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2009年12月 9日 (水)

いたずらなポルターガイスト

1The Puckish Poltergeist
C.サレルノ
(Christfer James Salerno 1968- )


非常にインパクトのある標題。1995年の全日本吹奏楽コンクールで東海第一高(当時)が演奏し広く知られたが、逆にそれっきりになってしまった感がある。
演奏時間5’30”程度の短い曲だが、音楽自体も大変ユニークなもの。万人受けする楽想ではないし、変拍子の嵐で演奏難度も高いことが、この曲をとっつき難いものにしているのだろう。しかし確たる個性があって興味深い作品であり、もっと演奏されてよいと思う。

♪♪♪

001作曲者クリストファー・サレルノ(左画像)は、吹奏楽や管楽器アンサンブル(室内楽)に多くの作品を書いているアメリカの作曲家。ラドフォード大学でマーク・キャンプハウス(Mark Camphouse)に師事、この「いたずらなポルターガイスト」1991年に作曲されたサレルノの代表作である。



ポルターガイスト(Poltergeist)
とは、物品が宙を舞ったり、激しい物音がしたり、電灯の点滅や電話の着信などの機械的・電気的変化も起きたりする特異現象のこと。元々ドイツ語で”騒がしい霊”の意味。時には幽霊が目撃されたり、寒気が感じられることもあるという。
ポルターガイストは”ある特定の人物の周りで生じる”もので、”ある特定の場所に於いて生じる”ホーンティング”
(Haunting)とは異なるとされている。

  
          【出典・参考】  明治大学/石川幹人教授「超心理学講座」


「恐ろしさとコミカルさという対照的なものを同時に持ち合わせ、無茶苦茶に動き回るポルターガイスト。
”いたずらなポルターガイスト”は、そのいたずらを題材とした標題音楽である。
作曲者は、急速な拍子の変更や二重三重に重なり合うリズムパターン、コントラストを効かせた楽曲構造を駆使している。これによって、気味の悪い城の住人たち(ポルターガイスト)がさまざまな家具や台所用品を宙に浮かせて走り回り、またちょっとしたいたずらのつもりで少し変な叩く音を出したりするさまを、鮮烈に思い描かせる。」

  -スコアにあるプログラム・ノートより

♪♪♪

いきなり激烈なシンコペーションのfff(冒頭画像参照)で始まる。家中の家具が浮き上がり、ダイナミックに飛び回っている感じであり、このポルターガイストのいたずらはのっけから実にキツい。
鋭い打ち込みを伴奏に、引き攣った表情で強烈なトリルが印象的なHornの主題が現われる。
2全編に現れる変拍子のエキサイティングなリズムは非常にシビア!これだけでも高い緊張感を持っている。更にアクセントと強弱の対比、楽器間の応酬が加わって、音楽に異様な生命感が吹き込まれているのだ。Timp.をはじめとする打楽器群、そしてピアノは特に鋭い感性を要求されよう。

ポルターガイストのいたずらは時にユーモラス。諧謔味あふれるTrumpetのソロはその象徴である。
3
しかし、それに騙されてはいけない。
一旦静かになって動きを止めた(G.P.)かと思うと、ポルターガイストはその恐ろしい本性を現す!充分にテンポを落とし、木管と打楽器のおどろおどろしいトリルをバックに、迫りくる恐怖を表す低音群の重厚なフレーズは、圧倒的な威圧感だ。
4
そこにチャイムの音が聴こえ、荘厳にコラール風の楽句が奏される。夜明けが近づき、漸くポルターガイストのいたずらも終わるのか-。
するとラチェットが鳴り響き、それを合図にポルターガイストは前にも増してスピードを上げ、家の中をめちゃくちゃにする。猛烈な最後のひと暴れだ。
最初の旋律がTrumpet+Hornで激しく再現('Bells Up'の指示!)され、さらにテンポを上げて一気にPrestoのエンディング。スリリングで鮮烈な印象を残し、曲を閉じる。

前半のポルターガイストの描写部分は、リピートして二度奏されるのだが、快速かつ、そしてリズム・音色・アクセント等のめまぐるしい変化で飽きさせることがない。なかなかにクールな楽曲といえよう。

♪♪♪

Cd001音源は、前述の全日本吹奏楽コンクールLive録音を除くと、本作の出版元
Neil A. Kjos のデモCD
(指揮者・演奏者特定不能)
しかない。
しかしこの音源、レベルが高い!鋭い感性でリズムやニュアンスを捉えた快演である。アクセントや強弱の対比など正確にスコアを再現しているし、終始スピード感のある音色も見事、デモ音源には珍しく実に満足の行く出来映えとなっている。

   ※ Neil A. Kjos 社のデモ音源はこちら

♪♪♪

[ 追記 ]
本稿では以下の通り、当Blogが作曲者
クリストファー・サレルノ氏のHPにリンクいただいておりましたので、そのことをご紹介しておりました。その後サレルノ氏は自身のHPの閉鎖→リニューアルを何度か繰返しておられます。
2013.1.8.現在、サレルノ氏のHPは閉鎖されているようです。
しかしながら、本楽曲にまつわる私の想い出の一つとして、下記はそのまま掲載継続させていただきます。


▽▽▽

作曲者
クリストファー・サレルノ氏が、自身のHPで本稿にリンクを貼って下さいました!

  ※2009年12月下旬以降、サレルノ氏のHPはリンク切れと
       なっておりましたが、このたび新HPでの復活を確認致し
       ましたので、改めてご案内させていただきます。
       拙Blogは ”Hashimoto Sound Hall” という英名にて、
       リンクいただいてます。^^)
       旧HPでは
      "Checkout the analysis of The Puckish Poltergeist
      on this Japanese Website ! Very cool !"
       とのコメントを頂戴し、感無量でした!
       海の向こうの作曲者ご本人から認めていただけるなんて、
       思ってもいませんでしたから…。
       尚、同じく旧HPによれば Neil A. Kjos のデモは
       Westpoint Military Academy Band による1992年の演奏
       とのことでした。



(初出稿:2008.2.27. / 改訂追記:2013.1.8.)

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コメント

 何やら物凄い楽曲のようですね。いつか試聴してみたいものです。
 それにしても、作曲者の方からのVery coolなanalyzeとのコメント、よかったですね。
 外国語にもかかわらず携帯電話でちょっと覗いてみましたら、併せて、写真は20年以上前のだともありまして、何だか微笑ましかったです。音はパーソナル・コンピュータで接続したときに聴けるかもしれませんので後日試してみたいと思います。

投稿: 長谷部 | 2009年12月 9日 (水) 23時01分

長谷部さん、有難うございます。
作曲者本人のコメントは、ただただ嬉しかったです!
なかなか面白い曲で、もっと演奏されて然るべきと思います。ぜひご試聴下さい!

投稿: 音源堂 | 2009年12月11日 (金) 09時01分

当時、東海第一3年でSAXを吹いていました。本当にそれっきりな曲になってしまいましたが、非常に楽しく演奏できました。書いていただいてありがとうございます。

投稿: あっきー | 2010年5月18日 (火) 10時31分

あっきーさん、コメントを有難うございます。
全国大会のプログラムでこの標題を目にした時は「ほえ~」とビックリしたのを憶えております。
そして実際に聴いてみて、その面白さにすっかりファンになりました。もっと演奏されてもいいのになって思いますよね!

投稿: 音源堂 | 2010年5月18日 (火) 22時51分

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