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2006年6月13日 (火)

吹奏楽の魔術師 2005.4.6.

Photo_2名門・阪急百貨店吹奏楽団の指揮者であり、また本邦吹奏楽界そのものを指導してこられた鈴木 竹男氏の訃報に接しました。
親しくさせていただいている杉本 幸一氏が、阪急百貨店や阪急少年音楽隊に楽曲を提供していた縁で、何度か鈴木氏にお会いしたことがあります。まさに円熟期であられたことと思いますが、斯界の偉人はどこまでも柔らかなオーラに包まれていました。

私が氏の指揮する阪急百貨店の演奏を初めて聴いたのは、1978年全日本吹奏楽コンクールの実況録音であり、それは「砂丘の曙」と「スター・ウォーズ」でした。まだまだ頭の固い時代だった当時において、この自由曲はあまりに斬新かつタイムリー過ぎました。傷は確かにありましたが、メリハリがあって音楽の流れが良く、金賞でも決しておかしくない演奏です。
しかし結果は銀賞。朝日新聞には「商業主義でウケを狙った選曲」という趣旨の、某評論家による心ない論評が掲載されました。(・・・実際にウケ狙いだったとして、何が悪いのか。音楽が良ければそれで良いではないか!)
「ミス・サイゴン」「ラ・マンチャの男」といった曲がコンクールの名演で聴ける昨今とは、隔世の感があります。ですからこれは、鈴木氏の柔軟でボーダレスな音楽への取り組みとその先見性を証明するエピソードの一つといえます。

また、私は翌1979年の阪急百貨店の課題曲「朝をたたえて」に救われてもいます。
あれこれ考えすぎる多感な年令となり、大好きな音楽についてもその意味や意義を自問自答しては迷い、素直に楽しめなくなっていました。しかしこの理屈抜きに楽しく、爽やかで素晴らしい演奏が、しかもコンクールという制約のある場面で堂々と提示されていることが、私を包む息苦しい霧を晴らしてくれました。吹奏楽の楽しさを私に再認識させてくれたこの「朝をたたえて」は、私のその後の音楽観自体にも決定的な影響を与えたのです。


かつてバンドジャーナル誌上で鈴木氏が、矢野清・広岡淑生の両先人を夫々「吹奏楽の神様」「吹奏楽の使徒」と紹介しその功績を讃えた記事がありましたが、その中で鈴木氏はご自身の決意についてもふれておられます。

鈴木竹男の目指したもの-
それは「吹奏楽の魔術師」でした。

     ※バンドジャーナル巻頭言「吹奏楽の魔術師」 : 「Magician.jpg」をダウンロード

レパートリーの幅広さ、新しいものに対する進取の気性。コンサートスタイルからマーチングに至るまでその第一人者であり、ボーダレスで変幻自在な音楽への取り組み。そして何よりその素晴らしい名演の数々からして、「鈴木竹男」は間違いなく「魔術師」でした。

一人のファンとして、心からご冥福をお祈りします。

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コメント

1978、79年と連続で、全国大会金賞を逃していた阪急が、まさに底力を発揮した、名演中の名演。当時のライブLPで、初めて聴きましたが、行進曲「朝をたたえて」は、始まった瞬間まさに「これだ」という演奏。6/8拍子のマーチは非常に難しく、一歩間違えば、「停滞~重い~リズム感の悪い」と大変なことになりかねない。でも、そんな不安を微塵も感じさせず、一気に感動へ引き込んでくれたすばらしい演奏でした。自由曲の「ルイ・ブラス」もすばらしかったのですが、この演奏こそ、マーチの王道で現在に至るまで、これ以上の演奏はコンクールで聴いたことはありません。鈴木先生/阪急の金字塔とも言える演奏で、時折今でも愛聴しています。それにしても、鈴木先生のマーチは、どれも堂に入った、すばらしい演奏が多いですね。あらためて心より感謝。

投稿: ブラバンKISS | 2007年8月27日 (月) 03時22分

隅々まで読んで下さって有難うございます!

「朝をたたえて」の年(1979年ですね、この年が^^)、私は中三で部長を務めておりました。
前年の西部(現九州)大会銀賞を超えるコンクール成績をと懸命に頑張っておりましたが、今思えば見当違いの努力ばかり。顧問(指揮者)が吹奏楽を初めて指導する教師に代わったこともあり、九州大会進出が精一杯で、銅賞という結果で涙にくれました。
努力が結果にならない。コンクールって何なんだ、音楽って何なんだと子供心に大きな蹉跌を受けたのでした。

「朝をたたえて」はこの年の課題曲E。吹連の情宣も悪く、この曲を選んでも良いという認識を私は持っていませんでした。実際、九州大会までこの曲を選んだバンドは全くありませんでした。

阪急の演奏はそんな中で聴きました。あとは本稿の通りです。
あの名演に救われて、今も私は音楽を、吹奏楽を続けているのです。

投稿: 音源堂 | 2007年8月27日 (月) 09時49分

こんにちは。(◎´∀`)ノ
個人的には、阪急ブラスバンドさんはYOU TUBE・「84年日本シリーズ」で何でも見てます。
どのコメントを見ても、称賛の声で溢れてます。私自身も、美しく上品な音色はいつ聞いても癒されます。
ちなみに、蓑田さんと松永さんの併用マーチが大にお気に入りです。(*^ω^*)ノ彡

投稿: 伝家の放蕩の息子 | 2011年3月23日 (水) 07時52分

ようこそお越し下さいました!コメントを有難うございます。
阪急バンドの演奏は、音楽の愉しさにあふれていました。どんな曲の演奏にもそれぞれに魅力があったのは、まさに”鈴木マジック”だったのでしょうね!

投稿: 音源堂 | 2011年3月23日 (水) 21時16分

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