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2007年1月 5日 (金)

海の歌

Photo_215A Song of the Sea
R.ミッチェル (1929-2011
Rex Mitchell





作曲者レックス・ミッチェルはアメリカ/ペンシルヴァニア州を活動の拠点とし、1979年頃には同地クラリオン大学で教鞭を執って、ジャズバンドの指導にもあたっていた。また、2001-2002年のシーズンにはペンシルヴァニア州選抜バンドの指揮者も務めている。

音楽之友社が彼の「序奏とファンタジア」「コンサート・ミニアチュア」を、音源とともに相次いで出版したこともあり、本邦ではその幻想的でロマンチック、そしてモダンな作風が早くから広く人気を集めた。
不思議なことに、海外盤の音源にはミッチェルの録音がほとんどなく、もしかすると日本での人気が突出して高いということかもしれない。


1979
に出版されたこの「海の歌」はミッチェルの作品の中でも最も人気の高い作品であり、序奏-A(緩)-B(緩)-C(急)-A(緩)-B(緩)-コーダという判り易い形式と優美な旋律をもつ。海の風景を綿密に描写したものではないが、海から与えられるさまざまな印象を大きく捉えており、時代を超えて愛される名曲である。

♪♪♪


Timp.
の静かなロールの上に、遠くチャイムの音が響いて曲は始まる。そして朝日に煌く波のような木管楽器の16分音符に導かれてTrp.のファンファーレが鳴り響き、海の夜明けを告げる。
1全楽器が雄大な風景を描くこの部分は輝きに満ち、スケールの大きな音楽である。(有名なコンクール録音の影響か、この部分に小細工を施す演奏が時折あるが、そんなものは全く必要ない。ここで一番大切なのは、ひたすら真直ぐに壮大なスケールを表現すること以外ない。)

一旦静まり、
Vibraphoneのソロが第1主題を提示。
2「序奏とファンタジア」でも
Marimbaで第1主題を提示しており、ミッチェル得意の手法だが、この斬新な提示によって、全曲を支配する幻想的なムードを醸し出すことに成功している。楽器を変えて主題は発展し、まるで時間を止めたかのようなブリッジを挟んで、Hornの音色を効かせた5/4拍子の第2主題へ。
3次いで現れる
Alto Sax.のソロが艶やかで美しい。

快速な中間部は不安げなリズムに乗った、
Oboeのソロで開始される。
4この新たな旋律が繰り返されたのち、さらにテンポを上げてエキサイティングな楽想が高揚していく。シンコペーションのリズムと金管の鮮烈な音色を聴かせると、更に推進力を増して力強いクライマックス!堂々たる
Timp.のソロと高らかな全合奏でしめくくり、金管群の吹き伸ばしで幻想的なムードにあっというまに収束する。

VibraphoneOboeを加えて第1主題が現れ、前半部分がコンパクトに再現される。Hornのオブリガートとともに大きな大きなフレーズで高揚していくのが洵に劇的であり、それが冒頭の鐘の音の再現により静まるのが印象的。最後はHornのソロで密やかなコーダに入り、名残惜しく幻想的な音楽を閉じる。

♪♪♪

音源は
フレデリック・フェネル
cond.
東京佼成ウインドオーケストラ
(冒頭画像)を推すが、
Photo_3より端正な印象のある
汐澤
安彦cond.
東京佼成ウインドオーケストラ
の演奏(左画像)
も捨て難い。



 【その他の所有音源】
  小澤 俊朗cond. 東京シンフォニックウインドオーケストラ
  木村 吉宏cond. 広島ウインドオーケストラ
  現田 茂夫cond. 大阪市音楽団(Live)
  丸谷 明夫cond. なにわオーケストラル・ウインズ(Live)

 

 
ミッチェルの作品は独自の個性があってシャレており、私も大好き。
「祝典讃歌」「パノラマ」「カプリス」「ページェントのための行進曲」「スター・フライト序曲」「コラールとプロセッショナル」「ルイスバーグ」・・・。
多くの作品が優れた録音を待っている。

(Revised on 2014.4.12.)

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コメント

2回コンサートで取り上げました。いやあ、まとまりそうでまとまらない。特にホルンセクションには、泣きます。あの主題を複数で吹くと本当に苦しい。音色、音程とも揃っている団体じゃないとかなり厳しい。そこで、少しでもふらつくと一気に、冷めてしまいます。音源もTKWOの2種類がありますが、中間部の速いところは、いずれも安全運転?なテンポ設定でいかにも無難。ホルンもぎりぎり?音源も意外に少なくもっと演奏されてもいいのでは・・・。でも、この曲も、もう30年近くなるんですね。名演に出会いたい一曲です。

投稿: ブラバンKISS | 2007年8月24日 (金) 23時53分

この曲を始めとして、米国盤音源を入手できないアメリカのオリジナル曲って結構あるんですよね。何故なのか不思議で仕方がありません。^^;)

投稿: 音源堂 | 2007年8月25日 (土) 22時59分

今年のコンクールで【海の歌】を演奏します。

私は、Claをやっていますが…細かい16分音符が難しいです。
このサイトで書かれていたように、Tpのファンファーレを導けるようにしていきたいと思います。

投稿: | 2011年3月19日 (土) 08時00分

コメントを有難うございます。
この曲の旋律はとても美しいですよね。その旋律を軸に色々な表情を持っていますので、それぞれの表情をコントラスト豊かに演奏できたら素晴らしいと思います。
コンクール、頑張って下さいね☆

投稿: 音源堂 | 2011年3月19日 (土) 12時04分

この曲は中学校1年生の頃に定期演奏会で取り上げました。そこまで難しい曲ではなかったのですが、非常に演奏効果が高くていい曲だと思いました。

自分の好きな吹奏楽曲の1つとなっています。

投稿: EM | 2011年8月13日 (土) 19時01分

EMさん、コメントいただき有難うございます。
私自身はこの曲を大学に入学した年に演りました。当時の所属したバンドのレベルはまだ低く、満足のいく出来ではなかったですが、楽曲自体は一聴して直ぐに大好きになりました。ミッチェルという作曲家自体、大好きです!

投稿: 音源堂 | 2011年8月14日 (日) 07時05分

生まれて初めて接した吹奏楽曲で、かつ初めて演奏した曲でもありました。そしてコーチをしてくれたのはその「有名コンクール録音」のステージで演奏してた方だったりします。小細工はまあ置いておくにしても、あの演奏に引きずられちゃうっていうのはあるかもしれませんね。

投稿: | 2011年11月24日 (木) 09時18分

私が初めてこの曲を演奏した時、指揮者の冒頭部での指示は何ともピンと来ないものでした。何故こんな風に吹かせるのか?…と思っていたら、後に例の「有名コンクール録音」の存在を知り、あれはこれを真似していたんだと判った次第でした。

解釈は人によって違います。全くもって私の好みや感性とは違っても、その方の解釈はその方の解釈。それはそれでいいのかも知れません。問題は(少なくとも私の経験したことから言えば)ろくに吟味もせずに(コンクールで結果を残したものだからと)その解釈を真似するということが、往々にして発生しているのでは?と危惧されることです。

本稿含めそもそもこのBlogは私の好みに過ぎないものです。しかしながら私には、この曲の冒頭に遥か遠くまで真っ直ぐに広がる海とその黎明がイメージされ、演奏にあたっては只管そのスケールの大きさと輝かしさをストレートに表現すべきと思えてならないのです。

♪♪♪

海に恵まれた田舎町に生まれた私にとって、海を題材とした音楽には特別な郷愁と愛着があり、大好きなのです。この「海の歌」もそんな一曲でした。
しかし東日本大震災の大津波による惨劇を目にしてからというもの、これまでと同じ気持ちで「海」の曲を聴けなくなっている自分がいます。

一方、津波で家族も家も失くされた被災者の方が、まさにその海のそばで「海を恨む気持ちはない。海はこれまで俺たちにたくさんの恵みをくれたもの…。」という趣旨のコメントをされていたのをテレビで拝見しました。涙が出ました。何故だか、救われた気がしました。

今は早く時間とともに、私の中のわだかまりが流れ消え去ることを願っております。

投稿: 音源堂 | 2011年11月25日 (金) 00時27分

こんばんは、お久しぶりです。今日、「なにわ・O・W」の新CDが届いたので、早速聞いてみました。盛り沢山の内容でしたが、やはりこの曲から…。
感想は、「好演」の一言。愛聴盤のフェネル/東京佼成WOと比べると、サウンドやソロの上手さは納得。けど、音楽の掘り下げの深さや解釈、細かな表情、テンポや動き。説得力は佼成の方が好きです。今は亡きフェネルの偉大さが、こんな所からも伺えます。weep
大好きな曲ですし、決定盤の登場を期待します。最後の和音が消える時、静かに涙が溢れてくる…。そんな演奏に出会えることを。あらためて、本当に良い曲だと思います。

投稿: ブラバンKISS | 2013年6月 6日 (木) 22時57分

ブラバンKISSさん、しばらくです!
大好きな曲については、もっと感動できる演奏がないか、自分の理想を体現したものがないかと思い続け、音源を集めてしまいますよね。私もそうです!

投稿: 音源堂 | 2013年6月 7日 (金) 08時39分

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