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2008年10月25日 (土)

ライド

RideRide
S.R.ヘイゾ
(Samuel R. Hazo 1966- )


鮮烈さと高いスピード感、ジャズの要素も取り入れた現代感覚-。僅か3分強の作品だが、文字通り息もつかせぬカッコ良さ!あたかも華々しいレーザー・ショウを見ているかのようである。演奏会のオープナーとして、吹奏楽にまた新しい”色”を与えた作品として特筆できよう。

♪♪♪

「ライド」(2002年)はアメリカの作曲家/指揮者ジャック・スタンプ(Jack Stamp)に捧げられている。作曲者ヘイゾのスタンプに対する感謝が込められた作品であるとともに、作曲のインスピレーションそのものも、スタンプからもたらされたものなのだ。

Srhazoサミュエル・R・ヘイゾは映像・舞台音楽の世界でも活躍してきたキャリアの持ち主で、ポピュラーミュージックの要素も取り込んだ現代的な作風がその特徴である。
スタンプはそんなヘイゾの才能と作品を高く評価し、2001年頃から吹奏楽界にヘイゾの作品を積極的に紹介していった。しかもスタンプはヘイゾから一切のお礼を(菓子折りすらも)受け取らず、「君の音楽を僕らに届け続けてくれれば、それだけでいいんだよ。」とヘイゾを励まし続けたという。

「”ライド”はジャック・スタンプが私にしてくれた全てのこと-即ち作曲に関することはもちろん、それにとどまらないさまざまなことに心からのアドバイスをしてくれた、そうしたゆるぎない友情に感謝を表した作品である。」
(ヘイゾのコメント)

♪♪♪

直接の作曲にあたっては、インディアナ州の田舎道を爽快にかっ飛ばすドライブと、その高速の車窓から見える美しい風景の残像がイメージとなっている。
(冒頭画像:ヘイゾ自身のHPより)

1この日、ヘイゾはスタンプの尽力によりマーク・キャンプハウスなど4人の高名な作曲家とともに、インディアナ大学での作曲家フォーラムに参加していた。
フォーラムの初日日程終了後、スタンプは4人の作曲家たちとヘイゾを自宅のディナーに招待したのである。

※ Joseph Wilcox Jenkins
     Mark Camphouse
     Bruce Yurko,
     Aldo Forte






錚々たるメンバーの中で充実した時間を過ごすヘイゾの気分は、否が応にも高揚したことだろう。

そして、件のドライブはインディアナ大学からスタンプの居宅(ガボルクナ・ハウス)に向かう間のこと。スタンプの後について車を走らせたヘイゾだが・・・
何とそれは限界のトップスピード!

スタンプの驚くべき「飛ばし屋」(lead foot)ぶりと、つくづく感じられるスタンプという人物の器の大きさ-さまざまなヘイゾの思いと前述のスピード感、そしてすっ飛んでいく美しい風景とがあいまって、彼を更なる精神的高揚に導き、鮮やかな「ライド」という楽曲は生み出されたようだ。

従って「ライド」にはまずもって失速することのないスピード感が要求される。(ヘイゾはテンポ167を確実に守るよう注記している。)
音色を含めて高いスピードをキープする必要がある上、コントラストを鮮やかに演出することや音域の幅広さからしても、短い曲ながら難易度はなかなかのものと言えよう。そして、そもそも”鳴らない”バンドでは話にもなるまい。

♪♪♪

スピードと緊迫感に満ちたオープニング、短いその序奏に続き、セットドラムのようなパーカッションの伴奏に乗って、木管楽器に変拍子の旋律が現れる。
2_2如何に頻繁に拍子が変わっても、根底にスピード感のあるビートを感じることができよう。

一方、金管群は実に鮮烈!Trp.と対峙する低音群の中でも、特にBassTromboneの音色が冴える。
3_3譜例のLow E♭あたりは、まさに”ぶっ放し”てイイところだろう。

また、Timp.やPiccolo Snareを素手で叩いてBongoのような効果を狙っているのも面白い。
4後半の転調後にもこの装飾音符のついたリズムの繰返しが再現されるのだが、これはあたかも作曲者ヘイゾの高まる胸の鼓動のようではないか。こうしたところにも、徐々に拡大する高揚感が表現されている。

アドリブ的なAlto Saxのソロも織り込まれ、音楽は自在にその表情を変える。
5しかし、快速さと手に汗握る緊張、密やかな興奮といったものは決して失うことなく、一点を目指して疾走していくのだ.。

♪♪♪

Photo_2音源は、本作を献呈されたスタンプによる録音をお薦めしておきたい。
ジャック・スタンプcond.
IUP ウインド・アンサンブル

さすがは作曲者ヘイゾの最大の理解者といったところか、見事な出来映えである。

出版社提供のサンプル音源はこちら。少し”ワル”さが足りないが^^)、音楽の流れは実に滑らかであり、こちらもなかなかの好演。

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コメント

ライド! 大好きな楽曲です。

氏の楽曲は他にもエクサルターテ、オリンピアーダ、パースシャー・マジェスティなど優れた小品が多くありますね。彼の作品のほとんどはハルレナードのサイトから無料で全曲視聴できるので、私のように貧乏な吹奏楽ファンにとってありがたい存在でもあります(笑)

日本では今ソラス・アネが少し流行っているようですが、最新曲IN FLIGHTの雄大さと疾走感もたまりません。もし未聴でしたらハルレナードのサイトから聴いてみてください。

投稿: oka | 2008年10月26日 (日) 06時01分

okaさん、コメント有難うございます。
ハル・レナードのサイトではヘイゾとソーシード(大ファンなんです^^)の新曲をいつもチェックしております。ハル・レナードとチョスはネットで積極的に全曲版のデモ音源を提供してくれるので、助かりますね。
・・・というわけで、okaさんにコメントいただいたお陰で思い出すことができましたので、ハル・レナード社提供のサンプル音源の紹介も付け加えました。これで「ライド」をご存知でない方も気軽に聴いていただけると思います。ご指摘有難うございました!

今後とも我が音源堂を宜しくお願い申し上げます。

投稿: 音源堂 | 2008年10月26日 (日) 09時17分

 また「どこぞやのバンド」でやらないで下さいね!・笑
…内輪ネタですみません。

投稿: すぎ | 2008年10月27日 (月) 00時58分

すぎ さま(今年もお疲れさまでした!)

はい、やりません!
ましてや、常任指揮者が嫌がるからといって、客演指揮者に振らせるなどはもってのほかです。
さらにその際「こういうポップスのセンスが要る曲はあの人にお願いしよう」などということも絶対致しません。^^;)

・・・そうですね、この曲はAwaydayと同系統ですよねえ。

投稿: 音源堂 | 2008年10月27日 (月) 01時11分

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