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2006年9月23日 (土)

波の見える風景(改訂新版)

Photo_2View with a Glimpse of Waves
(Revised Version)

真島 俊夫
Toshio Mashima 1949-)




”品のあるセンチメンタリズム”に溢れる秀作。
作曲者真島 俊夫
は今や押しも押されぬ本邦吹奏楽界の重鎮にして稀代のヒットメーカー。「三つのジャポニズム」「三日月にかかるヤコブのはしご」「ナヴァル・ブルー」「ミラージュI・II・III」「虹は碧き山々へ」「神門物語」「コーラル・ブルー」「五月の風」「巴里の幻影」・・・ヒット曲は枚挙に暇がない。またポップス編曲の分野でも、名アレンジを多数送り出していることを忘れてはいけない。

この曲は1985年の全日本吹奏楽コンクール課題曲B/吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」として発表されたものであるが、1982年に作曲された"Rainbow over the Sea"がその原型。そして1988年にオリジナルのスケッチも復活させる形で編み直し「改訂新版」として完成をみたものである。
極めて描写的な音楽であるわけだが、単なる情景描写に止まらない。旋律一つをとっても胸を熱くする「泣かせる」ものであり、心象風景までも描き出しているのが素晴らしい。

遠い遠い海の情景を描く序奏部-もうここから胸を締め付けるようなセンチメンタリズムに包まれるが、そのまま身を任せてもいいと思わされる品格を備えたものである。グロッケンシュピールとヴァイブラフォーンに導かれてOboeが歌いだす旋律が殊のほか美しい。
そうかと思うとテンポを速めて、泡立つ波とそれを受ける海岩の情景描写・・・。変化する波の表情をヴィヴィッドに捉えて曲想はある時は激しく、ある時は穏やかに、生命感のある音楽で表現されていく。「改訂」されて表情はより多様なものになった。

Trp.16分音符がその音域や音色を踏まえた効果的な楽句として使われるなど、各楽器の音色や特性も巧みに生かしている。2度現れるフルート・ソロも、最初はあどけなく無垢な少女のようであり、次は夕暮れ時の海をイメージさせるノスタルジックで艶やかなもの、と全く違った表情を見せるのだ。

終結部に向かう12/8の木管のリズムパターンは”兆し”を存分に感じさせ、その期待を満たす壮大なスケールのクライマックスが訪れる。風と波のうねりを表現する木管楽器をバックに、あのOboeソロの旋律が金管楽器で高らかに再現される。そしてホルンの対旋律、これにしびれる!(真島作品のホルンの使い方には本当に舌を巻く。)
Alla Marciaで律動感を加えたかと思うと、rit.に続いて律動感を抑えた弾け飛ぶ波の描写・・・心憎い。
高らかなコーダは
Timp.ソロに導かれた華々しい全合奏のコードに結集し、低音部のパワフルな一撃で曲は終わる。

一曲の中に多くの表情を持つ曲であるから、聴き終えると心の中にさまざまな感慨が浮かんでしまう。海のそばという環境で育った私にとっては尚更なのかもしれないが・・・。

♪♪♪

音源は増井 信貴cond.東京佼成ウインドオーケストラ(冒頭画像参照)を推したい。ややテンポが早くもっとたっぷり聴かせてほしい部分もあるが、メリハリがあり、音楽の流れがキチンと整った演奏である。

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コメント

お疲れ様です。ここのところ、かなり精力的に執筆されてますね。恐れ入ります。
この曲は、僕にとっては、楽器始めて2年目に初めてコンクールに出た時の課題曲で、とても思い出があります。
ご存知のとおり、出だしが低音と鐘のCです。これが初心者には曲者の音で、いつもダメ出しされて、合奏練習が止まって、・・・というより始まりませんでした。同じ年の課題曲で、同じように低音から開始される曲でも、森田先生のマーチは、確かフォルテのF?で、奏者のことをよく考えてくれてるなあ、と中学生でも分かりました(でも、十月のマナのあるフレーズが何故Tbなのか?という問いに「それが余ってたから」というのでイメージが修正されましたが(笑))。
この「改訂新版」、課題曲の時より格段にいい曲になってると思います。何と言うか、微妙な色彩の変化だとか、光が反射してキラキラする様だとか、次々にイメージがわいてくるのです。オーケストレーションも変えてると思うのですが如何でしょうか?もっとも、演奏者も違うんですが・・・
ん~、また演ってみたいです。

投稿: くっしぃ@サウジ | 2006年9月24日 (日) 08時05分

たくさんのコメントを有難うございます!こうしてサウジにいる貴兄と繋がるなんて、ネットって本当に素晴らしいですね!頑張って更新しますので、引続き宜しくお願いします。

>オーケストレーションも変えてると思うのですが如何でしょうか?

はい、変わっていますね。ご存知の通り今度の定演で演るんですが、音に出してみると、改めてやっぱりいい曲だなーって思います。最近「改訂」版や「原典」版が結構ありますが、この曲は改訂した価値がもの凄くあったと言えますよね。

投稿: 音源堂 | 2006年9月24日 (日) 13時14分

昨日、日本コロンビアより再発売された吹奏楽コンクール課題曲集の数枚が届いたので、久々に課題曲を聴いてみました。CD化されたことで、当時のカセットテープより音質が向上していて、「良いものが安く手に入る時代になったんだなあ・・・。」と思いました。そして、この「波の見える風景」。コンクールでも結構優れた演奏に出会えた曲で今でも人気の高い曲ですが、初めてこの曲を実演・録音したであろうTKWOの実力の高さを改めて感じました。アマチュアとちがい、初見からわずかな時間のリハーサルを経て、これだけの演奏をやってのけた凄さはやはりプロ。今では、面影もない感じですが、当時の主席の先生方の音楽性の高さが、指揮者の適切な指示を音楽として具現化した演奏の一つだと思います。(参考演奏というにはもったいないくらい。)
終始メロディックな曲想が、風景を思い浮かべさせるような素敵な曲ですよね。
後に、この改訂新版も出され、色々聴きましたが、課題曲版の方がまとまっていて、完成度が高いような気も。あくまで、好みでしょうけど・・・。
それにしても、このころの楽曲、良いものがたくさん有ったんだなあとつくづく思います。課題曲も然り・・・。

投稿: ブラバンKISS | 2014年7月24日 (木) 23時10分

ブラバンKISSさん、どうもです!
私はこの課題曲参考音源集、前の版で買いました。それ以前はネットオークションで「カセットテープ」をコツコツ集めてました。^^)
私が中学生の時分から「課題曲なんて…」という声はありましたが、それでも近時と比べれば佳曲が本当に多かったなあと私も思います。
楽曲というのは実際に演奏すると「特別なもの」になりますので、課題曲はその分評価がインフレしがちです。我々聴衆も適切な評価をすることが、課題曲の質を高めることにつながるかなと思います。日本のコンクールというものを”今度は”キチンと説明した上で、海外の作曲家に委嘱するというのも良いのではないでしょうか。

投稿: 音源堂 | 2014年7月26日 (土) 07時31分

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