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2010年3月21日 (日)

交響的序曲 J.バーンズ

Usaf_2Symphonic Overture
J.C.バーンズ
(James Charles
Barnes  1949- )


大変ゴージャスな序曲である。作曲者ジェイムズ・バーンズも”世界的なレベルの楽団”と評するアメリカ空軍ワシントン・バンドの創立50周年を祝うために委嘱された作品であるから、それも当然と云える。同バンドの委嘱作品は他にも「フェスティヴァル・ヴァリエーション」 「華麗なる舞曲」(C.T.スミス)「ダンス・ムーヴメント」(P.スパーク)「ハリソンの夢」(P.グレイアム)など高度な技術を要する錚々たるものばかりであり、本作もその例外ではない。

     ※冒頭画像:同バンドの創立50周年記念CDアルバム/「交響的序曲」も収録


Photo委嘱当時のアメリカ空軍ワシントン・バンドの指揮者ジェイムズ・バンクヘッド中佐(James M. Bankhead)からの要望は「ロマン派のスタイルで、規模の大きさと挑戦しがいのある難度を持った、コンサートのオープニングを飾るにふさわしい序曲」とのことだったが、作曲にあたってはバーンズ(左画像)もかなり悩まされたようだ。スコアに記されたバーンズのコメントによれば、1990年1月末には何と一旦完成した作品を破棄し、改めて書き直すことにしたのだという。
どうしても気に入らなかったこの破棄された作品とは異なり、バーンズ自身「交響的序曲」に用いた旋律を大変気に入って、その旋律を着想してからは約2週間で書き上げたというから、ノリにノって作曲したことは間違いないだろう。

こうして誕生した「交響的序曲」は(1941年創立の)アメリカ空軍ワシントン・バンドの50周年となる1991年に初演された。完成した本作は、序奏と終結部に金管の華麗で重厚なファンファーレを擁する構成や、快速部冒頭のスピーディでリズミックなOboeソロによる主題提示などが、高名なショスタコーヴィチの「祝典序曲」を髣髴とさせる曲想である。シンコペーションを効かせたリズムやコードで聴かせるソリ、効果的な木管低音楽器の使用などをふんだんに配し、バーンズらしく味付けされながら、終始祝典のムードを充満させた陽気で輝かしい音楽となっている。

♪♪♪

まず冒頭のファンファーレからして実にゴージャス!
17声のコルネット&トランペット + 1声のトロンボーンという8声のラッパたちがアンティフォナルに響きあうさまは壮観であり、これにHornや打楽器が加わって一層豪華なファンファーレとなっていく。
と、次の瞬間2/2拍子 Allegro Vivoに転じ、密やかに始まったTrb.のシンコペーションと、木管群の目まぐるしい8分音符が徐々に高揚して開放感に満ちたクライマックスとなり、序奏部を締めくくる。

続く主題提示のOboeソロこそは、この曲最大の魅力!
2うきうきと高まる気分を表現するリズムを感じさせながらも、どこまでも流麗-Oboeの美しい音色が抜群に映えている。
またここでは、伴奏を務める”歌う低音”も実に素敵。
3リズミックな伴奏でありながらフレーズ感に満ちていて、単独でも確りと愉しげな歌になっている!Oboeと低音群とが、さながらDuetとなって豊かな音楽を聴かせてくれるのだ。

この魅力的な主題を繰返し奏する木管群に、リズミックな金管の楽句が応酬して、音楽はよりスケール豊かなものとなる。スピードを失うことなく一瞬静まったかと思うと、チャイムのソロを中心とした打楽器のソリがやってきて…色彩とコントラストの豊かさも申し分ない。
4足取りを緩めると冒頭ファンファーレをHorn(+Euph.)が堂々と再現し、豪快なサウンドが轟いてブレイク。ファンファーレの旋律を緩やかに奏するコールアングレ・ソロのブリッジを経て、ロマンティックな中間部に入る。

Adagio の中間部はSaxの艶やかな音色に支配されていると云ってよい。導入部分はTenor Sax.のソロに始まり、いよいよAlto SaxがHarpの伴奏を従えて存分に歌うのだ。
5甘美な旋律は木管群によって繰返されるが、今度はこれを彩る対旋律に回ったAlto Saxソロが、さらに抒情を極めていく。
そして全合奏となって高揚し、感動的なクライマックスを迎えるのだが、幅広く濃厚な音の束が心地よい。

6名残惜しくファンタジックに中間部を締めくくると、弾む符点のリズムから再び快速部2/2拍子へ。木管楽器のきらびやかな8分音符との応答が繰返されてブリッジとなり、第一主題とその開放的なムードとが戻ってくる。
そしてHornの雄叫びと鮮烈な金管のベル・トーンを経て、遂に終結部のファンファーレに突入するが、ここでは吹奏楽の豊潤なサウンドを存分に堪能することができよう。

まるで弦楽器の響きを想起させるような木管群のトリルが音楽を一層盛り上げると、一気呵成のコーダへ。激しいリズムに続いて、鮮烈な全合奏のコードが雄として鳴り響き、華やかな終幕となる。

♪♪♪

「書き直したこの曲が、前の曲より良いことは確かだから、ぜひ楽しんでほしい。」とバーンズのコメントは控えめだが、この「交響的序曲」の快活な爽快さは突き抜けており、非常にチャーミングな音楽だと思う。私は理屈抜きに大好きである。

音源は
Photoジェイムズ・バーンズcond.
東京佼成ウインドオーケストラ

をお薦めする。
曲が持つ美点を充分に発揮し、スケールの大きな好演であるこの自作自演は、出版社Southern Musicのデモ音源にも採用されている。

  【他の所有音源】
   鈴木 孝佳cond. TADウインドシンフォニー(Live)
   アラン・L・ボナーcond. アメリカ空軍ワシントンバンド
   アレキサンダー・ヴェイトcond. シンフォニック・ウインズ
   松元 宏康cond. ブリッツ・ブラス
   ジェイムズ・バーンズcond.
                    洗足学園音楽大学シンフォニック・ウインドオーケストラ(Live)
       ジェイムズ・バーンズcond. オランダ王立陸軍軍楽隊

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コメント

この曲、好きですねー。難易度が高すぎて吹きこなせそうにないですけど、聴いている分には爽快そのものです。中間部のあとの快速部が特に好きですね。クラの早いパッセージは大変そうですが(苦笑)
最終盤のホルンの雄叫びが何回聞いても耳に残ります。

投稿: ゼスト | 2010年3月27日 (土) 00時10分

ゼストさん、コメントを有難うございます。
実際に演奏したことがあるのですが、やはり大変でした。冒頭からしてTrp.が7本必要なのにいつまで経っても揃わず、不安になったのを思い出します。
私はやはりOboeのソロが本当に素晴らしくて大好きです!「流麗」と「律動的」のバランスがなかなか難しく好演は少ないのですが、こういうソロが吹けたら奏者冥利に尽きるというものでしょう。

投稿: 音源堂 | 2010年3月28日 (日) 17時57分

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