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2007年2月25日 (日)

エルザの大聖堂への行列 -歌劇「ローエングリン」より

LohengrinElsa's Procession to the Cathedral
-from"Lohengrin"

R.ワグナー Richard Wagner 18131883 
/L.カイエ (Lucien Cailliet 18971985

前稿にて、クラシック音楽を吹奏楽で演奏することについて触れたが、この”エルザの大聖堂への行列(行進)”は「クラシック・トランスクリプション(アレンジ)」として、さまざまな面で大成功を収めた作品。即ち、

1.歌劇「ローエングリン」自体は大変高名な作品
    であるが、この曲の単独演奏は管弦楽でもまず
    ないため、稀少性が高い

2.楽曲は大変劇的で音楽的魅力が充満、題材と
     して抽出するに相応しい

3.合唱入りの原曲を聴いて、吹奏楽のハーモニー
     で再現できるという判断が的確

4.書き加えられたエンディングは、更に劇的な
    曲想を与え、また吹奏楽演奏に適している


の諸点から、最高傑作の一つと評価できるものである。全体的に見てもアレンジは良く、近年違うバージョンのアレンジも登場しているが、このカイエ版を超えたと評価できるものはないと思う。

Lucien_cailliet編曲者ルシアン・カイエはフランス生まれ、後にアメリカに移った人物で、クラリネット奏者として、指揮者として、そしてフィラデルフィア管弦楽団のアレンジャーとして活躍した。
吹奏楽界にも「エルザ」のほか「フィンランディア」「ナブッコ序曲」「エスパナ」などの優れた編曲を多く残し、この時代のアレンジャーとしては特筆すべき手腕を発揮している。

♪♪♪

Wagner歌劇「ローエングリン」(1848リヒャルト・ワグナー(左画像)の代表作の一つ。話自体は「魔法」が登場するなどファンタジーの一種と言えようが、最後は登場人物のほとんどが死に、或いは離散してしまうという身も蓋もないストーリー。


要約すると
「白鳥の騎士ローエングリンが、王女エルザの窮地を救い結婚するが、素性を明かさぬローエングリンへの不安を募らせたエルザが、約束を破ってローエングリンを質してしまったために
事態は急転し、エルザは亡くなり、ローエングリンは去ってしまうという悲劇的結末を迎える。」
と解すほかないようだ。

(冒頭画像:「ローエングリン」公演より)


歌劇「ローエングリン」の中では、”第一幕への前奏曲””エルザの大聖堂への行列””第三幕への前奏曲””婚礼の合唱”が有名な楽曲として挙げられる。

「エルザの大聖堂への行列」は第2幕第4場、その名の通りローエングリンとの婚礼のため、礼拝堂に向かうエルザの行列が進んでいく場面で演奏される。オペラでは、この厳かな音楽は、突然の悪役オルトルート登場により遮られて終わるのである。


Photo_279クラウディオ・アバドcond.
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団

歌劇「ローエングリン」全曲版。この盤の”エルザの大聖堂への行列”は、実にうねうねと歌いまくる演奏。



Photo_2ヘルベルト・フォン・カラヤンcond.
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

「エルザの大聖堂への行列」のみの原曲録音を収録した吹奏楽用コンピレーション盤。

♪♪♪

Photo_4カイエの編曲した吹奏楽版は、原曲通り
Fluteの美しく清らかな旋律に始まり、Oboeのソロを挟んで厳かに進んでいく。転調して音楽は輝きを増し、ハープの美しい伴奏とともに合唱が入ってくる部分は、金管群の柔らかなハーモニーで再現される。

やがて、ワグナーらしい息の長い壮大な旋律が
Hornを中心に朗々と奏され、ゆっくりとしかし着実に、放射状に高揚していく。この”放射状”に、豊潤で壮麗なサウンドに満ちていくクライマックスこそは実に感動的であり、聴くものを惹きつけて已まない。
カイエによって書き加えられた
Trb.のソリが濃厚に、そして華麗に音楽をさらに盛り上げ、最後は堂々たるコードで曲を閉じる。

Photo_31966年、全日本吹奏楽コンクールで豊島十中が初めて今津中を破り、堂々の優勝を収めた際の自由曲であり、これ以降吹奏楽界の重要なレパートリーとなった。
(左画像:当時の実況録音収録CD
当時、中学生には無理とされていた息の長いレガート奏法の克服、徹底した音程のトレーニングはもはや伝説として語り継がれている。

♪♪♪

高名な作品であるため録音も少なくないが、演奏の出来は玉石混交。私としては以下をお薦めしておきたい。


Nwuマロリー・トンプソンcond.
ノースウエスタン大学シンフォニック・

ウインド・アンサンブル
各奏者の音色・音質が優れており、前半の木管楽器のソロ、そして随所に聴かれるホルンにはハッとさせられる。
このバンドは凄い!

Photo_282佐渡
cond.
シエナ・ウインド・オーケストラ
清廉。そして歌い方がまさにオケ的な正統派で、太い音楽の流れを持った秀演。



Photo_283フレデリック・フェネルcond.
イーストマン・ウインドアンサンブル

これもまた「エルザ」を吹奏楽界に定着させるきっかけとなった
演奏。音程が気になる部分もあるが、楽曲の良さを充分に表現した好演であり、歌劇「ローエングリン」からはF.ウインターボトム編曲の”第三幕への前奏曲””婚礼の合唱”も同時収録。


吹奏楽演奏に際しては、
1. 快速で輝かしい”第三幕への前奏曲”
2.
有名な”婚礼の合唱”
3.
壮大に盛り上がる”エルザの大聖堂への行列”
と演奏して、「ローエングリン組曲」にするのも面白そうだ。

※尚、本邦ではメンデルスゾーンの「結婚行進曲」とともに、実際に結婚式で使用されることも多いこの”婚礼の合唱(結婚行進曲)”だが、「ローエングリン」の惨たらしい結末からすれば”縁起が悪い”とする考え方もある。このため、「ローエングリン」に明るい欧州においては、結婚式でこの”婚礼の合唱(結婚行進曲)”を使用することは稀という説もあるが、真偽のほどは・・・?

(Revised on 2008.4.20.)

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コメント

「エルザ」懐かしいですね。

この曲は私が吹奏楽の世界に入ってまだ
間もない頃、既に吹奏楽の世界にどっぷり
ハマっていた兄から聴かされて知りました。
(実は兄の結婚披露宴の入場の時の音楽も
豊島十中の「エルザ」でしたw)

聴かされた音源は音源堂さんも紹介されて
いる豊島十中の演奏。当時私はまだ中学生
でしたが、私と同じ中学生がこんなに凄い
演奏をする事にただ唖然としたものでした。

それから成人になってついに、この曲を
演奏する機会がやってきました。

時は平成4年、吹奏楽コンクール熊本県大会
一般の部。当時の所属楽団がコンクールに
出始めて4回目の時で、それまでずっと銅賞
だったのが、この年に初めて銀賞。

みんなで喜んだのを覚えています。
(私はシンバル担当でした)

なんだか単なる思い出話になってしまいましたw

投稿: HARA-P | 2010年12月18日 (土) 13時51分

HARA-Pさん、どうもです!
この「エルザ」、偶然ですが私も兄から聴かされて知りました。^^)

どこで聴いたかというと-兄の大学の練習場、しかもHornパートの真後ろ(!)に座って聴いたのが初めです。中一の冬、兄の大学バンドの定演を聴きに博多まで出掛け、前日の練習も聴かせてもらったのでした。
ご想像通り、クライマックスではそれまで聴いたことのないHornの音量にビックリ!(真後ろですからねえ)、スゲーとただただ感心していました。本番の演奏もワクワクしながら聴いて、大好きな曲になったのです☆

それから豊島十中の演奏をレコードで聴き…これ、私が生まれた頃の演奏ですから、どう考えても凄いですよね。てなわけで、私のレスも単なる想い出話になりました。^^;)

投稿: 音源堂 | 2010年12月19日 (日) 21時58分

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