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2006年6月13日 (火)

トッカータとフーガ ニ短調

Photo_2Toccata and Fugue in D minor BWV565
J.S.バッハ
(Johann Sebastian Bach  1685-1750)


所属している楽団で、エリック・ライゼン編曲のこの曲の譜読みをしたことがあるのだが、私より大多数が若い世代なせいか(冒頭のフレーズはよく知っていても)意外に馴染みがないのかなあ、と感じさせられた。

私くらいの世代にとって、この曲は吹奏楽コンクールの自由曲として大変メジャーであり、数々のアレンジ、数々の名演があった。全国大会でも古くは1962年から、現在までに延べ40数団体にものぼるバンドが採り上げている人気曲。尤も近年では少なくなってきているけれど・・・。

♪♪♪

作曲年代は1703-1707年、或いは1708-1717年と二つの説がある。いずれにしても”音楽の父”バッハの青年期の作品と位置づけられ、若々しい力が漲っており、それが特徴の一つとされている。
(尚、バッハの「トッカータとフーガ」には”ヘ長調 BWV540”という作品もあり、こちらの方こそが傑作との意見もあるが、本稿で採り上げる”ニ短調 BWV565”の方が圧倒的にポピュラーな存在。こちらの音楽としての魅力も疑いない。)

オルガン独奏曲として作曲されたこの曲は、ディズニー映画「ファンタジア」(1940)の冒頭にも登場するストコフスキー編曲の管弦楽版が有名だ。
ただ、吹奏楽でもよく演奏されるのは何と言ってもギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団(フランス/パリ:以下「ギャルド」)の名演があったからこそと思われる。

全盛期のギャルドは充実した編成(アルトホーン、テナーホーン、ビューグルといった金管サクソルン族を常備した大編成で、またサリュッソホーンなどの特殊楽器を備えていた)かつ極めて優秀な奏者ばかりを集め、管弦楽に全くひけをとらないサウンドと音楽性を誇っていたことで有名。
実際、今当時の録音を聴いても、とにかく普段耳にする吹奏楽とはまた次元の違う響き・音色・アンサンブルであり、ハッとさせられてしまう。

そのギャルドの代表的なレパートリーがこの「トッカータとフーガ ニ短調」。1961年の来日公演でも演奏され絶賛されたという。吹奏楽指導者の多くがギャルドに憧れ、そのサウンドと音楽に近づこうとこの曲に挑んだことは想像に難くない。

Photoギャルドの録音は1967年のものが有名だが、芳醇にして豊潤、豪華絢爛な演奏に圧倒される。
編曲は当時楽長を務めたフランソワ=ジュリアン=ブランの手になるもので、この譜面が手に入らないかと昔のバンドジャーナル誌上でも熱く賑わっていたものだ。

♪♪♪

Photo_3一方で、1967年の全日本吹奏楽コンクールで優勝した出雲一中の演奏も凄い!
「バッハが現代音楽になっとった」と評されたおよそバッハらしくない演奏だが、鬼気迫る揃い方といい、確信に満ち満ちた音楽の足取りといい、まさに「喰らいついた」その演奏に気圧されてしまう。一体君たち何百回、いや何千回練習したんや・・・と。
カットの影響もあり、複数声部が絡み合うこの曲の奥行きを表現するという点では今一つ物足りないのだが、この曲の旋律性を鮮烈に浮き彫りにしており、結果として極めてドラマティックな音楽となって感涙を誘う。ああ、こんなに泣かせる旋律だったんだよなあ・・・と気付かされるのだ。
イーストマンウインドアンサンブルのドナルド・ハンスバーガーは「バッハの音楽にティンパニー以外の打楽器が入るなんて考えられない」と述べており、この演奏などその意味では論外かもしないが、青年時代にあった作曲者の作品であり、現代のメンタリティに置き換えればこのような熱情に溢れた演奏もあり得るとも言えよう。
前述のようにカットも大胆、”荒ぶる”感じもある演奏だが、記憶に残る快演であることは間違いない。
   ※当時の出雲一中指揮者 片寄 哲夫氏のコメント : 「izumo_comment.jpg」をダウンロード

♪♪♪

近年では森田 一浩先生のアレンジが高名。森田先生がこのアレンジに着手された頃、ちょうど私の所属する楽団は森田先生に指揮をお願いしていた。
練習終了後の宴会で、森田先生に「どのようなアレンジにされるんですか?」とお尋ねしたところ、「うーん、・・・この曲に秘められた・・・色気というか、艶というか、そういうものを引き出したいなあと思うんだよねえ。」(「色気」じゃなくって、もっと直截な表現だったかも?)と仰っておられたのを記憶している。

Photo_4コンクールの録音のほか、尚美ウインドオーケストラによる録音があるが、品格を保ちつつもカラフルな「トッカータとフーガ」であるという印象。終結部の華麗なアレンジはさすが、の一言。演奏自体は、色気?が発散されたとまでは言えないと思うが・・・。
森田先生の描かれたイメージそのままに演奏されたら、一体どういう「トッカータとフーガ」になるのであろうか?

♪♪♪

同じ「トッカータとフーガ」でも色々な姿がある。原曲のオルガンもまたいいし・・・。ピアノ版もぜひ聴いてみたい!

☆☆☆

上記1967年の全日本吹奏楽コンクールの出雲一中の快演につき、東京交響楽団クラリネット奏者の十亀正司氏がご自身のHPに想い出を書かれています。当時の熱気を感じさせる興味深い文章です。http://www.page.sannet.ne.jp/togame/konkuru/konkuru.html

( Revised on 2010.2.21. )

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