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2006年9月28日 (木)

序曲「ピータールー」

Photo_408Peterloo Overture op.97
M.アーノルド
Malcolm Henry Arnord 1921-2006




マルコム・アーノルド
の訃報-2006923日逝去、享年84歳。この年は私の大好きなアーチストの訃報が相次ぎ、淋しい思いでいっぱいになった記憶がある。

アーノルドについては
http://www.geocities.jp/malcolmarnoldjp/index.html
に詳しい記載がある(詳密なデータベースであり、ぜひ参照されたい。)ので多くは触れないが、
1940年代はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の主席トランペット奏者として活躍している。
Malcolm_arnold_2その入団以前にロンドン王立音楽大学で作曲をG.ジェイコブに師事しているが、まさにロンドン・フィル在籍時代にオーケストラの機能や効果を体得したとされる。

アーノルドは一般に如何なる音楽家と捉えられているかといえば、何といってもアカデミー賞に輝いた「戦場に架ける橋」
1957)をはじめとする映画音楽の作曲家としてである。そしてごく現在では吹奏楽の分野で改めて高く評価されている。
(本稿を「吹奏楽曲」として扱うのはそのため。)

ポジションの近いウイリアム・
ウォルトンと比較しても、更に平明で通俗的な作風と受け止められているアーノルド。クラシック・ファンの評価は残念ながら概ね芳しくないようだ。
しかし、親しみやすく美しい旋律と、ダイナミックなクライマックス、ボーダレスな音楽へのアプローチが見られる彼の音楽は、理屈抜きでもっと楽しまれても良いと思う。”ラッパ魂”の感じられる作風でもあり、私は好きだ。


※そもそも彼がトランペットを始めたのはルイ・アームストロングに接したことがことがきっかけで、
Jazzにも高い興味があったことが窺える。
作品としても「ルイ・アームストロングのためのファンファーレ(
Fanfare for Louis for 2 Trumpets -
1970)」という作品を遺している。

♪♪♪

序曲「ピータールー」
1968の作品。
1819816日に英国マンチェスターのセント・ピーターズ・フィールドで起こった”ピータ-ルーの大虐殺”を題材にしたもので、生活に喘ぐ市民の集会と、それを妨害する騎兵団との争いがパニックを引き起こし、大惨事に至ったさまが音楽で表現されている。冒頭および終盤に現れる穏やかで美しい、壮大な旋律は当時の犠牲者に捧げるエレジー。

「この時の経験は最終的に人類が堅い信頼の絆に結ばれるもととなり、無闇に繰り返されることはない。」

 (アーノルドのコメント/樋口幸弘氏の解説による)

この夢見るような美しい旋律に、軍靴の音が迫ってくる描写は斬新。遠くから、しかし確実に断乎とした征圧の意思をもってスネアとバスドラムの響きが近づき、惨事が始まる。威厳を纏いつつもどこか間の抜けた中低音の旋律に、調子っ外れな
Trp.のぶっ放し。・・・狂気のほどが生々しく伝わる。
鮮烈なブラス陣がとにかくそそる曲だが、最後は冒頭のエレジーがこの上なく壮大に歌い上げられ、絵に書いたような大団円となる。
判りやすい楽想にどっぷり嵌って聴く-迷うことなくそうすればいいのだ。この曲はそうやって楽しむ音楽だから。

決して茶化しているのではない。アーノルドの作品はどれも凄くいい歌があり、殊にラッパ吹きには堪えられない響きがあり、期待通りのクライマックスが存分に用意されているから、「どっぷり」で行きましょう!これだけイイ節(旋律)が聴けるだけでも、手放しにアーノルドを評価していいと思う。

♪♪♪

音源は管弦楽原曲としてアーノルド自作自演盤(冒頭画像/バーミンガム市交響楽団)を、吹奏楽版は以下2枚を挙げておく。

Photo_409C.セイル編曲
ジョン・ウォーレス
cond.
ウォーレス・コレクション




Photo_410近藤
久敦 編曲
ダグラス・ボストック
cond.

東京佼成ウインドオーケストラ




全日本吹奏楽コンクールでの演奏では、
1995年の文教大学が瑕はあるがスケールの大きな好演で印象に残る。(CBSソニー実況録音盤ではパサパサした音の録音となっており残念だが・・・。)

1968年に函館西高が「イングリッシュ・ダンス」(Set IかIIかは不明)を全国大会で演奏した記録はあるが、アーノルドが本格的に吹奏楽で採り上げられるようになったのは1990年代に入ってから。
未開拓のレパートリーも残っており、これからまだまだたくさん演奏されるだろう。「どっぷり」嵌らせてくれる演奏が続々と現れることを期待したい。

(Revised on 2010.2.9.)

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コメント

ピータールーですか。かなり好きな曲です。
オケ版も佼成の作品集も持ってますが、僕としては淀工の演奏が一番好きですね。
粗いところもありますが、スネアの鋭さが曲想に合ってるような気がするので。

投稿: ゼスト | 2010年4月 4日 (日) 01時00分

ゼストさん、コメントを有難うございます。
この曲の流行は既にピークアウトしていると思いますが、今でも「ピータールー序曲」の検索ワードでお越しになる方がコンスタントにいらっしゃいます。そこで、近々本稿を全面改訂し、充実を図る予定です。

投稿: 音源堂 | 2010年4月 4日 (日) 19時34分

アーノルドの曲は、6宿もタモシャンターも演奏されているので、代表曲のピータールーの人気も根強いでしょうね。

投稿: ゼスト | 2010年4月 4日 (日) 23時30分

ピータールーは、私たちのマーチングに
引く曲です。
 ちょっと、怖い曲ですが、この話を聞くと
労働者の人の気持ちもわかるけどやっぱり、
ダメなものはだめだと
 そして、この曲をつくったかたは、本当に
すばらしいとおもいます。
 その、出来事の中に自分も吸い込まれていきます。でも死にたくはありません。((笑
 私は、この曲でマーチングをがんばって、
全日本マーチングコンテストにでたいです。

投稿: saxilove | 2012年4月21日 (土) 19時40分

saxiloveさん、コメントをいただき有難うございます。マーチングを頑張っておられるのですね!「ピータールー」は明快でとても魅力的な旋律を持っていますので、マーチングに向いているのかもしれませんね。
ぜひ頑張っていただき、先生や仲間の方々と心一つに練習され、嬉しい結果がもたらされますようお祈りします☆

なかなか時間がなく実現は遅れておりますが、本稿の改訂準備は調っており、近いうちにより充実した内容にできるものと思います。

投稿: 音源堂 | 2012年4月22日 (日) 11時48分

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