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2007年8月 9日 (木)

ナイルの守り

Alford_portrait002Army of the Nile
K.J.アルフォード
Kenneth Joseph Alford
18811945


ケネス・アルフォードといえば、私は彼の”短調のマーチ”が好きだ。最高傑作とされる「ボギー大佐」より、寧ろ「消えた軍隊」とか「銃声」とか…。
そして何よりこの「ナイルの守り」(1941年)が一番好きだ。
憂いや哀愁に満ちた、と称されるアルフォードの短調マーチ。-私はその”引き締まった”表情に深い魅力を感じて已まない。


♪♪♪


”ケネス・アルフォード”というのはペンネームであり、彼の本名はフレデリック・ジョゼフ・リケッツ(Fredrick Joseph Rickettsという。
イギリス/ロンドンに生まれたアルフォードは少年兵として軍に入隊したのち、現在の王立軍楽学校(
Royal Military School of Music)の前身である機関で教育を受け、以来軍楽隊一筋。1944年の退役時は海兵隊プリマス基地軍楽隊の隊長であった。

  ※”Alford”の発音は実際には”オルフォード”が近いようだが、本稿では
    本邦で既に永らく定着している”アルフォード”を使用している。


アルフォードは、退役を迎える職場となったこのプリマス・バンドを指揮して
1939年に自作のマーチを中心に録音しているが、そこでのクレジットは
The Band of HM Royal Marines Plymouth Division
Conducted by Major F. J. Ricketts RM

の通り、本名となっている。(
Major=”少佐”である。)

Alford002現在この演奏はCDで復刻(左画像
)しており、貴重なアルフォードの自作自演を聴くことができる。
残念ながら本録音時点では未だ作曲されていないため、「ナイルの守り」は収録されていないが、年代の割には録音も良く、演奏もなかなかのもの。

アルフォードのファンならば、ぜひ聴いておきたい。


♪♪♪

「ナイルの守り」はアルフォード最晩年の作品で、第二次世界大戦における北アフリカ戦線の司令官・ウェーヴェル将軍に捧げられている。
「連合国勝利のターニング・ポイントの一つとなったイギリス軍の勝利を讃えたもの」との解説もあるが、北アフリカはイギリス軍がその後約2年に亘り、かのドイツ軍/ロンメル将軍と文字通りの死闘を繰り広げた地域であり、短調の第1マーチが示唆するものは、単なる祝勝ではないような気がする。

  ※アーチボルド・ウェーヴェル将軍(Archibald Percival Wavell) による枢軸国軍
    に対する攻勢で、所謂「コンパス作戦」と呼ばれるもの。当時のイギリス領
       エジプトに対するイタリア軍侵攻を撃退するとともに、逆にリビアへ反攻して
    イタリア軍に大打撃を与えることに成功した。
    しかしながらこの結果、ドイツはロンメル将軍率いるドイツアフリカ軍団を派遣し、
       以降北アフリカ戦線は枢軸国と連合国のシーソーゲームの舞台となっていく。


♪♪♪

序奏からして引き締まった表情を見せるが、続くその短調の第1マーチこそが「ナイルの守り」の白眉である。
Photo
第1マーチの繰返し前のスネア・ロールの切なさ。そして、この旋律に絡むユーフォニアムとサックスの対旋律がまたこの上なく抒情的… 堪らない!

  ※日本人がアルフォードに憧れてメロディアスな短調マーチを書くと、なぜか
     「演歌」になってしまう。そう考えると、本当にアルフォードは偉大だと思う。


長調に転じ、活力と輝きを放つ第2マーチを経て、クラリネット低音域の優美な音色が映えるトリオへ。遠くからは進軍ラッパの音も聴こえる。
Trio輝かしく重厚なファンファーレを挟んで、トリオの旋律はいよいよ逞しさを強め、オブリガートに彩られながら高らかに歌い上げられ、堂々たるエンディングを迎える。

♪♪♪

音源は
Alford001ヴィヴィアン・ダン中佐cond.
ロイヤル・マリーンズ・バンド

の演奏をお薦めしたい。ロイヤル・マリーンズ・バンドの誇る”マーチの巧さ”はここでも存分に発揮されている。
第1マーチの対旋律に現れる”黒々とした”ユーフォニアムの音色にも是非注目されたい。これもロイヤル・マリーンズの誇る特長の一つなのである。

【ヴィヴィアン・ダン中佐&ロイヤル・マリーンズ・バンド】Alford003



Alford005また、
汐澤 安彦cond.
東京アカデミック・ウインドオーケストラ

の演奏も優れた音色と引き締まったテンポ設定で大変素晴らしく、併せてお薦めしたい。



  ※「アルフォード自作自演盤」ならびに「推薦盤(ヴィヴィアン・ダン中佐cond.
    ロイヤル・マリーンズ・バンド)」はいずれも
MBレコードで購入させていただ
    きました。ご親切に色々と教えて下さった同店オーナーの渡辺氏には、心
        から感謝申し上げます。


  【その他の所有音源】
     フレデリック・フェネルcond. 東京佼成ウインドオーケストラ
     ジョン・メイソンcond. ロイヤル・マリーンズ・バンド
     バリー・ジョンソンcond. ラマール大学シンフォニックバンド
     平井 哲三郎cond. フィルハーモニア・ウインドアンサンブル
     朝比奈 隆cond. 大阪市音楽団 (Live)
     ユージン・コーポロンcond. ノーステキサス・ウインドシンフォニー
     ティモシー・レアcond. テキサスA&M大学シンフォニックバンド
     武田 晃cond. 陸上自衛隊中央音楽隊


(Revised on 2011.3.26.)

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コメント

アルフォード、イギリスのマーチ王ですね。
彼の曲は素晴らしいです。私の中ではスーザは取っつきやすく、アルフォードは大人の渋みのあるマーチと言った印象を持っています。とはいえ実際に演奏したことのあるのは「ボギー大佐」と「銃声」だけですが(汗)。

「ナイルの守り」、一度は演奏してみたかったです。

投稿: mitakasyun | 2007年9月 3日 (月) 23時27分

実は・・・私も「ナイルの守り」演奏したことないんデス。
何度かチャンスがあったんですけど、未だに。まだチャンスはあると思いますので、絶対演奏したいです!

投稿: 音源堂 | 2007年9月 4日 (火) 12時15分

ナイルの守りはオルフォードの傑作ですね
ダンの指揮による演奏に並ぶとすると、阪急百貨店でしょうか
ロイヤルマリーンズのユーフォの美しさは白眉ですが
奏者は多分神父さんです
彼の演奏の美しさは、自分が好きなユーフォの代表です
バリトンの名手だった、k.キングの演奏を聴いてみたいです・・バリトン/ユーフォのがんばらなければならない名曲マーチがいっぱい残されていますので、ロイヤルマリーンズとか英国系bandの演奏で楽しみましょう

投稿: bandlover | 2009年8月 7日 (金) 17時38分

これまで私が身近に接したEuph.奏者たちの中に、ロイヤルマリーンズ系Euph.の信奉者はいません。それどころか、あまり好きではないようでした。
私個人の好みでは、あの”黒々とした艶”のある音色がとにかく堪らないのですが…。

投稿: 音源堂 | 2009年8月 8日 (土) 10時21分

音源堂さんのコメント、黒々とした艶のある音色、が無性に聴きたくてロイヤルマリーンズを買い漁ってしまいました。アルフォード最高です!ユーフォニアムの真骨頂!ユーフォニアムのためのマーチですね。

投稿: 玉社 | 2015年6月 6日 (土) 02時44分

玉社さん、ようこそお越し下さいました!そしてコメントを有難うございます。あの黒いビロードのような音色にハマられたようで、ご同慶の至りです!^^)
The Jaguar(Goff Richards)などもロイヤルマリーンズが演奏するとEuphoniumの素敵な音色が存分に聴けますよ♪まだお聴きでなければぜひ!

投稿: 音源堂 | 2015年6月 6日 (土) 11時37分

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