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2010年5月31日 (月)

トランペットのためのオード

Ode_001Ode for Trumpet
for Solo Trumpet and Symphonic Band
A.リード
(Alfred Reed 1921-2005)



管楽器というのは、生まれながらにしてカッコいい!

もちろん打楽器も弦楽器もピアノもオルガンも、”楽器”というのはカッコいいモノだと思うのであるが、奏者の端くれととして、常々私にとって管楽器とは殊にカッコいいものとして感じられている。

そして、その最たるものは何といってもTrumpetであろう。この楽器の放つ音の輝きや音楽におけるリーダーシップは群を抜いている。ライオンが”百獣の王”と称されるのと同じく、楽器の王様といっても差支えあるまい。

先日は「題名のない音楽会」(テレビ朝日/2010.5.2.放送)にて、シエナ・ウインドオーケストラをバックに、西村 浩二が「大都会 Part III」などの鮮やかなTrumpetソロをキメていた。普段吹奏楽に興味を示さぬ家内や息子も、惚れ惚れと聴いている。やはりTrumpetの華麗な演奏には抗し難い、圧倒的な魅力があるのだ。

Photo※西村 浩二(1963- )
ポピュラー音楽の分野を中心に活躍する気鋭のトランペッター。
吹奏楽の名門・亜細亜大学の出身であり、私は彼が3年生時の
同校吹奏楽団の定演を聴いている。極めてレベルの高かった同
団の金管群の中でも、彼のTrumpetは一際輝く存在だった。
トップ奏者として、フェネルの指揮による1st Stage、続くステージ
ドリルでシェエラザードのカデンツァ・ソロを吹きまくり、さらに3rd
Stageでは何と「サンタフェ物語」…。(!)優れた音色と見事な
ハイ・トーン、テクニックもさることながら、そのタフさにもただただ驚愕したのを憶えている。


また、特に吹奏楽においては、Trumpetのトップは自身の演奏を以ってバンド全体を強力に牽引することができるほど影響が大きい。そもそも優れたプレイはそれ自体が他の奏者を鼓舞し演奏全体をレベルアップさせるものだが、Trumpetのトップにそれを成遂げる実力と矜持を有する奏者を戴くことができたなら、効果は他楽器とは比較にならない絶大さなのである。

♪♪♪

私自身、Tromboneという楽器に触れ、音楽マニアとなったきっかけも実はTrumpetにある。中学校の入学式で吹奏楽部が演奏した「黒いジャガーのテーマ」のTrumpetソロが、どうしても頭を離れなかったのだ。
6才年上の兄がこの吹奏楽部でSaxを演り、音楽に熱中する姿は見ていたが、自分も吹奏楽部に入ろうなんて気は正直さらさらなかった。そんな私が吹奏楽部の部室を訪ねずに居られなくなったのは、あのTrumpetソロのせいなのである。当時部長を務めたソリストの3年生はとても上手であり、彼の愛用する銀色のコルネット(実はTrumpetではなかったのだ)がキラキラと輝いて…あの華麗なソロはとにかくカッコ良かった!
(…で、入部してみたら有無を言わさずTromboneを宛てがわれ、それを30年超も続けることになるのだから、とんだ笑い話である。^^)

Lp_2※黒いジャガーのテーマ(Theme from "Shaft")
岩井 直溥 編
岩井 直溥cond. 東京佼成ウインドオーケストラ
ニューサウンズ・イン・ブラス第4集(1975)収録
映画「黒いジャガー」の主題曲を鮮烈にまとめた
好アレンジ、エレキギターの伴奏もフィーチャー
した16ビートがエネルギッシュ!
左画像 : 初出版のLPジャケット


♪♪♪

本稿で採り上げる「トランペットのためのオード(頌歌)」(1956年)も、そんなTrumpetの魅力に満ち満ちた佳品。「アルトサクソフォンのためのバラード」「クラリネットのためのセレナーデ」とともに、楽器メーカー・ルブラン社の委嘱により作曲された、吹奏楽伴奏によるソロ・フィーチャー作品である。
自身もTrumpet奏者であったアルフレッド・リードは、この楽器の機能や魅力を良く知っていたはずで、”アマチュアでも演奏可能なソロ”を念頭に置いてこの曲を書いたとのこと。さらに、Trumpetソロ・パートについては、この曲が捧げられた初演ソロ奏者ドン・ジャコビーの校訂を得ている。

Don_jacoby_2※ドン・ジャコビー(Don”Jake”Jacoby 1920-1992)
僅か9歳の時から既にソロイストだった早成の名手だが、
それは1年のうちクリスマスを除く364日練習に励んだ
結果だという。
大学卒業後はアメリカ海軍への従軍経験があり、吹奏楽
との関係も深い。一方でトミー・ドーシーやベニー・グッド
マンとの協演も果たすなど”認められた”プレイヤーだっ
たし、教育者としても教則本やクリニックを通じて高名で
あった。


楽曲としてはリード自身が解説する通り、Trumpetソロの提示する8小節の主要旋律による自由な変奏曲-ということになるが、ジャジーでメロウな曲想がとても素敵である。
劇的なバンド・サウンドに続いて、鮮烈に駆け上がるTrumpetソロが現れて序奏部を形成(冒頭画像)、木管群の安寧な響きで静まると、美しく揺れ舞うTrumpetソロの旋律が提示される。
Ode_002_2この旋律が変奏され、Trumpetソロがいよいよ華麗に歌い上げていくのだが、ソロ・パートの見事さのみならず、バンドによる伴奏もとても素晴らしい。リードの作品としてはごく初期のものだが、持ち前のふくよかなサウンドは既に確立されており、それが要所要所でTrumpetソロを包み込むのが心地良い。また伴奏部分の各楽器の音色対比やダイナミクスの変化も充分で、小品ながら納得感のある楽曲となっている。
高揚し、モダンなハーモニーでダイナミックにバウンスするクライマックスを経て、
Ode_003冒頭の旋律が今度はCup MuteをつけたTrumpetソロに戻ってくる。遠くから聴こえる如きこの部分の何とノスタルジックなことか…!再びMuteを外し、しなやかにしかしあくまで優しい表情のTrumpetのソロが最後の歌を歌い、静かに曲を締めくくる。

♪♪♪

冒頭に述べた通り、管楽器の集合体である吹奏楽はとにかくカッコよくなくてはならないと思うのだが、この曲などはその要諦をキチンと押さえていると云えよう。一言で”カッコよさ”と云ってもさまざまあるわけだが、創り手も聴き手も”カッコよさ”というものを的確に理解する感覚を持ち、追求していかなければならないだろう。「この曲(演奏)、本当に”カッコいい”か?」と健全な懐疑心を持ちながら…。

音源は1つのみ。
Ode_cdアルフレッド・リードcond.
東京佼成ウインドオーケストラ
Trp.独奏:久保 義一

この曲の良さを端的に伝える演奏で、出版元Southern Music社のサンプル音源にも採用されている。

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コメント

 こんばんは。最新記事、拝見しました。
 trumpet。たしかに圧倒的な存在感で迫りますよね、吹奏楽ばかりか管弦楽においても。インパルスの効いた波形による音色とか大編成アンサンブルにおいても埋没しないパワーとか、物理的な要因に加え、歴史的にも結構な大先輩(打楽器には負けるかもしれないけど擦弦楽器では最もクラシックな印象のバイオリンなどと較べても余程古くからある)のですから、鬼に金棒です。
 ところで、私のユーフォも、その決定への経緯はいささか呆気ないものでした。私は中学一年生で初めて吹奏楽部に顔を出し、早速楽器選びが断行されました。
 打楽器が最初から候補にならなかったのは恐らく人数的に足りていたからと思われます。で、管楽器となるわけですが、まず指遣いがややこしい木管楽器が候補から外れました。金管楽器におけるアンブシュア・コントロールなどは認識度ゼロで、立ち会いの先輩もそのことは触れず仕舞い。次いで、かろうじて音が出たのがトロンボーンとユーフォニウムだけであり、この時点で金管中低音楽器が決定しました。この二者択一は、トロンボーンは(第6どころか)第5ポジションも届かない手の短かさにより却下され、ユーフォニウムと相成った次第です。
 肝腎なリード作品には言及できないコメントで失礼しました。

投稿: 長谷部 | 2010年5月31日 (月) 21時59分

長谷部さん、コメントを有難うございます。
私の生涯の友人となっているTromboneですが、これはまさに人が足りないパートに私が「填め込まれた」結果、生まれた出遭いでした。まあそれも「縁」なのかも…。
今になって振返りますとTromboneが私の人格形成に大きな要素を占めていることは疑いないと思います。それがそんな「はずみ」みたいなモノで決まっちゃってるんですよねー。^^)

投稿: 音源堂 | 2010年6月 1日 (火) 20時41分

 はじめまして。ほら貝と申します。
 ニクソンの「平和の祭」絡みでこのサイトを知りました。昔、とある吹奏楽団(千葉県内)で我流で棒振りなぞをやっていました。久しぶりに関学のレコードとゴールデンクレスト社のもの(米国の大学バンド)とを聴き比べなんかもしてみました。管弦楽のほうも以前やっていました(いちおう、マーラーなんかも、但し技量は?)。リードは演奏者が非常に楽しめるような書法なので指揮していても意外とやりやすかった記憶があります(アルメニアンダンスの第1楽章とか)。
 アメブロでたまにつぶやいています。こちらにもまたお邪魔したいと思いますので、宜しくお願い致します。

投稿: ほら貝 | 2010年6月 4日 (金) 00時03分

ほら貝さん、初めまして。お越しいただき有難うございます。「平和の祭り」も大好きな曲でして、このBlogではそうした私の好きな音楽について、吹奏楽を中心にしかしジャンルを定めず採り上げております。
これからも採り上げる楽曲に愛情を込め、綴ってまいります。どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます!

投稿: 音源堂 | 2010年6月 5日 (土) 00時14分

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