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2008年2月 1日 (金)

朝鮮民謡の主題による変奏曲

PhotoVariations on a Korean Folk Song
J.B.チャンス
(John Barnes Chance
1932-1972)




その題名から「面白そうな曲だなぁ」と-。

1977年8月、佐賀県武雄市の西部吹奏楽コンクールに出場した中学1年生の私は、ほんの4ケ月前に初めて楽器を持ったばかり。幼い頃から音楽に特段の興味もなく、当時まだ残っていた軍隊的シゴキのおかげでコンクールのステージに上がってはいたが、「音楽を聴く」ということの意味すら解っていない子供であった。

先輩に「聴いときなさい」って薦められた沖縄の学校の出演順、広い会場が通路まで立見でいっぱい。演奏が終わると「やっぱり上手いねー」という声しきりなのだが、さっぱり判らない。
ウチとそんなに違うのかなあ?ウチだって県大会では金賞だったんだから-。

なんて思いながら、プログラムを見て次はどれ聴こうかなと見ていると・・・↑冒頭の曲目が眼に入った。うん、これ聴こうっと。沖縄の学校の時と違って会場は空いていて、席に座ることもできた。
アナウンスに続き演奏が始まる。課題曲はウチと同じディスコ・キッド。これも上手いのかどうか、さっぱり判らない。

この自由曲、どんな曲なんだろう?そう思った次の瞬間だった。美しいクラリネットのシャリュモー音域による旋律が歌い出す。
Photo_2



冒頭のF音からして既に、首の後ろの毛が逆立ってくるのをハッキリと認識した。そしてそれは旋律の高揚とともに激しさを増し、3小節目冒頭のD音で早くも頂点に達したのだ。何という快感!眼前の映像が歪むかのような恍惚感!
そう、私は音楽によるエクスタシーを初めて知ったのだった・・・!

その日から、私の音楽狂いがスタートする。寝ても醒めても音楽のことばかり考え、隙あらば?音楽を聴きまくる日々。
以後、30年以上も楽器を続けいろんな音楽を聴きまくっている私だが、どうしても吹奏楽に心惹かれるのは仕方のないことだろう。何しろ初めて音楽の快感を私にもたらしたのは「吹奏楽」なのだから・・・。

因みに、僅か3小節で私をイカせたこのバンド、見事全国大会初出場!凄い演奏は何にも知らないガキにも判る。そういうことである。

♪♪♪

1965年に作曲されたジョン・バーンズ・チャンスの代表作にして、1966年ABAオストワルド作曲賞受賞作。有名な朝鮮民謡「アリラン」の主題とその5つの変奏曲から成る。チャンスは朝鮮戦争従軍時代にこの旋律に触れたとされている。

 ※関連記事:「アリランと赤とんぼ」


クラリネットの美しいシャリュモーが歌いだす「主題」は、素朴な美しさを湛えたアンサンブルへ発展。Theme


木魚や銅鑼の活躍する快活な第1変奏Var1

反進行の主題をオーボエが奏でる優美な第2変奏では暖かいサウンドをバックにトランペットのソロも現れる。
Var2
一転して勇壮な行進曲調の第3変奏では金管群の煌きが聴きもの。Var3_2


ティンパニの密やかなビートを従えたコラール風の第4変奏
Var4

そして最後に打楽器群が繰り返すリズム・パターンに導かれてフーガ形式の第5変奏に突入する。
クライマックスではチャンス得意のポリリズムとなり、アリランが金管群によって高らかに鳴り響き、熱狂のうちに曲を閉じる。

♪♪♪

変奏曲であり全編に亘る統一感に包まれているが、一方で非常にコントラストに富んでおり、クライマックスへの運びも見事という他はない。また、多彩なパーカッションが登場し大活躍するさまは、打楽器奏者でもあったチャンスのまさに面目躍如といえよう。

予てからコンクールや演奏会で数多く取り上げられて来たが、作曲されてから30年以上が経過した時点で、また改めて評価が高まった感がある。

♪♪♪

録音は割と多く、それぞれに魅力のある演奏を聴かせてくれるが、私としては
ハリー・ピンチンcond.
エドモントン・ウインドアンサンブル

(冒頭画像参照)を推したい。
このバンドの透明感のあるサウンドに魅力があり、音楽作りに何ともいえない「品」を感じるのである。


  【その他の所有音源】

   汐澤 安彦cond. フィルハーモニア・ウインドアンサンブル
   フレデリック・フェネルcond. 東京佼成ウインドオーケストラ
   佐渡 裕cond. シエナウインドオーケストラ
   ユージン・コーポロンcond. ノーステキサス大学ウインドシンフォニー
   スティーヴン・スカイアーズcond. ノーザンイリノイ大学ウインドアンサンブル
   木村 吉宏cond.広島ウインドオーケストラ
   渡辺 光正cond.航空自衛隊航空中央音楽隊
   スティーヴン・スティールcond. イリノイ州立大学ウインドシンフォニー
   鈴木 孝佳cond. TADウインドシンフォニー(Live)
       現田 茂夫cond. 大阪市音楽団(Live)


( First Issued 2006.6.13. / 二つの旧記事を統合改訂 )

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コメント

表題の「朝鮮民謡」のスコアを見る機会が
ありましたのでコメント致します・笑。

 一言で言うと,「実によく書けている」。
各楽器の「いいとこ」を使っている。
音域的にも過不足なし。楽器のコンビ
ネーションも上手いし,ダブリングも秀逸。
「音域の衝突」も一カ所もない!。

 筆者も言及している冒頭のクラリネット,
この最低音から出るのが必然..というか,
ミソなのだ。「望郷」のメロディはこうで
なくてはならないと,思わせられる。
 その後の展開もはっきりと「設計図」
が出来ている。作者の「絵図」にはまって
いくのだ。
 惜しいのは,最終曲の金管の音域がやや
低いので,「今ひとつ盛り上がりに欠ける」
ということだが,まあ許容範囲,それを言う
のはヤボなのだろう。

 かつてはこういう楽譜が多かったように
思う。チヤンスの師であるクリフトン・
ウィリアムス然り,ロバート・ジェイガー,
フランシス・マクベスも...。
 私などはそういう「機能美」に憧れたもの
だった。それで吹奏楽が好きになったとさえ
言ってもいい。
 このたび,この曲のスコアを見て元気が出た
気がする。鼓舞・激励された・笑。
 こういう楽譜を書きたいものだ,と。
(2006-04-09 02:17:18)

投稿: 遅まきなが.. (アレンジャー氏) | 2006年6月13日 (火) 16時54分

御意!

私自身もウイリアムズ・ジェイガー・チャンス・マクベスといった作曲者の時代の作品が一番好きです!演奏者も聴衆も、そうしたいい音楽に接したいのです。
・・・その意味で近時のオリジナル作品は問題ありです。

ただ「”現在”作曲家」の方々はそういった先人たちの作品とはまた違うオリジナリティーを持たねばならないはずで、ここが難しいところ。みなさん苦労されているところでしょう。
一方で、その意味を履き違えた「行き当たりばったり」「粗悪品」「気分だけ」「意味不明」といった言葉で形容せざるを得ない「ダメな作品」が垂れ流されてくる現実に、私が失望感を覚えていることも事実です。

「オリジナリティー」のためには、例えばオーケストレーション上の”危うさ”が存在しても良いとは思います。敢えて狙うケースもあるでしょうからそれは勿論として、仮にそこまで考えていなくても"something special"があるのなら許せます。「ダメ」なのは「何もない」ヤツです。

持論ですが、音楽は「良い」か「悪い」かです。どんな形をしていてもいいから、「良い音楽」を聴きたい。それに研ぎ澄まされたオーケストレーションや、考え抜かれた構成感が備わっていたら、その作品はまさに「絶世の美女」です。

さらにその美女が、最先端のファッションを纏っていたとしたら・・・。

***

アレンジャー氏の作品(作曲・編曲とも)に、こうした「夢」を叶えていただきたい。そう期待します。エッジのたった、そして奏者のテンションをギリギリ引き上げていくような・・・どうぞ引続き宜しくお願いします!^^)
(2006-04-10 16:04:32)

投稿: 音源堂 | 2006年6月13日 (火) 16時56分

今年のコンクールで
この曲を吹きます
吹く方から言うと
指揮者の自己満足だけで
終わって欲しくない。
といった曲ですね

投稿: ららら | 2006年6月24日 (土) 14時50分

77年 西部大会(武雄市)で朝鮮民謡を当時演奏させて頂きましたFg担当の者です。
自分達の演奏した曲に素晴らしいコメントを頂きまして真に光栄です。ありがとうございます。思わず書き込みさせて頂きました。宣伝になりますがお許しください。
当時、指揮をされてた宝村先生が去年、お亡くなりになり、今年の11月に追悼の意味も込めて第1回宝村記念コンサートを奄美市で行います。メインは朝鮮民謡(予定)で当日は全国からOB、OGが集まって31年ぶりに演奏させて頂きます。殆どのメンバーが何十年かぶりに楽器を吹きます。酷い演奏になるかもしれませんが、皆、40過ぎてもやっぱり吹奏楽が好きなんだなと思ってます。突然の書き込み大変に申し訳ございません。(お許しください)

投稿: h.tama | 2008年6月22日 (日) 17時33分

h.tamaさん、コメントを有難うございます。お気遣いいただきまして恐縮です。
名瀬中の「朝鮮民謡」は私の音楽生活のルーツです。冒頭の「歌」には執念も感じました。理屈抜きに感動的な演奏でした。

当時のメンバーの皆さんや宝村先生には本当に感謝致しております。私に音楽の悦びを初めて教えて下さったのですから・・・。
改めまして、本当に有難うございました。

(本稿の前半部は、そもそもこのブログの最初の稿だったんですよ!私の音楽生活の原点ですから。最近になって「朝鮮民謡」の楽曲紹介と併せ統合・改訂し、再掲載したのです。)

▼▼▼

宝村先生のご訃報は大変残念であり、心からご冥福をお祈り申し上げたいと存じます。
しかしながら、教え子さんたちが集まって演奏する「朝鮮民謡」はきっと天にも届き、喜んでいただけるでしょう。そう考えますと、先生も本当にお幸せだと思います。演奏会のご成功をお祈りしております。

また拙ブログにお越し下さいね。コメントもぜひお気軽になさって下さいませ。

投稿: 音源堂 | 2008年6月22日 (日) 22時15分

ラッパsolo吹きました。
なんかしみじみした感じだけど、
気持ちよかったです

投稿: | 2009年3月25日 (水) 16時26分

ようこそお越し下さいました。コメントを有難うございます。
この曲のTrp.ソロを包み込むバックの暖かいサウンドが大好きです!

投稿: 音源堂 | 2009年3月25日 (水) 22時47分

ご無沙汰しています。
もうひとつの傑作「呪文と踊り」同様、大好きな曲です。

私がこの曲を知ったきっかけは音源堂様のそれと少し似てますね。
私の兄も打楽器を昔やってまして、所属していた高校が昭和53年度の熊本県大会(※1)で初の金賞・県代表を受賞し、記念に県大会実況盤LPを買ったのですが、そのなかに、他校(※2)の演奏によるこの曲がありました。

当時小学6年生だった私は兄の影響を受け、ぼちぼちと音楽に対する興味が芽生え始めていましたが、LPのジャケットにずらっと書かれている曲名を読んでもチンプンカンプン…。ただそのなかで「朝鮮民謡」というタイトルはド素人の私にもとっつき易く、実際に聴いてみても大変わかりやすくて、すぐにこの曲に惹きつけられてしまいました。

「呪文と踊り」同様、美しい木管の低音から始まるのがいいですね。
(余談ですが、最近書かれた吹奏楽曲には木管、特にクラリネットが美しく豊かに響く曲が少ないような気がします)
打楽器群やトランペットのソロがある中間部もいいですが、やっぱりこの曲の最大の聴きどころは後半の小太鼓の速いソロ~終曲までかなと。

緊張感とスピード感を保った小太鼓の上にバンド全体が乗っかるようにゆったりと「アリラン」の旋律を歌うこの場面が私は本当に大好きで、この曲が未だに吹奏楽の主要なレパートリーとして演奏され続けている理由がわかるような気がします。

私自身の実演も2001年の池袋のあの楽団で実現しました。
しかも一番やりたかった小太鼓!学生時代からの夢が叶った瞬間でした。
(ちなみに池袋某団は最近団名を改名しました。ご存じでしたか?)

---
(※1)課題曲「ジュビラーテ」 / 自由曲「チェルシー組曲」
(※2)たぶん九州学院高校だったような気がします…。

投稿: HARA-P | 2012年4月20日 (金) 13時34分

HARA-Pさん、どうもです。お元気ですか?叩いてますか?^^)
「朝鮮民謡の主題による変奏曲」はやはり”名曲”ですよね。ちょうどこの曲のことをもっと詳しく書き直したいと思っていたところでした。近いうちに改訂したいと思ってます☆

またコメントをお願いします。それと、いつかまた一緒に演奏したいですね♪

投稿: 音源堂 | 2012年4月20日 (金) 20時56分

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