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2013年8月15日 (木)

フラッシング・ウインズ

PhotoFlashing Winds
J.ヴァン=デル=ロースト
(Jan Van der Roost 1956-


おそらく本邦吹奏楽界でも、演奏会のオープニング曲として最も採り上げられることの多い楽曲の一つである。
このフラッシング・ウインズ(1988年)は、精力的に創作活動を続けるヤン・ヴァン=デル=ローストの作品の中で最も簡潔なものだが、「プスタ」「カンタベリー・コラール」「アルセナール」と並びさまざまなバンドに広く愛奏されている。標題は”きらめく風”と”きらめく管楽器”とを掛けたものであろう。

Van_der_roost_2ヴァン=デル=ローストは「スパルタクス」「モンタニャールの詩」「いにしえの時から」「オスティナーティ」といったスケールが大きくエネルギッシュな作風で知られるが、規模は違えど「フラッシング・ウインズ」にもそれらと共通する輝きが随所に現れる。そして何より、緩徐部分を挟むことなく全体を通じ”一気に駆け抜ける”感覚が、オープニング曲として抜群の魅力を放っている。

♪♪♪

Maestoso(♩=80)、 Timp.の豪快で荘厳なソロに重厚なベースラインがカウンターで入る冒頭からして実に思い切りがよくダイナミック。(冒頭画像)
Timp.は優れた音色と楽句全体を見透したフレージングでの演奏が求められるし、一方ベースラインは逞しくありつつも、ゆめゆめ”生音”をぶっ放すようなことのないよう演奏したいところである。

続いて金管群の重厚なファンファーレだが、アクセントとなっている附点のリズムが特徴的である。これを生かしつつ大きなフレーズと幅広いサウンドで主部に向うのだが、Trp.とTrb.が応答しながら1拍ごとに輝きを増し高揚するさまが大きな感動を誘う。その張り切った厚い音の束の頂点で弾けるように視界が開け、Allegro energico (♩=160) の主部に入る。

主部3/4拍子は躍動的なバッキングを従えたTrp.の颯爽とした旋律に始まる。Trp
これを変拍子を交えたリズミックな木管が受けるのだが、この木管のフレーズにはリズミックさだけでなく、同時にふくよかな響きも求められていることがテヌート・スタッカートの付された音符に表れていよう。
Photo_2
主部の繰返しの後、更に流麗な5/4拍子の中間部。
快速なテンポをそのままに、この抒情的な旋律を涼やかに歌う-本楽曲の真骨頂である。
Photo_3ここをセンチメンタルにダレたテンポで歌っては台無しだ。またリピート時に加わるバッキング・リズムも、極めてタイトな演奏でないと逆効果となる。
中間部を終えるとダル・セーニョし主部に戻るが、ここを繋ぐ木管のトリルが煌いて始まるブリッジがとても素敵!あたかも輝きを増していく朝陽のような鮮やかさがとても印象的なのである。

主部の再現を終えると”躊躇なく”コーダへ。冒頭のファンファーレが幅広く奏されてクロスオーバーしエネルギーを発散、スピード感とエキサイティングさを一層高めつつ6/8のビートでアクセントを付し、終末へと一気に吹き抜けていく。
Photo_4
♪♪♪

演奏面では、冒頭のファンファーレでアウフタクトが乖離すること無く、重厚でパワフルなサウンドの大きなフレーズで奏されること、そしてそのエネルギーが高まった頂点で快速な主部へと間髪入れずに弾け出すイメージがほしい。
そして主部に入って以降は決してスピード感を途切れさせることなく、全曲を通じて”一陣の風”が吹き抜けたような、”一気呵成”を感じさせてほしい。その一方で旋律はより大きなフレーズで捉え、歌心と豊かなスケール感が発揮された演奏が望まれる。
そうした観点からの「決定盤」が待たれるところだが、音源は下記を推奨しておきたい。

Cdヤン・ヴァン=デル=ローストcond.
東京佼成ウインドオーケストラ

指揮する演奏にも定評のある作曲者自作自演盤、楽曲の持つ美点を的確に表現している。明晰な発奏、並びに一つの楽曲としてクッキリまとまっているところも評価できる。

    【その他の所有音源】
      ヤン・ヴァン=デル=ローストcond. 大阪市音楽団(Live)
      汐澤 安彦cond. シエナウインドオーケストラ
      ロバート・グロブcond. アーラウ初年兵音楽隊
      ピエール・キュエイペルスcond. オランダ陸軍軍楽隊
      アンドレ・グランホcond. トロヴィスカル・ユニオン・フィルハーモニー吹奏楽団
      指揮者不詳/コブレンツ・ドイツ陸軍バンド300

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コメント

お久しぶりです。
相変わらずの、詳しい楽曲解説。お見事です。
「フラッシング・ウィンズ」懐かしいですね。delicious
90年代、私も指導していた高校の定演で、オープニングとして取り上げました。魅力的なメロディー、流れるような展開。まさに「きらめく風」といった雰囲気を存分に感じさせてくれました。多作家ですが、この曲のメロディーの魅力は、抜きん出てますね。対照的に「カンタベリー・コラール」は心静かに、穏やかな気持ちにしてくれます。
当時のステージでの、学生たちのひたむきな顔や姿が、昨日のように思い出されます。とても、充実した日々でした。
最近の作品は、複雑で無機的な傾向のものが多く、もっとピュアなアプローチが感じられる作品は出てこないんでしょうかね。まあ、自分が年を取ったのかな…。despair

投稿: ブラバンKISS | 2013年9月11日 (水) 02時23分

ブラバンKISSさん、どうもです!
フラッシング・ウインズ…選曲に窮すると直ぐにオープニング候補に挙がる一曲です。結果、私も何度か演りました。^^;)
それでもこの曲は”ハズさない”良さをもっていると思いいます。単純に見えてカッコ良く演奏するのは難しい曲ですね!

投稿: 音源堂 | 2013年9月12日 (木) 00時58分

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