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2008年4月11日 (金)

アリランと赤とんぼ

Photo_2Arirang and Aka-Tonbo
高 昌帥
(Chan Su Koh 1970- )






「この作品は、東大阪朝鮮中学校吹奏楽部顧問の尹忠新先生より、先生が ご指導されている吹奏楽部をはじめとする大阪府下の朝鮮学校の各吹奏楽部が大阪府吹奏楽連盟に加盟して20年となる記念として、親善の意味も兼ねて、朝鮮半島の代表的民謡「アリラン」と山田耕筰作曲の童謡 「赤とんぼ」を使って吹奏楽曲に編曲できないかとの提案を受けて書かれたものです。
大阪は日本で最も多くの在日コリアンの住む都市でもあります。この作品が日本社会と在日コリアンとの、ひいては朝鮮半島とのほんの小さな掛け橋にでも成れば幸いです。」

(高 昌帥のコメント)

高 昌帥は、2002年度全日本吹奏楽コンクール課題曲「吹奏楽のためのラメント」で一躍その名を知らしめた作曲家。「コリアン・ダンス」「吹奏楽のための風景詩”陽が昇るとき”」など吹奏楽作品は多い。
この「アリランと赤とんぼ」(2003)は、有名な二つの旋律を題材に作られているが、構成感に優れ一つの楽曲として実によく纏まっている。変奏曲あるいは幻想曲としての「作曲」作品として捉えてもよいであろう。およそ5'30"の演奏時間の中で、サウンドや一つ一つの楽句、周到な設計に確かな手腕が感じられる。

♪♪♪

「アリラン」は朝鮮を代表する民謡の一つ。吹奏楽オリジナルの傑作である「朝鮮民謡の主題による変奏曲」(J.B.チャンス)の”主題”も「アリラン」である。

Photo_5宮塚 利雄 著 「アリランの誕生 -歌に刻まれた朝鮮民族の魂」(創知社)によれば、この歌の発祥には多くの説があることがわかる。研究者の調査により、50種類以上もの「アリラン」が存在し、歌詞に至っては2,000を超える種類が伝わっていることが判明しているそうだ。また「アリラン」という言葉自体の解釈もさまざまなのである。

一方、「赤とんぼ」は三木 露風(1889-1964)が1921年の童謡集「真珠島」で発表した歌詞に、本邦音楽史の巨人・山田 耕筰(1886-1965)が1927年に曲をつけたものである。詞の内容は、露風の幼少時代の風景(兵庫県龍野町)によるものとされる。

アリラン                    赤とんぼ

アリラン アリラン アラリヨ        夕焼小焼の 赤とんぼ
アリラン峠を越えて行く          負われて見たのは いつの日か

私を捨てて行かれる方は
十里も行けずに足が痛む         山の畑の桑の実を
                        小籠に摘んだは まぼろしか
アリラン アリラン アラリヨ
アリラン峠を越えて行く             十五で姐やは 嫁に行き
晴れ晴れとした空には星も多く      お里のたよりも 絶えはてた
我々の胸には夢も多い
                        夕焼小焼の 赤とんぼ
アリラン アリラン アラリヨ         とまっているよ 竿の先
アリラン峠を越えて行く
あそこ あの山が白頭山だが
冬至師走でも花ばかり咲く

上記に「アリラン」の代表的な歌詞、ならびに三木 露風による「赤とんぼ」の歌詞を掲載した。いずれも抒情的で美しく、そしてノスタルジーに溢れる歌。この二つが巧みに組み合わされている。

楽曲の内容は、高 昌帥自身の解説が端的に表している。
「曲は、”赤とんぼ”の旋律による前奏に始まり、チュンモリチャンダン (9拍目にアクセントがあるのが特徴の、遅い12/8拍子のリズムパターン-この作品では3/4拍子×4小節としてあります) の伴奏による”アリラン”が歌われ、移行部を経た後、パンサルプリチャンダン(速い3拍子のリズムパターン、2拍目の裏にアクセントがあります)を、吹奏楽でよく使われるシンコペーションのリズムにアレンジしたリズムに乗って、再び”赤とんぼ”が出てきます。
この”赤とんぼ”の諸モティーフを変奏・展開させながら、金管楽器によるコラールでクライマックスを迎えた後、最後は”アリラン”と”赤とんぼ”を同時に奏でながら静かに終えます。」

冒頭のOboeソロ、それに続くSaxophoneセクションの奏でる旋律からして、しみじみと美しい。この二つの「歌」自体が持っている力の大きさを、改めて感じさせられてしまう。
中間の「赤とんぼ」による展開部は、快活な子供たちのイメージで大変愛らしく、微笑ましい。やがてそれがテンションを高め、輝かしい色彩を放ちつつ金管中低音のエキサイティングな楽句に導かれて、スケールの大きなポリリズムとなってゆく。
2洵に鮮やか!曲中最大の聴き処である。

♪♪♪

楽譜は大阪府吹奏楽連盟から頒布されていたが、2008年春にBRAIN社から本格出版。愛すべきレパートリーとして、いよいよ全国的に演奏される機会が増えるであろう。
これに先立って、待望の初音源も発売となっている。

Photo_3齊藤 一郎cond.
東京佼成ウインドオーケストラ

本作の魅力が溢れる好演。「レッド・ライン・タンゴ」「伝説のアイルランド」など他の収録作品も興味深く、必聴の1枚といえよう。

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コメント

こんにちは。
「赤とんぼ」は、歌詞もメロディもよく名曲ですね。
「アリラン」もいいですね。

http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

投稿: kemukemu | 2008年5月 6日 (火) 19時27分

kemukemuさん、コメントを有難うございます。貴ブログも拝見致しました。モノクロの写真って素敵ですね!

投稿: 音源堂 | 2008年5月 6日 (火) 21時48分

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