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2006年9月20日 (水)

平和の祭り

Photo_7Fiesta del Pacifico
R.
ニクソン
Roger A. Nixon 
1921-2009)




「パシフィック・セレブレーション組曲」「シャマリータ!」などで有名なロジャー・ニクソン1960に発表した大ヒット作。表題は作曲者自身も「太平洋の祭り」が適切との見解だが、私にとって馴染み深い表記とさせていただいた。

ニクソンはアーサー・
ブリス、アルノルト・シェーンベルク、エルネスト・ブロッホらに師事したアメリカの作曲家で、1973年「フェスティヴァル・ファンファーレ-マーチ」でABAオストワルド作曲賞を受賞している。
作風としてはダイナミックでエキサイティング、またラテン系のリズム・旋律をフィーチャーしたものが多く、この「平和の祭り」もこれに該当する。
しかし、より特徴的なのは
Chilly”なニクソン・サウンドと言えるのではなかろうか。単なる「冷たい」という言葉は適切でないが、エキサイティングな中でも温度が上がりきることがなく、常に神秘性を兼ね備えたサウンドが個性的であり、魅力的だ。

Old_spanish_daysposter_97この「平和の祭り」は、カリフォルニア州で毎夏8月第一金曜の「オールド・スパニッシュ・デイズ」※を挟んで行われる祭典の様子を描写した音楽。これはスペイン系の住民が多いサンタ・バーバラの町を挙げて催すスペイン祭。音楽・ダンス・パレード・ロデオ等で盛大に祝う。
(尚、ニクソンのもう一つの代表作「パシフィック・セレブレーション組曲」もこの「オールド・スパニッシュ・デイズ」を題材とした作品だそうだ。)


Old_spanish_days_1resized_5Old_spanish_days_2_6Old_spanish_days_3_resized_4Old_spanish_days_rodeo_resized_3







※「オールド・スパニッシュ・デイズ」の詳細をお知りになりたい方はこちら

http://www.oldspanishdays-fiesta.org/home.html

ニクソンはこの曲を”音のフレスコ画”と称し、以下のように述べている。

「この曲は交響詩、或いは音楽劇ともいうべきもの。しかしそれは物語を語るというより、印象というものを描写的に創造するものだ。スペインとメキシコの混血民族(スパニッシュ・メキシカン)の間でよく演奏される舞曲の形式を持つ作品であり、詳細な音楽的知識がなくても楽しんでいただけるだろう。」

描写においては、打楽器も含めた各楽器の音色を生かした色彩の変化が巧みな上、重ねる楽器の組合せも面白い。耳を澄ませば澄ますほどにそれに気付かされることだろう。

♪♪♪

曲は3/4拍子、緊迫感溢れるミュート・トランペット&スネア・オフのドラムの刻みに始まるが、全曲がこのエネルギッシュなビートに貫かれている。
Photo_9
クラリネットの低音域を効かせたエキゾティックな音楽の後、ほどなくエキサイティングな打込みを従え、まるでテキーラを浴びるほど呑み、その酔いに任せて”ぶっ放す”かのような激しいトランペット・ソロ!
Trp_solo
5
/8の変拍子がテンションを上げ、波打つような生命感を示す楽句のあと、低音に一層エキゾティックな旋律が現れる。
Photo_10
続いてコール・アングレのソロが息の長い旋律を朗々と歌い上げ、低音のエキゾティック旋律と、ソロ楽器によるこの息の長い旋律が交互に繰り返されて前半のクライマックスへ向かう。
Eh_solo
クライマックスの変拍子、遠くから近くへ迫ってくるティンパニ・ソロはまさに圧巻!
Photo_11


カスタネットに導かれて一旦静まり、ハープ・チェレスタの伴奏を伴った木管群のワルツ風の音楽が現れるが、その幻想的なムードが印象的。
Valse
シロフォンの奏するモチーフに導かれ、ユーフォニアム&ファゴットのソリと激しい打込みでブリッジを形成。

テンポ・プリモとなって、低音のエキゾティック旋律が戻ってくる。これに木管群とミュート・トランペットのオブリガートを絡ませながら、徐々に楽器が増して高揚していき、最高潮での突然のG.P.は鮮烈極まりない!

Climax_2そして、最冒頭の楽句が再現され、全ての旋律が一体となったクライマックスへ。
Trp.がリードする息の長い旋律、木管群のエキサイティングなリズム応答、パーカッションのラテンのリズム、低音楽器の憂いに満ちたカウンター。
・・・これらが渾然一体となっていくさまは、感動的というほかない。そしてより一層高らかに歌い上げる金管群がその感動をさらに押し上げ、まさに「イキっぱなし」(!)で息をもつかせぬ状態となる。この圧倒的な熱狂は、いったい何なんだ・・・。

これほどに血沸き肉踊る曲想にもかかわらず、響きはChillyなニクソン・サウンドに支配されている。
この個性、やはり只者ではない!

♪♪♪

音源としては、
ドナルド・
ハンスバーガーcond.
イーストマン・ウインドアンサンブル
の演奏(冒頭画像参照)をお薦めしたい。
スコア表記では主部が
=138のテンポ指定であるが、より速めのほうがこの曲の表現には相応しく、150程度が”超気持ちいいっ”と思われる。その意味で、快速なテンポで表現するこの演奏がイチ押し。

Photo_8尚、
1971年の全日本吹奏楽コンクールでの関西学院大学の演奏も、この曲のニュアンスを存分に表現した快演。
(左画像:収録CD)

メリハリがあるのに快速なテンポで一気呵成に聴かせ切る、ハートのある演奏であり、打楽器の好演も光る。

  【その他の所有音源】
   ハリー・ベギアンcond. イリノイ大学シンフォニックバンド(Live)
   ドナルド・デロッシュcond. ディポール大学シンフォニックバンド
   ハワード・ダンcond. ダラス・ウインドシンフォニー
   デニス・レイエンデッカーcond. アメリカ空軍軍楽隊
   ローウェル・グレイアムcond. アメリカ空軍”Heritage of America”バンド
   金 洪才cond. 九州管楽合奏団(Live)


(Revised on 2011.2.20.)

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