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2007年4月13日 (金)

トロンボーンと吹奏楽のための「対話」

Colloquy002Colloquy
for Trombone and Symphonic Band

W.ゴールドスタイン
William Goldstein 生年不詳)



畳み掛けるような楽句で開始、冒頭からバンドが大きく躍動する。

そして冒頭のモチーフを反復して始まる、堂々たるトロンボーンのソロ -。

1967アメリカ陸軍ワシントンバンドの委嘱により作曲、同バンド所属のD.メイザー(David Maser) のソロにより初演。作曲年代は意外と古いが、大変現代的な感覚の楽曲である。
Wgoldstein_1当時、同バンドに籍を置いていた作曲者ウイリアム・ゴールドスタイン(右画像)は、
9歳にしてコロンビア大学に学んだ天才。
その活動は幅広く、中でも映像作品関連の音楽で大変高名、代表作として、米国NBCテレビの大人気ドラマ「フェイム(
Fame)」シリーズの音楽が挙げられる。コンピューター・ミュージックの魁としても知られ、コンピューター・ゲームの音楽も手掛けている。

この「対話」は急-緩-急の三部形式から成る単一楽章の協奏的作品と見ることができる。中間部では優美でロマンティックな楽想が歌い上げられていくし、再現部ではジャズをフィーチャーするなど多様な表情を見せるが、独奏を執るトロンボーンの統一的なイメージを一言で言えば、前述の通り「堂々」だと私は思う。
作曲者ゴールドスタインによれば、若き日の憧れであったA.コープランドやL.バーンスタインの影響を受けた、現代的でロマンティックな作品とのことである。

♪♪♪


作曲された1967年のアメリカの状況は厳しいものであった。
「冷戦」の時代のこの年、アメリカはベトナム戦争に大量の兵力を再投入。同年
2月には、かの「枯葉作戦」が始まり泥沼化するとともに、国内では反戦運動が高揚していた。

「この”対話”は我が国(=アメリカ)が国家的な心配事に悩まされていた、最も難しい時期に作曲された。曲中、対極にあるものがぶつかりあう”力”というものが聞き取れるだろう。
音楽というものは、天来の妙想を力強く後押ししてくれるものだと思う。私は、この作品が難しい局面の打開を後押しする、前向きなエネルギーとなってくれれば-
と願う気持ちでいっぱいだった。」
(ゴールドスタインのコメント)

♪♪♪

全曲を通じ、ゴールドスタインは標題通りトロンボーンとバンドを確りと対峙させている。グリッサンドの強烈さに象徴される快速部分のトロンボーンの雄雄しさと、中間部のロマンティックさは対照的だが、ともに”パワー”が漲っているのが印象的である。
ジャズをフィーチャーした部分については、
「元々、即興的なトロンボーン・ソロにしようと考えていたが、初稿の段階でソロを執るD.メイザーからの提案もあり、楽曲の継続性と統一性を担保する見地から、私がジャズ風のソロを書き下ろした。これによって、この部分も楽曲の中で完璧に自然な形で溶け込ませることができた。」
(ゴールドスタイン)
とのことである。
テンポを落としたコーダは、劇的なトロンボーンの超ハイトーンで終結するが、トロンボーン吹きには堪らない感動!胸のすくトロンボーンの名曲の一つである。

♪♪♪

Colloquy音源は、1985年からニューヨーク・フィルハーモニックの主席を務める名手
ジョセフ・アレッシ(Joseph Alessi)

の独奏による、
E.ロンバック=ケンドール
cond.
ニューメキシコ大学ウインド・シンフォニー
の演奏(冒頭画像/
iTunes Store でも配信中)がある。
同じくニューヨーク・フィルハーモニックの主席トランペット奏者、P.スミス(
Philip Smith)も参加した豪華なアルバムだ。
惜しむらくはバンドのレベルが更に高く、スピード感のある音色であれば、より緊張感ある拮抗した名演となっただろう。

Alessi_josephアレッシ(左画像)の演奏は極めて明晰で、全音域に亘り全くむらのない、素晴らしい音色を聴かせる。一つ一つの音の質感の充実ぶりが並外れているので、”歌”が大変豊かなのである。




Returntosorrentoアレッシは、近時
NAXOSからソロ・アルバムをリリース。(右画像)廉価盤で彼の音が聴けるなんて、幸せだ。

♪♪♪

余談だが、本稿執筆にあたりニューヨーク・フィルハーモニックのHPに接してみて大変感銘を受けた。
これほどのオケになれば、在籍メンバーのステイタスも尋常ではないだろうが、それにしてもメンバー一人一人に関する紹介など見るにつけ、本当に細部まで行き届いたサイトだと感心する。
まず第一に眼に映る画面が美しく、そして中身もきちっと整っている。財政が豊かなことを物語っているということかも知れないが、ニューヨーク・フィルハーモニックはネットの世界でもやるべきことをしっかりとやっているということだろう。ぜひ覗いてみては如何?

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