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2007年2月20日 (火)

交響的舞曲第3番”フィエスタ”

Photo_263 Symphonic Dance No.3 "Fiesta"
C.ウイリアムズ

James Clifton Williams
1923
1976




1956
年「ファンファーレとアレグロ」、1957年「交響組曲」によって、制定されたばかりのABAオストワルド作曲賞を連続受賞した吹奏楽界の”巨匠”クリフトン・ウイリアムズは、全5曲から成る「交響的舞曲」を作曲している。これはテキサス州サン・アントニオ交響楽団より同楽団の25周年を記念して委嘱を受け作曲した、管弦楽のための作品であった。

その初演は
1965年であったが、ほどなく作曲者自らが吹奏楽に改編し、1967年には本作=第3番”フィエスタ”と、第2番”ザ・マスカーズ”が吹奏楽初演されている。

この管弦楽のための「交響的舞曲」の全容は

No.1  Comanche
No.2  The Maskers
No.3  Fiesta
No.4  Square Dance
No.5  New Generation

であるが、前述の2曲に加え、第5番「新世代」が吹奏楽に改編されていることが確認されている。5曲全てが改編されているという説もあるが、詳細は不明。(私もあと残り2曲については聴いたことがない。)

♪♪♪

交響的舞曲第
3番”フィエスタ”はメキシコ風の祭典を描写した音楽で、非常に色彩感に溢れた名作である。

「劇的に」と指定された序奏部は金管群の重厚で緊迫したサウンドに始まり、これに呼応する渾身のマラカスのトレモロとラチェットが斬新で、否が応にもエキゾティックなムードを盛り上げる。
1_2
2_2続いて、低音群の厳かな下降系楽句が現れ、朝靄のようなサウンドをバックに、
Trb.Sax.のハーモニーが遠くから近づき、最初のクライマックスとなる。

主部はラテン・パーカッションが活躍する快活な
5/4拍子で、Trb.の伴奏でマリアッチ風の旋律が展開していく。








やがてルバートとなり、闘牛場を髣髴とさせる
Trp.の朗々たるソロ。3_3
快活な舞曲に戻ると、程なく手回しオルガンのような
3/4拍子の舞曲が現れる。
4_2そして、その長閑な情景を切り裂くような
Trp.のファンファーレを合図に、重厚な低音の伴奏を従えてHornSaxの奏でるシリアスで壮大な舞曲が始まる。
5これは
Trp.Euph.に引き継がれ更に輝きと緊迫感を増し、曲中最大のクライマックスを形成、実に劇的である。

Trb.のペダルトーンを響かせつつ再現部へ。前半部分がコンパクトに再現されたのち、更に精力的でエキサイティングな音楽となり、高音楽器と低音楽器が応酬を重ね、パーカッションの鮮烈なソリを挟みながら終結していく。
この部分では各楽器の音色や特性が存分に活かされており、まさにウイリアムズの面目躍如である。最後は有名な
Trb.のグリッサンド・ソリが鳴り響き、興奮のうちに曲を閉じる。
6
※最後の
Trb.ソリ(上画像)は、思わず「ああー、Trb.やってて良かった!」という喜びが溢れてしまう名フレーズ!

♪♪♪

交響的舞曲第2番”ザ・マスカーズ”についても触れておこう。
”フィエスタ”と比べて規模は小さいが、これもまたラテン・アメリカ風のエキサイティングな佳曲である。

曲はTrp.の鮮やかなファンファーレに始まり、
1_3ややたっぷりとしたテンポの主部と、
2_3
3_2一気にテンポを捲る終結部から成る。その名の通り、仮面を纏った踊りの祭礼を表したもので、主部はエキゾティックな中にも優雅さを感じさせる舞曲。極彩色の衣装に身を包んだ人々の姿が目に浮かぶような、多彩な音色に注目したい。
そして打楽器群のアッチェランドに煽られて、一気にテンポを捲り、昂ぶった興奮のまま全合奏が渾然となって曲を閉じる。


♪♪♪

交響的舞曲第5番”新世代”についても音源を所有している。
しかしながら、これは市販音源ではないため、間違いなくこの音源が”新世代”の録音であるという証左に乏しい。そこに録音されているのはジャズのテイストに統一された音楽である一方、随所にウイリアムズらしい楽句が聴かれるクールなものだが・・・果たして。

♪♪♪

3番”フィエスタ”の音源に優れたものは少ない。中には極めて表層的な演奏もあり、期待して聴くとがっかりさせられるだろう。そんな中でお薦めしたいのは
山下
一史cond.東京佼成ウインドオーケストラ
(冒頭画像)の録音である。

Photo_264このほか、豊かなサウンドを聴かせ、マリアッチ風の民族色をさらに強調した
ハワード・ダン
cond.
ダラス・ウインドシンフォニー
の録音をお薦めしておく。ややエキサイティングさを欠くものの、好演である。

Photo_265
2番”ザ・マスカーズ”の音源は
スティーヴン・スクイアーズ
cond.
ノーザン・イリノイ大学ウインドアンサンブル
のものがある。
本邦では”フィエスタ”に比べてほとんど知られていない”ザ・マスカーズ”だが、この
CDはJ.サイラーの「天国の猟犬」なども同時収録した興味深いものなので、ぜひお聴きになってみては如何だろうか。


♪♪♪

Photo_266最後にお宝音源。
非常に古いもので傷は多いが、当時の出版社
Sam Fox 社の参考音源(レコード)に”フィエスタ””ザ・マスカーズ”が収録されている。


Photo_267演奏はいずれも
フレデリック・フェネル
cond.
マイアミ大学ウインドアンサンブル
(因みにレコーディング・プロデューサーはアルフレッド・リード!)
特に”ザ・マスカーズ”は秀演、巨匠フェネルの貴重な録音である。

(Revised on 2008.9.12.)

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コメント

かなり酷い録音状態ですが、youtubeに吹奏楽版の全曲がアップされています。こんな名曲を埋もれさせているなんて、吹奏楽界にとって大きな損失だと思います。

投稿: オリエント急行 | 2009年11月23日 (月) 20時44分

オリエント急行さん、コメントを有難うございます。
情報をお寄せいただいたYouTubeは「交響的舞曲第3番”フィエスタ”」で検索してもでてきますね。大変興味深いです。
結局、クリフトン・ウイリアムズは5曲とも吹奏楽版を作っていたのでしょうか?オケ版のスコアも手に入らないし、未だに謎です。クリフトン・ウイリアムズ自身が翻著したのか、それともどこかのバンドディレクターがトランスクリプションしたのかによっても、価値が全く違いますし…。

ご指摘の通り、埋もれさせるには惜しい作品と思いますので、ぜひプロによる腰の入った名録音で聴きたいですよね!

投稿: 音源堂 | 2009年11月24日 (火) 12時51分

クリフトン・ウイリアムズの「交響的舞曲集」についてビッグニュースを入手しましたのでお伝えします!
2010年秋、これまで未出版だった交響的舞曲第1番・4番・5番がスコア+パート譜のセットで発売され、演奏可能となる予定とのことです!これはまさに”待望”の出版、私自身も演奏してみたいと心を熱くしております!

私と同じ楽団に所属する友人がウイリアムズのお嬢さまであるミシェルさんと親しく、2010年3月に彼がその報を受けたものです。彼が受け取ったミシェルさん直筆の手紙を拝見しましたが、現在You Tubeで試聴可能なThe Heart of Texas Concert Bandの「交響的舞曲集」の録音は、ミシェルさんのお嬢さん(=ウイリアムズのお孫さん)の企画したものであり、upしたのもこのお孫さんとのことでした。
「交響的舞曲集」がその誕生の地サン・アントニオで大切にされ、今こうして当地のバンドの録音から発して世界に再提示されようとしているのです。父親の(祖父の)傑作を、永遠に遺そうとされたご一族の想いも感じられ、感動しました。素晴らしいことですね!

きっと日本でも多くのバンドが演奏するでしょう。またプロフェッショナルなバンドによる録音が出版されることも期待できます。これを機会に、クリフトン・ウイリアムズの未録音作品も含めた「作品集」が出版されたりしたら、ファンの私は飛び上がって喜んじゃいます!

(貴重かつ嬉しい情報を下さったなるさん、本当に有難うございました!m(_ _)m )

※尚、今回得られました確実な情報をもとに、本稿も改訂させていただく予定です。

投稿: 音源堂 | 2010年4月11日 (日) 18時12分

始めまして。
交響的序曲の項から飛んできまして、お気に入りに入れさせて頂いて通勤中に拝読させていただいております。
アーカイブとして大変素晴らしいコンテンツであると思います。感動しました^ ^

さて、先日佼成WOの有志でフェネル氏の生誕100周年の記念イベントが開かれ、その中で秋山紀夫氏がマイアミ大学でのフェネルの商業録音は残念ながら存在せず、という話をされておりまして、叶うものなら聞いて見たかったとその話を聞いて思っていたのですが、サンプルで録音されていたのですね。いつか巡り合わせで聞く機会に恵まれたらと思います。
ちなみに、マイアミ大ではフェネルよりも後任についたリードの方が指揮者としての評価が高く、両氏が亡くなられた時に、リードの方はメモリアルコンサートを大学で開催されましたが、フェネルは開催されなかったとのこと。
また、そういう側面もバンドの側面として興味深い話ですね。

ながながと失礼致しました。

投稿: さいとー。 | 2014年7月10日 (木) 16時58分

さいとー。さん、ご愛読いただきまたコメントも頂戴し洵に有難うございます。
クリフトン・ウイリアムズの交響的舞曲は第1・4・5番についても出版され、全5曲が収録されたCDも発売されました。本稿は改訂の必要が生じておりますが、手が回っておりません。できるだけ早いタイミングで改訂したく考えております。交響的舞曲全5曲については、決定盤的録音が世に送り出されることを心待ちにしている次第です。

サム・フォックス社のサンプル音源はもう10年以上前になりますが、ネットオークションに出品されているのを発見し、入手したものです。盤の状態は良くありませんが、マニアとしては宝物に他なりません。^^)
今後とも「橋本音源堂」をご贔屓のほど宜しくお願い申し上げます。

投稿: 音源堂 | 2014年7月11日 (金) 10時20分

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