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2007年4月 2日 (月)

吹奏楽のための第2組曲 A.リード

19810328本邦初演:アルフレッド・リードcond. 東京佼成ウインドオーケストラ
1981.3.28. 於 新宿文化センター / 同団第28回定期演奏会


Second Suite for Band

”Latino-Mexicana”
A.リード (Alfred Reed 19212005
I.   Son Montuno

II.  Tango -"Sargasso Serenade"
III. Guaracha

IV. Paso Doble -"A la Corrida"

数多いアルフレッド・リードの作品の中でも、出色の出来映えである。1979の作曲で、1981年の初来日時に東京佼成ウインドオーケストラと録音
および演奏会を行い、大変な好評を博した。
大傑作「アルメニア舞曲」は既に世にあり、「ア・フェスティヴァル・プレリュード」「ジュビラント序曲」「パンチネロ」といった作品でリードの音楽は吹奏楽界に浸透していたが、ラテン音楽をフィーチャーしたこの作品は、リードの世界を更に拡げたのだ。この後、吹奏楽界におけるリードの存在感は一層圧倒的なものとなっていく。

♪♪♪

まず、この「第2組曲」がフィーチャーした”ラテン音楽”というものを改めて認識しておきたい。
一括りにラテンと言っても「
I. ソン・モントゥーノ」「III. グァラーチャ」はキューバ音楽、「II. タンゴ」はブラジル風タンゴ、「IV. パソ・ドブレ」はスペインに起源する闘牛の音楽であり、性格は異なる。

[ キューバ音楽 ]
Photo_316キューバ音楽の双璧を成すものはルンバ(
Rumbaソン(Sonとされている。
キューバ音楽に欠かせない打楽器クラヴェス
Claves/左画像)は、この2つの音楽ジャンルに特徴的なものである。

ソン
200年を越える歴史を持つ、スペイン音楽とアフリカ音楽を融合したもので、起源となったのはスペイン舞曲。古くは独特のリズムに乗せて風刺を込めた詞で唄われる、農民の大衆音楽であった。
ソンの演奏形態としてはトレース+ギター+ベース+クラヴェス+マラカス+ボンゴの”セステート”という
6人編成に始まり、これにトランペットを加えた”セプテート”(7人編成)へ、さらにトランペットを2本以上に増やし、リズムセクションを強化するなどの発展を遂げた。

      ※トレース
キューバ音楽で使われる6弦ギター、普通のギターよりも高音

ソン・モントゥーノ(
Son Montunoは、モントゥーノと呼ばれる唄い手とコーラスの掛け合い部分を強調することにより、さらにアフロ(アフリカ黒人)色を強くした、1940年頃にソンから進化したスタイルとされる。
音楽の形式としてはクラベスのパターンに対応した
2/4拍子のリズムが基本だが、主題部(ギア=スペイン系)と反復部(モントゥーノ=アフリカ系)から成っている。

Arsenio_pachanga_1Arsenio_dice_1この「ソン・モントゥーノ」を確立し、”ソン・モントゥーノの王様”と称されるのが、トレースの名手でもある
アルセニオ・ロドリゲス
Arsenio Rodriguez 1911-1971
だ。右上画像にある"ARSENIO DICE"と"La Pachanga"の2枚のアルバムを1枚のCDに編集した盤を聴いたが、本格的なソン・モントゥーノもなかなかに素晴らしい!すっかりお気に入りになってしまった。

一方、グァラーチャ(
Guarachaもキューバ音楽の一つで、1940年代には6/8拍子と3/4拍子のポリリズムのスペイン系歌曲として演奏されていたが、現在ではアフロ系2拍子のスピード感のあるダンス音楽となったとのことである。

この他にも
「グァヒーラ(
Guajira)」「ワワンコー(Guaguanco)」
「モザンビーケ(
Mozanbique)」などの独特のリズム・音楽スタイルがあり、キューバ音楽は奥深く、ハマる人も多い。

  ※尚、キューバ音楽については別稿 「キューバ序曲(G.ガーシュウィン)」
    に詳述したので、そちらも参照いただきたい。

     【参考・出典サイト】
       Afro Ritmo Maquina 公式HP
     キューバン・サルサとソンのダンスレッスン


[ ブラジル風タンゴ ]
「タンゴ・ブラジレイロ」などと称される音楽を指すとされ、良く知られたアルゼンチン・タンゴの、
情熱が前面に出た烈しさとはやや違ったイメージ。
ポルカやショーティッシュなどのヨーロッパ舞曲とアフリカの音楽が融合したもので、男女が抱き合いながら踊り、
19世紀の都市部の民衆の間で流行したという。

Enazareth代表的なアーティストとしては、
エルネスト・ナザレー
Ernest Nazareth
1863-1934/左画像

が挙げられる。
ナザレーの作品は、快速なものから、=80 程度で演奏されるものもある。

Nazareth_naxosNAXOSから作品集が出ている(左画像)ので、ぜひ聴いてみていただきたい。
代表作"Burejeiro (Tango)"をはじめとして、エキゾティックで陽気な音楽、イメージとしてはラグタイムに近い印象を受ける。また、一方では”Eponina”のように情熱的で、どこか憂いのある音楽も含まれており、大変興味深い。


リードがこの
「第2組曲」で書いた”タンゴ”は、たっぷりとしたテンポとなっており、本家ナザレーよりも更にロマンティックな曲想に仕上げられている。

      【参考・出典サイト】
     中南米ピアノ音楽研究所



[ パソ・ドブレ ]

闘牛場で奏される、勇壮・華麗にして憂いを湛えた音楽。特に闘牛士の入場、および闘牛における”とどめ”の際に演奏されるとのことである。


♪♪♪

アルフレッド・リード「第2組曲」はこうしたラテン音楽の華麗さ、豊かな色彩、大胆なコントラスト、優美さを余すことなく伝えるハッピーな音楽。

I. ソン・モントゥーノ
一気に沸き起こる序奏と、特徴的なリズムが瞬時にラテンの世界へ引き込んでしまう。快速で休符を効かせたリズミックな旋律だが、大きなフレーズで歌われるのが魅力的。
21_2カップ・ミュートの金管群とベースラインによる伴奏がエキゾティックであり、もちろんマラカス・クラヴェス・ティンバレスといったラテン・パーカッションも縦横無尽に活躍して、強力にドライヴ。


II. タンゴ "サルガッソー・セレナーデ"
サスペンション・シンバルの響きの中から静かに沸き起こる、優美なクラリネット・ソロによる序奏。主部ではタムと金管群の伴奏が非常に優しく奏され、美しい旋律を包み込む。
22大変幻想的であり、ラテン・アメリカのロマンティックな夜の情景を描き出していく。中間部では再びクラリネット・ソロが呼び返され、徐々に胸をきゅんと締め付ける楽想へ。
(初めて聴いた時はまだ恋を知らない高校生の私だったが、そんな私にもロマンスの甘さや喜びを想像させ、憧れをかき立てる音楽だった・・・。)

III. グァラーチャ
陽気で快活な酒場の歌か。ここでもラテン・パーカションが大活躍、息の長い旋律と飄々としたリズムの対比が魅力的。
23段々と遠くなる音楽が突然のテュッティで驚かせ、曲を閉じる。

VI. パソ・ドブレ ”ア・ラ・コリーダ”
高らかなファンファーレと重厚なサウンドで決然と開始、続くトランペットのソロによってあっという間に闘牛場のムードに引き込まれる。
24即興的なクラリネットとフルートのソロに続き、緊張感を漲らせた、快速でエキサイティングな
5/4拍子の主部に突入する。転調して輝きを増す3/4拍子、伸びやかな音楽が耳に心地よい。5/4拍子の再現部を経て3/4拍子に戻ってからは、さらにスケールの大きな音楽となってクライマックスへ突き進んでいく。

♪♪♪

2_16音源は
アルフレッド・リードcond.
東京佼成ウインドオーケストラ

渾身の自作自演録音(左画像)に尽きる。
当初発売された
2枚組みLP盤では「第2組曲」のリハーサル風景も収録され、リードの情熱とそれに応える佼成ウインドの気合が感じられるものであった。

同時収録の楽曲も素晴らしい演奏ばかりだが、特に

ア・フェスティヴァル・プレリュード
/音楽祭のプレリュード

A Festival Prelude 1957
は、もはや伝説となったリード初来日時の新宿文化センターに於けるコンサート(1981年3月/冒頭画像)でのライヴ録音であり、お薦めしておきたい。
傷がないわけではないが、精気溢れるスケールの大きな秀演であり、聴衆にも熱狂をもって迎えられている。

  【その他の所有音源】
    木村 吉宏cond. 広島ウインドオーケストラ
    アントニン・キューネルcond. 武蔵野音大ウインドアンサンブル


(Revised 2011.2.11.)

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コメント

お久しぶりです。
年賀状で教えてもらったので、それから約半年ゆっくり見せていただきました。感動です。あなたがやりたかったこと語りたかったことが溢れていますね。この回のブログが好きです。それにしても誰かに楽しさを
伝えるのは難しいと感じています。年をとったのか?学校の授業で手を上げれなかった友達の気持ちが今はよくわかります(私は椅子の上に立って手を上げていたくちです)。だから、あなたのブログには感心してしまいます。勇気ってこういうことを言うのでしょう。
 うちの娘は小学生バンドは卒団で、中学でもトロンボーンです。それにしても、ブラスにおけるトロンボーンは実は難しいことに気づきました。立場というか、全体を意識せざるを得ないというか・・・特に1STは技術も含めてですね。
さて、チャラチャラ系のブラスも多く、やはり淀工や天理高のような真摯なバンドには思わず涙してしまいます。
 A・リードの言葉は使わせてもらっています。これからのブログも期待しています。
 P.S.トラックバックとかコメントとかよくわからずに書きました。メールアドレスとか
も教えてもらえると助かります。
伊藤正彦

投稿: 伊藤正彦(会社) | 2007年5月 9日 (水) 20時36分

イトマサさん、ご無沙汰してます。見てて下さったのですね!とても嬉しく思います。
お元気そうでなによりです。

このブログ、文章が硬いと言われます。でもスタイルは通したくて。これからも自分らしく「O型の感動の押し売り」(懐かしいフレーズでしょ?)をしていきたいと思います。別館(annex)の方も見ていただいてますか?そちらの方でも「押し売り」中です^^)

投稿: 音源堂 | 2007年5月 9日 (水) 21時28分

 はじめまして。
 思い出深い曲を検索していてたどり着きました、もへ妻と申します。

 この曲は中学か高校の時に、テレビからカセットに録音して持っていました。
 とてもカッコイイ曲だと感激し、何度も何度も聴いたものです。

 が、曲名などを全く控えなかっため、謎の曲になってしまい数十年。
 曲は歌えど、伝えるには及ばず、探すことも出来ずにいましたが、偶然弟から借りたCD(広島ウインドオーケストラの「BCL」)に収録されており、涙の再会(ちょっと大げさかもですが)となりました。

 パソ・ドブレのかっこ良さは今でもしびれます。
 中高六年間の吹奏楽経験の後、数十年のブランクを経て今はママさんブラスに所属していますが、残念ながら団では出来なさそうです。
 が、いつかどこかで出来るといいなと思いつつこれからも練習を頑張りたいと思います。

 推奨音源として上がっていたレコード、偶然オークションで発見しましたので、購入できたらいいなと思っております。
 またこれが新たな再会になることを楽しみに。
 どうもありがとうございました!

投稿: もへ妻 | 2010年12月 9日 (木) 12時06分

もへ妻さん、ようこそお越し下さいました!コメントもいただきありがとうございます。

初めてこのリードの第2組曲を聴いた時、理屈抜きに湧き上がる楽しさに心がウキウキしたのを憶えています。カセットテープに録音して、飽きることなく何度も何度も再生し聴いていました。
オススメした音源はとてもゴキゲンな演奏です。ぜひお聴きいただき、楽しんでいただけたらと思います。
またぜひお越し下さいね☆

投稿: 音源堂 | 2010年12月 9日 (木) 21時50分

 こんにちは!
 無事レコードを購入できました、もへ妻です。
 聴いてビックリ、これこそわたしが繰り返し聞いたテープ音源と同じでした。

 これこそわたしの聞きたかった第二組曲!と、思わず叫んでしまいました(笑)。

 懐かしい、大好きな曲に巡りあわせて下さって本当にありがとうございます。

 またこちらに上がっている曲には、懐かしい思い出の曲が沢山ありますのでまたコメントに伺います。

投稿: もへ妻 | 2011年1月 6日 (木) 10時15分

もへ妻さん、想い出の音源との再会おめでとうございます!この演奏は本当に素晴らしいですよね。

またお越しいただき、気軽にコメントもお寄せいただけましたら幸いです。

投稿: 音源堂 | 2011年1月 8日 (土) 11時34分

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