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2008年11月 1日 (土)

ジュビラント序曲

We※アルフレッド・リードcond.マイアミ大学ウインドアンサンブル(1980年)

思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、
サンダル、あじさいの花
              ~俵 万智「サラダ記念日」より


♪♪♪

A Jubilant Overture
A.リード
(Alfred Reed 1921-2005)


「春の猟犬」 「パンチネロ」とともにアルフレッド・リードの3大序曲というべき名作。1969年の作曲で、リードの作品としては初期のものにあたる。

1_3”Jubilant”は”歓喜”を意味する。思わず歓声をあげ、或いはそのうれしさに酔ってしまうような、爆発的な喜びを指す言葉とされる。曲想は冒頭からして、まさにそのイメージ通りの音楽である。

リードは「春」という季節の華やいだ喜びをイメージしたとのことだが、この曲から感じる”瑞々しさ”は随一のもの。とにかく若い活力に満ち溢れている。
青春という人生における季節を、そのままそっくり切り出して音楽にした-そうした若々しい一途さ、ストレートさが何より最大の魅力であろう。
急-緩-急のオーソドックスな形式の中に、素敵な旋律と輝かしく豊かなサウンド、爽快感が散りばめられている。

♪♪♪

鮮やかなスネアのリムショットで華々しくスタート、これぞ”Allegro con brio”という音楽が流れ出す。金管中低音による生命力溢れるモチーフ提示に続いて、クラリネットがキラキラと旋律を歌いだす。
2スピード感と突き進む推進力は聴くものの心を弾ませ、金管群の轟く原色のコントラストがまた見事である。かと思うとカップミュートのTrp.+Trb.がパステルカラーの楽句を描くなど変幻自在、これが中間部へのブリッジに導いていく。
3
中間部 Molto moderato e espressivo ではミュートを外したTrb.の伴奏からして、実に暖かいサウンドが聴かれる。ファンタジックでもあり、ロマンティックでもあるこの音楽から得られるイメージは、スィートな”優しさ”だ。

やがて木管群に抒情をきわめた旋律がやってくる-。
4そして、徐々に高揚する旋律を柔らかに後押しするTimp.のロールが、決定的な感動を与えるのだ。泣ける!

静まって中間部冒頭の旋律が戻り、遠く遠く消えていくと、突如として凛然と快速なテンポが戻る。遠くから迫ってくるスピード感は遂に炸裂して再現部、まるで花火の如き壮麗さである。
静まって軽やかな木管アンサンブルとなり、ここではファゴットの対旋律が洵に味わい深い。
リードの音色配置の巧みさには舌を巻くばかりだ。
5
あとは一気呵成の終結部。スネアのリムショットで鞭の入った音楽は、ますます興奮を高めて緩むことなく、再びリムショットの一撃が入り最後の最後までスピードとエネルギーを漲らせていく。
曲中、都合3度のリムショットはこの曲に鮮烈な印象と個性を与えており、まさに聴き所となっている。

♪♪♪

この曲の演奏には熱気が欲しい。妙に醒めた演奏では、はち切れんばかりの若きエネルギーが感じられることはないだろう。

Photoその意味で音源としては、
1976年全日本吹奏楽コンクールでの
牟田 久壽cond.
瑞穂青少年吹奏楽団

の演奏が素晴らしい。良くも悪くも”若々しい”演奏だが、この曲にとって一番大切なものを確りと捉えた快演である。

1976サウンドの輝きとダイナミックな溌剌さ、そしてハートのある歌…まさに”Jubilant”であり、BRAVO!の歓声を贈りたい。

Photo_2作曲者リードの指揮による演奏もある。
アルフレッド・リードcond.
東京佼成ウインドオーケストラ

こちらは重厚なサウンドで骨太な演奏、やや”大人”な「ジュビラント」だ。


  ※尚、試聴音源を含む出版社(C.L.Barnhouse)サイトはこちら

  【他の所有音源】
    エドワード・ピーターセンcond. ワシントン・ウインズ
    木村 吉宏cond. 広島ウインドオーケストラ


♪♪♪

「パンチネロ」はノスタルジックで甘美な”過去”「春の猟犬」は今、間違いなくそこにある”現在”の喜び…そして「ジュビラント」は一心に見つめる”未来”
冒頭の一首の如く、未来を信じ前だけを見て駆け出す若々しさを一枚の写真にした-そんな世界が「ジュビラント」にはあるのである。

(Revised on 2011.2.27.)

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コメント

ジュビラント序曲。思えばA.リードの曲に接したのはこの曲が初めてで、後にここで紹介してある瑞穂青少年吹奏楽団の演奏を聴いたときには、私にとってこの曲の最高の演奏となりましたし、お手本にもさせて頂きました。ただ後半練習番号177の2小節前、Tbはmfで入るのですが、瑞穂の演奏では強烈に鳴らしていましたね。同様にやろうと思ったら注意されて実現はしませんでしたが・・(汗)

中間部分に入ってTbの心地よいハーモニーに乗って木管の、特にSaxをメインに出したようなメロディーは優雅でもあり、色っぽさをも感じた物です。また演奏してみたい曲ですが、今私がお世話になっている所(ジャズバンド)では編成上無理ですね。(笑)

投稿: mitakasyun | 2008年11月 9日 (日) 00時47分

mitakasyunさん、いつもコメント有難うございます。そうなんですよね、瑞穂=牟田の演奏は実は大変個性的です。その演出が実にこの曲の本質を捉えていたってことなんですよね。
演奏者としてはこの演奏のように楽曲の魅力を最大限に引き出す-例えるなら女性の美しさの個性を確り捉え、より引き出すメーキャップアーティストのようでありたいものですね。

投稿: 音源堂 | 2008年11月 9日 (日) 08時52分

偶然でしたがこのサイトを発見しリード好きな私したので
少し書かさせて頂きました。
1976年の大阪フェスティバルホールでの中学の部で静岡の学校が
確か同曲を演奏し、邪心なく若々しくもリードの豊かさを表現し好演したと記憶しています。
各支部1団体の時代で当時の御三家健在の折、オリジナル(G-3)での評価は好感を持っています。全国販売の録音はどうなのでしょう?今となっては36年も前のことで
薄ら覚えですみません。

投稿: sirokuma | 2012年12月12日 (水) 19時02分

sirokumaさん、お越しいただきまして、またコメントも頂戴しまして有難うございます。私もこの曲は昔から本当に大好きでして、中学を卒業する際には「いつか後輩たちに演奏してほしい」との願いを込めて、私どもの代の卒業記念にジュビラント序曲の楽譜セットを寄贈したほどです。

さて挙げていただいた中学校の演奏ですが、1971年の11月7日に大阪フェスティヴァルホールで開催された第19回全日本吹奏楽コンクールでの東海支部代表・由比中学校(静岡県)の演奏だと思われます。惜しくも銀賞でしたが、当時発売された銀賞団体の好演集=CBSソニーのレコード”優秀団体編”にも収録されておりました。広く認められた好演と存じます。

今ではBRAIN社のWorld Windband Web Music Download Store でこの演奏をダウンロード購入することができます。もしご興味がおありでしたら、下記を訪ねてみて下さい。
http://www.www-musicdownloadstore.com/fs/main/sub_catalog.asp?mother_catalog_num=43&catalog_num=869

投稿: 音源堂 | 2012年12月12日 (水) 20時44分

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