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2007年3月28日 (水)

吹奏楽のための第3組曲 J.スピアーズ

Jared_spears_1Third Set for Band
J.スピアーズ
(Jared Spears 1936
I.   Dance

II.  Night Song
III. Entry and Minimarch




ジャレッド・スピアーズは、
CBSソニーが毎春発売していた「コンクール自由曲集」にほぼ欠かさず楽曲を提供していたので、本邦吹奏楽界では大変馴染み深いアメリカの作曲家である。
最初に紹介されたのは「キンバリー序曲」。以降も一貫して、アマチュア・バンドが実際に演奏することを念頭に置いた作品を送り出し続けている。平易ながらもモダンなムードを持ち、打楽器奏者としてのキャリアも持つスピアーズらしく、打楽器の活躍する作風である。ややサウンドに重厚さ、華麗さを欠くきらいはあるが、愛すべき作品は多い。
吹奏楽曲としては「ウォバッシュ地方の伝説」「年代記」「ノヴェレッテ」など多くの作品を発表。それのみならず、合唱・管弦楽・室内楽など、併せて
250を超える作品を世に送り出しているという。

♪♪♪

この「第3組曲」は数多いスピアーズの作品の中でも際立って構成感に優れ、簡潔で無駄がない。サウンド的にも終始充実し、打楽器も大変効果的に使用されていてなかなかの傑作だと思う。1972の出版であり、現在では演奏機会が少なくなっているが、末永く演奏されて良い作品である。
曲は次の
3つの短い楽章から成る。

I.
 舞曲
堰を切ったように全合奏のエキサイティングな楽句でオープニング。一旦静まって聴こえてくる木魚の響きがユニークであり、低音楽器から始まる踊りはユーモラス。
3_1終始スピード感をキープする音楽で、鮮やかなコントラストも見られるが、最後は再び低音楽器の旋律に戻って、モチーフの断片を奏し静かに曲を閉じる。


II. 夜の歌
抒情的な緩舒楽章。幅広い冒頭の旋律に続き、表情豊かに歌い上げる
Hornソロが美しい。
3_2この旋律が繰り返され高揚していくが、短い楽章の中でも確りとしたクライマックスを形成しており見事である。冒頭の旋律がアルトサックス・ソロで戻ってきて、余韻を湛えたクロージングへ。
3_3

III.
 入場と小行進曲
勇壮なファンファーレとドラムの壮麗なリズム、チャイムの華麗な音色に彩られ、強力なサウンドが響き渡る。
3_4ドラも加わってさらに濃厚な響きを聴かせると、
Trp.の鮮烈な楽句とドラムに導かれて徐々に静まり小行進曲が始まる。ここではリズミックな伴奏と朗々たる旋律の対比が聴きもの。
3_5一層華々しい
Trp.の旋律と共に、音楽は更にエネルギーを増し、重厚なテンポのコーダへと向かう。ここでは冒頭のファンファーレが拡大して再現され、堂々たるサウンドで全曲を終う。

Photo_311この曲唯一の音源が、
汐澤
安彦cond.
フィルハーモニア・
ウインド・アンサンブル

の演奏。楽曲の良さを発揮した好演であり、この演奏で充分。


♪♪♪

尚、スピアーズの他作品にも幾つか触れておきたい。

Photo_312キンバリー序曲(Kimbarly Overture
飯吉
靖彦(汐澤 安彦)cond.
フィルハーモニア・
ウインド・アンサンブル

テクニック的に平易な一方、シンコペーションを効かせたモダンな伴奏と美爽な旋律が人気を集めた、スピアーズ最大のヒット作。中間部のメロウな旋律も魅力的。

Photo_313ディキシーランド・ジャズの葬式
At a Dixieland Jazz Funeral
ラリー・カーティスcond.
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校
ウインドシンフォニー
Live盤)
陽気なジャズで葬送するディキシーランドの世界を吹奏楽に移植した佳作、「聖者の行進」をフィーチャーしている。歌声あり喚声ありの賑やかな演奏はアメリカそのもの。

Photo_314風の踊り子 (
Wind Dancer
トム・オニール
cond.
アーカンソー州立大学
ウインド・アンサンブル

知られざるスピアーズの名曲。作曲者自身の詩
に基づく作品で、幻想的かつ大変シャープな現代的感性の音楽である。多様な打楽器はもちろん、スキャット(人声)も使用する深遠な曲想。演奏難度も高く、スピアーズを良く知る人ほど、他作品とのギャップに驚くだろう。

曲は緩やかで神秘的なムードで始まり、Fluteをはじめとして各楽器のソロで進んでいく。Trp.のソロは特に素敵である。
やがてパーカッション・ソリを中心とした前衛的な音楽が吹き荒れる風を表すが、これに続きFlute,Picc.で奏される民族舞踊風の素朴な旋律が現れ、その対比が素晴らしい。徐々に高揚して、スケールの大きなロマンティックな旋律となりクライマックス!再び民族舞踊が戻ってくるが、やがて遠く静まって冒頭のムードに戻り、スキャットの神秘的な響きの中、静かに曲を閉じる。

  ※スピアーズの詩
     Clouds in flight
     Sea waves pressing
     Joyful pleasures
     Like dancing on the wind



(Revised on 2008.11.8.)

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コメント

はじめまして。

スピアーズさんの大ファンです。ウエストウッド・ポートレイトのTbを演奏したことがあって、あまりに素敵だったのでスピアーズさんにファンレターを出したことがあります。そしたら素敵なお返事を頂きました。あと実際にロスのウエストウッドに行って、この曲を聴いていました。

さすがにパーカスの先生だけに、イキイキしたリズムが楽しいですね。ネットで色々調べてもあまり情報がないので新しい曲はよく知りませんが、「風の踊り子」は素晴らしそうですね。これはどうやって入手されたのでしょうか。是非聴きたい曲です。

投稿: Junco | 2007年5月 8日 (火) 22時14分

Juncoさん、コメントを有難うございます。スピアーズをお好きな方がいて下さって凄くうれしく思います!
そうでした、「ウエストウッド・ポートレート」もありましたね!この曲も昔のCBSソニーのLPしか音源がない曲だったと記憶しています。

「風の踊り子」私は大好きなんです。掲載したCDにのみ収録されています。私はもうだいぶ前にTower Recordで購入しました。まだ入手できると思っていましたが、こちらの↓サイトによると絶版とのことです。とても良いCDなのでオススメなのですが・・・。
https://www.musicstore.jp/database/search.php?order_no=016465

発売元と商品コードは Mark Custom 1938-MCD です。アメリカのMark Custom社に直接アクセスすれば原盤は保有しているとは思いますが、厳しいかもしれません。

投稿: 音源堂 | 2007年5月 8日 (火) 22時51分

突然失礼致します。私も皆さんと同じスピアーズ氏にはかなりお世話になりました。特にウェストウッドポートレートが一番熱く燃えた曲ですね。学生時代に1stトロンボーンを吹いていたのですが、あの絶妙な取り回しというか、スピーディーに音を繋げて行くというか、魅力的ですね!先日CBSソニーのLPを購入しCDに起こし会社、車、家で聞いています。

投稿: 飯田 | 2007年5月18日 (金) 16時18分

飯田さん、書込みを有難うございます!
私と同じスピアーズのファンと仰る方が結構いらっしゃることが判って、心強い限りです!今後とも本ブログを宜しくお願いします。

・・・LPしか音源のない楽曲のCD化、どんどんやって欲しいのですが、あまり進まないですね。

(尚、私から5/18にメールを差し上げました件、何卒ご了解下さいませ。)

投稿: 音源堂 | 2007年5月20日 (日) 21時29分

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