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2007年11月22日 (木)

トロンボーン協奏曲/N.リムスキー=コルサコフ

PhotoConcerto for Trombone and Military Band
N.リムスキー=コルサコフ
(Nikolay Andreyevich
Rimsky-Korsakov 1844-1908)
I.  Allegro vivace
II. Andante cantabile
III. Allegro - Allegretto



「シェエラザード」「スペイン綺想曲」「序曲ロシアの復活祭」等で有名なロシアの大作曲家リムスキー=コルサコフ。ロシア国民楽派”5人組”の一人であり、自作にとどまらずムソルグスキーの「禿山の一夜」、ボロディンの「イーゴリ公」等を補作し世に出した功績も大きく、その名声を一層高めている。これらのレパートリーは吹奏楽界でも愛され、そして重要なものとなっていることはご存知の通り。

そのリムスキー=コルサコフだが、吹奏楽伴奏による”協奏曲”を3曲遺している。
「グリンカの主題によるオーボエのための変奏曲」(1878)
「クラリネットのための小協奏曲」(1878)
「トロンボーン協奏曲」(1877)
である。

♪♪♪

リムスキー=コルサコフは貴族の家系に生まれ、実は音楽家である以前に海軍軍人であった。ペテルブルグの海軍兵学校に入学したのが12歳(1856)、その後4年に亘る遠洋航海なども経ながら、作曲活動を続けたという。その作品が評価され、1871年には海軍大尉に在職のまま、ペテルブルグ音楽院の作曲法・管弦楽法の教授に任命されている。

そして1873-1884年の間、海軍軍楽隊監督を務めたことから、吹奏楽との接点が生まれた。この軍楽隊指導経験はリムスキー=コルサコフの管楽器用法に更に磨きをかけたとされ、これによって彼は初期作品のオーケストレーションを見直すことになったという。

尤も、この海軍軍楽隊時代に作曲された3つの”協奏曲”作品は、長い間忘れ去られていた。
リムスキー=コルサコフ自身、初演時の様子について
「独奏者は喝采を得たけれども、作品自体が顧みられることはなかった。聴衆たちときたら、音楽演奏の場において未だに作曲者の名前にも、作品自体のいずれにも興味がなかったんだよ。」
と自嘲気味なコメントを残しているという。

本稿で採上げた「トロンボーン協奏曲」も1951年に再発見後、W.ナリーンとD.シューマンがアメリカ式吹奏楽編成に改め、これが1952年にゴールドマンバンドで改訂初演されてから、漸く広く知られるようになったものである。

※参考文献
新音楽辞典/音楽之友社(執筆:井上 和男)
David Cannata による本作品に関する解説


♪♪♪

当時の評価はともあれ、この「トロンボーン協奏曲」は傑作である。リムスキー=コルサコフがかような作品を吹奏楽界に(或いはトロンボーンに)遺してくれたことは、洵に幸運と言うほかない。

まず第一に、旋律が素晴らしい!そして簡潔な構成にして、実に明快な音楽であり、トロンボーンという楽器の魅力を素朴に、実直に伝えてくれる。
ある時は「堂々と」「力強く」、またある時は「懐深く」「暖かく」、或いはまた「軽妙に」「剽軽に」と表情を変えるこの楽器の特性を、実に巧みに引き出しているのだ。

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
1一斉に駆出していくような序奏に続き、すぐさまトロンボーンのソロが始まる。本作品中、最も有名な旋律であり(吹奏楽界のトロンボーン奏者がよく「吹いてみては堂に入る」フレーズ^^)、素朴だが品格がある。
この楽章は、力強く爽快な音楽で一気に走り抜けてゆく。

※尚、上掲した譜例の冒頭は、オクターブ下で演奏されているもの
    しか聴いたことがない。


第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
2トロンボーンの柔らかな音色を存分に生かしている。抒情的なバラードでありながら決して眼を伏せるようなムードではなく、実にスケールが大きく、その暖かさに抱かれ、包み込まれていくよう。
終盤、毅然としたフレーズを響かせてカデンツァ、そのままアタッカで第3楽章に突入する。

第3楽章 アレグロ-アレグレット
3トランペットのファンファーレ風の楽句に続いて、トロンボーン・ソロのリップ・トリルにより”マーチ”が始まる。ここは大変リズミックで軽妙な楽想である。
そして最後の見せ場、規模の大きなトロンボーンのカデンツァがやってくる!ソロイストが存分に自らの音を聴かせる”男前”ぶりが聴きもの。
一旦静まって伴奏が入り、徐々に力感を漲らせるトロンボーン・ソロが冒頭のファンファーレ再現を呼び込んで、堂々たるフルバンドのサウンドで締めくくる。

♪♪♪

音源は以下を推したい。

Photo_2ミシェル・ベッケ(Michel Becquet)
+ ノルベルト・ノジ cond.
ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団

素朴で暖かいこの協奏曲の魅力を端的に伝える演奏。


Michelbecquet_2名手ベッケ(左画像)は近時フランス空軍バンドとの録音もリリースしているが、このギィデ盤の方がより素朴で私の好みに合う。

☆☆☆




現代屈指のヴィルトゥオーゾ、クリスチャン・リンドベルイの演奏も紹介しておこう。

Photoクリスチャン・リンドベルイ
(Christian Lindberg)
+今村 能 cond.
東京佼成ウインドオーケストラ

巧い!確かに巧いし表現は実に積極的。しかし”やり過ぎ”感は否めない。
(特に最後のカデンツァで全楽章を総括するなど、ややあざと過ぎではないか?)
技巧も協奏曲の楽しみのうちであるから、”アリ”だとは思うが・・・この曲の場合、素朴な魅力をストレートに伝える演奏の方が私の好みである。

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コメント

この曲で私にとって忘れられないのが旧ソ連国防省吹奏楽団演奏(ヴィクトル・バタショフTb)のものです。明るい音色と2楽章の柔らかくて美しい音色は忘れられません。やはりロシアの曲はロシアの楽団による演奏で聴くと感慨深いですね。

この音源はMBレコードさんで入手出来そうですが、LP1枚だけの通販は取り扱わないとのことで難しい所。一方で私は楽譜を最近輸入代行業者に頼んで手配している最中ですが、品切れ状態でいつになるやら・・・(-_-;)。「ひょっとしたら入らないかも」と業者が言っているので半分諦めモードです。

投稿: mitakasyun | 2007年11月24日 (土) 11時24分

確かメロディア・レーベルから発売されていた「華麗なるロシアン・ブラス」と同音源ですよね。当時日本で入手可能なリムスキー協奏曲の音源はこれしかなかったですから、私も聴いておりましたよ。
(それ以前に「へぇー、トロンボーンにも協奏曲ってあるんだ!」と素朴に思った中学生の頃でした。)

CD化されたものをまだ私も見たことがありませんし、本当に永らく聴いてません。mitakasyunさんのカキコミを拝見して、無性に聴きたくなってきました!

投稿: h-ongendo1964 | 2007年11月24日 (土) 15時13分

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