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2006年11月17日 (金)

ディヴァージェンツ

DivergentsDIVERGENTS
A Short Symphony for Symphonic Band
W.F.マクベス (1933-2012)
William Francis McBeth




I.   Forcefully
II.  Livery and Very Animated
III. Romantically
IV. Dramatico

1970年代から1980年代前半にかけて、マクベスの人気は絶大だった。当時、コンクール会場に到着すると、しばしばリハーサル室からあの独特のサウンドが聴こえてきて、「ああ、いよいよ始まるんだ。」という実感が湧いてきたものである。

マクベスの作風は”ドラマティック”の一語に尽きる。サウンドは黒々としたイメージがあり、ユニゾンの骨太な旋律展開と要所に見せるポリフォニックな作りとの対比、そしてクライマックスでの高音と低音のコントラストの強烈さ-。独特な個性が全ての楽曲に貫かれ、聴き手の好みはともかくとしても、厳然と”マクベス・ワールド”を確立していることは間違いない。
私はといえば-。もちろん、マクベスが大好きである!

♪♪♪

「ディヴァージェンツ」1969年、アーカンソー大学学生交友会の委嘱によって作曲された”吹奏楽のための小交響曲”であり、マクベスの作品としては規模の大きいものである。
標題は「発散、飛散」を意味するが、具体的な内容に作曲者が言及したものは見当たらない。

♪♪♪

第1楽章
Divergents1重々しいサウンドの陰鬱な音楽で始まるが、そこには抑圧されたエネルギーを感じる。それは、テンポを上げて木管群の経過句を挟んだ後、幽かに光を放ち始める。やがて、きらびやかな打楽器群を従えぐんぐんと輝きを増し、低音楽器のごぅとした響きが轟くクライマックスを迎え、そのままポリフォニックなコードに続くドラの強靭な一撃で幕を閉じる。

第2楽章
Divergents2ドラの響きに引続いて、直ぐ快速で変拍子の楽章に入る。快活な楽句はややテンポを落とした幅広な響きの部分を挟んで繰り返され、再びテンポを落として濃厚な音楽を聴かせる。大音響に続くG.P.の後、短いコーダで終止。

第3楽章
Divergents31冒頭に作曲者が示した通りロマンティックな旋律と響きを持つ緩舒楽章。グロッケンシュピ-ルとフィンガーシンバルが極めて効果的に使われている。ホルンに続いて、密やかなクラリネット低音域の旋律が歌われ、これにピッコロの緊張感が重なっていく。このあたりの響きの色は刮目に値するもの。
更にトランペットの幻想的なソリが冒頭の旋律を呼び戻し、ざわめきながら少しずつ緊張感を高め、遂にフル・テュッティのクライマックス=”Dramatic Ad.Lib.”を迎える。
Divergents32ダイナミックにバンド全体が歌い上げるさまは洵に壮絶!-その嵐が静まって、冒頭の旋律が静かに、そして遠く再現される。

第4楽章
Divergents4_2低音楽器+打楽器の大音響による打ち込みで始まる、徹頭徹尾エキサイティングな終曲。マクベスの特徴が最も色濃く現れた音楽で、洵に強烈なインパクト。
僅かに静まってクラリネット低音のふくよかな音色が聴かれるが、あとは終幕に向かってひたすら突き進んでいく。Timp.をはじめとした打楽器群の活躍の中、高音楽器の上昇型楽句に低音楽器の下降型楽句がカウンターとなり、最後は全てが一体となっての咆哮!
もはや”圧倒される”という他ない。

♪♪♪

1973年の嘉穂高校が第3・4楽章を全日本吹奏楽コンクールで演奏し金賞受賞。以来、コンクールでもしばしば採り上げられてきたが、現代の感性からすればやや古めかしいか?
”ますらおぶり”な楽想は、却って新鮮にも聴こえるのだが・・・。

全楽章の録音は
マクベスの自作自演/テキサス工科大学吹奏楽団
”McBeth Conducts McBeth Vol.1"

(冒頭画像参照)しかない。
荒っぽいところもあるが、マクベスの世界を体現した演奏であるのは当然である。

このCDには、
ドラマティコ(Dramatico)
讃歌とファラネード(Cantique and Faranade)
バッタリア(Battaglia)
第七の封印(The Seventh Seal)
聖歌と祭り(Chant and Jubilo)
ジョイアント物語(Joyant Narrative)
マスク(Masque)
も同時収録。
マクベス初期の傑作を作曲者自身の指揮で聴くことができるもので、ぜひ押さえておきたい音源である。

Mcbeth_conducts_mcbeth※原盤LPのジャケット
CD版のジャケットを見ると実はマクベスの指揮ではないように錯覚させられるが、LP版のライナーノーツや出版元(サザン音楽出版)HPを見ると、マクベス自身の指揮に間違いないようだ。



(Revised on 2012.1.25.)

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コメント

はじめまして、この曲は我が高校の定演やコンクールで選曲されたので(私は学年違いで演奏してないのですが)、印象に残ってます。
自作曲のメロディを逆にして作曲してあると、先輩から聞きました。
同様の記事を当時のバンドジャーナルで読んだ覚えも。
確かに「マスク」や「ドラマティコ」の旋律に似た部分があります。

投稿: kagehiro | 2006年12月 9日 (土) 23時27分

失礼しました。他の記事を見ていましたら、「ドラマティコ」が「マスク」の”反進行”、と書かれてましたね。
何分、昔の事なので(苦笑)私の記憶違いだったようです。失礼しました。

投稿: kagehiro | 2006年12月10日 (日) 20時15分

kagehiroさん、コメントをありがとうございます!
「ディヴァージェンツ」という、最近話題にものぼらない?楽曲についてコメントを頂戴したことに、感動しております。^^)

この時代のマクベスの作品はどの曲も旋律をはじめよく似通ってます。特にディヴァージェンツの終楽章と第七の封印の第一楽章などは、まるっきり同じですよね。

これからも時代を越えて愛すべき曲たちとその音源をご紹介して参ります。今後ともご贔屓に!

投稿: 音源堂 | 2006年12月11日 (月) 12時39分

>最近話題にものぼらない?楽曲についてコメントを・・・
確かにそうでしょうね。久々にこの曲聴きたくて、調べるためにネット検索しましたが、プログラムの曲紹介がほとんどで、記述があるのは、こちらのサイトだけでした。

実は、この曲には思い入れがあります。
高校生の時、この曲で一般の部全国大会に参加できるチャンスがありましたが、「あと2年間ある、現役(高校部門)で出るんだ」と断りました。結局、高校時代は地区大会2位までは行ったものの、未出場。
卒業後一般の部で全国大会出場成るも、浪人生のため地区大会までのみの参加。ラストチャンスの普門館も逃しました。
最近、コンクール音源をDLして聴いたら、まずまずの演奏だったので、内輪受けながら満足しました。

投稿: kagehiro | 2007年1月 7日 (日) 00時12分

ディヴァージェンツは私の出身中学でも最高の演奏が出来たといわれた年のコンクール自由曲でした。ところが顧問の先生の「少しでも多くの生徒をステージに出してやろう。」という親心が災いし、規約を確認せずに課題曲と自由曲でメンバーを1人入れ替えたことによる"人数オーバー"で失格となりました。県大会は大丈夫だったのですが、西部(現九州)大会での失格、出来の良い年だっただけに顧問の先生のショックも大きく、その年を最後に吹奏楽指導を止めてしまったそうです。
そんなわけで、私にとってもディヴァージェンツは伝説の一曲なのでした。(尚、当時メンバーだった先輩から録音を聴かせていただいたことがありますが、確かに好演でした。)

投稿: 音源堂 | 2007年1月 7日 (日) 22時25分

この曲も、中学生時代のコンクールで聴いて、その後、全国大会のライブ音源を何度か聴いた程度なのですが、非常に気になっている一曲です。録音も、あまり見られず、最近、TADWSのライブCDが出ているとの情報を聞いたのですが、既にお聴きになられていたら、参考までにコメントが頂ければ幸いです。管理人さんの見識と感想は、非常に信頼していますので・・・。

投稿: ブラバンKISS | 2014年6月 2日 (月) 23時44分

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