タンブリッジ・フェア
Tunbridge Fair
-Intermezzo for Symphonic Band
W.ピストン
(Walter Piston 1894-1976)
代表作「不思議な笛吹き」(Ballet ”The Incredible Flutist”)等で知られ、長くアメリカ音楽界の指導的立場にあったウォルター・ピストンが、E.F.ゴールドマンの委嘱により作曲。1950年にピストン自身の指揮によるゴールドマン・バンドが初演している。
「堅牢」と評されるピストンの作風だが、筋骨隆々たる大男がスピード感豊かに躍動するかのようなイメージの楽曲である。ピストンは名門ハーバード大を卒業したのちフランスへ留学、N.ブーランジェやP.デュカに師事。バッハへの回帰を志向する「新古典主義」でありながら、ジャズにも興味を持ち、その両方を自己の作品に投影したとされる。
1926年から1960年にかけては母校ハーバード大で教鞭を執り、「和声論」「管弦楽法」「対位法」などの著作もある。中でも「和声論」は評価が高い。ハーバード時代の教え子には、L.アンダーソンやL.バーンスタイン、E.カーターなどが名を連ねる。
軍楽隊に所属した経験もあり、前述の「不思議な笛吹き」の中の一曲である”サーカス・マーチ”も、なかなか手慣れた、陽気で良いマーチだ。
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題名「タンブリッジ・フェア」とは、米国ヴァーモント州タンブリッジにて毎年9月に開催される長い歴史のあるお祭り(或いは、農業品評会)=”Tunbridge World's Fair”のことである。
※下画像:同フェアの今と昔観覧車や回転木馬も設置され、古き良き田舎風のお祭りで、アンティークの展示や競馬、馬術競技会、コントルダンスなど盛りだくさんの内容で、陽気に騒ぐとのこと。
地元の人のみならず旅行者を含めてさまざまな職業・年齢の人々が集まり、わけ隔てなく楽しく過ごし、そこには音楽が溢れている。 -大変ハッピーなもののようだ。
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「タンブリッジ・フェア」は、そんな”フェア”の様子を生き生きと描出したものである。ラグタイム風の第一主題は賑やかに騒ぐ人々を、抒情的な第二主題は夕べに開催されるダンスの様子を表すとされる。
第一主題第二主題
楽曲としては終始快活なテンポで4'30"ほどの小規模なものだが、確りとした骨格を持ちエネルギーを発散しながら突き進む音楽は魅力的。第2主題の部分をはじめ、各声部のかみ合い方や対比がとても印象的で、きりっと纏まっている。なかなかの難曲とされるが、固有の響き・世界を持った楽曲であり、興味深い。
現在、ほとんど演奏されていないのは大変惜しいと思う。
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音源は
ユージン・コーポロンcond.
シンシナティ音楽大学ウインド・シンフォニー
の演奏(冒頭画像)があり、この曲の魅力を知るには充分。まずは一聴、如何だろうか。
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