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2015年3月20日 (金)

プレリュードとダンス

PreludedancePrelude and Dance
op.76
P.クレストン
(Paul Creston
1906-1985)


ポール・クレストン1959年作曲した、吹奏楽オリジナルの傑作である.。エキゾティックな旋律に幽玄な響きが大変印象的な”プレリュード”と個性的でエキサイティングなリズムと息の長い旋律が同時進行し立体的な音楽を成す”ダンス”とのコントラストが素晴らしい。またアルトサックスをはじめヴィルトゥーゾの求められる魅力的なソロも随所に登場し、楽曲の魅力を一層深いものとしている。

♪♪♪


イタリア系移民の貧しい家庭に育ったクレストン(本名はジュゼッペ・グットヴェッジョ Giuseppe Guttoveggio といい、
”ポール・クレストン”というのは作曲者としてのペンネーム)はピアノとオルガンこそ正規の音楽教育を受け教会のオルガン奏者も務めたが、作曲は全くの独学。ヘンリー・カウエルそしてアーロン・コープランドに評価されて奨学金を受け、作曲家への道を本格的に踏み出したのは、既に32歳になってからだったという。

Photoサウンドや使用するリズムパターンに独特の個性があり、作風はジャンルを越えて共通している感がある。管弦楽曲では管楽器を多用、吹奏楽のような響きを持った曲も少なくない。また2つの部分から成る楽曲(「呪文と踊り」「牧歌とタランテラ」など)を好んで作曲したが、本作品もまさに”2つの部分から成って”いる。
中でもクレストンは「プレリュードとダンス」という名の楽曲を、吹奏楽曲であるこのop.76のほかに4つも遺している。それらはそれぞれ管弦楽
(op.25)、ピアノ独奏(op.29)、アコーディオン独奏(op.69)、2台のピアノ(op.120)のために作曲されたもので、広いジャンルに亘っている。

♪♪♪

「この作品番号76の”プレリュードとダンス
”において、プレリュードの部分は42小節と短い。この”前奏曲”はゆったりと、そして荘厳かつ雄弁に開始されるが、これにOboeの優美で抒情的な楽句が割って入り、A.Sax.のソロへと受け継がれる。そしてそこから徐々に朗々と高揚して冒頭の荘厳さや雄弁さを築き直し、ダンスへと導いていく。
”ダンス“ではまさにそのタイトル通り、リズムの要素が強調される。しかしながら初めから終わりまで、旋律や和声における多様さも犠牲にすることはない。陽気だったり、朗らかだったり、柔らかだったり、劇的であったりと雰囲気は多彩であるが、それでいて勝利に満ちた終局へと絶え間なく進み、決して妨げられることはないのである。」
                     (クレストン監修による作品集(LP)所載の解説より)

木管楽器の荘厳で迫力に満ちたユニゾンで開始され、これに金管・打楽器が応答するインパクトの鮮烈なオープニングである。(冒頭画像)劇的に流れ出した音楽は一旦静まって繊細なOboeソロへと移り、優美なアルトサックス・ソロへと連なる。このソロの”色艶”は洵に絶品である。
Asax_soloこれに続き金管・打楽器の激しい打ち込みとともに木管の全合奏で旋律が繰り返され、緊迫を強めて最高潮に達するのだが、その瞬間には一転して暖かく密度の濃い響きに包まれる。-クレストンならではのサウンドだ。
Trp.+Hornに始まり徐々に厚くそして音域を上げていく際どいブリッジが全合奏のfpクレシェンドに収斂し、Allegroの烈しく弾む”舞曲”へと突入する。サックス群の紡ぐリズム・パターンとサウンドは個性に満ちており、それに乗ってクラリネットに現れる旋律がまた実に印象的。
そしてこれを受け継ぐアルトサックス・ソロこそは全曲の白眉!
Preludedance2縦横無尽にめまぐるしく、また奔放に”踊りまくる”さまがまさに聴きものである。
Asax_allegro_solo旋律の合間に挿入されたシンコペーションを効かせた諧謔的な応答もセンスよく、やがて金管中低音によって雄々しい旋律が高らかに奏でられ高揚していく。
Photo一旦鎮まってTrp.+サスペンションシンバルによる特徴的なリズムを従え、Euph.Soloが息の長い旋律を歌いだす。この旋律は木管群 - Oboe Solo - Sax. Soli - Trp. Soliに朗々と、そして徐々に華やかを増して受け継がれていく。ポリリズム的な面白さに加えてオブリガートも鮮やかであり、多彩な音色の展開に魅了されてしまう。
Preludedance4打楽器も加わりダイナミクスとスケールを拡大し一層エキサイティングにダンスが展開された後、いよいよテンポを落として重厚なエンディングを迎える。鮮烈なドラの響きとともに、壮麗さを極めたサウンドが轟いて全曲を締めくくるのである。

♪♪♪

作曲から半世紀以上が経過しているのにもかかわらず、非常に斬新に聴こえる作品である。形式・手法は寧ろ保守的だが、どの作曲家とも異なる個性が眩しい。
-そこには吹奏楽の機能を存分に発揮した、強靭な”クレストン・ワールド”が存在しているのだ。

この曲は1970年に関西学院大学が、そして1980年には近畿大学が全日本吹奏楽コンクールで採上げいずれも金賞を獲得しているが、永らく本邦ではこれらの実況録音以外に音源の存在しない楽曲であった。残念ながらいずれも大きなカットもあり、楽曲の全容とその魅力を伝えきるものとは云えなかっただろう。近年、録音が増えてきて再評価の動きがあることは大変喜ばしい。

入手し易い好演として
Cd_kanade福本 信太郎cond.
ウインドアンサンブル奏

サウンド面の充実は特筆もの、クレストン独特のエキゾティックな響きが楽しめる。




Cd_accローウェル・グレイアムcond.

アメリカ空軍コンバット・コマンド
”ヘリテージ・オブ・アメリカ”バンド

iTunesなどの音楽配信サイトで購入可能。シュアーな演奏で対比にも富む。


を挙げるが、私としては
Revelli_years_vol4ウイリアム・レヴェリcond.
ミシガン大学シンフォニーバンド

(LP集”The Revelli Years”Vol.4収録)
の演奏を決定盤としたい。

緊迫のプレリュード冒頭から躊躇のない音楽の足取りが見事であり、アルトサックスのソロも実に艶やかで、積極的な表現が堪らない!そして何といってもダンスに入ってからの生命感あふれるエキサイティングさは、他の追随を許さず文字通り抜群である。極めて快速なテンポ設定だが、決して荒れることなく楽曲に秘められたエネルギーをうまく引き出している。この曲の真価を発揮した演奏と云えるだろう。BRAVO!

    【その他の所有音源】

      渡邊 一正cond. 東京フィルハーモニー管弦楽団員による吹奏楽団
      モーリス・スティスcond. コーネル大学ウインドアンサンブル
      川瀬 賢太郎cond. 九州管楽合奏団(Live)
      ロバート・レヴィーcond. ローレンス大学ウインドアンサンブル

      ルイス・バックリーcond. アメリカ沿岸警備隊バンド

(Originally Issued on 2006.6.13./Overall Revised on 2015.3.20.)

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コメント

「今日は一日『吹奏楽』三昧」(NHK-FM 2007/03/21 13:00~25:00)で放送するために、東フィル管打セクションで録音したようです。

http://www.nhk.or.jp/zanmai/next.html#070321

投稿: R | 2007年3月16日 (金) 17時56分

情報を有難うございます。
今回のNHK-FMは気合入ってますね。プログラムには期待します。特に私も保科/カプリス2005は聴きたいです。またギャルドも、もしリマスターされているなら貴重な音源ですね。

慌ててFMチューナー付キャプチャーボードを入手しましたが、なぜかインストールが上手くいかず・・・(T_T)
今回の放送分、CDかダウンロードショップで一般発売してほしいですね。売れると思うんですが・・・。

投稿: 音源堂 | 2007年3月18日 (日) 01時23分

私はMDコンポをHDD&DVDレコーダにつないで「録音」することにしました:-)
ギャルドの音源は、リマスターなんて高級なことはしてないでしょうな。年代からするとどこからともなく6mm素材がみつかったってところでしょう:-p

投稿: R | 2007年3月18日 (日) 08時18分

昔、関西学生吹奏楽連盟の合同演奏会の、ピックアップメンバーによるオリジナルステージでこの曲を吹きました。もちろんノーカット。いい曲ですよね!

当時の本番の音源を持ってますが、カセットテープなんですよね…

投稿: | 2008年10月 1日 (水) 02時24分

コメントをいただき、有難うございます。
私にとって、「プレリュードとダンス」はぜひ演奏してみたい曲の一つです。実演されたんですね、羨ましい!

「甲子園」やら「サッカー」やら、或いは焼直しのコンピレーション盤もいいですけど、そろそろ地に足が着いた企画+名演の録音が、新たに吹奏楽界に現われてほしいものです・・・。

投稿: 音源堂 | 2008年10月 1日 (水) 08時44分

「ウィンドアンサンブル奏」のCDを購入し、この曲が、目当てだったので、早速、期待して聴いてみました。録音も優秀になり、演奏のクオリティも非常に洗練されていて、指揮者のアナリーゼも非常によくなされている印象でした。こんなに、質の高い演奏にも関わらず、なぜか私には物足りない印象でした。非常に、現在の高いレベルでの演奏でしたが、洗練されすぎていて、所々もっとアグレッシブな部分もあって欲しかったのですが・・・。中間部のEuphのソロも何気なく、さらりと流れていって「?」。例えは違いますが、一昔前、「春の祭典」をプロオケがやる時、四苦八苦し、悶絶しそうになりながらも、空中分解すれすれに演奏しきったといった「ハラハラ感」に通じるものが、欲しかったのですが・・・。
でも、CDの内容としては、収録曲も充実していて、聴きごたえのある1枚でした。

投稿: ブラバンKISS | 2014年6月 2日 (月) 23時19分

この「プレリュードとダンス」は殊の外好きでたまらず、あとはレヴェリcond.ミシガン大学の音源が入手できれば、取り敢えず「揃った」感じになるほど収集しています。いやー、いい曲ですよね!増えてきた音源のことにも触れて本稿は早く改訂したいと思っています。

…でも実は、カットがあって傷だらけの関西学院大の演奏(1970年全国大会)にも、他の整った演奏にはない捨てがたい強~い魅力を感じてしまう、そんな音源堂なのでした。^^;)

投稿: 音源堂 | 2014年6月 3日 (火) 00時48分

こんにちわ
改めて、再掲載ありがとうございます
聞きなおしてみても、レベリ指揮は、自分には50年以上前の演奏とは思えないほど迫力ある表現(ライブ録音)です。関学はコンクール用に編集されていますが、こちらは、短時間ながらひきつける演奏しています。このころの関学は常勝時代で、同じくコンクール版トリチコを今聞いてみてもすごい演奏です。
今後もいろいろ解説お願いします。

投稿: bandlover | 2015年3月26日 (木) 17時57分

bandloverさん、本当に有難うございました!レヴェリ/ミシガン大の快演でこの大好きな曲を聴くことができて幸せの至りです☆こちらこそ今後とも拙Blogをどうぞ宜しくお願い申し上げます。

投稿: 音源堂 | 2015年3月27日 (金) 08時34分

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