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2007年3月19日 (月)

ロッキー・ポイント・ホリデー

Ron_nelson_1Rocky Point Holiday
R.ネルソン
1929 


清冽で爽やかな曲想が印象的な、ロン・ネルソンの快作。
ネルソンといえば、1993
年に「パッサカリア - B-A-C-Hへのオマージュ」(Passacaglia -Homage to B-A-C-Hによりアメリカ吹奏楽界で最も権威のある「ABAオストワルド賞」「NBAレヴェリ賞」「サドラー国際賞」という3つの作曲賞を総ナメにするという快挙を果たしている。

ネルソンはアメリカ/イリノイ州生まれ。作曲は
6歳から始めた天才で、イーストマン音楽学校でH.ハンソンやB.ロジャースに師事、渡仏してA.オネゲルの教えも受けたという。経歴からいって早くから吹奏楽にも造詣があったことは伺えるが、活動は幅広く、管弦楽はもちろん映像音楽、またCarpentersのアルバムにもアレンジで参画したものがある。

  ※吹奏楽界における
Nelsonというと、Jazzと吹奏楽の融合作品である
        「プリズム」を作曲した
Robert Nelsonという作曲家もいるが、本稿の
       
Ron Nelsonとは別人。

      Ron Nelson HP
         Robert NelsonHP

♪♪♪

Rocky_point_4標題にある「ロッキー・ポイント」とは、メキシコ/ソノラ州にある
Pueruto Penascoのアメリカに於ける愛称。カリフォルニア湾の北部に位置した風光明媚な海岸で、大変人気の高いリゾート地である。



「ロッキー・ポイント・ホリデー」(
1966年はその印象を音楽で表したもので、フランク・ベンクリシュートーの委嘱によりミネソタ大学バンドのために作曲。吹奏楽曲として、ネルソンの最初のヒット作となった。Rocky_point_2_2 Rocky_point_3
Rocky_point_1_1





    ※ネルソンがこれ以前に作曲した吹奏楽曲としては
Concerto for Piano
       and Symphonic Band (1948/
未出版)、Mayflower Overture1958)が
       ある。また、ネルソンは”
Holiday”シリーズとして、Savannnah River
       Holiday,  Sonoran Desert Holiday
も作曲している。
    ※本作「ロッキー・ポイント・ホリデー」の作曲は永らく1969年とされてきた
       が、樋口 幸弘氏の研究・確認により1966年が正しいことが判明した。


♪♪♪

この「ロッキー・ポイント・ホリデー」の主要旋律は「リディア旋法」に基いているとのこと。
Lydianこの
Lydianは、6-7世紀ごろにまとめられた教会旋法の一つであり、その中の第5旋法にあたる。
現代では
Jazzの世界で1960年頃から教会旋法の利用が興ったとのことであるが、ネルソンは幅広い音楽活動を行っていたから、こうしたJazz界の動向からアイディアを得たことが充分考えられる。作曲年代からしてもその可能性は高いのではあるまいか。

リディア旋法は、
流麗、端然、軽妙敏速、快活、爽快、新鮮、すがすがしさを感じさせる」※とされるが、なるほどこの楽曲の与える印象にそのまま一致している。

  ※
出典:「グレゴリオ聖歌」水嶋良雄/音楽の友社 : 参考サイト

♪♪♪

煌く稲妻のような上向型の16分音符とシンコペーションのカウンター、そしてTimp.による”決め”が鮮烈なオープニング。ほどなく柔らかで流麗な第一主題が木管群に現れる。
2全曲を通じ快速なテンポで奏される楽曲だが、次いで現れる第二主題は神秘的で息の長い、ゆったりとしたものである。このゆったりとした第二主題に対し、バッキングだけで快速なビートをサブリミナルにキープしていくという独特の手法を示す。したがって、この部分はポリリズム的に聴こえるわけだが、スピード感を失速させないように演奏するのは難しく、際どい。一方で、そのスリリングさが大きな魅力となっているのである。

快速なビートが再び表に戻ってきて、打楽器を効果的に使ったエキサイティングなブリッジを挟み、ぱあっと視界が開ける。スピード感をキープしつつ拍子感の消えたムードの中、さらに雄大さを増した第一主題が再現され、曲中最大のクライマックス!この部分でのドラの効果といったら、実にこの上ない。High Noteへとガンガン高揚して行くTrp.のカウンターにも注目!
3_2
穏やかに
Flute,Oboe,Fagotto, Muted Trp.と旋律を受け継いでいくが、突如としてCrisply との指示で、ラテンのリズムとベースライン、Jazzyな楽句が割り込んでくる。
Latinアンヴィルの響きの新鮮さなど、多彩な打楽器の活躍は耳を奪う。この曲のもう一つの異色な部分であり、徐々に熱狂を極め、音楽がエネルギーを拡大していくさまは大変感動的。
その頂点で、テンポを落として高らかに第一主題が再現され、快速なコーダに突入、怒涛の興奮のうちに曲を閉じる。

♪♪♪

快速なテンポで一気呵成に駆け抜けていく曲想でありながら、非常に多彩で各部分のコントラストが素晴らし
く、私のお気に入りの一曲である。

演奏時間
5分程度とコンパクトで、快活な曲想はオープニング向きだが演奏難度は高く、濃密に書き込まれたスコア最大のポイントである「スピード感」を最後までキープしつつも、楽句一つ一つを効果的に「見せ」ないと、この曲の真の魅力は伝わらない。

音源も、その難しさゆえに演奏の出来にバラつきがあるが、私としては以下をお薦めする。

Photo_307フレデリック・ナイリーン
cond.
武蔵野音大ウインドアンサンブル

限界に達したともいえるテンポで一気に聴かせ、この曲の真価に迫っている。スコアの細部に亘り表現しきったとまでは行かないが、ノリがよく若々しい精気溢れる好演。

Unlvトーマス・レスリー
cond.
ネヴァダ州立大学ラスベガス校
ウィンドオーケストラ

スピード感と、濃密なスコアをディテールまで表現することを絶妙に両立した快演が漸く登場した。このレベルの録音が送り出されたことは大変喜ばしい。
同時収録されたN.タノウエおよび鋒山
亘の作品も興味深く、必聴の1枚といえよう。

(Revised on 2010.3.12.)

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