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2014年8月26日 (火)

ファンファーレ、コラールとフーガ

PhotoFanfare, Chorale and Fugue
C.ジョヴァンニーニ (Caesar Giovannini 1925-)

Caesar_giovannini_2私はこのジョヴァンニーニという作曲家の作品がとても好きだ。
ジョヴァンニーニはピアニストとして音楽家のキャリアをスタートし後に作編曲家として活躍した人だが、そのフィールドは主としてポピュラー音楽の世界であった。またNBCやABCといった放送局のオーケストラにピアニストとして参画したほか、映像作品関連の音楽をも手掛け、1950~1960年代を中心に多くの作品を世に送り出している。

Brazilian_rhapsody_ep1957年のブラジリアン・ラプソディー(Brazilian Rhapsody)はジョヴァンニーニが送り出したポピュラー音楽の代表作であるが、ラテン・パーカッションのリズムにエキゾチックなピアノ・ソロが映えるA面バージョン、大きな編成となり弦楽器の濃密なアンサンブルにピアノの即興的なソロが絡むB面バージョンともに大変センスが良く、音楽的興味を甚くかきたてられる。

Piano_duetまた1961年にリリースされたアルバム”Caesar Plays”は二台のピアノで”ビギン・ザ・ビギン””レクオーナ””スターダスト”などのスタンダード・ナンバーを聴かせるもので、これもまたなかなか洒落たアレンジと演奏である。

ともにジョヴァンニーニが自ら演奏もしているのだが、これらの作品を聴くと、ポピュラーだけでなくクラシックにも通じた彼の幅広い音楽的素養が感じられるだろう。

ジョヴァンニーニが吹奏楽曲を書いたのは、おそらく第二次世界大戦中の兵役で2年に亘り海軍軍楽隊ワシントンバンドでピアニストを務めたという接点があったためだと思うが、その吹奏楽作品がポピュラー音楽に通じるモダンさを兼ね備えているのも納得である。そしてそれゆえに現在でも古臭さを感じさせぬ魅力を放っているのだ。

♪♪♪

「ファンファーレ、コラールとフーガ」(1971年)はジョヴァンニーニの吹奏楽曲としては規模が大きく、また本格的な作品である。クラシカルにして厳粛さや敬虔さも感じさせる曲想だが、サウンドや随所にみられる響きの手触りにはモダンさが感じられ、また打楽器の効果的な使用も楽曲に華を添えている。他の曲と同様、永年ジョヴァンニーニのパートナーとしてオーケストレーションを担当したウェイン・ロビンソン(Wayne Robinson)の手腕も大きいのではと推測される。

曲名の示すように3つの部分から成る接続曲という楽曲だが、各部分同士のコントラストを際立たせるというよりも、全体色は統一されている印象なのが逆におもしろい。ファンファーレは中間にオスティナートが特徴的な5/4拍子の展開部を挟み規模が大きいし、フーガはコラールに登場する楽句を発展・変奏し、コラールから移ろいゆくイメージを持つことからすれば、”ファンファーレ””コラール - フーガ”という大きく2つの部分から成ると捉えるべきかもしれない。

♪♪♪

Trumpet+Tromboneによる荘厳なファンファーレにより開始。(冒頭画像)充実したドラム(Piccolo Snare+Regular Snare+Tenor Drum)のロールに導かれ、これに木管群を中心としたバンドのカウンターが呼応するのだが、その響きからして実にモダンで神秘的なムードが醸し出されており、強いインパクトを感じさせる。一旦息を潜めて幻想的な木管アンサンブルを挟むが、ほどなくダイナミックなソロ・ティンパニのロールでファンファーレが呼び戻される。
Photo_2繰り返されたファンファーレは先行するTrp.をTrb.が追いかける立体的なものとなっており、また一層華やかな音楽となっているのが素晴らしい。

ファンファーレが静まるとしなやかに下降していく木管楽器に続き、リズミックでやや煽情的なAllegroの経過句を経て、5/4拍子の展開部へ。4分音符で延々と奏される木管+低音楽器による呪文のようなオスティナートが実に印象的である。
45それをバックにミュートしたTrp.とTrb.がスピード感と緊張感のある楽句を次々と応酬していく。Hornのゲシュトップも効果的に絡ませ非常に鮮烈なのだが、決して興奮することのないクールな音楽となっており、何とも不思議な感覚を覚えてしまう。

オスティナートが重厚にアラルガンドしてTempo Primo、ここで晴れやかに光が差しファンファーレが力強く再現されて、最初の部分は終末を迎える。
さらにテンポを緩めると厳かにチャイムが鳴り、幅広く安寧な音楽のブリッジによって、祈りの色を深めたコラールへと入っていく。
祈禱を唱えるが如き導入部の楽句に続き、
Chorale_1_2伸びやかにコラールが歌われる。その清廉さはまさに心に沁みる味わいである。
Chorale_2この「コラール」の部分では、ファゴットが効果的に用いられており、この楽器の音色が醸し出す敬虔な印象に楽曲を包み込んでいる。
やがてコラール導入部の旋律を用いたフーガが始まる。律動を示しながらも落ち着き払って始まった音楽が、徐々に徐々に泡立っていくさまが見ものである。
Fugue_1_4進行とともに音量だけでなく音楽のスケールを拡大し、重厚なサウンドで高揚していく。それは上へ上へと延びていく高い高い建物を見ているかのようだ。
一転、急にpiu mossoとなり木管の上向楽句とトリルに煽られ緊迫感とスピード感の充満したコーダに突入する。このドライブ感が堪らなくいい!
Fugue_2繰り返されるリジッドな打楽器のリズムが終幕へと推進し、
Ending_perc_2一気に歯切れ良く鮮烈なエンディングで終う。

♪♪♪

音源は唯一の商業録音である
Cd飯吉 靖彦(汐澤 安彦)cond.
フィルハーモニア・ウインドアンサンブル
の演奏をお奨めする。楽曲のムードを適切に捉え、コントラストにも優れた好演。
ただ本作品はあまりに録音が少なく、また別の秀演も聴いてみたい楽曲ではある。

           【その他の所有音源】
              指揮者不詳 The Cal Poly Symphonic Band (Live)


♪♪♪

既に本Blogで採り上げた「序曲変ロ長調」「コラールとカプリチオ」の他、「吹奏楽のためのソナチナ」「アラ・バロッコ」「ジュビランス」「前奏曲ニ長調」「新時代への序曲」「銀のそり」「そは何処に」「ファンファーレと祝典の行進」「祝典序曲」「ジェントル・ジャーニー」「英雄的序曲」「ノースリッジ・ドライブ」などの吹奏楽作品を提供しているジョヴァンニーニだが、録音のある楽曲は僅かである。ぜひ彼のユニークな魅力に溢れた楽曲を優れた演奏と録音で聴きたいものだ。

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コメント

こんばんは。
ジョヴァンニーニの曲で個人的に一番好きなのは
「アメリカン・シナリオ」ですかねぇ。。。

アメリカ西部のおおらかな雰囲気の曲で、BGMとして聴いてました。

中2のときに県大会のB部門で最優秀県代表になった学校が演奏したんですが、はっきり言ってA部門に出てきても県代表になれるぐらいの名演でした。

ウチはA部門で県代表に選ばれたんですが、同じ部門じゃなくて本当に助かりましたw

もちろんその中学校の演奏した曲が入っているレコードは即購入。今でも持ってます^^

投稿: なおりパパ | 2014年8月27日 (水) 20時04分

なおりパパさん、コメントを有難うございます。「アメリカン・シナリオ」も結構演奏されている曲のようですね。いずれにしてもジョヴァンニーニの再評価に向け、未録音楽曲の優れた音源を心待ちにするばかりです!

投稿: 音源堂 | 2014年8月27日 (水) 20時33分

本当にGiovanniniの作品集とか、どこかの意欲的なプロのバンドが取り組んでくれないものでしょうかね。アルメニアン...はあんなに録音してるのに。
こちらの記事を見て懐かしくなり音源を探してみましたがもう全然手に入りませんしね。

個人的には、有名曲を含まないNelhybel作品集なんかはニーズがあると思うんですがどうなんでしょう。今の吹奏楽って、新曲を黙々と消費してるだけって気がします。

投稿: Shigenori | 2014年11月 9日 (日) 14時14分

Shigenoriさん、ようこそお越し下さいました。
本Blogで伝えたいことの一つが、名作・名匠の再評価です。ジョヴァンニーニやネリベルの他にも、ウイリアムズやチャンス、ジェイガーやマクベスでさえ充分とはいえません。ワルタースやモリセイなんかも一度ちゃんと「並べて」みてはどうかと思っています。邦人作品だって、プロによる未録音の名作が多く残っております。
新作も「良いものは良い」の精神で採り上げて参りますが、私自身近時の吹奏楽作品は評価しかねるものが多いのが実情ですので、必然的に過去の名作を採り上げることが多くなってしまうのです。
それと- 最近はプロの演奏ですら幼稚さ?懐のなさ?含蓄のなさ?突き詰めのなさ?表現の乏しさ?を感じてゲンナリすることが多くなってきました。
「いい曲を、いい演奏で」
ぜひ提供してほしいものですね。

投稿: 音源堂 | 2014年11月 9日 (日) 21時02分

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