波の通り道
Path of the Waves
酒井 格
(Itaru Sakai 1970- )
太陽に照らされてキラキラと光る波が、
ごうごうと音を立てて洞窟の中に押し寄せ、
洞窟を抜けた波が再び太陽に照らされて
真っ白にしぶきを上げ、
岩と岩の間を様々な道筋で流れていく。
そんな素敵な景色を、みなさんは知っていますか?
私は知っています。
もう、4年も前の夏のことですが、忘れられない素敵な景色でした。
そして、忘れられない、かけがえの無い時間でした。
そんな、素敵な時間を過ごせたことに感謝をして、この曲を書きました。
聴いてくれる人たちに、私の想いがどのように伝わるでしょうか?
(作曲者ブログ 2006.7.7. 記事より -右画像も)
♪♪♪
龍谷大学の委嘱により2006年に作曲。龍谷大学は同年の吹奏楽コンクール自由曲にこの「波の通り道」を採り上げ、見事全国大会金賞を連続受賞。自由曲によくある派手さではなく、美しさと抒情性に満ちたこの曲の演奏が、コンクールという場で正当に高い評価を受けたことは、洵にうれしいことだ。
♪♪♪
中間部に律動感を増す部分を挟んだ三部形式の曲と捉えることができるが、終始緩やかに「歌」を聴かせる音楽である。遠く、深く始まる冒頭のバックに聴こえる海鳴り、中間部の前に聴こえる風の音、クライマックスでの弾け飛ぶ波濤の表現など、美しい海の表情を刻々と表現するものでもあるのだが、音楽は情景描写よりも、さらに心象描写に優れるものと感じられる。
旋律は非常に優美で、酒井 格ならではのもの。装飾的な音符(melisma)を使用して叙情性と即興性を加味し、魅力的に仕上げている。このmelismaに現れる6連符を用いて中間部の律動感につなげるなど、必然性と統一感のある音楽の流れが素晴らしい。
各楽器の音色や特徴を生かしたソロやソリもたくさん織り込まれ、色彩が実に豊か。これも酒井作品の真骨頂だ。中間部ではJazzyなムードのTrombone と Alto Saxのソロも現れ、大変洒落たアクセントとなっているし、管弦楽では多用されるOboeのソリが随所にフィーチャーされ、実に美しく魅力を放つ。
そして終盤、高らかに駆け上がるファンファーレ風の楽句とともに、あの美しい旋律が壮大に、劇的に奏されてクライマックスに向かう。センチメンタルなのに品がある「歌」が、聴く者の心を大きく揺さぶってやまない。
そして、はっと静まると木管群の滑らかで可愛らしいフレーズ。最後は消え行くように、余韻を湛えたモダンな響きで曲を閉じる
♪♪♪
酒井作品らしく、確りとした構成の中で多様な色彩や表情を見せてくれる音楽なのだが・・・。大事な大事な旋律を存分に歌い上げることで、抒情を伝えたい。 -私はこの曲に、そういう大きな柱が備わっていると感じる。
極論すれば、その「歌」さえ伝わればいいと言わんばかりの”真っ直ぐな想い”が感じられて仕方ないのだ。
終盤のクライマックスで、旋律が突如厳然とした表情に変わる一瞬の切なさ。
そしてそれまで応酬しあっていた各楽器群が、打楽器のアクセントとそれに続く”間”の後に、文字通り動きを一つにして堂々たる旋律を奏する劇的さ。
この2つの”必殺技”には感動の涙を禁じえなかった。
しかし、実は”技”などではない。
そんな次元を超えて、こうして奏される美しくも何とも切ない「音楽」が、「歌」が心を揺さぶるのだ。
作曲者の伝えたかった心象が音楽そのものとなって、確かに伝わる。言葉にできないが・・・。(だって、音楽なんだもの。)
♪♪♪
音源は2006年度全日本吹奏楽コンクール実況録音/龍谷大学の演奏。(冒頭画像)
ライヴ演奏につきまとう多少の疵など問題ではなく、感動的な音楽でこの魅力溢れる「歌」を伝えてくれる。美しいサウンドと音色だけではなく、音楽的なアゴーギグをはじめとして、「表現」がとても素晴らしいのだ。
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コメント
引き続き酒井さんですか。きっとこの人のカラーがピッタリと合うのでしょうね。レビュー読んでるとおそらく私も好きなような気がします。(^o^)
というか、紹介されている曲をざっと眺めてみたらかなり共通する好みみたいですよ(^_^)v
投稿: Junco | 2007年5月29日 (火) 23時24分
酒井氏の曲はどれも好きなのですが、この2曲については一気に語っておきたいという衝動にかられ、続けてしまいました。
♪♪♪
これからも新旧、洋の東西、さらにジャンルにかかわらず大好きな音楽に触れていきます。
「ふーん、聴いてみようかな。」
と思ってもらえさえすれば、このブログの目的は達せられます。
音楽って、とにかく最高ですから。
投稿: 音源堂 | 2007年5月30日 (水) 12時05分
突然すみません
酒井格さんの曲いいですよね
あたしも大好きです(^^)
はじめて聴いたのは
ポノルプという小編成の曲でその表現力に衝撃をうけました
波の通り道は30日にある
私の所属する吹奏楽部の
定期演奏会で吹きます
この記事を読んで
ますますやる気がでましたっ!
がんばって素晴らしい
波の音を響かせますっ(^O^)/
投稿: 海 | 2010年3月 2日 (火) 22時09分
海さん、ようこそいらっしゃいました。コメントをいただき有難うございます。どうぞ他の記事もご覧いただき、また気軽にコメントをお寄せ下さいね。
♪
ちょうどこの「波の通り道」が上梓される1年ほど前、作曲者酒井氏は苦悩の中におられたと思います。詳細は語られておりませんが、当時は氏のブログを拝見するたびに、ファンとして私は心配に気を揉むばかりでした。あの優れた才能は、いったいどうなってしまうのだろうかと…。
しかし、それを越えて酒井氏はこの素晴らしい作品を生み出されました。初めて聴いた時の感動は忘れることができません。(それとともに、私は漸く安堵することができたのです。)
大きく深い一つの想い、願いというものが、豊かな色彩の中にありながら、実に率直にそして力強く感じられる作品だと思いました。
酒井氏の”歌”、本当に素敵ですよね!
♪
このたびは「波の通り道」を演奏されるとのこと、とても羨ましく思います。演奏会のご成功、そして聴衆のみなさんと健やかな感動の共有を実現されますよう、心からお祈りします。
投稿: 音源堂 | 2010年3月 3日 (水) 14時01分