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2006年12月20日 (水)

吹奏楽のための木挽歌

Photo_2Kobiki-Uta for Band
小山 清茂
(Kiyoshige Koyama 1914-2009 )
I.   
主題 (Theme)
II.  盆踊り (Bon-Odori)
III. 朝のうた (Asa-no-Uta)
IV. 終曲 (Finale)


西洋音楽の表現力や華麗さに魅せられながらも、日本人の根底にある”民族の音”を最重要視した小山 清茂
Photo題材である日本の旋律を、あくまできっちり西洋音楽の手法で描き出す-。この二つが見事に融合した彼独特の世界は、今なお斬新である。デフォルメを抑え、素の日本旋律の魅力を伝えようとしている。
本作は
1957「管弦楽のための木挽歌」として作曲、作曲者自身の手により1970年に吹奏楽版が作られた。小学校の音楽観賞教材にもなっている、小山 清茂の代表作である。

小山
清茂と吹奏楽の関わりに於いて、忘れてはならないのは 大木 隆明cond.前橋商業高校吹奏楽部の存在。
Photo「木挽歌」をはじめ、「能面」「鄙歌
1番・2番」を採り上げて全日本吹奏楽コンクールに出場し、特に197880年には3年連続の金賞を受賞。1980年は課題曲も小山作品である「花祭り」で揃えた、まさに集大成の年であった。同校の活躍により小山作品は吹奏楽界に広く浸透したのである。

♪♪♪

曲は九州民謡による主題とその変奏曲の
4つの楽章から成る。作曲者コメント(「」)とともに紹介したい。

I. 主題
「深い山間で独り大木を伐っている木こりは、退屈紛れに唄いながら仕事をしているが、やがて遠くの寺から鐘の音が聞こえて日も暮れた。そんな情景を表している。」

山間にこだまする斧の音を表すかのような幻想的なコードを合いの手に、朗々とした唄が始まる。作曲者の指定はテナー・サックスの独奏であるが、コールアングレでの演奏も聴かれる。
1節は全くもって日本の土俗的なものであるが、響きはモダンで、サンド・ペーパーの擬音も非常に効果的に使用されている。

II.
 盆踊り
「暑い夏である。笛や太鼓で景気のいい前奏の後、種々の楽器が音頭をとり、他の楽器がそれに和する。後半に囃し言葉を真似るひょうきんなところが出てきて、それが高潮して終わる。」

2
和太鼓と鉦の伴奏にピッコロが奏する”お囃子”で開始、

3




Oboe
やテナー・サックスのソロが入れ替わり音頭をとって陽気な盆踊りの唄が奏される。
4




やがて櫓に登ってきた酔っ払いの如き、トロンボーンのソロも・・・。モダンな和音と朴訥とした純和風の旋律の混在がユニーク。


III.朝のうた
「速い
5
拍子で書かれており、何か朝の爽やかさを感じさせる部分である。主要旋律はやはり主題の変形で、グロッケンシュピール・ヴァイブラフォーン・マリンバ・ピアノの高音部楽器が、爽やかな感じを出していく。」
キラキラと輝く鍵盤楽器群+ピアノの響きが大変印象的であり、”和風の”というよりはウイリアム・シューマンを髣髴とさせる”生音”サウンド。これが、碧々とした日本の山谷風景を想起させるから不思議である。


IV. 終曲
「トランペットと小太鼓の激しいリズムによって始まるダイナミックな楽章で、全楽器が次第に熱狂してくる。小休止の後、曲頭でテナー・サックスが独奏した主題を総奏で高らかに歌い上げ、ドラの強打による殷々たる余韻の中から、バスクラリネットの暗鬱な歌が聞こえて曲を閉じる。」

エキサイティングで壮麗なフィナーレ。トロンボーンのグリッサンドなども効果的に使ったスピード感に溢れた音楽で、打楽器の活躍がめざましい。(特にティンパニ奏者がくるりと回転するのに注目!)
終結部、全合奏でたっぷりと歌い上げられる我が日本の旋律には、ひたすらどっぷりと浸りたい。5


♪♪♪

「木挽歌」で思い出すのは
1981年の大分県吹奏楽コンクール。当時高校2年生であった私はOBとして母校の応援に来ていたが、後輩達のライバル校がこの曲を採り上げていた。課題曲を聴く限り勝負は五分五分だったが、自由曲で負けた!

クラリネット、バスクラリネットに”怪物”がいて、この女の子
2人の見事なソロに”持っていかれて”しまった。特にクラリネットは、冒頭をはじめ多くのソロを執り、よく鳴る骨格の太い堂々たる演奏で息を呑ませた。(続く九州大会では銀賞だったが、この二人のソロは当時のバンドジャーナル掲載の講評でも褒められていた。)
”終曲”の全合奏では曲げたソプラノ・サックスに持ち替えていたあのクラリネットの彼女、今はどうしているのかなあ・・・。

♪♪♪

音源としては・・・


Photo_3多分に”レコード芸術”な録音で、リアリティに欠ける嫌いはあるが、
山田
一雄cond.
NHK交響楽団管打楽器セクション
の演奏(冒頭画像参照)を推す。
※左画像:原盤LP


Photo_4小田野
宏之cond.
東京佼成ウインドオーケストラ
の演奏は自然な録音だが、表現はやや淡白。




Photo_5唯一のLive盤、
汐澤 安彦cond.東京吹奏楽団






Photo_3管弦楽原曲も今はNAXOSで手に入るから、当然押さえておきたい。演奏は
沼尻 竜典cond.東京都交響楽団
冒頭のソロ(チェロ)の部分からして、吹奏楽版と全く違っている。バックに弦楽器によるコードが入っており、何ともいえずエキゾチックなのである!(エンディングもしかり。)

各楽器のソロもなかなか良く、好演。

<追記>
Cd2009年9月、
山田 一雄cond.
NHK交響楽団管打楽器セクション
による「小山清茂吹奏楽作品集」がCDにて復刻!
お奨めします!


(Revised on 2010.6.1.)

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コメント

この曲に限らず、この小山清茂氏の作品にはどれも興味津々です。
管弦楽や吹奏楽の世界に、日本の「民族音楽」をこんなにストレートに投げつけた方はあまりいらっしゃらないのではないかと思います。

この曲は一度だけ、某団で音出しだけしたことがありますが、二楽章が散々でした…。冒頭の和打楽器によるアンサンブルがまるでハマらないのです…。

譜ヅラではどうみても難しいところはないのですが…。

我々は日本人なのに、もっとも「日本的」なはずのところで全くハマらない…。いったいどういうこと?という感じでした。
(今後、同様の屈辱を他でも数回味わいました…)

---
余談。現在の私の職場では朝の始業5分前に軽いクラシック曲が構内放送で流れるのですが、つい数日前、なぜかこの「木挽歌」が流れてきてびっくりしました。

最初に流れてきたのは第3楽章で、「ああ、これなら一応、朝の音楽だからな…」と思っていたらそのまま続けて4楽章に突入したので、またまたびっくりしましたw

さわやかな朝の職場に轟くティンパニソロ…。
そのギャップにひとり笑いましたw

投稿: HARA-P | 2013年3月17日 (日) 01時44分

HARA-Pさん、私も小山清茂作品は大好きです!中でも「木挽歌」は完成度の高い傑作ですよね。

「盆踊り」は最も特徴的な音楽ですから、譜面外の”フィーリング”が必要なのでしょう。全曲を通してですが、指揮者以下演奏者サイドが、”その気”にならないと恰好のつかないことは容易に想像できます。
この楽章に出てくる酔っぱらいのTromboneソロ、自分に合っている気がして昔から吹いてみたいと思い続けていますが、実現しないままです。^^)

その後さらに調査を進めておりますので、小山氏がこの曲について語った内容を中心に、さらに本稿を改訂充実させようと企図しております。改訂成りましたらまたぜひご覧いただきたいと思います。

投稿: 音源堂 | 2013年3月19日 (火) 11時14分

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