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2010年10月23日 (土)

第3組曲  R. E. ジェイガー

Jager_3rd_suite_march1Third Suite for Band
R.E.ジェイガー Robert E.Jager  1939- )
I. March II. Waltz III. Rondo

なんと”素敵な”楽曲であろうか!
各楽章それぞれに創意を凝らした個性があり、それが対比的に魅力を放ちつつも、全楽章を通しての聴後感は一つの作品として実によくまとまっている印象。最初から終わりまで明朗快活な音楽の愉しみに溢れているが、吹奏楽の機能を駆使してそれを実現しているのには唸らされてしまう。楽曲としては「小品」の部類だと思うが、過不足のない規模にこれだけの内容が盛り込まれるという完成度の高さ- ロバート・ジェイガーの才能と手腕が凝縮した名曲である。

Robert_jagerジェイガー自身は、この第3組曲(1965年)”tuneful”と評している。全くその通りで魅力的な旋律がふんだんに登場するさまは、眩い宝石箱さながらである。そして4拍子と3拍子が組み合わされた「マーチ」、3拍子と2拍子が組み合わされた「ワルツ」というユニークさが示す新機軸…。したがってとても個性的なのだが、マーチの持つ推進力、ワルツの舞踊感という本質は失われることなく、確りと示されているのが凄い!
これに対して最終楽章には形態こそオーソドックスだが、その分コントラストをより効かせたダイナミックな音楽である「ロンド」を配置しており、これが全体を引き纏めるという心憎さなのだ。

♪♪♪

それでは、ジェイガーのコメント(「 」)を引きながら、楽章ごとに見てみたい。

I.マーチ
「この『第3組曲』はとてもメロディアスで親しみやすい作品だが、演奏者にとってチャレンジしがいのある要素を確りと盛り込んであり、これが同時に聴き手にとっては興味深いものになっていると思う。”安定的なフィーリングとリズム”というマーチが本来有する特性を少々ゆがめることにはなるが、第一楽章で小節ごとに拍子を変えているのもその例である。」


4/4拍子と3/4拍子が交互に繰返され進行する異色な行進曲で、大変にユニーク。曲のスタートで、Clarinetのふくよかな音色を活かしていることも見逃せない。
Jager_3rd_suite_1間違いなく異色ではあるが、生命感に満ちた推進力、途切れぬビート感は紛れもなく「行進曲」そのものなのだから畏れ入る。拍子の頻繁な変更は、親しみやすい旋律に絶妙な味付けを加えているのである。
第2マーチ、ならびに(打楽器群の鮮やかなソリに続く)トリオは5/4拍子!これがまた個性的だ。
Jager_3rd_suite_2終結部では厚みを増したエネルギッシュなサウンドとなり、ユーモラスな楽句のエンディングで終う。
トリオの前に挿入された打楽器ソリは「ここはこのマーチのおもしろいところ」とのコメント通り、ジェイガー自身のお気に入りである。
3rd_suite_perc_soli
II.ワルツ
「このワルツでは、前楽章と同様に拍子がゆがめられている。ワルツではおなじみの3/4拍子も、今ここではそんなワルツらしからぬ仕打ちを受けているわけだ。豊かな色彩とコントラストがこの楽章に重要な特徴を加えており、終盤ではFluteによる主題が繰返された後、短いG.P.を挟んで元気いっぱいのコーダにて曲を閉じる。」


今度は3/4拍子と2/4拍子が交互に繰返される異色のワルツであるが、この楽章もワルツの持つ流麗さは存分に示されている。
Jager_3rd_suiteFluteの涼やかな音色で始まり木管合奏、Oboeソロと続いたかと思うと、リズミックな金管群の楽句へ。
3rd_suite_waltzさらに続いて現れる、ルバートを伴い甘美な旋律を奏でる木管+Euph.のサウンドは弦楽合奏を彷彿とさせて…と次々に示される音色対比が素晴らしい。楽曲は興奮を高めてブレイクするが、たちまち冒頭のFluteが帰ってきて優雅さを取戻す。
G.P.の後は諧謔味に満ちたClarinetの旋律に始まるコーダ、快速な変拍子で一気に駆け抜けて行く。3rd_suite_coda


III.ロンド3rd_suite

「ABACABAの形式に成るロンドで、全合奏が5つのコードを吹き鳴らして幕を開ける(上画像)が、この序奏部が提示する『5つのコード』は、全曲を通じ重要な接続部の役割を果たしている。”A”の主題はCornetソロによって提示され、木管がこれを繰返す。短調に転じて全合奏が”B”の主題を奏し、”A”を繰返した後にPiccoloが”C”を導くのである。”C”もまた繰返され、再び強奏された『5つのコード』が聴こえてきて、これに3度目の”A”が続く。突然調子が変わって最後の”B”となるが、ここは実際には”A””B””C”全ての主題が一体となって展開されている。Timpaniのロールが轟き亘ると、最後の”A”が足早に聴こえてくる。そして冒頭に現れた『5つのコード』に基くクライマックスを形成して、フィナーレだ。」

さらに明快さを高め、豊かなダイナミクスと鮮やかなコントラストを持つ終曲である。序盤の軽やかなCornetソロからしてそうであるが、愛らしい旋律が充満している。
Jager_3rd_suitecornet_solo”C”セクションではPiccoloのメロディも、合いの手のベースラインも、そのおどけた感じがたまらなく微笑ましい!
Jager_3rd_suitepiccolo_soloシリアスな表情の短調部分も織り交ぜながら、とどまることのないエネルギッシュさで全曲を締めくくる。

♪♪♪

どう考えても、今でももっと演奏されて然るべき楽曲である。
決して深刻な緊張感はないけれど、とても洒落ていて音楽の本源的な愉しみをストレートに伝えてくれる。つくづくこれほど高品質の吹奏楽オリジナル曲は珍しいと思う。まさにこのレベルのクオリティを持つ楽曲こそが、吹奏楽界に待望されるのだが…。

音源は
Photo_407汐澤 安彦cond.
東京佼成ウインドオーケストラ

の演奏が断トツの出来映え。テンポやダイナミクスの設定が極めて適切で、コントラストも充分なのに加えて、音色にスピード感と生気があり、また実に品が良い。
特に「マーチ」では冒頭の音の長さ・音型など奏し方がこの上なくフィット!中間部の打楽器ソリも胸がすくもので、作曲者の意図を体現したと云えよう。行進曲らしからぬこの曲の混合拍子に惑い、推進力を失っている他の演奏とは一線を画す好演なのである。

   【他の所有音源】
    アーサー・チョロドフcond. テンプル大学ウインド・シンフォニー
    ティモシー・レイcond. テキサスA&M大学シンフォニックバンド
    木村 吉宏cond. 広島ウインドオーケストラ
    Alfred社 デモ音源(演奏者不詳)
    ロン・ハウステイダーcond. テキサス大学エル・パソ校ウインド・シンフォニー


(Revised on 2015.3.28.)

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コメント

突然失礼致します。そしてご無沙汰しております。
以前に某楽団でご一緒しておりました、打楽器の原田です。
こちらのサイトの存在を知ったのは数ケ月前のことですが、
今回、私の大好きなジェイガーの「第3組曲」が採りあげられているのを知り、コメントさせていただきました。

ジェイガーの作品の中でもひときわ、ジェイガーらしさが光る作品であり、なのに、なぜか演奏される回数が非常に少ない作品でもあると思います。

ただ、この曲をご紹介の音源のように上品に演奏するのは、少なくともアマチュアではかなり困難なのかなと…。
このへんが、この作品があまり演奏されなかった理由のひとつかな…、
と、勝手に思っています。

またちょくちょく、このサイトにお邪魔させてください。
よろしくお願い致します。

投稿: HARA-P | 2010年10月25日 (月) 20時50分

やあやあ、拙Blogを見てて下さってたんですね!率直に嬉しく思っています。「第3組曲」って、ホント絶品ですよね!
どうぞぜひこれからもお越しになって、コメントもお寄せ下されば有難いです☆

Blogの標題も先日変えたところです。始めたころは手探りで気恥ずかしさが今の何10倍もあったので
”h-ongendo1964”としていたのですが、長すぎるという声もあり、一番初めに考えた標題に変更したのです。
(尤も、一番の理由は「H 音源」というキーワードで検索してこられる方がいらっしゃり、私も試しにこのワードで検索してみたところ、尾篭なサイトがずらりと並び、その中に当Blogが混じっているさまを見たためです。これはとっても嫌で、早く変えたいと思っていたのです。^^;)

ご一緒していた時に、演奏した曲もたくさん採り上げておりますでしょう?あの頃、音源堂はこんなことを考えていたのか- なんて思っていただけると面白いかもしれません。

何より、また一緒に演奏できる機会があればいいのですけれど…。貴兄のDrumsがとても懐かしいです♪

投稿: 音源堂 | 2010年10月25日 (月) 21時48分

こんにちは。
以前「シンフォニア・ノビリッシマ」についてもTBさせてもらったLionbassです。
「第2組曲」「第3組曲」について書いていて、またまたお邪魔しました。
いつもとても勉強になります。
トラックバックさせてください。

投稿: Lionbass | 2011年2月19日 (土) 13時11分

Lionbassさん、ご無沙汰しております。有難うございます!私の方からもTBさせていただきました。今後ともどうぞよろしくお願いします。

いや~、ジェイガー最高ですよねー♪

投稿: 音源堂 | 2011年2月19日 (土) 18時17分

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» 「第2組曲」&「第3組曲」=思い出の吹奏楽曲(10)= [【本家】音楽・読書・ときどき旅行日記2.0]
「『マスク』&『ディヴァージェンツ』=思い出の吹奏楽曲(9)=」以来の吹奏楽曲のお話です。 「ウン十年ぶりの吹奏楽」に書いたように、今度吹奏楽の演奏会に出ることになっています。 それで、我が家にある吹奏楽曲のCDを見直していて、iPodに取り込んだ曲が、ロバート・ジェーガー(ジェイガー)(Robert E. Jager)作曲の「第2組曲」("Second Suite")と「第3組曲」("Third Suite")です。 このCDはAmazonでヒットしないので絶版のようですが、「第2組曲」... [続きを読む]

受信: 2011年2月19日 (土) 13時09分

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