ランデヴー・ウイズ・ジ・アザー・サイド
Rendezvous with the Other Side
R.L.ソーシード
(Richard L. Saucedo 1957- )
敢えて訳すとすれば「”あちら側”との邂逅」とでも言おうか。「東洋と西洋」「ポピュラーとクラシック」「ピアノと管楽器」 「静と動」-こうした違うサイド同士の邂逅を巧みに織り込んだ意欲作である。
作曲者リチャード・ソーシードは、インディアナ州のカーメル高校で20年以上に亘りバンド指導を手掛けている人物であり、その活動もコンサートバンドからマーチングバンド、そしてジャズアンサンブルと幅広い。音楽に関しボーダレスに造詣が深いようで、この曲でもそれが発揮された。作曲家としても既にベテランの域にあるが、近年ハル・レナードより多くの作品が音源とともに出版され、注目を集めているところである。
♪♪♪
構成は序奏を持った3部形式。まず神秘的なサスペンション・シンバルに導かれたベル・トーンで始まり、日本的なフルートの旋律が提示される。これと扇情的にテンポを速めた全合奏とが交互に演奏され、序奏部を形成する。
12/8拍子の主部はモダンな和音を用いて緊張感と幻想的なムードを湛えた音楽であり、充実したサウンドを響かせクライマックスを迎える。Timp.のソロで一旦静まり、ピアノが活躍する中間部へ。
メランコリックな旋律に絡むピアノの音色が光る。この中間部もポピュラー音楽のムードを上手く取り込んで、魅力的なバラードとなっているのだ。
一転してパーカッション・ソリで快活な6/8拍子に戻る。管楽合奏の機能を発揮した楽句が随所に聴かれ、テクスチュアも複雑に。
金管群の鮮烈なファンファーレと中低音の生命感あるカウンターが印象的。そうかと思うと、リズミックな木管に導かせオーボエとホルンのたおやかな旋律を聴かせるなど、コントラストが見事である。
やがて毅然とした足取りでエキサイティングな終結部へなだれこむが、音楽的余韻を残すコードで曲を閉じるのが印象的。
♪♪♪
音源は、冒頭画像の出版社(Hal Leonard)から発売されたCD「ソーシード作品集Vol.1」をお薦めする。ソーシードの他の作品にもぜひ耳を傾けてほしい。
(インターネットでも試聴可能 : Hal Leonard )
ソーシードの作品はどれも新鮮な印象を受ける。
中でも私は”Snow Caps"や”Persistence"が大好き。聴いていて「やるなぁー」と感心させられるし、何よりカッコいい。もっと日本のバンドでも採り上げて然るべきと思う。
尤も、このデモ音源は
”Rendezvous with the Other Side”
という曲の魅力を表現し尽くした演奏ではない。
(本邦名門高校の演奏によるライブ録音もあるが、それも然り。)
もっともっと魅力的な音楽として表現できるはず。テンポ設定も含め、私自身ここはこうしたい、あそこはああしたいと感じながら聴いている。
より素晴らしい録音の登場を期待するとともに、技術的にも決して演奏困難な楽曲ではないので、もっと広く演奏されて名演を聴きたいものだ。
(Revised on 2008.5.5.)
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コメント
こちらもダウンロードして聴いてみました。
何というか、センスが滅茶苦茶いい。
映画のサントラ聴いてるみたい。
でも、サントラと違って、フレーズの断片じゃなくて曲としてちゃんとまとまってる、みたいな。
どんなふうに書いてあるのか?一度演ってみたいです。
でもって、こういうのがタダで聴けてしまうところがすごいです。
投稿: くっしぃ@サウジ | 2006年11月 3日 (金) 04時36分
私もハル・レナードのサンプルを聴いてみましたが、はっきり言ってかっこいい!
中間部のピアノといい、続くホルンの和音といい、非常に雄大で単に映画音楽的でなく、斬新な作りですね。でもティモシー・マーの作りとも違う。
特筆すべきはモダンな響き。クロスオーバーのような響きの中でクラシック音楽が展開する構成に、今にもやっていたいと思っています。
難易度は5段階で4.5。スリリングな展開且つ速いパッセージは少々難しそう。曲名が訳しにくいのでなかなか一般ウケしなそうが危惧もありますが、もっと演奏されて良い曲と感じました。
投稿: kuranet | 2006年11月 3日 (金) 11時38分
くっしぃ様、kuranet様
ね、イケてるでしょ、ソーシード。
彼は他の曲もなかなかに斬新なんです。ご紹介したハル・レナードのサイトで聴けますから、ぜひお試し下さい!
投稿: 音源堂 | 2006年11月 3日 (金) 13時53分
お薦めの3曲以外も聴いてみました。
クリスマスものの小品もなかなかいいですね。
何となく人を幸せにできそうな気がします。
他にもTO THIS HEARTBEAT THERE IS NO END
とか、WITH EACH SUNSET (COMES THE PROMISE OF A NEW DAY)とか、タイトルからしてオプティミスティック。ただ、TO THIS HEARTBEAT THERE IS NO ENDなんか聴く限りでは、単なる天真爛漫とも違って、何があっても鼓動は止まらない、そうあろうと努力するといった意志も感じます。言ってみれば、不屈のオプティミスムでしょうか。教育者でもある作曲家の一面を見るような気がいたします。
投稿: くっしぃ@サウジ | 2006年11月 4日 (土) 02時43分
このブログが、ソーシードに興味を持っていただく機会となったようで嬉しいです。
今後も、新旧を問わずいい楽曲・いい演奏をどんどん紹介していきますので、宜しくお願いしますね!
投稿: 音源堂 | 2006年11月 4日 (土) 09時03分