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2013年7月15日 (月)

ザ・シンフォニアンズ

Photo


The Sinfonians -Symphonic March
C.ウイリアムズ
James Clifton Williams  19231976

”これぞ吹奏楽!”の一曲といえば、この曲だろう。

壮麗なファンファーレと聴くものを圧倒する重厚なサウンド、鮮やかで心躍らすドラム・マーチに、かつて楽隊の行進を賑わせたファイフ(Fife)をイメージさせるピッコロのソロ…。クライマックスでは実にスケールの大きな楽想となり、パワフルで濃厚なメロディに、Trumpetが華やかに絡まって-そのTrumpetは一層ド派手にテンションの高いハイトーンを炸裂させていく。終盤はまるで重戦車のような音楽の質感が、堪らなく心を揺するのだ。まさに吹奏楽の持つ魅力を詰め込んで、余すところなく堪能させてくれる。

Clifton_williams_7これはまさに、作曲者クリフトン・ウイリアムズならではの楽曲である。
ウイリアムズは名作「ファンファーレとアレグロ」「交響組曲」にてABAオストワルド作曲賞を第1回・第2回と連続受賞した吹奏楽オリジナル曲の巨匠だが、その手腕はこの「ザ・シンフォニアンズ」でも縦横無尽に発揮されているのだ。

この曲は米国にある音楽愛好者団体「ファイ・ミュー・アルファ・シンフォニア友愛会(Phi Mu Alpha Sinfonia Fraternity of America)」の委嘱により作曲されたもので、アーサー・サリヴァン(Arthur Sullivan)作のメロディーにチャールズ・リュットン(Charles Lutton)が詞を付した彼らの愛唱歌、
”Hail Sinfonia”をフィーチャーしている。

   Hail Sinfonia, come brothers Hail,
   May Phi Mu Alpha ever reign,
   Hearts, hands, and minds we pledge to thee
   All Hail, all hail, all hail Sinfonia !

   シンフォニアを歓呼で迎えよ、来たれ兄弟よ 歓呼せよ
   ファイ・ミュー・アルファよ とこしえに繁栄あれ
   鼓動する胸も、手も心も、みなもて我ら汝に誓約す
   皆歓呼せよ、皆歓呼せよ、歓呼でシンフォニアを迎えよ!


この否応なく意識高揚に向わせる歌のエネルギーを、ウイリアムズは副題通りシンフォニックな行進曲へと昇華したのである。

    【出典・参考】
      「吹奏楽の歴史」 : ヴァージニア大学教職員HP


♪♪♪

冒頭からして見事なまでに吹奏楽らしいファンファーレ!
華々しいTrumpet(+Horn)に始まり、中低音の刻みと木管群のトリルがカウンターとなる。続いて濃厚なフルテュッティのコードが吹き鳴らされ、これを凛としたパーカッション・ソリで締める、というカッコ良さだ。(冒頭画像)
これが繰返されるのだが、二度目は音域を上げより鮮烈に且つより旋律的なものとなって高揚感を込めているのがさすがである。そして三度現れるファンファーレの間に挿入された、毅然たる休符フェルマータが最高にいい!(逆に云えばこの休符を如何にうまく音楽にするか、センスが問われる。)

ファンファーレは楽句を発展させつつ高揚し、その頂点で視界が開けHornによって”Hail Sinfonia”の旋律が雄大に提示される。
Hail_sinfoniaこれはハーモニアスで美しいTromboneソリに受け継がれ、徐々に楽器を増やしスケールを拡大していくのだが、この旋律に応答して挿入されるリズミックな木管を伴ったコラールがまた味わい深い。ここはまさに”染入る”ような音楽-その豊かで柔和な表情に魅力があふれる。

意を決したようにTrumpetが高らかに旋律を締めくくり、パーカッション・ソリへ。吹奏楽の醍醐味である威風堂々としたドラム・マーチを楽しませると、
Drum_marchこれに続いてスネア1台のみで奏するリズムに乗って、”Hail Sinfonia”を変奏するPiccoloソロが現れる。
Picc_soloここは前述の通りファイフ鼓隊の行進を想い描かせる楽しいものだが、フレーズをつなぐ意識をもって、より大きな一連の音楽の流れを作れるようにしたい。

     ※後掲の推奨音源を指揮した兼田 敏は、このPiccoloソロでフレーズの終わ
       り の音を記譜より長く奏させ、より大きな歌の流れを作り出している。スコ
        アとは異なるが、この方が音楽的な演奏に思える。
       尤もウイリアムズの意図は、練習番号3からはPiccoloソロのフレーズの隙
              間に伴奏のスネア・ソロの16分音符が絶妙に掛け合うという、リズミックさ
              を重視した楽想を創ろうとしたものだろう。続く練習番号4からはPiccoloソロ
              のフレーズを繰返す一方、旋律をたっぷりと奏するTromboneも加わってメロ
              ディックな楽想となるのだから、練習番号3と4とで対比を作ろうとしたに違い
              ない。
       しかし実際にPiccoloソロがフレーズの終わりの音を記譜通り短く切る演奏
              を聴くと、往々にして無造作な切り方になるのと、肝心のスネアとの掛け合
              いもキマらず、音楽の流れが繋がらず貧相になってしまうものが多い。
        これでは音楽表現として、兼田 敏の
演出に劣後しているというほかない
       (尚、この演奏では元々の譜面を変更した部分が他にも見られる。)


ソロの快活なフレーズはフルートも同奏して繰返され、これをコラール風にハーモニーでなぞるTromboneや打楽器も加わって賑やかに演奏されていく。
再びドラム・マーチに戻って前半を終うと、いよいよ”Lirico”の表示があるTrioだ。
LiricoTrioは、美しく”控えめだが芯の強い”旋律が朗々と歌い上げられていく。Hornに現れる対旋律もこれに似つかわしい素朴なものである。

徐々に楽器が増して高揚すると、抒情性はそのままに一層スケールを拡げ、これを華麗なTrumpetのファンファーレと木管高音のトリルとで対比的に彩ることで、非常に立体的な音楽となっている。最高にカッコイイ!
Trp更にダイナミクスを上げ、Maestosoのこれぞ「グランド・シンフォニック・マーチ」という曲想に突入し最大のクライマックスへと向う。同じ旋律が今度はマルカートで奏され、これを三連符が特徴的なスネアのリズムが鼓舞し、まさに力感漲る、威風堂々たる姿へと変貌している。
MaestosoTrp_2ここのカウンターフレーズで最高音のHi-B♭をバシッと決められたらTrumpetは”男前”である。
クライマックスの最終盤でのクレシェンドを、ウイリアムズは金管群に託す。その直後に転じる弱奏は、夢幻の如き木管群によるCantando- かかるコントラストこそが、音楽の面白さというものだろう。
Cantando_2コーダ(Grandioso)は吹奏楽の持つ豊かなサウンドを充満させ、ベースラインの8分音符のビートが緊迫と生命感も加味して劇的なエンディングとなる。

♪♪♪

前述の通り「吹奏楽」を体現しその魅力を堪能させる楽曲であり、演奏機会が近時少ないのは非常に残念!Trumpetをはじめ金管群に自信のあるバンドはぜひ演奏されては如何だろうか。

さて音源だが…
洵に明快かつ骨太な音楽であるから、小細工なしの堂々たる演奏が好ましいと思われるし、この曲の持つ重厚なサウンドは存分に味わいたいところ。また実演ではTrumpetのスタミナにかなり厳しいものがあるためLiveでの好演は少ないので、下記の演奏をお奨めしたい。

Lp兼田 敏cond. 東京佼成吹奏楽団
実直にして質実剛健、しかし部分部分を適切に表現しコントラストを見事に演出した好演。終始確りと”張った音”で奏され、どの演奏よりもシンフォニック。またテンポ設定も非常に適切で”堂々たる”この曲のあるべき姿を示している。
最終盤の直前、ふっと弱奏となるCantandoの抒情なども心憎く、そのバックに遠く聴こえるTimp.のロールの奥ゆかしい情感も最高!
但し…残念ながらCD化されていない!(画像は収録LP)

     【その他の所有音源】
       鈴木 孝佳cond. TADウインドシンフォニー [Live]
       ハリー・ベギアンcond. イリノイ大学シンフォニーバンド [Live]
               スティーヴン・ピーターソンcond. ノースショア吹奏楽団
       ローウェル・グレイアムcond. アメリカ空軍タクティカル・コマンド・バンド
       ティモシー・レアcond. テキサスA&M大学ウインドシンフォニー [Live]
       バリー・エリスcond. ロウンツリー・ウインドシンフォニー [合唱入り]

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コメント

クリフトン・ウィリアムズの名曲の登場ですね。
私がこの人の名前を最初に知るきっかけとなった曲で、
中学の部活の同級生から教えてもらったように記憶しています。
(音源はこちらでご紹介されている兼田敏/佼成版)
そしてこの曲を知った後、同じクリフトン・ウィリアムズの
「献呈序曲」になぜか異様なほどハマってしまいましたw

この「ザ・シンフォニアンズ」もそうですが、この人の曲は
なぜかファンファーレを3回やって始まるものが多いですよね?
なにか特別な理由があるのか…。不思議です♪

投稿: HARA-P | 2013年7月17日 (水) 20時12分

HARA-Pさん、暑い日が続いてますがお元気ですか ^●^/

>ファンファーレを3回
本当だ!献呈序曲の他にもフィエスタ、交響組曲もそうでしたかね。

「献呈序曲」も後半ドラムマーチに導かれて、学生歌が生きいきと奏される部分からがまた格別立体的な音楽になって素敵ですよね。とにかく私、クリフトン・ウイリアムズが好きで好きで堪らないんです☆

彼の遺した名曲、最高の演奏・最高の録音で全集が出ることを夢見ています。それと、ぜひ自分たちでももっともっと演奏したいです!

投稿: 音源堂 | 2013年7月18日 (木) 12時46分

CDにあったので、聞いてみました(音符はよめまへん)

これきいたことある

LP(ABAの模範演奏?米国4軍)だろうか、どこかの大学・大阪市音楽団定演かな~
illinoiのCDかな~?illinoi ハリー指揮は、迫力の印象がないのでABAの記念演奏4軍楽隊のどれか、または4軍合同スタッフbandかもしれない

似たのが、fanfare and allegro あります
これも強烈なイントロで、記憶の中に残っています
こちらがABA招待演奏かもしれません

最近は、このような曲の演奏聞きませんが、市民BANDでも取り上げてもらいたいですね

投稿: bandlover | 2013年7月18日 (木) 19時19分

bandloverさん、コメントを有難うございます。
そうなんです、「ファンファーレとアレグロ」やこの「ザ・シンフォニアンズ」はまさに”往年の名曲”ですね。
私もこうした吹奏楽の王道をいく曲をもっとたくさん聴きたいですし、演奏したいです!

投稿: 音源堂 | 2013年7月19日 (金) 11時53分

 ご無沙汰しております。
 クリフトン・ウィリアムズのザ・シンフォニアンズ。これもまた私の拙い吹奏楽指揮者&金管演奏者経験の中で特別な感慨をもって記憶されている佳曲のひとつであります。
 楽譜が往事の記憶を鮮明に甦らせてくれます。楽譜が読めて良かった…そんな感慨もまたひとしおです。

投稿: 長谷部 | 2013年8月30日 (金) 20時33分

長谷部さん、暫くです☆コメントを頂戴したのにお返事遅くなりましてすみません。(ちょっと先週末来バタバタしておりました。m(_ _)m )
この曲は「古い」のでしょうか?
長谷部さんや私の世代には、この曲に対する思い入れがあるのに、若い世代にないのは流行の成せるものなのでしょうか?この曲には世代や時代を超えた魅力が備わっていると感じる私は、きっと若い世代がこの曲を知らないということ、それだけなんだと考えてこうしてアピールしています。そうした若い方々に「へえーこんな曲もあるんだ、面白いじゃん。」と感じていただくきっかけになれたらと思っています。

投稿: 音源堂 | 2013年9月 3日 (火) 10時24分

演奏経験あります。
最初の数小節でウィリアムズの世界に引き込まれます!
何度も演奏したい曲です♪
スコアの曲名の下に表記されている「Symphonic March」の解釈がいろいろあるようですね。
僕は、個人的にMarch=あまりテンポを揺らさないというのを優先した感じが好みです(笑)
グラモフォンレコードの東吹による演奏もいいと思っています。

投稿: 鈴木 | 2014年4月26日 (土) 01時00分

鈴木さん、お越しいただき有難うございます。
この曲をはじめとして大好きなクリフトン・ウイリアムズの曲が改めて見直され、もっと演奏されるようになればいいなと常々願っております。そしていつか胸のすくような名演に出会いたいものです。

投稿: 音源堂 | 2014年4月26日 (土) 12時10分

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