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2007年5月18日 (金)

三日月に架かるヤコブのはしご

Photo_377Jacob's Ladder to a Crescent
真島 俊夫
Toshio Mashima 1949- )




重厚なサウンドと華々しいファンファーレ楽句、荒れ狂う波のような木管に響き渡るドラ、というド派手なオープニング。”何か来る”と予感した次の瞬間、ぱあっと視界が開け、雄雄しくも華麗極まる
Hornのソリ!何というカッコイイ曲だろうか。もうこの段階でエクスタシー・・・。

♪♪♪

Photo_3722006年末、真島 俊夫(右画像)は「鳳凰が舞う」にてクードヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールグランプリを獲得。本邦吹奏楽界を代表する作曲家の作品が、世界的にも認められたことは大変喜ばしい。
名門・関西学院大学応援団総部吹奏楽部の創立
40周年を記念して委嘱され、1993に作曲されたこの「三日月に架かるヤコブのはしご」も、その真島 俊夫による傑作の一つである。

特徴的な曲名であるが、それが指し示す表題音楽というよりも祝典音楽として捉えるべき作品であり、その華麗さ・多彩さ・ロマンティックさは群を抜く。
冒頭の主題提示、中間部へ向かうソロ、再現部前の更に雄大なソリ、最後の煌くトリル・・・と
Hornが大活躍!その演奏には音質や音色を含めて高度なものが要求されるが、これほどにHornという楽器の魅力が炸裂する吹奏楽曲もあるまい。
また他楽器についても音色や特質を生かしたソロやソリが数多く、ポリフォニックなこの曲の魅力を存分に発揮させるとなると、相当な難曲である。

♪♪♪

Photo_12それではこの一風変わった題名は何を意味するのか。
「三日月」とは”満ちてゆく三日月”を表す、委嘱者である関西学院大学のエンブレム(右画像)のこと。

「ヤコブのはしご」とは旧約聖書にある「イサクとヤコブ」のエピソードの中に登場するもので、創世記
281012節にある、ヤコブが夢で見た天への梯子のこと。
双子の兄イサウの怒りから逃れて伯父の下へ旅をするヤコブが、その途中で石の枕に横たわり見た夢-。それは天に達する梯子が地に届いており、天使たちがそれを昇ったり降りたりする光景であった。

「曲想は、関西学院大学のシンボル(校章)である”三日月”を題材として構成したもので、旧約聖書に出てくる「ヤコブのはしご」を遥か彼方に美しく蒼く光る三日月の端に引っかけて、その高さに到達したという憧憬を描いたものです。」
(作曲者/真島
俊夫のコメント)

Photo_373調べてみると、「ヤコブのはしご」は古くから一般に親しまれている言葉であることが判る。
一番有名なのは、「太陽が雲に隠れている時、雲の切れ間あるいは端から光が漏れ、地上へ降り注ぐかのように見える現象」を指すものである。
(”天使のはしご”とも呼ばれる/右画像)

Photo_374Photo_376また
18世紀からあるキルトのパターンにも”Jacob's Ladder”というものがあるし(左画像)、本邦で「ぱたぱた」と呼ばれる民芸玩具も”Jacob's Ladder”(右画像)。
さらに、「あやとり」の”はしご”も海外では”
Jacob's Ladder”と呼ばれているのである。(下画像)Photo_13




これらに鑑みれば、「ヤコブのはしご」とは、広く”人間の憧憬の象徴”と解するべきなのだろう。

♪♪♪

この曲の構成は、大きくは、ブリッジ部分とコーダを擁した「急-緩急」の三部から成る序曲形式と捉えることができる。

12/8
拍子Maestoso、華美でスケールが大きく、それでいてスピード感のある6小節の序奏で曲は開始。否応なくワクワクさせられるこの序奏の終わりに、Hornが切り込んだと思ったその瞬間、視界が雄大に開けてHornの大ソリとなる。これがこの上なく「男前!」である。
1
独特の譜割が大変個性的で斬新、これがTbnEuph.と木管中低音で繰り返され、Trp.の華麗な旋律へ受け継がれる。スピード感と華麗さに溢れるこの部分は、一旦静まって美しい木管楽器の歌を聴かせる。
2そして
夥しい上昇感をもって高揚し、再びTrp.のフレーズへ・・・。理屈抜きにカッコいい音楽であり、また感動的。
フル・テュッティのシンコペーションをfffで奏し、ドラの一撃でブレイク!静まって
Hornソロとなり、徐々に幻想的なムードを漂わせていく。

続く
4/4拍子Andanteのブリッジ。曲中最も幻想的な部分で、月世界或いは月明かりに照らされた砂漠の情景を想起させる。ここではベースラインと4声のCup Muted Tromboneの伴奏(グリッサンドがお洒落!)を従え、2AltoTenorBaritone4声によるSaxophoneソリ・・・。
3
Big Bandの世界である。このモダンな”浮遊感覚”は存分に味わいたい。

中間部はコール・アングレ、オーボエとロマンチックな主題が受け継がれて始まる。マリンバの伴奏も素敵!
4各楽器の音色対比を縦横無尽に発揮しながら抒情性を満喫させる音楽である。やがて天への憧れがとめどなく昂ぶっていくように、伴奏の木管の
3連符は4連符となってクライマックスへ向かう。

一転、
6/8拍子Vivaceとなってファゴットのソリが聴こえ、ブリッジへ。急激に高揚して高音・低音が鮮やかなコントラストを見せたかと思うと、今度はスケール感を増したHornソリによって、再現部へ向かって雄大な旋律が歌われる。
5
6_2スピード感が戻ってきてコンパクトな再現部、 最後は
Meno Mossoで主題がファンファーレで奏され、アジテートしながら豪快で劇的なエンディングとなる。
・・・
BRAVO ! の一言だ。

♪♪♪

寄せては返す波のように、音楽は拡大と収縮を繰り返し、しかも品があるので実に感動的。特に随所に織り込まれた「高揚感」は、真島氏ならではの見事さである。各楽器の音色や個性を生かしきっているので、指定通りの楽器を揃えて演奏したい。

音源は
洪才cond. 東京佼成ウインドオーケストラ
(冒頭画像)が大変劇的で素晴らしい。
LiveHornがこれだけキメてくれたら、文字通り冒頭で私は”イって”しまうだろう。
腕に自信のある
Hornの皆さん、この曲で「勝負」してみては如何?

(Revised on 2008.9.23.)

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コメント

ふ~む。ヤコブですかぁ。知らないなぁ。名曲ですか。悔しいなぁ。ぜったい見つけてやるぅ。(-_-#) 

ヤコブの梯子って天気輪の柱みたいな感じですね。でもちょっと天の羽衣風に、ヤコブが梯子を隠して天使に天国に連れて行かないと梯子を返さないぞぉなんて感じのストーリーを思い浮かべたり(^_^;)

真島さんの「鳳凰」聴きました。カッコイイですねぇ。で、そのノリで「鳳凰」を聴いてたら、ちょっとコミカルなシーンをイメージしちゃいました。こういうのって一度ツボにはまると消えないんですよねぇ(^o^)

ところで「鳳凰」のコンクール版ってカットされてるようですが、フルヴァージョンって出てるのでしょうか?

投稿: Junco | 2007年5月19日 (土) 18時38分

素敵な曲ですよ!私は大好き。真島作品は今後も多く触れさせていただくことになると思います。

「鳳凰が舞う」ですが、5月25日発売予定の「響宴X Vol.2」に収録されます。こちらは全曲版の可能性が高いのでは?詳しくは
http://www.worldwindbandweb.com/brainmusic/7.1/BOCD-7480/
をご覧下さい。私も買おうと思ってます。

投稿: 音源堂 | 2007年5月20日 (日) 17時07分

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