや荒れた音がするという意見もあるが、私は大好きだ。

当時、既にビッグバンドという形態の運営は厳しくなってきていたというが、その中でこれだけ精力的な音楽を遺したことは驚異的とも思う。サド・ジョーンズが
1986年に、メル・ルイスは1990年に他界し、随分な年月が経った。現在、ビッグバンドという音楽形態はその優れた魅力にもかかわらず、実に細々と存続しているに過ぎない- そんな感がある。私にとって淋しさと残念さ極まる状況である。

♪♪♪

「The Groove Merchant 」はサド=メルの名盤 Central Park North (冒頭画像、1969年リリース)の4曲目に収録、シャッフルの陽気なリズムで聴かせるとにかくゴキゲンな音楽で、私にとって、サド=メルのナンバーの中でも一番のお気に入り。

同楽団の
Sax奏者 J.リチャードソンの作曲だけあって、彼のSoprano Sax をリードに縦横無尽にSaxが吹きまくるソリ(ビッグバンドでは何ていうんだろう?)が圧巻!
Groovemarchant001続くブラス陣のソリも実に爽快!曲想はイージーなムードなのに、涼しい顔してブリブリ聴かせる。いつ聴いても、何と楽しい音楽か!

Groove_merchant002尚、「The Groove Merchant 」
Central Park North のほか、Basle,1969 (右画像)にもライヴ録音で収録されている。

♪♪♪

社会人になって一時ビッグバンドで活動していたある日、楽譜を渡されて練習。「イイじゃん」って思ってたのに、いつのまにかこの曲を演る話は立ち消えとなった。同じサド=メルの
Greetings & Salutations は演ったけど・・・。とても残念だった。いつかまたチャンスがあれば・・・。

サド=メルは
LP時代に多くの録音を遺しているが、まだまだ多くの録音がCD化されていない状態とのこと。
これも残念であり、少しでも多くの
CD化を願うファンは多く、私もその一人なのだった。

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2007年3月 8日 (木)

ルパン三世のテーマ

Lupin_the_bestTheme of
"Lupin the 3rd"

大野
 雄二
Yuji Ohno 1941-)









「ルパン三世」
という作品が誕生したのが1967年。
(「週刊漫画アクション」連載/原作
モンキー・パンチ)
2007年にはちょうど40周年となるのを記念し、”Lupin the Best”(冒頭画像)というCDも発売された。
原作コミックは所謂アメリカン€コミックの影響を受けた個性的な絵柄で、本作を広汎かつ恒久的な人気作品に押し上げたアニメ版より、一回りも二回りもアダルトな作品であった。

アニメ版の登場は
1971年で、これはターゲットを大人に設定していたため、今一つウケなかったそうだ。私の一番古い記憶もこのアニメ版第1シリーズである。田舎では首都圏より大きく遅れて放映されたのだが、確かに友人(小学生)の間では話題にもなっていなかった。※

※尚、このアニメ版第1シリーズの音楽担当は山下 毅雄であり、本稿で採り上げた「ルパン三世のテーマ」の作曲者(大野 雄二)とは異なる。

ただ、個人的には好きで欠かさず見ていたが・・・。「オトナ」な感じに、見ているだけでなんとなくイケナイことへの「踏み越え」感があったのだ。
(小学生のくせに、原作も読んでみたりした!)

登場人物は全部オトナ、峰
不二子なんて全くもって日本人離れしたプロポーション!「色気」なんて本当の意味でわからなくたって、なぜかドキドキ。別に不二子だけじゃなく、「ルパン三世」のキャラクター、ストーリー、気の利いた小道具、スピード感、漫画的なブッ飛び方など全てに、「大人の世界っていいな~。」と憧れた。
それがターゲット年齢を下げた第二シリーズで大ブレイク!(それでも当時のアニメとしては格段に「オトナ」だったけど。)
当時、私は中学生であったが、学習雑誌にすら「ルパン三世」特集が載っていたほどである。

しかし、私にとって最高だったのは中学生の時に見た最初の劇場用作品「ルパン
vs複製人間」”初期の頃の大人向けのルパンが見たいという声にお応えします。”という製作趣旨通りのオトナな娯楽作品だった。
(後の「カリオストロの城」の方が遥かに世にウケたわけだが、これは本来の「ルパン三世」とは違う作品だし。)


♪♪♪

「ルパン三世のテーマ」は、世代を超えて本当にウケる。
Lupin_the_3rd_1どこか非合法な、そしてオトナのいけない感じがある曲想になっているのが不思議で、この音楽自体が完全に日本人なのに日本人離れした・・・そう、峰
不二子みたいな楽曲である。
(歌詞のある歌版もあるが)インストゥルメンタルであるにもかかわらず、これほど幅広い年齢層に訴求する楽曲はそうそうあるまい。ウチの子供たちも大好きだ。
Lupin_the_3rd_2
作曲者の大野
 雄二というヒトはジャズ・ピアニストであり、バリバリの”そっちの人”である。他にも「ルパン三世愛のテーマ」や「Love Squall」など、日本人離れした楽曲がイカしてる。

「ルパン三世のテーマ」はどのヴァージョンもホーン・セクションをふんだんに使い、それぞれに味があるのだが、特に本格的な
Fast Swing にしてVibraphone ソロをフィーチャーしたLupin the 3rd '80は評価が高い。演奏するYou & Explosion Band も「日本で最高水準のミュージシャンを惜しげなく登用した」とされ、ハイレベルな演奏を聴かせてくれる。

3_3大野
雄二はYuji Ohno & Lupintic Five などで引続き精力的に活動中である。「ルパン三世」とともに、この「ルパン三世のテーマ」も永遠のものとなったのだ。

※こんなにカッコイイ音楽を聴かせるのに、前述の「ルパンvs複製人間」のエンディングは・・・二人三脚で逃げ出すルパン三世と銭形警部のバックに流れる”ルパン三世音頭”
(ど演歌。歌=三波
春夫、これも大野
雄二作品^^)!
・・・ギャップが凄いっ。この洒落も「オトナだなー。」と思わされた。


♪♪♪

吹奏楽界の方々、もしもお聴きでなければ、
NEW SOUNDS IN BRASS の録音ではなく、ぜひYou & Explosion Band の演奏で「ルパン三世のテーマ」を聴きましょうよ。
やっぱ、違うよ。

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2006年9月27日 (水)

Maynard Ferguson よ永遠に

Maynard_farguson不世出のハイノート・ヒッター、メイナード・ファーガソン。我々ラッパ吹き(私しゃ最低音担当のBass Tromboneだが)にとってTrumpetのハイノートは悪魔的魅力を持つ。人声のソプラノにはどうも馴染めないが、ラッパのハイノートはいつだって最高!


このハイノートをフィーチャーし尽したのが他ならぬファーガソンである。
70歳を超えてもそのハイノートはビンビンに健在だったというから恐れ入る。
(そういえば
1997年の「100人のトロンボーン・コンサート」で聴いたジョージ・ロバーツ、ロイド・エリオットのトロンボーン両御大も相当なご高齢だったが、凄まじくいい音・演奏だった。本当に上手いヒトは年齢関係ないのでしょう。)

Maynard_farguson_mono_1 日本人に膾炙した
Star Treck、クイズ番組で飛行機の窓から見える広大な大地の風景に、これほどマッチした音楽もない。スピード感と無限に拡がりゆく視界感の両方を併せ持っていた。    

ヘヴィーなファーガソン・ファンとまでは言えない私は、スタン・ケントン楽団時代の活躍などは世代的にも知らない。その音楽に出会った時、既にファーガソンはリーダーアルバムでヒットをかっ飛ばし、貪欲にジャンルを超えてカッコイイ音楽を追求し続けていた。些か巨根信奉的なハイノートへのこだわりから評価が別れるとも聞くが、私は彼の音楽が好きで、文字通り”Solid”なハイノートにシビレっ放しなのである。誰もが「とにかくスゲー」と嘆息することだろう。

Farguson_flugel
Birdland中間部のベルトーン的なBrassSaxの掛け合いとか、”Star Treckの終盤Trp.のカウンター(”チュワッチュワッチュワッチュワッ”^^)など、ディテールについても斬新で小気味良い楽句が散りばめられる芸の細かさ。ハイノートで歌い上げるMacArthur Parkなど、ひえーっどこまで行くのよって感じだが、
一方で渋~い
Tenor Saxソロを歌わせたり・・・。思索的な要素は乏しいかもしれないが、音楽的魅力は存分に備えている。
このほかDayride””The Fox Huntなども私のお気に入りだ。

♪♪♪

20069月にも来日公演が予定されていたが、残念ながらチケットは払い戻されることとなった。
-2006823日逝去、享年78歳。直前の7月にはレコーディング・セッションも行っていたというのに・・・。ファンとして心から冥福を祈りたいが、その演奏こそはまさに永遠に不滅。私自身、この機会に未所有のCDも揃えたいと考えている。

Farguson_The_best_of_maynard_fargusonヒット作「征服者」(左)とBest盤(右)。
聴いたことのない方はぜひ一度。

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2006年6月13日 (火)

INTERLUDE

Interlude私の大好きなToshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Bandの作品で、アルバム「花魁譚(Oiran-Tan)」(左画像参照)収録。



この「インタールード」(INTERLUDE)は、甘美で憂いのあるトロンボーン・ソロ をフィーチャーしたボサノヴァ。

冒頭から終始バス・クラリネットを従えたフルートのファンタジックな音色に彩られているが、トロンボーンとフルートの組合せはアントニオ・カルロス・ジョビンの「標準編成」。ボサノヴァの王道を押さえた上で Toshikoワールドを展開しているのだ。

Interlude_trbsolo_2
楽曲は理屈抜きにイイ。
Charlie_loperソロを執るCharlie Loper(右画像)のメロウな音色が、この旋律の魅力を余すことなく伝えている。
高音域に亘ってかくも涼やかに歌うさまには、トロンボーン吹きの端くれとして思わずため息。トロンボーンの高音域は、オクターブ上の音域を持つトランペットやフリューゲルの中音域と比してテンションがあって心地良いのである。

・・・秋吉 敏子の魅力は「危うさ」だと思う。オーケストレーションにもギリギリの際どい部分があり、その危うさが前衛的で、緊張感も生む。
この INTERLUDE も、演奏してみるとアルトサックス・ソロに続くテュッティなど、敢えて「危ない」オーケストレーションになっていることが判る。本当に際どい。

♪♪♪

Phil_teele「花魁譚」は他にも素敵な曲ばかり。
"Road Time Shuffle"のカウンターパンチの如き活力、"Strive for Jive"の激しいソロの応酬、"I ain't Gonna Ask No More"のコントラバス・トロンボーン(Phil Teele/左画像)のソロ・・・。
最後の"Village"などはジャズというより、もはやボーダレスな現代音楽そのものの域にあると思う。

トロンボーン大活躍のこのアルバム。秋吉 敏子という偉大なミュージシャンが、かくも素敵な音楽を生み出してくれたことに感謝!

(Revised on 2008.7.14.)

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