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2007年7月12日 (木)

第2組曲 R.E.ジェイガー

Photo_407Second Suite for Band
R.E.ジェイガー
Robert E. Jager 1939- )
I. Fanfare II. Ballade III. Scherzo



20thcentury_harmony_1この「第2組曲」は、ロバード・ジェイガーV.パーシケッティVincent Persichetti 19151987の著した20世紀の和声学」(右画像/Twentieth Century Harmony Creative Aspects and Practice W. W. Norton 1961)を読み、その内容を実践する意図で作曲したものであり、それゆえに多くの複合和音が使用されているとのことである。
(秋山
紀夫氏の解説による)

21したがってこの作品は習作ともいえるものだが、作曲当時
1965年)の吹奏楽曲として、大変モダンな曲想、かつアグレッシブな取り組みが見られる。

上述のように”和声的な実験”を作曲のバックグラウンドに持ちながら、ジェイガーは「色彩」「コントラスト」「リズムの面白さ」に意を払ったとしており、印象的なフレーズや美しい旋律、心躍らせるエキサイティングさに溢れた洵に魅力的な作品。各楽章が絶妙の対比を示しながらも、統一感も兼ね備えているのだ。


♪♪♪


ジェイガー自身が各楽章ごとにコメント(「 」)しており、それと併せて内容をご紹介する。

I.ファンファーレ
「第1楽章はやや抑制された荘重さを持った”ファンファーレ”。全曲を通じても同様であるが、ここでは「色彩」と「コントラスト」を強調している。高音楽器と低音楽器、そして木管楽器と金管楽器との「コントラスト」が興味深く感じられることと思う。「色彩」の強調という点では、中間部に現れるホルンの使い方をその良い例として挙げたい。」

低音楽器の重厚な
G音に載って、Andante maestoso 84)のファンファーレが始まる。ジェイガーのコメントにある通り、大仰ではないが”透明感のある高貴さ”を湛えた音楽である。これが今度はTrb.Euph.Tubaに引き継がれるが、カウンターの高音楽器群との対比が実に見事。
22低音とTimp.のロールに導かれて一旦静まり、4声のホルンによるフレーズ・・・。ジェイガーが”この色彩を見てくれ”と言った部分であり、神秘的なムードに満ちる。
23再び全合奏となりクライマックスを形成するが、ドラをはじめとする打楽器の使い方も大変効果的で、幕開けにふさわしい爽やかな音楽となっている。

II.バラード
「第
2楽章でも、「色彩」は重要な要素である。短い序奏に引続いて、コールアングレの大変抒情的なソロとなる。その後に続く旋律は全てこのソロが奏する主題が発展したもの。柔らかな不協和音や、あまり一般的でない楽器の組合せを使用しながらこの”バラード”は進んでいくが、最後はコールアングレのソロが戻ってきて曲を閉じる。」

Lento cantabile 48)のリリカルな緩舒楽章、Bm7の陰のある幻想的な響きに続き、クラリネット~コールアングレ~フルート~ホルン~アルトサックス~オーボエと次々にソロが現れる、各楽器の音色や特性を存分に生かした音楽である。
24テュッテイで一旦高揚したのち、再び静まって神秘さを増し、さらにEuph.Hornとソロが続く。Hornソロの部分ではファゴットとバスクラのカウンターが大変斬新で、通常の吹奏楽ではあまり聴かれることのない響き。
25続く
テュッティでやや足取りを速め、堂々たるサウンドのクライマックス!これがすぅっと静まってコールアングレのソロが戻り、音楽は遠くへ消えてゆく。

III.スケルツォ
「第3楽章”スケルツォ”では「色彩」「コントラスト」に「リズム」の要素を加えている。まずこの曲のリズムの特質を打楽器群が提示し、ファゴットによって主要主題が奏される。これがEuph.によって繰り返されたのち、Muted Trb.をバックに従えたホルンによる主題の変奏。主要主題はさらに木管楽器群で反復されるが、ほどなくクラリネットによる第2の主題へと繋がり、クライマックスを築く。そしてすぐさま主要主題に基く金管群のリズミックな伴奏へと移り、コルネットとホルンが主題の変奏を続け、2度目のクライマックス!
打楽器群によるビルド・アップに続いて全合奏で主要主題を反復し、全楽器による
2つの強力な”クラッシュ”(124小節目:Dm64分音符×2)のあと、”ファンファーレ”が再現される。第1楽章の短い抜粋であるファンファーレだが、これが音楽に推進力を与え、”スケルツォ”に戻って輝かしいエンディングをもたらすのだ。」

Vivace 160)、ダイナミックでエキサイティングな最終楽章。緊迫感あるスリリングな表情も持つ。
26最終盤、興奮の頂点で冒頭のファンファーレが爽快なドラの響きとともに戻ってくる部分、そしてこれに続く一気呵成のエンディングはまさに圧巻!

♪♪♪

本邦では、早くも
1966年に関西学院大が全日本吹奏楽コンクールで演奏し優勝、同年第3位の日本大もこの曲を採り上げている。そして1971年に福岡大学が同じく全日本吹奏楽コンクールで演奏し金賞受賞翌年以降九州を中心にこの曲が大変流行ったという歴史がある。
このように早くから人気のあった楽曲であったが、最近では演奏機会が激減…。
しかしながら、去る
2007.3.21.NHK-FM 「今日は一日吹奏楽三昧」にて東フィル管打楽器セクションによる新録音が披露されるなど、再評価の動きがある。

この曲の作曲当時、吹奏楽のオリジナル曲において使用される和音や楽器のコンビネーションは相当限定されていたのであろう。現在となってはそう珍しくはなくなった手法も、吹奏楽に可能性を求めたジェイガーら先達によって切り開かれてきたわけだ。

この「第
2組曲」はそんなジェイガーの意欲と自負を感じさせる。しかしそれを抜きにしても、美しい各楽器の音色が魅力的な旋律を奏でつつ、感動的な音楽の流れを生み出しているさまを間違いなく聴くことができる。純粋に素敵な音楽として、お奨めしたい。

♪♪♪


音源は朝比奈 cond. 大阪市音楽団の演奏(冒頭画像)を。
ジェイガーの意図(「色彩」「コントラスト」「リズムの面白さ」)が確りと表現された演奏で素晴らしい。

(Revised on 2008.10.19.)

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コメント

朝比奈隆指揮、大阪市音楽団の演奏でこの「第二組曲」でしたら、ひょっとして1975年の録音ではないでしょうか?私はLPでこれを所持しておりますが恐らく同じ物ではないかと思われます。タイトルは「吹奏楽オリジナル名曲集Vol3」です。

冒頭のファンファーレは非常に印象的でした。
吹奏楽部時代、ジェイガーの曲と言えば当時課題曲でもあった「ジュビラーテ」と「交響曲」が特に有名でしたが、彼の曲は十分練られた構成で綺麗に聴かせてくれるメロディーが秀逸だと思います。

私事ですが「交響曲4楽章」の楽譜を見たとき、その見づらさと記譜ミスの多さに驚いた物でしたが、この「第二組曲」は印刷もしっかりして良さそうですね(笑)。

投稿: mitakasyun | 2007年7月19日 (木) 21時21分

mitakasyunさん、どうもです。仕事と異動発令とでバタバタしまして、遅レスとなり失礼しました。

そうです、「吹奏楽オリジナル名曲集Vol3」と同じ演奏で間違いありません。(このLP、私も持っております。^^)
杉本 幸一氏もこの「第2組曲」は大変勉強になる作品だったと述懐しておりました。冒頭からしてスゴい、と。ジェイガーの作品は本当に確りと創られていますよね。私、大好きです!

投稿: 音源堂 | 2007年7月21日 (土) 21時29分

ご好意に甘えて早速お邪魔させていただきます。
この曲は本当に思いでの多い一曲です。
中一の時に先輩方が九州大会で演奏した曲でした。
特にスケルツォでのマリンバ、テナーのソロなど
吹奏楽初心者の私のココロを大きく揺さぶって
くれました。音楽的な構成などを理解しては
いなかったのですが、フィナーレに向けての
構成など、管弦楽とはまた違うブラスでの
荘厳な響を未だに忘れることが出来ません。
私の中での名曲NO1は間違いなくこの曲だと
思います。

投稿: lr6ag | 2010年8月23日 (月) 22時55分

ジェイガーの第2組曲、本当に素晴らしい曲ですよね!私もとっても大好きです。
美しく、力強く、そして品があって-。
なかなかお目にかかれない傑作だと思っております。今ではほとんど演奏されませんが、とっても惜しいですね。

投稿: 音源堂 | 2010年8月25日 (水) 01時10分

こんにちは。はじめまして!
実は、所属している吹奏楽団で演奏したいと思い
楽譜を探しているのですが
どうにも、手に入りません
他の方も書いていますが
私もこの曲が大好きなのです

今度の5月に演奏するつもりで
選曲会議などでも根回しをして
やる!って決まったのはいいのですが
楽譜が・・・見つかりません

藁にもすがるつもりでのお願いです
何か、策をご教示していただけないかと
こちらに書きませていただきました
よろしくお願いいたします!!

投稿: はろぉ | 2011年1月11日 (火) 13時44分

はろぉさん、ようこそお越し下さいました。

ジェイガーの第2組曲は絶版譜ですね…。
この状況において、この場で私が申し上げられることはたった一つだけです。
「民音音楽博物館」(東京・JR信濃町駅)をご存知でしょうか。こちらに「第2組曲」が所蔵されています。そちらを訪ねてみては如何でしょうか。

▽▽▽

Volkwein社はこの曲の他にも、私の大好きなジェイガーの作品を出版していますが、今ではどれも入手不能なようです。同社は今でも音楽関係の業務自体は続けているようなのですが、ジェイガー作品の扱いは一体どうなっているのでしょうか?とても残念に思います。

このBlogでは一切の営利を排除した上で、新旧問わず私の大好きな音楽を紹介しております。このBlogで採り上げることが、こうした優れた絶版作品の再評価、そして再版に少しでもつながれば…と心から願うばかりです。

投稿: 音源堂 | 2011年1月11日 (火) 21時47分

こんにちは。

中学時代、始めて買った吹奏楽のLPにこの曲が入っていました。
他の曲目当てだったのですが、すっかりこの曲にはまってしまいました。
当時はテューバをやっていましたが、この第2楽章バラードを聴き、すっかりオーボエの魅力のとりつかれてしまい、大学に入ってからようやくオーボエをやることが出来ました。

死ぬまでに、いつかこの曲を演奏したいと思っているのですが、楽譜が、、、、

民音まで出かけることも至難の業です。
でもいつか行きます。


オーボエもイングリッシュホルンもどちらも魅力的なのですが、一人で両方は持ち替えができなかったような、、、。
大学時代、倉庫にこの楽譜があったのですが、抜け落ちていたパートがあったりして、そのまま放置してきてしまいました。残念です。
フルスコアだけでもあればよかったのですが。

投稿: とらまる | 2011年6月18日 (土) 19時10分

とらまるさん、どーもです☆

第2楽章バラードは吹奏楽曲として”突き抜けて”おり、演奏するのは実に難しい=”危ない”曲だと感じます。薄いオーケストレーションでソロ・ワークが続く部分が多く、しかも柔軟にルバートを利かせないと音楽にならないのですから…厄介です。

でも、素晴らしい楽曲!美しさと幻想性、遠近感と色彩の移り変わりを、管楽合奏の機能を使い尽くして充満させています。-大傑作ですよね。

投稿: 音源堂 | 2011年6月19日 (日) 10時13分

中学生時代にコンクールで演奏し九州大会に出場しました。もう20数年も前ですが(笑)
第一・第三楽章ともに、これ程引き込まれそうな響きをかもし出す曲もそうそうないと思います。とても大好きな曲です。
コンクールでは当時高一のJ先輩が『ブラボー!』と叫んでくれたのもこの曲のいい思い出です。

何気にネットで検索していたらとても懐かしくなり、コメントさせてもらいました。

投稿: たー | 2011年7月 6日 (水) 11時46分

たーさん、ようこそお越し下さいました。コメントもいただき有難うございます。
いよいよ今年もコンクールの季節、さまざまな想い出がよみがえって参ります。別にコンクールばかりではなく、音楽とともにある想い出は私にとってかけがえのないものばかりです。これから先も、そういった想い出を一つでも多く作っていきたいものです。

またぜひお越し下さいね☆

投稿: 音源堂 | 2011年7月 7日 (木) 00時53分

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