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2006年11月 3日 (金)

歌劇「パーフェクト・フール」よりバレエ音楽

Photo_3The Perfect Fool, Ballet Music 
G.ホルスト
(Gustav Holst 1874-1916)
 I. Andante
 II. Dance of Spirits of Earth
 III.Dance of Spirits of Water
 IV.Dance of Spirits of Fire



グスターヴ・ホルスト
はあまりに有名な「惑星」の他にも興味深い作品を幾つも残している。それらは「サマーセット狂詩曲」のようにイギリス民謡に根ざすものから、日本の舞踊家のために書かれ日本民謡をフィーチャーした「日本組曲」、阿波踊りのメロディーも登場する「東洋的組曲
ベニ・モラ」、はたまた”マハーバーラタ”に基く舞台音楽に至るまで、非常に幅広い。

「パーフェクト・フール」(
1918年はホルスト自身の台本による一幕ものの歌劇で、その内容に触れた文献はなかなか見当たらないが、その難解さゆえに聴衆はついてこれなかったということのようだ。
しかしながらその序曲は「フーガ風序曲」として独立して演奏されるほか、この「バレエ音楽」も単独で演奏され、幾つかの録音もある。「惑星」に近い曲想をもった楽曲であり、色彩豊かで神秘的、そしてエキサイティング!本来もっと人口に膾炙してよい作品と言える。

※尚、邦訳標題は「どこまでも馬鹿な男」が多いが、私はマーケティングの観点からも断乎として「パーフェクト・フール」と表記する!

♪♪♪

曲は3/4拍子、トロンボーンのソリで始まる。
Pfool1トロンボーン奏者としてのキャリアを持つホルストならではのオープニングであり、他にこのような管弦楽曲はまずないだろう。このトロンボーンは精霊たちを召喚する魔術師を表すという。
9/8拍子の経過句を挟み、この召喚のテーマが再び繰り返される。

まず現れたのは「大地の精霊の踊り」である。
Pfool2
7/8拍子、木管低音のオスティナートに載って地の底から現れた精霊の踊りを、コントラバスが奏でだす。トロンボーンのソロで第2主題が提示され、第1主題と応答しながら高揚し、全合奏での溌剌としたクライマックスとなる。
Pfool3_2この間、
Tubaのソロなども聴かれ、色彩感豊かな音楽が展開する。

静まって召喚のテーマがヴィオラ、チェロ、オーボエとソロで受け継がれていき、優美でファンタジックな「水の精霊の踊り」がピッコロ・フルートの歌で始まる。Pfool4
透き通った静かな泉をを感じさせるこの部分では、チェレスタとハープが殊のほか効果的である。独特の神秘的なサウンドはホルストの面目躍如で大変に魅力的だし、低音域から歌い上げていくフルートのソロがまた味わい深い。

Pfool5今度はファゴットに召喚のテーマが現れ、低音から高音へとベルトーン風に駆け上がるエキサイティングな導入で、最後の「炎の精霊の踊り」を迎える。
ここでもトロンボーンが非常に効果的に使われ、緊張感が最後まで保たれたまま、一気呵成に突き進んでいく。全合奏での燃えるような4分音符のサウンドは大迫力。

徐々に静まってテンポを落とし、チェロとコールアングレのソロが最後の召喚のテーマを奏すると、「水星」を髣髴とさせるコーダへ。静まりきった中、突然の全合奏の一撃で劇的に幕を閉じる。

♪♪♪

Photo_2音源は
マルコム・サージェントcond.
ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団

をお薦めしたい。

♪♪♪

ところで、この曲を私が知ったのは学生時代。
当時、同学内のオーケストラ(この頃、オケと我が吹奏楽団は盟友関係にあった)の指揮者はデヴィッド・ハウエルというイギリス人で、イギリス音楽ばかりを採り上げていた。その中でこの曲を演奏していたのだが、曲名を聞いた瞬間は「ホルストのパーフェクト・フールぅぅぅ??(マニアック!)」って感じだった。ところが聴いてみると、ドえらくカッコいい!それ以来ずっと注目していた。

そして就職後、新しい吹奏楽レパートリー開拓を考えていた私は、ロンドン勤務の会社の後輩に頼んでフルスコアを入手、杉本 幸一氏にトランスクリプションを依頼したのだった。

この吹奏楽版はまず阪急百貨店で演奏されたのち、改訂し1998年の狭山ケ丘高校(埼玉県)の定期演奏会で初演された。
原曲の雰囲気を壊さないことを念頭に作られており、中でも「水の精霊の踊り」ではゾクゾクするようなサウンドが聴かれる。トロンボーンが大活躍のこの曲、トロンボーン・パートの充実したバンドはぜひ挑んでみては如何だろうか?

出版はウインドギャラリー。

※下記
HP内の”アレンジ作品”をクリックしてみて下さい。
http://www.wind-gallery.co.jp/wind-gallery.html


(Revised on 2008.6.6.)

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コメント

こんにちわ。
私は中1でオーボエを吹いています。
去年の12月からオーボエになって(以前はクラリネットをしていたのですが)今年の吹奏楽コンクールでTHE PERFECT FOOLを自由曲でやることになりました。ご存知とは思いますが?145小節目から148小節目までオーボエの短いソロ、158小節目から162小節目まで長いソロがあります。
私のいる部活には2年にもう1人オーボエ担当の先輩がいるのですがその先輩に短い方のソロを吹くように言われました。

コンクールで吹くにあたってアドバイスとかがあれば教えていただけないでしょうか?

投稿: サクラ | 2007年2月11日 (日) 18時53分

サクラさん、ようこそ。「パーフェクト・フール」でコンクールに・・・なかなかナイスな選曲デス!譜面は我らが杉本版でしょうか?

まだ楽器を始められて間もないと思いますが、このソロはなかなか難しいですよ。このフレーズは冒頭でTrb.パートが提示した"召喚のテーマ"の断片であることはお判りですね。

ソロの15小節前/Andanteにハッキリと現れていた"召喚のテーマ"は、徐々に遠くなり、断片的になり・・・。そしてサクラさんの担当されるソロで区切りをつけ、「水の精の踊り」に移るわけです。
サクラさんのソロに繋がってくる"召喚のテーマ"を演奏する各楽器に充分耳を傾けましょう。その人たちと一本の音楽の流れが作れるでしょうか?「1ト2ト3ト、タラララタ~♪」と吹くのが自分の出番、という捉え方ではありません。皆で一つの歌を構成するのです。特に直前のHornのフレーズとの受渡しには細心の注意が必要ですね。チェレスタの8分音符と自分は揃っていますか?ここにも耳を澄まさないと・・・。

Fluteパートと構成する和音はどうでしょう?
Oboe:F# Picc.:E Flute:A,C
Am6ですか。和音の構成も頭に入れて、美しい響きを追求しましょう。また和音の出がピタリと揃うことも、音楽的な音の仕舞い方も、美しい響きの要件ですヨ。

さて楽句は上昇型なのに、音楽は遠く消えていくように進むところです。(一緒に和音を作るFluteパートにはppの指定があります。)となると、いつものように?単に音程の上昇に合わせてクレシェンドする表現は、相応しくないかもしれません。

音楽はニュアンス(=微妙な感じの違い)の芸術です。いつぞやか東京芸大の村井先生(Cla.)が「”大きく”と言われたからバケツをひっくり返したような音を出したり、”もっとPPで”と言われたから、何も吹かずに”これがPPです”と言うような人には、そもそも音楽はできない。」という趣旨のことを述べておられました。
では、このソロのニュアンスは?音量だけでなく、色々な面から考えてみましょう。

一方、ソロですから音は「立たせ」ないといけません。音色・音質は、理想の音をしっかりとイメージした上で、着実な自己研鑽をするほかありませんね。どうか楽器と仲良しになって、頑張って下さいね。

♪♪♪

中学生の方からのご質問に対して、くどくどとオジサン(私)の意見を書いてしまってごめんなさい。

このたった一つの短いソロだけを見ても、注意すべき点は(私が指摘することができたものだけでも)たくさんあることが、判っていただけたと思います。
でも、こういったことを詰めていかねばならないのは、何故なんでしょう?

それは、あなたが「こう吹きたい!」というその表現を、しっかりと決めるということなのです。音楽を通して自分を表現するのですから、どう表現したいか考え、どうしたら伝わるか考え、伝えるための努力をしなければならないのです。

「こう吹きたい」という奏者の想いが伝わらない演奏はつまらない。しかし、逆にそれを伝えることに成功したときには、音楽の感動が生まれるのです。

♪♪♪

どうかその時の喜びを目指して、音楽に取組んでくだサイ。
ホルストの音楽も、Oboeという楽器も、その努力に必ずや応えてくれるはずですから。
どうぞ、いい音楽を!

投稿: 音源堂 | 2007年2月12日 (月) 00時20分

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