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2008年2月11日 (月)

カンタベリー・コラール

Canterbury_cathedral Canterbury Chorale
J.ヴァン=デル=ロースト
(Jan Van der Roost  1956- )


作曲者がイギリス南東部にある世界遺産、カンタベリー大聖堂(Canterbury Cathedral/冒頭画像)を訪れた際の印象をもとに、ブラスバンド作品として1990年に作曲したもの。1993年には吹奏楽版も編まれ、大変優美な旋律と、壮大かつ壮麗な建築物を表す堂々たる骨格を持つ名曲として、広く愛されている。

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Canterbury_cathedral_4カンタベリー大聖堂はイギリス国教会の総本山。教会としては7世紀に建立されたものであるが、火災による焼失等もあり、現在の建物は1379年から1503年にかけて建造されたもの。イギリス初のゴシック様式(フランス式)の歴史的建造物である。

Canterbury_cathedral_7_21527年の国王ヘンリー8世の離婚問題に端を発し、イギリス教会はカトリックとの政諍状態に陥った。そしてメアリー1世(Bloody Mary)によるカトリック回帰運動を経て、続く国王エリザベス1世が1558年にイギリス国教会をスタートさせるのである。以降、イギリス国教会は”カトリック教会と袂を分かち、プロテスタントとも一線を画す”とされ、現在に至る。

Canterbury_cathedral_2カンタベリー大聖堂は、かような歴史的事実の舞台となった由緒ある建造物なのである。重厚な垂直性を特徴とするゴシック建築の威容が、その歴史的深みを一層強く感じさせる。



Canterbury_cathedral_3私自身実際に訪れたことはないが、写真からも外観の圧倒的なスケール、そして内部が気品と神聖さに満ちていることが窺い知れる。作曲者が強いインスピレーションを受けたのも然り、であろう。

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終始ゆっくり(=63のテンポ指定)とした非常に幅広い音楽で、そこには美しさ、暖かさ、敬虔さといった高次元の精神性を感じ取ることができよう。それが端的に現れているのが、冒頭から提示される旋律である。
Photo全編がこのムードに統一されており、高揚しても品位を失うことはない。

続いてまずHorn+Euph.、そしてSop.&Alt.Saxのアンサンブルで二度繰り返される変奏が大変印象的。各楽器の音色を生かして深遠さや雅さといったものを、夫々に描き出している。
2_3
そして最初のクライマックスは、Timp.のロールに導かれた輝かしいTrb.のソリで迎える。Trb.という楽器の高貴で神聖な側面を捉えた見事なものである。
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音楽はさらに壮大なクライマックスに向って、緩やかにテンションを上げていく。その様はまさに天に向ってひたすらに伸びていく大聖堂の建物そのものだ。
重厚でスケールの大きな堂々たるオルガン・サウンドに包まれたとき、脱俗の悦びにも包まれることであろう。

最後はEuph.のふくよかなSoliに見送られ、静かで深い響きが遠く消えてゆく。

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Jan_van_der_roost作曲者ヤン・ヴァン=デル=ローストベルギー生まれ。現在のヨーロッパを代表する吹奏楽作曲家のひとりで、本邦の音大で教鞭を執るなど日本とも馴染みは深い。「スパルタクス」「プスタ」「モンタニャールの詩」「アルセナール」など、ダイナミックな作風でヒット曲は数知れず。
彼の作品は構成力に優れており、現在のヨーロッパ作曲家がどうも冗長さに陥る傾向のある中で、そうした欠点を感じさせない貴重な存在である。

♪♪♪

推薦する音源は以下3つ。この曲の魅力を生かす、たっぷりとしたテンポと息の長いフレーズ感が好演の大前提となる。

Photo_2ノルベルト・ノジcond.
ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団

安定したサウンドと音色がスケールの大きな音楽を構築しており、多少の不揃いなど吹き飛ばす。特にTrp.のハイ・ノートの音色が気高い輝きを備えており、感動的。

Photo_3イーヴォ・ハデルマンcond.
ゼーレ聖セシーリア吹奏楽団

非常に丁寧な演奏。丹念に歌い上げ、また確りと構成を捉えている。Euph.の”黒い”音色は絶品であり、またエンディングの響きは最も本作品に相応しいものだと思う。

Photo_4ヤン・ヴァン=デル=ローストcond.
大阪市音楽団

自作自演Live盤。バスサックスとオルガンを加えた超豪華版であり、作曲者の意図・イメージを端的に伝える。但し表現が積極的な一方、この曲が要求するストイックさにはやや欠けるか。

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