« 春になって、王たちが戦いに出るに及んで | トップページ | ヨハネスブルグ祝祭序曲 »

2007年6月22日 (金)

チェルシー組曲

Photo_2Chelsea Suite
I.   Intrada
II.  Canzone
III. Allegro

R.ティルマン
Ronald Thielman 1936- )


私が吹奏楽に出会ったころ、吹奏楽の最新の動向を教えてくれるものはCBSソニーのアナログレコードだった。当時、CBSソニーは全日本吹奏楽コンクールの実況録音(永らく金賞受賞団体、およびそれに準じる団体のみを収録していた)を発売するほか、毎春新譜を録音したLPも発売していたのだ。私の世代ならびにそれ以前の方は、冒頭画像にあるLPジャケットをご覧になると、懐かしさがこみあげてくるのではないだろうか?
この頃、吹奏楽の録音はマーチを除けば本当に少なかった。現在も、他ジャンルと比較して充分な音源があるとはいえない吹奏楽であるが、当時の希少さは現在からは想像もつかないだろう。

♪♪♪

Photo「チェルシー組曲」(
1965年)はこのCBSソニーのLPシリーズの草創期、”ダイナミック・バンド・コンサート”シリーズのVol.2に収録されたことで、人口に膾炙した作品である。当時は演奏される機会も多く、大変人気の高い楽曲であった。
全体でも
6分強の短い3つの楽章から成る作品で、確かに旋法は古めかしいムードだが、サウンドはなかなか鮮やかだし、パーカッション・ソリをフィーチャーしたり、活気溢れるリズム・パターンを使用したりと意外にモダン。もはや忘れ去られたレパートリーとなった感があるが、それは不当な評価であり、名曲として永く大事にしたい。一度聴いたらその素敵さは理解いただけることと思う。

I. イントラーダ
冒頭から、
Trp.の華やかで快活な旋律が印象的!
1_6この旋律が全曲を支配しており、またこの部分の勇壮なバッキングも聴きものである。続いて現れる古風な旋律はクラリネット低音域の音色を生かしており、華麗な
Trp.の旋律と好対照を成す。

II. カンツォーネ
広くイタリア歌曲を表す表題を持つこの楽章は、大変抒情的な音楽。”ダンテやペトラルカによって始められたとされるイタリアの抒情詩”というカンツォーネ本来の意味が込められているように思う。緩やかなシンコペーションの伴奏にのって木管楽器が歌いだす旋律は、美しくロマンティック。
2_3伴奏も効果的に音楽を高揚させ、クライマックスを形成する。


III. アレグロ
一転、低音楽器のマーチ風な伴奏に乗って冒頭の旋律が変奏され、
HornTrp.、木管と受け継がれていく。やがてテンポを緩め雄大なムードとなり、感傷的な旋律が現れて一旦静まるが、パーカッション・ソリに導かれて冒頭部分が力強く再現される。
そして、モダンなバッキングに乗って登場する
Trp.の華麗なソロこそは、全曲の白眉であろう。
3_3勇壮さと重厚さを増して終結部へ。ここでも
Trp.の高音がサウンドにテンションを与え、その輝かしさのうちに曲を閉じる。

♪♪♪

作曲者ロナルド・ティルマンはアメリカ/シカゴの生まれで、作曲とTrb.を専攻して学位を得、作曲の傍ら教育者として音楽に携わってきた人物である。特に19691995年に亘りNew Mexico State University にて教鞭を取った記録があり、これが彼の代表的なキャリアとなっているようだ。
(尚、「ジールマン」との日本語表記もあったが、「チェルシー組曲」のスコアを確認したところ”Tillman"と発音するとの注記がある。)

この「チェルシー組曲」の作曲意図等に詳らかな記録は見当たらない。アメリカの高校生バンドのために作曲された作品だが、有名なイギリス/ロンドン中心部のチェルシー地区に因んだものか、はたまたそのチェルシーの名をとったアメリカの町に因むものかなど、詳細は不明。
ティルマンの他の作品としては
Stonehenge Festivada Burst of Stars March などが確認されているが、音源がなくこれも詳細は不明。辛うじて Dedication and Dance”という作品が、出版元TRN社のHPにて試聴可能である。

♪♪♪

音源は永くCD化されないままであった。(これがこの曲の認知を著しく低下させてきた要因といえよう。)
飯吉 靖彦(汐澤 安彦)cond.
フィルハーモニア・ウインド・アンサンブル

の演奏(LP/冒頭画像)が私の愛聴盤である。

  ※出版社HPにこの演奏がサンプル音源としてupされていたのでご案内する。
    → Ludwig Masters社


BRAIN
社のBCLシリーズでは、いの一番に録音されて然るべき曲の一つだったと思うのだが、漸く同シリーズによるCD化が2009年12月に実現!

Bocd7433木村 吉宏cond.
広島ウインドオーケストラ

音色にスピード感が不足し、やや淡白な演奏ではあるが、この曲の魅力に触れるには充分。その魅力が、現在も全く古びていないことを再認識させられるはずだ。



さらに、2011年2月に、私がずっとネットオークションで物色し続けてきた、アナログLP音源が、CD化されて復刻!

Photo山田 一雄cond. 東京吹奏楽団
飯吉盤と比較すると、ややスピード感を欠く。しかし、スケールは大きく、積極的な音楽表現を試みている演奏である。



(Revised on 2012.12.14.)

|

« 春になって、王たちが戦いに出るに及んで | トップページ | ヨハネスブルグ祝祭序曲 »

コメント

また懐かしい曲が紹介されていますね。
このLPの音源がCDで復刻されていましたが、今は絶版になっていますから入手困難だと思われます。

かつて共同音楽出版社がLudwig社より版権を得て出版していた楽譜の中の一つですが、他には「ヒッコリーの丘」や「ベレロフォン序曲」「エルシノア序曲」という曲もありました。Rubank社の楽譜と言い初期の日本吹奏楽を支えた名曲の多くを取り扱っていたんですね。

共同さん今では事業が大分縮小して細々とやっておられるようですがまた元気を取り戻していただきたい物です。

投稿: mitakasyun | 2007年6月24日 (日) 07時21分

「チェルシー組曲」、懐かしくもいい曲ですよね!
「ベレロフォン序曲」はさらに個人的に実に懐かしいです。1978年、西部吹奏楽コンクールで銀賞受賞の想い出の曲、当時私は中学2年生でした♪

こういった”当時の”曲、音源が本当にないんですよ。Rubankからたくさん出ていたワルタース作品なんかも・・・。出してくれたら私は喜んでCD買いますっ。

投稿: 音源堂 | 2007年6月25日 (月) 09時47分

チェルシー組曲・・・
懐かしい。
中学のときに、コンクールでやりました。
県大会落ちでしたが、楽しい思い出がいっぱいです。

CD化されないのがほんとに惜しいですね。
カッコよさ、モダンさ、起伏に富んでいるし、
程よい難度。
今は見向きもされないのが不思議です。

実演は難しいにしても、
誰かMIDIにして、発表してくれないだろうか。

投稿: なめくじ | 2008年3月15日 (土) 21時31分

なめくじさん、コメントを有難うございます。
BCLシリーズも何やら「邦人作品集」「懐かしの課題曲集」の様相を呈してきており、「チェルシー組曲」など採り上げてはもらえない感じですね。BCLのそもそものコンセプトからすれば、何と言っても当時を席巻していた(ポピュラー音楽の世界でもそうでしたが)アメリカの作品こそが、採り上げるべき対象ではないかと思うのですが・・・。

投稿: 音源堂 | 2008年3月15日 (土) 22時14分

習志野市立習志野高等学校吹奏楽部が
第45回定期演奏会でこの曲を演奏したそうで、
CDとDVDが発売されているようです

http://www.itogakki.co.jp/musicbank/netshop/ac/goods/nalakou_dvd.html

まだ未聴ですが、購入してみようかと思います。
ライブ録音ですが、全国大会の常連校の演奏ですし、
期待したいです (^^)v

投稿: なめくじ | 2008年8月25日 (月) 12時59分

うわぁ、この高校って定期公演を3日連続違うプログラムでやってるんですね!「チェルシー組曲」を演ったのは最終日の公演ですか。「練習曲」もやってますから、1975年頃このバンドで採り上げたってことなんですかね。

・・・しかし本当に「力有り余ってます」って感じだなあ、このバンド。^^;)

投稿: 音源堂 | 2008年8月25日 (月) 16時20分

私は中一の秋(1981)、テューバで「チェルシー」を演奏しました。上記の2007年習志野高校の演奏について一筆啓上。

コンサート録音社製のCDを聴きました。副顧問の瀧山智宏先生指揮の1,3年生による演奏です。惜しくも(!)全曲ではなくⅡ.Ⅲ.のみが演奏されています。暖かくブレンドされた音が心地良いカンツォーネの歌い回しの絶妙さ。Ⅲ.の打楽器アンサンブルで突然チャイムが連打されるのは驚愕!?ですが、味のあるトランペットソロを挟んで強奏も好バランスを保ちつつ粛然と進行するあたりは流石の実力です。習志野らしい繊細さが発揮された演奏になっていると感じております。

全曲録音はそれこそBCLに期待ですかねぇ~shock

投稿: ヤング太郎 | 2008年8月29日 (金) 20時08分

ヤング太郎さん、情報を有難うございます!
ほんの6分程の曲なので、全曲演奏(或いは収録?)してくれればいいのに・・・ですね。

投稿: 音源堂 | 2008年8月31日 (日) 10時58分

先日、習志野高校の演奏会のCDを入手。
早速聞いてみました。
ヤング太郎さんのご指摘の通りの2、3楽章のみの収録
まずそれにガッカリ
3日間の演奏会のダイジェストということでしかたないかぁ
演奏は・・・正直、いいとは思いませんでした。
なんというか、大味な演奏だなと。
2楽章はそこそこ聞かせるものがありましたが、
3楽章はメタメタ。ヤング太郎さんと同じく、
打楽器アンサンブルのチャイムは何で入れたのでしょう?
驚愕でした。はっきり言って、邪魔してる。
まぁ、締めくくりはそれなりにキマっていたのはさすが習志野でしょうか。
演奏がよければ恐らく全曲収録されたDVDを買おうと思いましたが、
止めました(笑)

やはり、プロかセミプロのちゃんとした録音を望みたいですね

投稿: なめくじ | 2008年9月 9日 (火) 10時07分

例のCD、レビューいただきありがとうございます!

切望しているのに、いつまでも音源がないままのものもありますし、「やっと出た!」と喜び勇んで買ってみると「そりゃないだろ~!」というような演奏だったり・・・。

「納得」の演奏で、大好きな曲を聴きたいですね、本当に。

投稿: 音源堂 | 2008年9月 9日 (火) 18時09分

遂に超超久々の新録…木村吉宏指揮の広島ウインドオーケストラによる演奏が発売決定しました!(12月20日発売のBCL12)先ずは予約して楽しみに待ちたいですね~。ヽ(´▽`)/この録音についてのコメントも是非加筆お願い致します!

投稿: ヤング太郎 | 2009年11月19日 (木) 19時30分

ヤング太郎さん、情報を有難うございます!
早速予約します。楽しみですねー。

期待通りの演奏だといいのですが…。

投稿: 音源堂 | 2009年11月21日 (土) 13時42分

先日、ブレーンのDLストアが終了するとの事で、広島WOのCDを購入しようか迷っていたので、取り敢えず何曲かセレクトして、この「チェルシー組曲」もDLしました。いやあ、便利な時代になったものですね。私もフィルハーモニアWEのLPを愛聴していた(現在も・・・)世代ですので。
さて演奏の方は、「出だしスッキリ、中あっさり、終わり難無し。」といった感じでしょうか。音楽感はフィルハーモニアWE盤が、骨太で、一番この曲に合っている感が強いです。40年以上前の録音ながら、Tpはじめ、Brassセクションも魅力的で、スタイルは今的ではないかもしれないけど私は好きです。聴き比べると東京吹奏楽団盤もそれぞれ魅力があると思います。ということは、「チェルシー組曲」は名曲ってことになるのかな?
出来れば、もっといろいろな団体の演奏を聴きたい曲です。

投稿: ブラバンKISS | 2014年6月27日 (金) 23時53分

ブラバンKISSさん、こちらにもコメント有難うございます。チェルシー組曲、大変よくできた名曲だと思っております。モダンなリズムやサウンドも持っていますし、ぜひ再評価されてほしいですね!

ブレーンのDLストア閉鎖…とても残念でした。私も駆け込みで注文し残していたものを大慌てでDLしました。とても意義のある事業だと思っていましたが、ブレーンさんもご苦労がおありだったのでしょうね…。我々ユーザーもこうした業者さんのことも盛り立てていくようにしないといけないなあと改めて感じさせられました。

投稿: 音源堂 | 2014年6月28日 (土) 11時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181124/15522484

この記事へのトラックバック一覧です: チェルシー組曲:

« 春になって、王たちが戦いに出るに及んで | トップページ | ヨハネスブルグ祝祭序曲 »