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2006年9月13日 (水)

バンドロジー

OsterlingBandology
E.オスタリング
Eric Osterling 1926-2005








2005年は、
アルフレッド・リードだけでなく、
吹奏楽界から少なくともあと二人の偉人を天に召していった。「トロンボナンザ」「トランペット・オーレ」「ティアラ」で有名なフランク・コフィールドと、本稿で採り上げる「バンドロジー」の作曲者、エリック・オスタリングである。思えば2005年は私にとって、とてもショッキングな年であった。

オスタリングは永く音楽教育の現場に携わった経歴の持ち主である。ポップス感覚を取り入れたファンシーなマーチを数多く作曲し、またポピュラー音楽の易しい吹奏楽編曲もたくさん残している。


   ※オスタリングの生年については、音楽之友社/吹奏楽講座
新版 8
      
「名曲とレコード 人名事典」に1906年という記述があるため混乱し
         
ているが、私の所有する音源のライナーノーツ、及びアメリカ現地の
          ”
Ringgold Band News Fall 2006”の記載を見ても1926年が正しい
          ものである。


「バンドロジー」
はオスタリングの作品の中でも最も人気が高いマーチ。彼の他の作品と同様に、必要とする演奏技術のグレードは抑えているにもかかわらず、チャーミングな旋律にモダンなリズムとハーモニーを織り込んだ、とても愛らしいコンサート・マーチとなっている。
題名のニュアンスは「吹奏」といったところか。短い楽曲の中に、聴きどころ満載である。

♪♪♪


快活さに満ちつつ、柔かな高揚感を感じさせるオープニング!
Photo_4これに続く旋律が実に愛らしい。1_4










続いて聴こえるクラリネットの低音域の歌とユニークなベースラインの掛け合いが面白い。2_5








トリオもクラリネット中低音の美しい音域で歌い、ミュートをした金管のバッキングがユーモラスだ。1_3

シンコペーションを効かせたダンスのような中低音の楽句も実にユニーク!2_6










最後は、全合奏でトリオの旋律が高らかに歌われる。厚みを増したサウンドが音楽の満足度を高めている。3


オブリガートやバッキングが刻々と変わり、決して飽きさせることがない。可愛らしい旋律を繰り出してほわっとしたムードに全体を包みながら、決してそれだけで終わらない色彩の変化・・・。
「演奏は易しいが良い音楽」にするために、初めから最後まで並々ならぬ工夫が駆使されているわけで、これは奏者への愛情なしには考えられないだろう。その愛情が、演奏者のみならず聴く者の心も暖めてくれる。


♪♪♪

アマチュア奏者の多い吹奏楽界において、演奏の実現性確保と音楽的興味の両立をギリギリまで考え抜いたのが、オスタリングその人であろう。
演奏は容易なのに、音楽としての楽しさや現代的なムードを有する・・・これが如何に難しいことか。それにこだわり続けて多くの作品を残してきたのだから、常人の成せることではない。

「マスタング!」(
Mustang !
の緊迫感に満ちたイントロダクション
「ザ・ナッツメガーズ」(The
Nutmeggers
のたおやかな木管の下降系楽句
「クリスタル・スター」(
Crystal Star
の得もいわれぬ透明感・・・。

オスタリングはそれぞれの楽曲に新鮮な個性を与えたが、共通するのは愛らしく美しい旋律、全くぶれない創作の「軸」!

偉大なる先人=スーザに対する一つの答えを、キチンと叩き出してオスタリングは逝った。それに続くべき方々は、果たしてどのような答えを用意しようと考えているのだろうか
!?

♪♪♪

「バンドロジー」は未だに市販のCD音源はなく、アナログLPの音源のみである。

Photo_3今村 cond.
東京佼成ウインドオーケストラ
この音源も
LPとカセットテープで発売されただけで、今となっては入手は困難だろう。ユニーク極まりない「ジャニュアリー・フェブラリー・マーチ」(D.ギリス)の唯一の音源でもあるのだが・・・。綺麗に整いつつ、この曲の持つ魅力を発揮した素敵な演奏。

P8080008ポール・ネヴィルcond.

ロイヤル・マリーンズ・バンド
最後に原曲にはない「2拍目」が加わっているが、とにかくリズム感に優れた見事なマーチで、ウキウキとした音楽の喜びが溢れる。さすがロイヤル・マリーンズ!


P8080007ジョン・カカヴァスcond.
シンフォニック・ウインズ

ややテンポにブレはあるものの、実に快活で愉しい!終盤はジャジーなハーモニーをガンガン強調している。
オスタリング作のマーチ「サンダークレスト」の唯一の収録盤でもある。

(尚、この他のオスタリングのマーチたちは
Hal Leonard社のサンプル音源によってその多くを聴くことができるので、ぜひ参照されたい。)

     【その他の所有音源】
      鈴木 孝佳cond. TADウインドシンフォニー(Live)


オスタリングの作品はまだまだたくさんある。
音源の更なる充実を期待したい。


(Revised on 2017.10.15.)

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