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2008年7月23日 (水)

序奏とファンタジア

Rex_mitchellIntroduction and Fantasia
R.ミッチェル
(Rex Mitchell 1929-2011)




明快にしてモダンな作風で知られるレックス・ミッチェルがその名を知らしめ、文字通り吹奏楽オリジナルのスタンダードとなった名作である。
この後、「コンサート・ミニアチュア」「海の歌」「大草原の歌」「スターフライト序曲」などでミッチェルは多くの吹奏楽ファンに愛される作曲家となった。特に本邦での人気が高い。
永い間ミッチェルの経歴等は詳細が不明とされていたが、2008年に立ち上がったミッチェルの公式HP(現在は閉鎖)によって、作品の紹介とともにポートレートとプロフィールが公開されている。

レックス・ミッチェルは1929年米国ペンシルヴァニア州ピッツバーグ生まれ、高校時代はオーボエのソロイストとして活躍していたという。
多くの学校で音楽教育に携わった一方で、ジャズやポップミュージックの分野ではクラリネット・サックス・キーボードのプレーヤーとして活躍。今でも作曲や指揮活動の傍らプレーヤーとしての活動は続けているそうで、手掛ける音楽ジャンルは幅広い。
作曲も吹奏楽作品が中心ではあるが、管弦楽や合唱、ジャズアンサンブルにも亘っており、またミッチェルのモダンな作風は、前述のプレーヤー経験が反映されているものといえよう。
後にクラリオン大学の音楽教育名誉教授となったミッチェルは、5人の子供と9人の孫に恵まれてペンシルヴァニア州オイルシティにて晩年を過ごし、惜しまれつつ2011年3月に他界している。

♪♪♪

「序奏とファンタジア」1970年の出版。幻想的な序奏に続いて、急-緩-急の主部が展開する単一楽章の楽曲である。全編にシンコペーションを効かせた生命感の溢れる曲想が大変魅力的な音楽だ。

序奏は穏かな低音のシンコペーションにのって、Marimbaのソロが主題を歌い出す。吹奏楽曲として大変斬新なオープニングである。
001「海の歌」のVibraphoneといい、こうした鍵盤楽器の活躍にはミッチェルの豊かなアイディアを感じさせる。

「序奏」が終わった途端にテンポが上がる。静かにシンコペーション楽句が応酬され徐々に音圧を拡大、さらにエキサイティングなパーカッション・ソリによるブリッジを経て、高らかな主題がTrp.に現われる。
002この快速な主部でサウンドはクリスタルのような質感と透明さを持ち、主題は時に快活に、或いはまた流麗にと表情を変えながら奏されていく。
そして中低音群の力強い旋律となって、迫力のある音風景を描く。ここでは一心に打ち込むXylophoneのアクセントも大変印象的である。
003
宙を切り裂いて急上昇するTrp.の楽句でクライマックスとなり、ブリッジが再現されて緩やかな中間部へ。中間部はミッチェル得意の夢見るような、抒情性を極めた楽想となる。
Photo_2AltoSax、Oboe、Hornと艶やかで美しいソロが奏されるが、さらにRubatoとなってからは、まるで宇宙空間を漂うよう。美しさにミステリアスさが加わって高揚し、感動的な音楽となっている。

再びAltoSaxのソロが還ってきて静かに中間部を終うと、あのMarimbaのソロが聴こえてくる。再度ブリッジを経て快速な主部を短く再現、ややテンポを落とした鮮烈なコーダに突入して、興奮のうちに全曲を閉じる。

♪♪♪

既にスタンダードとなった楽曲だが古くささはなく、中間部でのBassClarinetなども実に効果的に使用されており、作曲者の確かな手腕が感じられる作品。末永く演奏されて然るべきレパートリーである。

Cd音源は
汐澤 安彦cond.
東京シンフォニック・バンド

を推したい。メリハリのある演奏で、この曲の魅力を端的に伝えている。


    【その他の所有音源】
     小澤 俊朗 cond. 尚美ウインドオーケストラ
     木村 吉宏 cond. 広島ウインドオーケストラ


♪♪♪

ミッチェルのHPで紹介された楽曲の中には、未知のものがたくさん存在していた。
カプリス(Caprice for Band)、コラールとプロセッショナル(Chorale and Processional)、パスラーレとアレグロ(Pastrale and Allegro)、アルトサックスと吹奏楽のためのロマンス(Romance for A.Sax and Band)、管打楽器のための狂詩曲(Rhapsody for Winds and Percussion)、風の聖堂(Wind Cathedral)…。
重ね重ねも、優れた録音の「ミッチェル作品集」登場が待ち遠しい。

(Revised on 2014.4.12.)

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コメント

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Tom Mitchell (Rex Mitchell's son)

投稿: Tom Mitchell | 2008年9月10日 (水) 11時55分

Does anyone know if this work is being performed anywhere this summer or next fall?

Tom Mitchell
(Rex Mitchell's son)

投稿: | 2009年5月21日 (木) 10時50分

アメリカ・オハイオ州バトラー郡の日刊紙”Butler Eagle" 2011.3.9.の記事で、作曲者レックス・ミッチェルの訃報を目にしました。
http://www.legacy.com/obituaries/butlereagle/obituary.aspx?pid=149160497
この「序奏とファンタジア」を出稿後ほどなくミッチェル氏のご子息からコメントを頂戴し、若干のメールの遣り取りもさせていただいたのですが、その時点でミッチェル氏ご本人は既に体調充分ではないのかなと感じられました。ですから心配をしてはいたのですが、亡くなられたことに長く気付けず…。
何よりミッチェル作品の大ファンである私はもの凄くショックです。心よりご冥福をお祈りするとともに、彼の素敵な作品が末永く、そしてもっと幅広く演奏されますよう願って已みません。
-ぜひ作品集の新録音による再評価を!

投稿: 音源堂 | 2014年4月12日 (土) 01時44分

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