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2013年1月26日 (土)

第2組曲 W.F.マクベス

McbethSecond Suite for Band
I.   Gigue

II.  Dirge
III. Entry
W.F.マクベス
(William Francis McBeth
1933-2012)


2012年1月、ウイリアム・フランシス・マクベスの訃報が伝わった。ファンである私の受けた衝撃はもちろん非常に大きかったが、吹奏楽界自体にとっても大きな損失となったことは間違いないだろう。確固たる世界観を持つ吹奏楽曲を送り出せる名作曲家を、また一人失ったのだから。

Photo_2個性的なサウンドと、ダイナミックで劇的な楽想にあふれたマクベスの作風は吹奏楽に実によくマッチしている。そんなマクベスの吹奏楽曲の中で、最初に出版されたのがこの「第2組曲」(1961年)
マクベスの作品中最大のヒット作となったあの「聖歌と祭り」以前に書かれた作曲者初期の作品である。

作曲当時まだ20代であったマクベスは、この曲が出版されるにあたり「(未熟な)新人作曲家」の作品と見られることを避けるため、本来「第1組曲」とすべきこの曲に、何と敢えて「第組曲」と名付けた- というおもしろいエピソードが伝わっている。
従って「第2組曲」の作曲当時、「第1組曲」は存在していなかったわけだ。現在遺されているマクベスの「第1組曲」は、管弦楽のための作品で後年に作曲されたものなのだとか。

     【参考・出典】  Hardin-Simmons Univ. HP
               「hp_cash_1.jpg」をダウンロード   「hp_cash_2.jpg」をダウンロード
           尚、このHP上「第2組曲」の出版年は1960年とされているが、フルスコアには
             1961年の出版と記されていることから、本稿はフルスコアに従っている。
             (現在では上記HPは閉鎖されており、当該記事のキャッシュをリンクした)


♪♪♪

第2組曲は短い3つの楽章から成っており、全体でも6分ほどの作品である。
前述の通りマクベスの”最初の”吹奏楽曲なのだが、既にマクベスらしい美点とサウンドがみられ、個性を放つ楽曲となっている。また曲中にブラスアンサンブルや木管アンサンブル的な”薄い”部分が結構あって際どくも新鮮な響きが聴こえる。そしてこうした部分で楽器の組合せを入れ替えることにより、コントラストを効かせてもいるのである。

I.舞曲
”歓喜に満ちた舞曲”が作曲者マクベスのこの楽章のイメージ。ダイナミックに始まるイントロでは、挿入された2/4拍子のシンコペーションが野性味を演出し、エキサイティングな音楽となっている。(上画像参照)
これが静まるとTrb.+TubaのハーモニーをバックにTrumpetが朗々とSoloがを奏でる。この旋律がなかなかいい!
Gigue_trp_soloこの旋律がCl.のハーモニーをバックにしたFl.+ Ob.のSoliへと受け継がれ、遂には打楽器を含めたフルテュッティで奏されていく。最後はイントロの舞曲が呼び返され、テンポを緩めつつ一層スケールアップして華々しく楽章を締めくくる。

II.葬送
”葬列の薄暗い陰影”を表現した楽章。Hornに始まる哀歌が受け継がれ、陰鬱な響きの中に打楽器が葬列の足取りを示し曲は進む。
Dirgeこの哀歌はテュッティで奏でられ高揚するが、最後は再びHornに戻ってきて遠く消えてゆく。

III.入場
打楽器Soliに導かれ、野太い低音から重なっていくTrp.の3声のファンファーレが始まる。
Entry_trpこの厳かで重厚な入場の音楽をマクベスは”式典の行列が近づいてくる様子”と表現している。ファンファーレはTrb.とTuba(+Bassoon)も加わって高揚するや全金管が鳴り響いて輝かしい頂点となり、さらにテュッテイで劇的なクライマックスを形成する。Horn、そして木管と受け継がれ色彩の変化を示しながらより劇的で幅広い音楽となり、再び打楽器Soliに導かれて堂々たるエンディングを迎える。

色彩に例えれば”黒っぽい”サウンドと楽想に支配された曲なので地味に思われるのかもしれないが。ユニークな世界を持った作品であり、幾らなんでももう少し演奏されて然るべきだろう。私はとても面白いと思うのだが…。

♪♪♪

さて音源であるが…存在しない!m(_ _)m
プロフェッショナルな楽団の商業録音はもちろん、コンクール実況録音や出版社サンプル音源もなく、ネット上にも見当たらない!

「橋本音源堂」のアイデンティティを揺るがす、開設以来初の”音源のない曲”の紹介だったわけである。現在はもちろんのこと、過去コンクールなどでもあまり演奏されたことのない、知られざる佳曲なのだ。
私自身は前稿(「キンバリー序曲」)で触れたように、大先輩が残してくれた西部(現九州)大会の録音でたまたま聴いていたから、この曲を知っているに過ぎない。
それは1972年、本土復帰を記念して沖縄で開催された西部大会での春日中(福岡代表)の演奏である。既にマクベス好きになっていた私は、耳にしたことのないこの曲の題名に喰いつき、(録音状態はあまり良くなかったが)何度も何度もその録音を聴いて、遂には空で歌えるほどになってしまったのだった。
しかし今はそれを再び聴くこともできず、あるのは私の記憶の中にだけだ。改めてちゃんと聴いてみたい一曲である。

現在は楽譜を簡単に入手できることもあり、ぜひこの曲の再評価を…!
そしてもっと演奏され、楽曲の魅力を発揮した好演の録音も登場せんことを、心から祈って已まない。


【2013.1.27. 追記】

CLAさんが早速にコメントをお寄せいただき、米国の高校生バンドによるLive録音音源をご紹介下さいました。折角ですのでLinkを貼らせていただきます。大変貴重な音源と思います。CLAさん、有難うございました。
音源:Lawrence County High School Band (1980)

(Revised on 2016.4.8.)

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コメント

はじめまして、毎度読ませていただいております。
レコードからのデジタル化と思われる音源がありましたので紹介します。

Lawrence County High School Band
Freddie Meadows

http://lchsband.bandcamp.com/track/second-suite

投稿: CLA | 2013年1月26日 (土) 12時44分

CLAさん有難うございます!(「ジュビラーテ」の稿でコメントを下さったCLAさんとは別の方なのですね。)
実は本稿でマクベスの第2組曲を敢えて採り上げましたのは、こうした情報をいただければと思っていたこともあったのです。^^;)ですから、本当に有難うございました。

早速聴いてみました。レコードノイズもあり演奏は遅めのテンポのあくまで高校生のものではありましたが、Trp.ソロはいい音してましたし、何より自分の記憶の中にあるこの曲の姿・イメージが正しかったことが判って安心した次第です。

次はプロフェッショナルの録音をぜひ聴いてみたいです。重ねて有難うございました!またぜひお越し下さいね☆

投稿: 音源堂 | 2013年1月26日 (土) 13時07分

こんにちは。

マクベス大好きな私ですが、この曲はその存在すら
全く知りませんでした。「未熟な新人作曲家の作品と
見られることを避けるため」に『第2』としたという話など、
なかなか興味深い曲ですね。

世には吹奏楽に限らず色々な音楽が溢れていますが、
著名な作曲家の作品でも、探せばまだまだ未発掘の
良作がきっと数多く埋もれているんでしょうね。

投稿: HARA-P | 2013年1月27日 (日) 18時38分

HARA-Pさん、私もこの曲は中学生の時に件の録音を聴いていただけでした。それからもう30年以上、どこかに録音があるはずだと探し求めていたのですよ。
このたび、CLAさんが教えて下さった音源で本当に久方ぶりに聴きましたが、改めて興味深く感じました。私、やっぱりこの曲好きです!-そのことを嬉しく思っております。
クリフトン・ウイリアムズの交響的舞曲1・4・5番も世に出てきましたし(これもプロの録音で聴いてみたいですが…)、あとはジョン・バーンズ・チャンスの「バレッタ」「フィエスタ」あたり、聴いてみたいです。

投稿: 音源堂 | 2013年1月27日 (日) 23時36分

音源堂さまとご一緒していたあの楽団は一昨年の秋に練習場所を移転したのですが、引っ越しの際になんと「第2組曲」の譜面が出てきました!過去の記録を見てもこの曲を演奏したことはなく、なぜ譜面だけがあるのか不思議です(もちろんコピー譜ではありません)。

投稿: HARA-P | 2016年4月 7日 (木) 23時40分

HARA-Pさん、実はあの楽団がこの「第2組曲」の譜面を所有していることは私知ってました!私も当時倉庫を物色していて「うわー、こんな曲の譜面がある!」と驚いたのを記憶しています。誰か好きな人がいて、買ったんでしょうね…。(ですから私が買ったものじゃあありませんよ。ただ今でもあの楽団にあるであろう(コピー譜でない)「サンタフェ物語」はいつか演りたいと思って、私が個人的に購入したものです。^^;)

投稿: 音源堂 | 2016年4月 7日 (木) 23時53分

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