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2006年11月29日 (水)

序曲変ロ長調

Photo_2Overture in B Flat
C.ジョヴァンニーニ
Caesar Giovannini 1925
-)







NBC
ABCといった放送局の専属ピアニストとして、また後にはハリウッドの映像関連作曲家・編曲家として活躍したシーザー・ジョヴァンニーニ(冒頭画像)は、米国海軍ワシントンバンドにピアニストとして在籍したキャリアもあり、吹奏楽作品も多い。
W尚、彼の吹奏楽作品は、この「序曲変ロ長調」をはじめ、ウェイン・ロビンソン(Wayne Robinson/左画像のオーケストレーションによるものがほとんどである。


代表作「コラールとカプリチオ」のほか、「ファンファーレ、コラールとフーガ」「ジュビランス」といった作品で知られているが、どの曲も個性的で非常にユニーク。時代的には古い作品のはずなのに、想定しないサウンドや楽句が聴こえてきて、えらくモダンな感じであり不思議な魅力がある。

♪♪♪


その中でも、「序曲変ロ長調」はきっちり整えられた名作である。

溌剌とした前奏部に始まり、
1三部形式の序曲は終始一定のテンポで展開されていく。
鮮烈な金管と流麗な木管の音色対比が素晴らしい。
2またリズミックな前・後半とこれも見事に対比を描く、朗々とした長いフレーズの中間部が印象的である。
この中間部は、スピード感を底流に持っていることにも注目。その旋律やコード進行の、なんと瑞々しく爽やかなこと・・・!
3
他の楽曲にはないタイプの音楽的な喜びが、そこにはある。この時代の吹奏楽オリジナル曲にしてはファゴットやオーボエの音色も効果的に活かしており、ハッとさせられるばかり。

この魅力にして、近年演奏機会が少ないのは非常に惜しい!

♪♪♪

Photo_3音源も少ない。 
永らく廃盤LPの音源(左画像)しか存在していなかったが、遂に2011年2月にその演奏がCD化され、復刻された。




Photo山田
一雄cond.東京吹奏楽団
ジョヴァンニーニ作品としては、「コラールとカプリチオ」も収録。
これをきっかけに、さらなる再評価を!

♪♪♪

更に、他のジョヴァンニーニ作品も音源とともに紹介しておく。

Photo_4コラールとカプリチオ

Chorale and Capriccio
兼田 cond.東京佼成吹奏楽団
うなだれた、陰々滅々としたコラールと、ぶっち切れた諧謔味が炸裂するカプリチオの対比が面白い。→詳細

Photo_5ファンファーレ、コラールとフーガ
Fanfare, Chorale and Fugue
飯吉
靖彦(汐澤 安彦)cond.
フィルハーモニア・ウインドアンサンブル
中世、或いは古代的なイメージのある楽想。徐々にアジテートしていく終結部もシビれる。

Mds_1ジュビランス  Jubilance
高倉 正巳cond.ヤマハ東京
1972
年全日本吹奏楽コンクール実況録音)
鋭いイントロに続く主部の楽句が、あまりにユニークで個性的!


ジョヴァンニーニはこの他にも「一楽章の交響曲」「凱旋序曲」「アレグロとコラール」「ソナチネ」といった作品があるが、音源がない!
ぜひ未録音の作品も含め作品集が欲しいっ・・・のは私だけか!

(Revised on 2012.11.30.)

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コメント

この曲も、懐かしいですね。ただ、いまだに良く判らないのが、作曲のジョバァンニーニは自分でスコアリングしなかったのでしょうか?どこまでが本人によるものなのかが、良く判らないんですよね。それは、さておき私が演奏したのは、高2のコンサートでした。中学時代から好きな曲だったので、よかったです。今となっては、音源の復刻を切望します。もう、聞く機会もないかなあ…(>_<)

投稿: ブラバンKISS | 2008年5月14日 (水) 22時50分

ブラバンKISSさん、コメントを有難うございます。
実はこの曲、私は次の演奏会で演れるかもしれません。つい先日、指揮者の先生がこの楽譜を買って持ってこられ、音出しをしたのです。
・・・ちょっと期待してしまいます!

尚、本稿もRevise致しました。

投稿: 音源堂 | 2008年5月15日 (木) 23時13分

序曲変ロ長調中学の時に演奏しました。
夏のコンクールで小さい編成ですが金賞を頂いた、
とても懐かしい曲です。
私も久々に聞きたいです。音源がなかなか無いんですね。

投稿: 37 | 2009年6月 6日 (土) 14時16分

37さん、コメントを有難うございます。
この曲だけでなく、ジョヴァンニーニは音源が殆どありません。もっと言えば、往年の名曲たち、親しまれた小品といった曲の音源は本当に乏しいのです。
正直、こうしたレパートリーの録音は放り出しているのに、「甲子園」だ「サッカー」だの、そんなテーマでわざわざプロが録音しているのを目にしますと、空しいやら腹立たしいやら、悲しいやら…です。

投稿: 音源堂 | 2009年6月 6日 (土) 14時46分

はじめまして。
一般バンドですが、今週配られる譜面が「コラールとカプリチオ」です。平均年齢が20代半ばの若いバンドなのですが、今尚人気のある名曲にプラスして、昨今演奏機会が無くなってきた名曲にもスポットを当てようと思っています。
選曲の際、このサイトをとっても参考にさせてもらっています。しかし、ジョヴァンニーニはユニークな作風ですね(笑)

投稿: ym-pi | 2009年9月10日 (木) 18時59分

ym-piさん、ようこそお越し下さいました。コメントを有難うございます。若々しい楽団でご活躍の由、羨ましい限りです。(一年ごとにほぼ平均年齢が一年上がり続けている私の所属楽団とは大きな違いです。^^;)

ジョヴァンニーニの曲はひらめきや創意工夫が感じられ、大変魅力的です。ぜひ演奏を楽しんで下さいね☆

投稿: 音源堂 | 2009年9月10日 (木) 21時42分

「序曲変ロ長調」、高校生のころB編成のバンドがよく取り上げていました。「オーバーチャーインBフラット」と書かれていました。
出だしから勢いのある金管とオールユニゾンの木管のフレーズ。所々に出てくるティンパニーとスネアのソロ。
魅力満載ですね。
「コラールとカプリチオ」の音源はいくつか持っていますが、この曲はコンクール実況録音盤のみです。山田先生の振ったのは、聴いたことがありません。この際、「ホエアー&ジョバンニーニ作品集」などというCDを出してもらえないでしょうかね。

投稿: yoshi | 2010年7月 4日 (日) 20時07分

モダンでエネルギッシュ。個性的でありながら楽曲として、魅力の基本は確りと押さえられている-。
私も「ホエアー&ジョバンニーニ作品集」渇望します!

投稿: 音源堂 | 2010年7月 4日 (日) 20時35分

初めまして。序曲変ロ長調、中学の時演奏しました。ノビリメンテの部分、この歳になって聞くと(YouTubeにて)ある程度歳食った男の哀愁みたいに聞こえてきます。勝手に思ってるだけですから
o(*^▽^*)o 平原さんに歌詞付けて歌って欲しいですね。

投稿: motouchimaro | 2010年11月28日 (日) 23時25分

motouchimaroさん、ようこそお越しいただき、またコメントもいただき本当に有難うございます。

ジョヴァンニーニはポピュラー音楽の世界で活躍した作曲家なので、こういったところの旋律は親しみやすく、”歌える”ものが多いですね。そして大衆的であっても品は下がり切らないところが、欧米の音楽家は凄いなぁって思っています。

またお越しいただき、コメントも気軽にお寄せ下さい!

投稿: 音源堂 | 2010年11月29日 (月) 00時08分

ご返答、ご丁寧にありがとうございます。中・高とトロンボーンやってましたが、それ以降は縁がなく…。ここ数年、YouTubeやニコ動で昔のコンクールの課題曲や演奏したことのある曲なんか聴くのが楽しみです。ちょくちょくお邪魔します(o^-^o)

投稿: motouchimaro | 2010年11月29日 (月) 10時04分

お久しぶりです。ブラバンKISSです。昨日、何気にネットを検索していたら、タワーレコードから「山田一雄/吹奏楽オリジナル名曲集」と銘打ってCDが復刻発売されているではないですか!内容をチェックすると、間違いなくLPで絶盤となっていたキングレコードからリリースされていたあの3枚が全て収録されていました。直ぐに注文し、先ほど届いたCDを早速聞いてみました。 この演奏を聞いたのは30年ぶりぐらいでしょうか。演奏が進むにつれ、目頭が熱くなっていきました。最近の演奏には見られない、ひたむきな演奏に感動しました。収録されていた幾つもの曲を、私も演奏してきましたがそれも含めて、今日までなかなか名演奏に出合うことはありませんでしたが、久々に感動出来ました。() 今時の演奏に比べると、サウンドやテクニックなど合奏力にもかなり厳しい面も見受けられますが、積極的に音楽を作りあげようという姿勢が強く感じれました。最近の演奏はいかにもソツなく、正確なものが多くなってきているとは思いますが、だからこそその高い合奏力を持ってもっと突っ込んだ表現の演奏を期待しています。アマチュアだったけど、野庭高校のようなひたむきな演奏に…。

投稿: ブラバンKISS | 2011年3月 2日 (水) 22時49分

ブラバンKISSさんもこのCD、買われましたね!
素晴らしい復刻企画で、思わず拙Blogでも紹介させていただいた次第です。
仰る通りで、このシリーズの演奏はより積極的な表現に踏み込もうとした志向が感じられますね☆

投稿: 音源堂 | 2011年3月 2日 (水) 23時11分

お久しぶりです。今日届いた、CAFUAのCDの中にこの曲が入っていました。
結構以前から、演奏されていたにも関わらず、本格的な演奏の録音が無かったこの曲。東吹の復刻盤以来?の登場に、思わず喜んでいます。演奏も昔の自衛隊の演奏とは打って変わって、良く考えられた好演奏だと思います。それに録音の良さ!私も高校生の演奏会で演奏しましたが、中間部のあの美しいメロディーは流れが止まらない程度で、少しだけゆったりと聴かせたいと思います。(楽譜ではテンポは最初から一貫してますが…。)
それにしても、素晴らしい企画のCDでした。海上自衛隊と川邊氏の演奏にも、好感が持てました。

投稿: ブラバンKISS | 2013年3月29日 (金) 21時40分

私も新曲集の中に、こうした”名作”を再評価し収録してくれる企画は本当に有難いと思っております。ですから今回も広告を見てすぐさま予約、直ちに入手しました!^^)

「序曲変ロ長調」は不変のテンポが一本通った中で、もの凄く多彩な表情の変化を見せる傑作ですよね。それぞれの旋律や楽句の魅力だけでなく、音色配置も実に巧みです。この辺りはやはりウェイン・ロビンソンの手腕がモノを言っているのかも知れません。

投稿: 音源堂 | 2013年3月30日 (土) 10時10分

お久しぶりです。その後、愛器Tbと共に、お元気で、お過ごしでしょうか?

管楽器プレイヤーにとっては、まさに、「百害あって、一利なし」のコロナ禍ですが、さすがに、そろそろ終息願いたいものですね。

さて、昨夜、何気に、この曲を検索していたら、DL発売されている音源に、行き着きました。
「Magic Fire Concert Band」という団体による演奏で、2019年DL発売となっていて、詳細は不明でしたが、私好みのシャープなサウンドで、なかなか聴き映えのする印象でした。最後に拍手が入っており、ライブ演奏のようでした。


久しく、音源に恵まれない楽曲ですが、こういった演奏を聴くと、まだまだ、忘れ去られるには、惜しい名作だと思います。

どうぞ、お身体に気をつけて、お過ごしくださいませ。(^o^)

それでは、また。

投稿: ブラバンKISS | 2022年5月 8日 (日) 21時42分

ブラバンKISSさん、ご無沙汰しております!お元気なご様子で何よりと存じます。
私は変わらずTrombone修行に励んでおります。COVID-19につきましては、本当に同感の限りでそろそろ勘弁してほしいですね。
音源情報有難うございます!Amazonにて同音源確認しましたので確保し聴いてみます。重ねて洵に有難うございます!

このBlogもだいぶ以前から3/4がスマホやタブレット端末での閲覧です。また近年のココログの仕様変更で記事作成がとても煩わしくなっておりました。
そこで、本Blogの内容を改訂しつつTwitterへ移行する作業を開始しました。(Twilogも利用し、将来過去記事を参照したい場合の対応も図っています。)
レイアウトを思った通りにできますし、iPad等のタブレットなら確実にココログより見やすいので決断しました。順次移行を進めていきますし、今後は新規記事投稿もTwitterにて行うつもりです。

Twitter版「橋本音源堂」はこちらです。よろしければぜひお越し/ご覧下さい!
https://twitter.com/ONGENDOtw

投稿: 音源堂 | 2022年5月 8日 (日) 22時25分

ブラバンKISSさん、早速「Magic Fire Concert Band」の演奏を聴きました!仰る通りなかなかの好演だと思います。各楽器の音色と音程の良さ、演奏の正確さからしても、相当なレベルのバンドだと感じました。
録音のせいもあると思いますが異常なほど柔らかい発奏ですね。演奏は弛みなく進める印象ですが、この曲にはそれが合っている気がします。
ただこのバンド、全然ネットにプロフィールや活動状況がヒットしないですね、謎です。もしかしてヴァーチャルなバンドだったりして…!?(^^)

投稿: 音源堂 | 2022年5月 8日 (日) 23時24分

早速の共有?(笑)、ありがとうございます。まさに、おっしゃる通りの感想です。

演奏団体については、まさに「エニグマ(謎)?」とでもいった感じで、情報が見当たりません…。

ただ、他のロシアものの作品を、幾つか併録して、アルバムとしているあたり、出版社お抱えのスタジオバンドかも、しれませんが、拍手からすると、地方のマイナー団体かも…。(笑)

でも、久々になかなか良い演奏に出会えました。まさに、70年代は、こんな感じの「大きな掴み」で、ストレートなサウンド、表現が全盛だったと思います。

まさに、アルバムタイトル「Old Fashion」なスタイルを意識してたのかもしれません。それが、却って、懐かしさや共感を呼んだのかもしれませんね…。
GWの最後に、良い、おみやげを見つけたような、楽しい気分になれました。

こちらのサイトに掲載されている、資料や解説は、大変貴重で稀有なものです。どうか、末長く残していただけますよう、よろしくお願いいたします。私にとっても、指針であり、財産です。これからも、よろしくお願いいたします。

投稿: ブラバンKISS | 2022年5月 9日 (月) 02時15分

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