2016年7月11日 (月)

リボンの騎士 (手塚 治虫) -第1場 作品概括

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”漫画の神様”手塚治虫の作品にして、その代表作である。

そんな歴史的金字塔コミックについて、私風情が何を今更語ろうというのか?-さんざん自問自答したのだが…
「俺はリボンの騎士が好きだぁぁ!」と全世界に叫びたい感情と、この名作の途方もない魅力を何としても知らしめたいという使命感とが燃え上がり、どうにもならない。
この際、衝動に身を任せてしまうことにした。

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Topimage_2きっかけはアニメ「リボンの騎士」(1967-1968年 フジテレビ系にて放送)のオープニングテーマに改めて魅了されたことだった。-あれっていい曲だったよなぁ、ふとそう思って聴き直したら完全にハマってしまった!そして改めて原作に興味が湧く…という構図である。
Photo_5あのアニメはあれはあれでもちろんアリだと思うし、時代のことを考えれば尚更だ。ただ私自身は(DVDを買って改めて視聴したりもしたけれど)原作ほどのインパクトを受けることもなければ、焦がれるようにハマることもなかった。
-あのアニメは、神様・手塚治虫が創り出した、私の好きな「リボンの騎士」の世界観とは違うものだったから…。

私が愛して已まないのは、紛れもなく原作=手塚漫画の「リボンの騎士」なのだ。いずれのヴァージョンもストーリー・テンポ・キャラクターなど眩しいばかりの魅力にあふれ、読み始めたならあっという間に夢中になり、ひたすら「おもしろい!」の一言しかない。美しい線が生み出す魅力的な絵柄に華麗な色彩、そして何よりとっても上品で、人間の正しい美意識が充満した作品なのである。

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「リボンの騎士」は手塚が14年間に亘り、4つの作品で制作を続けた作品として知られている。

1.少女クラブ版
V0000168535_0001_3講談社「少女クラブ」1953年1月号-1956年1月号に連載。
手塚自身が語るように「日本のストーリー少女漫画の第1号」である。宝塚に育った手塚は、この日本初のストーリー少女漫画の企画に対し「女の子に人気の高い宝塚歌劇の舞台を漫画におきかえてみたらどうだろう」と着想し、「(宝塚歌劇に慣れ親しんだ自分なら)宝塚歌劇調のコスチュームプレーが漫画で十分表現できる」という確信の下、執筆・連載に踏み切った。連載当初からものすごい支持を受けた、と手塚は述懐している。
(尚、主人公サファイヤのモデルになったのは、1940年代に宝塚歌劇団の娘役として活躍した淡島千景だったそう。)

2.双子の騎士
51owtxgi38l講談社「なかよし」1958年1月号-1959年6月号に連載。
連載当時の題名はこれも「リボンの騎士」で、「双子の騎士」という題名は単行本化された際につけられたもの。少女クラブ版の後日譚として制作されており、少女クラブ版の主人公・サファイヤ姫と、フランツ王子との間に生まれた双子の物語。

3.なかよし版
51xmhswrojl講談社「なかよし」1963年1月号-1966年10月号に連載。
「少女クラブ版」を作者自身が完全リメイク。「少女クラブ版」とはキャラクターの入替えやエピソードの変更が多くみられ、またコマ割りも現代的また映画的なものとなっているほか、サファイアが「二次元アイドル」として確立されるなど、また新しい魅力を発揮した「リボンの騎士」である。
本連載中に準備が進み、連載終了間もなくアニメ放映が始まったこともあり、この「なかよし版」が一般的に最も知られた「リボンの騎士」となっている。

4.少女フレンド版
講談社「少女フレンド」1967年24号-1967年29号に連載。
いわばアニメ放映開始に合わせたタイアップ連載であったが、6週で終了。手塚は原案のみで作画は担当しておらず「明らかに失敗作」と手塚自身が述べた本作は単行本化されることもなかった。

1977年発行の「手塚治虫漫画全集6」のあとがきにて、手塚は「もう二度と『リボンの騎士』は描かず、思い出として心に残しておきたい」と述べたが、その通り上記4作品を以って、「リボンの騎士」は封印されたのである。

20081112054454_2尚、手塚治虫という漫画家は作品の改訂を非常に頻繁に行ったことで有名であり、「リボンの騎士」もその例外ではない。
即ち手塚は上記1~3のバージョンのいずれにおいても単行本化やそしてその再版、全集化の機会があるたびに、相当な改訂を重ねている。台詞や絵の直しにとどまらず、かなりのコマ数をカットしたり逆に書き直したり、場面の順番を入替えたりと尋常でない労力をかけて…。こうした改訂を繰り返しているため、(作品の印象自体を変貌させないよう考えられてはいるが)現行単行本所載のものと連載当時のものとでは、著しく異なっているのである。

   ※主たるものとしては、単行本として読んだ時のテンポ感を上げる
     ために、省略できるコマは可能な限り省略していることが挙げら
     れる。
     手塚が他界した今となってはもはや手の施しようはないが、私の
     見るところでは並べて読んでみると、改訂前の方がベターに感じ
     られるものも結構あるというのが正直な印象ではある。


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Mono_1_2「リボンの騎士」は天使チンクの悪戯により”男の子と女の子二つの心”を持って生まれてしまった王女サファイアが、王位継承争いゆえに実際に王子としても育てられるという設定で始まる。ストーリーの中心はサファイアと隣国の王子フランツとの恋愛である。
そこに国を我が物とせんとするジュラルミン大公一派や、サファイアから女の子の心を奪おうとする悪魔の企みが迫ったり、多彩なキャラクターが登場してさまざまにエピソードが展開する。

26_3世界中の童話やシェイクスピア劇などからエピソードやキャラクターが直接的また間接的に引用されているが、そのことは漫画作品である「リボンの騎士」の価値を下げるものでは全くない。
もしそれをオリジナリティの欠如と指摘するならば、それは手塚の目指した”映画的”漫画作品の価値/意味というものを見立て間違っていると云えよう。

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手塚は単行本化された「少女クラブ版」にこのような文章を寄せている。

「白鳥に変えられた王女さま、下界に降りたかわいい天使の子、空を飛ぶ金の船、ふしぎな魔法使い…こういったおとぎ話は世界じゅうどこの国にもあるようです。
世界じゅうの人たちが小さいときから、おかあさまに聞かされたり、本で読んだりして、胸の中にはぐくみ育てた夢はおなじものだったのでしょう。そして、こうした美しいおとぎ話は、こののち、どんなに世の中が変わっても、いつまでも消えないで、やさしくみんなの心をたのしませてくれることでしょう。
「リボンの騎士」は、そういう昔からの美しい話、おもしろい話を集めて、私が作った絵物語です。きよらかなみなさんの胸を、おなぐさめできればさいわいです。」


Og002_2第1作「少女クラブ版」の連載開始が1953年-かの終戦から未だ8年も経たぬ時代である。
多くのカラーページに彩られたこの「リボンの騎士」は、当時の少女たちの心をどれほどなぐさめたことだろうか。

もちろん手塚だけでも、漫画だけでもなく日本において全てが復興に心を向かわせ、子供たちの喜びと未来に願いを馳せた時代なのだが、この魅力的な”おとぎ話”がもたらしたものは本当に大きかっただろう。


そしてそれは今読んでも、人の心を楽しませなぐさめ、暖かくしてくれる。
「リボンの騎士」もまた、まさに手塚が述べたように
”どんなに世の中が変わっても、いつまでも消えないで、やさしくみんなの心をたのしませてくれる”
決して色褪せぬ、洵に素敵な”おとぎ話”なのである。


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そしてハマってから僅か1ケ月-。
あっという間に、私はこうなりました。^^;)
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リボンの騎士 (手塚 治虫) -第2場 サファイア

2_2「リボンの騎士」は少女漫画らしく恋愛をストーリーの柱に据えながら、波瀾万丈かつ破綻のない物語構成、中世ヨーロッパの王国という舞台設定、男女の二面性を具備する主人公という”非日常”の上手い取込み、神様も悪魔も登場する(=魔法や呪い、神の奇跡が存在する)世界観の多様性、個性の立ったキャラクター、作品を貫く上品さ・美意識…と傑作にふさわしい美点に満ちている。

2_1_2しかし、この作品の魅力は何といってもヒロイン -即ちサファイアに尽きると言い切って良いだろう。
正義感が強く剣と乗馬の達人である勇猛な王子と、美麗で優しさと恥じらいにあふれる王女とを行き来する主人公サファイアは、その二面の”ギャップ”が読者を惹きつけ、愛すべきキャラクターとして、誰もがその幸せを願わずにはいられぬように作りこまれている。

1「リボンの騎士」は少女漫画として生まれた。
しかし、かくも男の保護本能をかき立てるキャラクターが登場するのだから、この作品は男性にとっても魅力に溢れているはずだ。従って”少女漫画の名作”を超越した、更に普遍的な傑作と捉えるのが適切である。



Photoサファイアの魅力の第一はもちろんその美麗さ-そして美貌やスラリとしたスタイル以上に手塚が作品中で強調しているのは、その瞳(め)の美しさと深遠さなのだ。
王女、という属性からして当然なのだが常に上品さを湛えた美しさが表現されていると同時に、サファイアはディズニーの影響を受けながらディズニーにはないセクシーさが微かに香ると謂われる手塚のタッチで描かれているのである。

※コージィ城倉「チェイサー」1巻p83-84参照

サファイアのヴィジュアル面でのアイドル化は、多彩なコマ割りやアップを多用しより一層映画的に変貌した「なかよし版」で顕著。そこにはサファイアの魅力が強く放射されたカットが溢れており、存分に堪能できよう。
(一方コマが小さくヴィジュアル面でのインパクトは「なかよし版」に及ばずも、最もロマンティックなシーンにサファイアを描きこんでいるのは最初の「少女クラブ版」である。それぞれが魅力を発している。)
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8_1_2サファイアの更なる魅力は、真っ直ぐな純粋さと実に分け隔てのない優しさ、一途だが決して嫉妬を抱かぬ心にある。そしてそれが実際の仕草や行動に現れる様子が「リボンの騎士」に描かれている。
高慢さを全く感じさせない気品と、慈愛に満ちた柔らかな気遣い、愛する人々への深く暖かくひたむきな想い、勤勉にして献身的な気性と湧きいずる活発さ、それでいて時に見せる可愛らしい恥じらい…魅力がこぼれんばかりに詰まった、文字通り愛すべきキャラクターなのである。

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7_1_2アニメ版はともかく、手塚の漫画作品「リボンの騎士」に現れたサファイアは徹頭徹尾”女性”である。フランツに対する愛に目覚める前からだ。ストーリー上、女の子の心を奪われてしまう場面は確かにあるけれど、そこでも描かれているのは”女の子の心を奪われてしまった女の子”だ。


9サファイアを(もちろん精神的にだが)男性・女性を行き来する具有者と捉えるむきがあるが、手塚は全くそのように描いてはいない。
チンクの悪戯で入ってしまった”男の子の心”は、男として振る舞わねばならなかったり、男としての資質を示さなければならなくなったサファイアという女の子を力強く後押ししたに過ぎない。
サファイアはあくまで自分は女性として生まれ育ち、その中で王子を演じてきたと自覚しているのだから。





4加えて前述のように王子としてのサファイアとのギャップが堪らなく訴求する。”亜麻色の髪の乙女”に扮する扮しないに拘らず、いつだって心の底から優しくて乙女らしく夢想したり、涙にくれたり、頬を染めて恥らったり、フランツに泣きすがったり-。
か弱くいじらしい姿が、いたく男心を衝くのである。

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Photo_2しかし、手塚治虫という漫画家はつくづく凄いと思う。
「少女クラブ版」の小さなコマのサファイアすら、細かい絵なのにいつ何時も美しさを感じさせずにはいないように描かれている。また、どのバージョンを見てもそれぞれの場面、それぞれの絵にキャラクターの心情も投影するニュアンスが表現されている。これが「漫画記号論」を口にした人の描くものだろうか。表現力は一般的な”漫画”のそれを遥かに超えている。

Happy_2左画像は「なかよし版」連載時の最終回で扉絵に使用されたものだが、漸く結ばれたサファイアとフランツの何とも云えない幸福感が伝わってくる。

フランツの穏やかで慈しみに満ちた様子も実に良いし、やっとフランツに甘えられまた安堵にあふれつつも「これが私の素敵な王子さまなの」という心の声まで聞こえてきそうな、サファイアの絶妙な表情を”漫画”で表現しているのが素晴らしい。



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-Appendix 手塚”スターシステム”とサファイア-

手塚治虫が採用していたスターシステムにより、サファイアは映画女優のごとく他作品に”出演”している。左画像にある通り、サファイアはこれもまた手塚の代表作である「ブラック・ジャック」に、6つの異なる役柄で登場しているのだ。
Bj登場作品の中に、保育士を演じるものがある。命を賭けて子供を守るという素晴らしい役柄ながら、炎に包まれ真っ黒に焼け死んでしまうサファイアの最期のシーンには、熱烈なファンとして居たたまれないものがあった。作品への感情移入が強い私には、”スターシステム”はやっぱりどうしてもしっくりこないのだ…。

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リボンの騎士 (手塚 治虫) -第3場 少女クラブ版

News_xlarge_ribbon_image3_2「作品概括」にて述べた通り、講談社が発行していた月刊誌「少女クラブ」1953年1月号から連載開始された「リボンの騎士」の原典である。「少女クラブ」はB5サイズの雑誌であり、また伝統的なコマ割りを基本としていたので、絵は細密という印象がある。
ストーリーの完成度でみると、実は「なかよし版」よりもこの「少女クラブ版」の方が卓越していると申し上げておきたい。

主人公サファイヤはストーリー冒頭では12才の設定で、後代のなかよし版に比べると子供っぽい、ユニセックスな絵柄に始まる。但し、設定はそうであったとしてもストーリーが流れ出すとほどなく紛れもない女性の美麗さを醸すようになっている。

    ※少女クラブ版ではサファイ”ヤ”である。なかよし版でも連載
      時点では”ヤ”であり、「双子の騎士」ならびになかよし版の
            単行本においてサファイ”ア”という表記に改められたようだ


【少女クラブ版 概要】
天使チンクの悪戯が原因で、男と女両方の心を持って生まれてきてしまったサファイヤ国の王女サファイヤ。この国には男しか王になれないという掟があり、悪評高いジュラルミン大公が次の世継に自分の息子プラスチックを据えようとしていた。ジュラルミン大公の支配を逃れ王位を守るため、サファイヤは表向きは王女でなく王子として育てられることとなったのである。かくしてサファイヤは12才となり、極めて美麗で優しい王女にして、正義感が強く勇猛果敢な剣の達人たる王子へと成長していた。

7_4復活祭の夜、亜麻色の髪の少女に変装したサファイヤは舞踏会で隣国シルバーランドのフランツ王子と踊り、二人は瞬時に強く惹かれあう。このサファイヤとフランツの恋がストーリーの中心である。
しかし王位を狙いサファイヤを殺そうとしたジュラルミン大公やナイロン卿の企みは父王の急逝を招き、フランツに誤解を与えサファイヤへの憎悪を抱かせることとなった。
自らの身の上を明かせないために、サファイヤ王子としてはフランツに激しく憎まれながら、一方で変装した亜麻色の髪の少女としてはフランツに熱く思慕されるという複雑な構図となり、二人の想いはなかなか通じ合わない。

7サファイヤの即位式の日、とうとうサファイヤが王女であることが露見して王位はジュラルミン公一派に奪われ、サファイヤはお妃(サファイヤの母)とともに棺桶塔で囚人の身となった。優しいサファイヤを慕うねずみたちから案内され抜け穴を知ったサファイヤは、密かに棺桶塔を抜け出しては、仮面をつけて”リボンの騎士”を名乗り、
ジュラルミン大公の悪政に苦しむ人々を救うため出没するのだった。

王位を奪還するため悪戦苦闘するサファイヤだが、ある時そ
の優しい女の心を奪って自分の娘に与えようと思い立った悪魔・メフィストに攫われてしまう。
魔法で白鳥に変えられてしまったり、誤解が解けずフランツに幽閉されたりとサファイヤの苦難は続くが、恋い焦がれる亜麻色の髪の少女が実はサファイヤの変装ではないかと感づき始めたフランツと、街の靴屋にて愉快な共同生活を送る微笑ましいエピソードも挿入される。

Photoしかしサファイヤには母(お妃)を救い、王位をジュラルミン大公から奪還する使命がある。自国に戻りジュラルミン大公と対峙すると、図らずも保身に走ったナイロン卿がジュラルミン大公を毒殺し逃走する事態となった。神の力により賢く生まれ変わったプラスチックの忠誠も得て、サファイヤは女王として改めて即位する。
ただ、サファイヤは自国に戻る途中でナイロン卿に襲撃された際、その危機を避けるため
已むなく悪魔メフィストに女の心を譲り渡す約束をしてしまっていた…。


天使チンクの助けを得て女の心を守ろうとしたサファイヤだが、メフィストの計略に嵌り、遂に悪魔の山で女の心を奪われてしまう。フランツがサファイヤを救出して想いを告白するも男になってしまったサファイヤには全く通じず、フランツは激しく混乱する。
女の心を奪われたサファイヤはドレスを捨て、愛着のあるリボンをも捨て、ひたすら武芸に熱中する。そんなサファイヤの許に悪魔から女の心を取り戻したチンクが訪れる。意を決したチンクは強引にサファイヤの男の心を女の心へと入替えた。遂に今や、サファイヤは完全に女になったのである。


-その頃フランツのおじにしてシルバーランド国王のシャルネ殿下は、逃亡してきたナイロン卿に唆されていた。そして反対するフランツ王子を軟禁し封じ込め、サファイア国への侵略を開始してしまう。
Photo_2内情や城の秘密に通じたナイロン卿の手引きにより、夜間のうちにサファイア国の城は乗っ取られ、お妃を人質に迫られたサファイヤは降伏を余儀なくされた。捕虜となったサファイヤはほどなく山の空き家にてナイロン卿に殺されようとしていた。
しかし、そこはフランツが軟禁されている空き家であった!フランツは剣を奪ってサファイヤを守り、ナイロン卿を追い払う。サファイヤが女に戻ったことを察したフランツ。遂にフランツには愛する亜麻色の髪の少女がサファイヤと同一人物であると判り、サファイヤを抱き寄せ愛を誓う。愛する人に愛される喜びが二人の姿にあふれる。


8_3サファイヤはフランツと力を合わせ、まずサファイヤの母(お妃)の救出を図る。お妃はプラスチックとうらなり博士、うばやとともに人喰い海蛇のいる島に流されていたのだ。海蛇はプラスチックや博士の活躍で退治したものの、ナイロン卿が暗殺隊を追派してきたり、フランツを人魚姫の婿にしようと画策する海の女王が現れたり、フランツとサファイヤを恨み殺そうとするメフィストが追って来たりと苦難が続くが、フランツの機転と人魚姫の支援で乗り切り、全員無事脱出に成功する。

改心して頼りがいのある忠臣となっていた牢番ガマーたちと合流したフランツとサファイヤは次にシャルネ殿下を誘拐し、森の中でともに暮らし始める。逃走しようとしていたシャルネ殿下だが、日々ふれるサファイヤの優しさと心遣いに魅了されていく。フランツがサファイヤと結婚したいと打ち明けると、シャルネ
殿下はもちろん諸手を挙げて賛成だ。

6_2全てが調い、いよいよサファイヤはサファイヤ国王に収まっていたナイロン卿と最後の対決に臨む。悪政の限りを尽くしてきたナイロン卿だったが、今やさまざまな恨みが鼻の傷にたまり、瀕死の状態にあった。サファイヤの姿を見て慄くナイロン卿は、サファイヤに促され懺悔の言葉を述べる。すると不思議なことに大きく腫れ上がっていた鼻が元通りになり、ナイロン卿は命を取り留める。サファイヤは静かにナイロン卿へ追放を告げた。


晴れやかな笑顔のサファイヤに永遠の愛を誓うフランツ- 二人の盛大な結婚式は一つになった二つの国の繁栄と、二人の幸せを確信させるのだった。


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「少女クラブ」版ならではの見どころも多い。

■牢番ガマーが大活躍
Photo_3改心して忠臣となってからのガマーは実に頼もしい”用心棒”に…ガマーは「ノートルダム・ド・パリ」のカジモドに由来するキャラクターだと思うが、腕っぷしが強くて神出鬼没。お妃とサファイヤを守るため力を尽くし、なかなか機転も利く大活躍ぶり。「なかよし版」より遥かに存在感の大きいガマーにご注目!

■激しい荒っぽさ → 一途な恋に: ヘケート
Photo_4「娘」なのに心は完全に男、の少女クラブ版ヘケート(悪魔の娘)はミッキーマウス風の耳が特徴的で、とにかく暴れん坊。これがサファイヤの女の心を得た途端、フランツを一途に恋する乙女に…。亜麻色の髪の少女に化けてフランツの愛を得ようとしたが正体がばれ絶望したヘケートは自ら命を絶ってしまう。
(連載時ヴァージョンでは、自分に目もくれずサファイヤに夢中なフランツを見て落ち込んだり嫉妬したり、ストーカーまがいに後を追ったりと非常に人間臭い姿が見られる。遂には亜麻色の髪の少女に化けてでもフランツと結ばれようとするに至るエスカレートぶりが確り描かれているのである。)

■靴屋のルビ
1_2サファイヤが亜麻色の髪の少女なのではないか?と気づき始めたフランツは正体を探るため市井の靴屋ルビに扮し、サファイヤを匿うかたちで奇妙な共同生活を始める。ごく短い期間だったが、とても愉快で微笑ましい二人の姿を見ることができる。



■サファイヤとフランツの恋人時代!
「なかよし版」と決定的に違うのは、想いの通じ合った二人の恋人時代のエピソードが見られることである。
サファイヤが亜麻色の髪の少女と同一人物であることが判り、フランツが愛を誓うシーンでは、愛する人の腕に抱き寄せられた幸福感でうっとりとした表情のサファイヤが印象的である。
また食事の用意をしてフランツの帰りを待っていたサファイヤの姿や、二人で吟遊詩人に扮し力を合わせてお妃を救出に向かう姿、シャルネ殿下に二人の結婚を認めてもらうまでの森での生活なども、何とも心暖かくまた微笑ましいエピソードだ。
Andそして海蛇島のシーンでは「リボンの騎士」全バージョンを通じても唯一、極めてストレートにサファイヤがフランツに対して愛と想いをぶつける姿が見られる。「やっぱりいいよなー、サファイヤって…」 -そう思わずにはいられない。

■サファイヤの哀しい歌声
4母を救けに来た海蛇島…その母の姿が全く見当たらないために悲しみにくれるサファイヤが吟遊詩人の姿で歌うシーンは圧巻!フランツも海鳥たちも人魚たちも、それどころか海の波も、さらには空の月までも、海蛇島に響くその哀しい歌声にいたたまれず涙するのである。

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私の所有する「少女クラブ版」は以下の3バージョン。単行本化、全集化、別冊付録として発行、新版発行といった機会あるごとに改訂を重ねる手塚治虫の作品であるから、これ以外にもっとバージョンが存在する可能性は多分にある。

1. 現行電子書籍版
V0000168535_0001「手塚治虫文庫全集 リボンの騎士 -少女クラブ版-」の電子書籍版。
連載当時のものと比較すると、かなりの改訂がみられる。





2. 完全復刻版「リボンの騎士(少女クラブ版)」全3巻

Photo_3少女クラブ版初の単行本である「講談社の漫画文庫」を復刻したもの。
ハードカバーによる単行本であり、ラストシーンはサファイヤとフランツの花嫁&花婿姿で締めくくられている。

3. リボンの騎士 少女クラブ カラー完全版

214687nc少女クラブ連載当時のバージョンを、そのままの色彩で完全復刻。ジェネオン・エンタテイメントが2004年に限定発行したものを、2012年に復刊ドットコムが新装復刊、全1巻。





注目すべきは「3. リボンの騎士 少女クラブ カラー完全版」である。
手塚が「手塚治虫文庫全集版」のあとがきにて「『少女クラブ版』は三色刷りでしたから色彩の冒険が色々できたのですが…」と述べているように、少女クラブ連載当時のままというこのバージョンは非常にカラフルで絵画的な魅力も満載である。
Photo_2この華麗さが当時の少女たちの心をときめかせたであろうことは想像に難くない。

また手塚は、「もうお話が大団円に来てしまったのに、読者の要望でさらにのばさなければならなくなりました。しかたなく『人魚姫』のお話をくっつけたりしました。」ともコメントしている。
連載時バージョンでは、人魚姫はフランツに強い恋心を抱いており人間になる薬を飲んでサファイヤとフランツの森の生活にまで同行するというエピソードが最終盤にあり、これを指したコメントである。ストーリーとしてはフランツのサファイヤへの想いは全く揺らがず、人魚姫の運命はアンデルセンの原典と同じ結末に向かう。尚、シャルネ殿下は人魚姫に魅了され、彼女を追って海の底へと消えていくことになる。
-以上のくだりは単行本化された時点でばっさりカットされている。(おそらく現行バージョンのみ読まれた方は手塚のコメントに「?」と感じられたことであろう。)

この連載時バージョンには、その後手塚が実施した改訂において他にもたくさんカットされた部分が存在している。確かに最後の「人魚姫」のエピソードはカットするのが妥当と感じられるものだが、その他はカットすることでテンポは良くなったものの、繋がりがやや不自然なものもある。また、カットする前の方がストーリー展開の背景やキャラクターの心情描写がスムーズに伝わってくるものも少なくない。
(カットする前にはフランツがサファイヤに正式なプロポーズをする場面も…。)
私としては、現行バージョンと連載時バージョンの両方を読むことで、この「少女クラブ版」を、ひいては「なかよし版」を含めた「リボンの騎士」という作品全体をより一層楽しむことができるのではないか、と思う。

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ところで、”圧巻”と前述したサファイヤの哀しい歌声のシーンは、単行本化された際に何コマかカットし短縮されている。しかし、現行バージョンでは連載時の状態に戻された。(極めて妥当な判断と思う。)
作者・手塚治虫も悩むところだったのだろう。

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リボンの騎士 (手塚 治虫) -第4場 双子の騎士

Photo_2少女クラブ版の後日譚として制作されたもので、講談社「なかよし」1958年1月号-1959年6月号に連載された「リボンの騎士」。現在の「双子の騎士」という題名は単行本化された際につけられたもの。
少女クラブ版の主人公・サファイア姫と、フランツ王子との間に生まれた双子であるデージィ王子とビオレッタ姫の物語。

少女クラブよりも低年齢層をターゲットとした雑誌での連載を意識してか、この作品は恋愛ではなく家族愛をストーリーの中心に据えている。もちろん「リボンの騎士」の世界観は承継しており、中世の王国を舞台に邪な重臣の権力欲が王族を陥れ離散させてしまう悲劇に始まり、善良なる者たちの支援を得て幸福が取り戻される大団円までを描く。王子を救け慈しみ育てる小鹿や、バラの精をはじめとするさまざまな妖精、ジプシーの一家など魅力的なキャラクターを登場させ、とてもファンタジックな魅力にあふれた新しい”おとぎ話”を構築している。

この「双子の騎士」も連載時にはほとんどがカラーページであり、当時の少女たちを大いに楽しませたはずだ。また「リボンの騎士」のファンなら、サファイアとフランツが結婚して幸せに暮らし、かくも美しい双子に恵まれたこと、そして母となって登場するサファイアの姿を目にして感慨も一入というものである。

【双子の騎士 概要】
1晴れて結ばれたフランツとサファイアは、シルバーランドの王と王妃として国民に敬愛され幸せな日々を送っている。とりわけ今日は二人が授かった双子- デージィ王子とビオレッタ姫の1歳の誕生日であり、国中が祝賀に沸き立っていた。
そのめでたい日に家臣同士の諍いが起こる。予て国内は世継についてデージィ派とビオレッタ派に分かれていたが、家臣の中には権力を握らんとする者も潜んでおり、その思惑が引き起こした諍いであった。これを収めるためフランツは神に祈り、再び下界へ降りてきた天使チンクの示した天啓によって、世継はデージィ王子に決定する。


ところがビオレッタ派であったダリヤ公爵とその夫人は恐ろしい企みを実行に移す。まだ赤ん坊のデージィ王子を密かに城外へと運び、ズボラという凶悪な獣のいる森に棄ててしまったのである!まるで神隠しのようにデージィを失ったサファイアとフランツの悲しみは深く、そしてここからシルバーランド王家の苦難が始まる。
「双子の騎士」はそうした苦難に健気に立ち向かう、二代目「リボンの騎士」ビオレッタの活躍と冒険を中心に、再びフランツやサファイア、デージィも揃う幸せな日々が戻ってくるまでの波瀾万丈を描いている。

8森に棄てられズボラに襲われたデージィ王子は小鹿のパピに救われる。愛情深いパピは森の沼の女神に願いを聞き入れられ、魔法で夜の間だけ人間の娘の姿となりロニーと名付けたデージィ王子を育てる。10年の間パピはロニーに姉として接してきたが、パピの正体が鹿であることをロニーが知れば、魔法の条件としてパピは命を失うことになるのだ。

一方、世継であるデージィがいなくなったため国民が騒ぎ立てシルバーランドは大混乱、事態を収拾するべくフランツ国王は反対するサファイアを説き伏せ、ビオレッタをデージィに見立てて無事戻ったと発表した。この日から、ビオレッタは1日ごとに王子と王女とを交互に演じることとなった。母の辿った数奇な運命をビオレッタも背負うことになるのである。

デージィ王子遺棄の首謀者であるダリヤ公爵夫妻は、王子と王女が同時に現れることがないのでずっと不審がっている。そんな折、白の王子と黒の王子とがシルバーランド城を訪ねて来た。ズボラの森で怪物ズボラを狩りたいというのである。ビオレッタも参加したこの狩りで、デージィ王子に扮したビオレッタは図らずも黒の王子の恨みを買ってしまう。そもそも黒の王子は邪悪なバラの妖精であり、善良にしてビオレッタに一目惚れした白の王子と対を成す存在であった。この後、黒の王子はビオレッタを脅かし続ける
実に忌まわしき存在となる。

デージィ王子に復讐しようとする黒の王子は、邪なダリヤ公爵夫妻と結びその秘密を探った。そして遂にビオレッタがデージィ王子との二役を演じている秘密を知り、ダリヤ公爵夫妻はこの秘密を公にするぞとフランツ国王を脅迫して、フランツ・サファイア・ビオレッタを北の塔に幽閉する。更に時間をかけて3人を葬り去るべく、食事に毒を盛るよう恐ろしい指示を下すのだった。

12_2かろうじてビオレッタが城のねずみたちの助力により北の塔を脱出した一方、パピの死を乗り越えズボラを倒したロニー(デージィ)は、退治したズボラを携え登城する。ビオレッタに瓜二つであることから、(自分の本当の身の上を知らない)ロニーを傀儡として利用しようとする奸臣
ダリヤ公爵夫妻によって、ロニーは”デージィ王子”に祀り上げられる。ロニーは正義感が強く弱者への思いやりも深い、王にふさわしい人格に育ってはいたが、森で育った彼にとって単に王子を演じる生活は堅苦しいだけのものだった。

ビオレッタは「ズボラの森で小鹿のパピに育てられている」という手掛りだけを頼りに兄デージィを捜すが、パピのお墓を目にして絶望する。この時、号泣するビオレッタに「男らしくない」と絡んできたのがジプシーの頭領の娘・エメラルドである。黒の王子に狙われたビオレッタを匿うかたちでエメラルドはビオレッタをジプシーの仲間に引き入れ、共に旅することとなる。
11_2白の王子・黒の王子のバラの館に迷い込んだり、黒の王子の執拗な追撃で命を危うくしたり、抜け出すことのできないカゲロウの森で遭難したりとビオレッタの苦難は続く。
ビオレッタを支え続けたのは白の王子が愛を込めて贈った金のバラの魔法と、献身的にビオレッタを助けるエメラルドの活躍であった。


しかしある日、苦難と戦うビオレッタの耳に聞こえてきたのは、あろうことかフランツ国王とサファイア王妃の葬儀の報であった。哀しみにくれたビオレッタだが、やがて意を決して立ち上がり、ダリヤ公爵と刺し違える覚悟で城へと向かう。
城内にある王家の墓所に潜入し、果敢にダリヤ公爵に挑むビオレッタはそこで自分にそっくりなロニーと対峙する。しかしビオレッタを助けようとお化けに扮したエメラルドが現れたため、全員が逃げ出し大混乱、ビオレッタには自分とそっくりな少年の正体は判らずじまいだった。
6ビオレッタとエメラルドは二人きりで墓所に閉じ込められたが、フランツとサファイアにまだ息があることが判った。毒消しがあれば助かる…!エメラルドの活躍で墓所の抜け穴から一旦外に出た二人は今度は料理女になりすまし、城内に戻ってきた。正体がばれそうになったビオレッタは”王子の部屋”に逃げ込み、(以前のように)王子の服を着てやりすごす。そこにロニー(デージィ)が戻ってきて鉢合わせに!剣を交わす二人だが、互いにパピのことを知っていたため話が通じた。
-今、双子の兄妹は真実を理解し、遂に再会の喜びに抱き合うのだった。

デージィとビオレッタは力を合わせてダリヤ公爵を倒し、金のバラの力も借りて黒の王子も倒した。黒の王子の黒バラが毒消しになる。その効き目は灼かであり、サファイアもフランツも無事蘇り、シルバーランド王家は久々の再会で歓喜に満たされた。
7後日、国じゅうの祝福を受けてデージィの戴冠式が行われる。ビオレッタは?今でも時にはリボンの騎士となって駆け回ることもあるのかも…。

♪♪♪

「双子の騎士」の見どころは…

■涙なしには…
3デージィを慈しみ育てた小鹿のパピ。最期は惧れていた通り狩人として成長したロニー(デージィ)の手にかかって…もちろん何も知らないロニーに罪はないのだが、こんな哀しいことってあるだろうか。
ビオレッタやエメラルドの身代わりになったお母さんオオカミのくだりも相当哀しい。かげろうのチルンのお話も…少女漫画なのに(というより少女漫画だからこそか)こんな極めつけの悲”劇的”なエピソードを織込むんだよなあ、手塚治虫って。

■おきゃんなビオレッタの活躍
10ビオレッタはサファイアと違って”男の心”は持っていない。なのにサファイア以上に男勝りでおてんばな気質を持った女の子として描かれている。同じように王女と王子を同時に演じることになり、女性に戻りたいと涙にくれる場面もあったけれども、半分は公の場でも本来の王女として振舞えたからかサファイアほどの悲壮感はない。また白い王子への思いはまだ仄かな恋愛に留まり、兄を捜し出し父と母を救い出すことがあまりに目前に迫っていたことから、ビオレッタはある意味迷いなく王子を演じたのである。ジプシー一家に同行した間も”美少年”が堂に入っていた。
 
■ジプシーの女王、エメラルド
5陽気で活発、きっぷのいい性格。やや粗野なところはあるけれど真直ぐな心と深い愛情を持ちとてもチャーミング。
ジプシー一家頭領の愛娘であり、リボンの騎士を名乗るビオレッタを男と信じて好意を寄せるが、ビオレッタが女の子と判ってからもその苦難を思い遣り、献身的にビオレッタを支える大親友に。「なかよし版」の海賊ブラッドに通じる真の愛を持つ素敵なキャラクター。

■サファイアがビオレッタの剣を鍛える!
4_3北の塔に幽閉されてから、毎晩母サファイアは再びリボンの騎士の姿となって、ビオレッタの前に立った。これから悪しき者たちと戦っていくため、自らビオレッタの剣を鍛え直すのである。
打ち負かされても「おかあさま!もう一手!」と立ち上がるビオレッタの姿を見て頬に涙が伝うサファイアに、しみじみ母へと成長したんだなぁと感慨が…。

■「きみがあんまり美しいからさ」
2_2あくまで”デージィ王子”へと発した、白の王子の率直な心からの声。白の王子に下心がないゆえに強く印象に残る台詞だ。いいなぁ。
…私の場合はまず美しい人を見て、ひたすら”純粋に美しい”と他心なく思えるようにならないとね。

♪♪♪

私の所有する「双子の騎士」は以下の2バージョン。本作も例に洩れず、連載時のものと比較すると現行単行本は相当な改訂がなされている。

1.現行電子書籍版
51b4axvx2cl連載時にはなかった「プロローグ」が付与され、まさに宝塚そのものである階段状ステージでのオープニング・シークエンスに始まる。これは連載時オリジナル版では1958年12月号付録の冒頭で使用されたものである。
(続いて手塚キャラクターの代表格、美少年ロック(・ホーム)がタキシード姿で進行役を務めるが、これは台詞の変更はあるもののオリジナル版と不変。)
その他にも連載時オリジナル版と比べ相当な改訂が見られるのだが、改訂された結果、サファイアがチンクと初対面となっている設定にはどうにも違和感が…。

2.なかよし オリジナル版
Photo「なかよし」連載当時のまま復刊したオリジナル版(復刊ドットコム)。大半がカラーページであり、その美しさには心躍らされる。
ビオレッタに白の王子が愛を仄めかすシーンはなく、また最終盤で白の王子が人間になった場面もないなど、恋愛色は現行版より一層乏しい。
またこのオリジナル版ではデージィ王子がパピに育てられている時点からデージィの名となっている。これは不自然であり、後に「ロニー」と改訂されたのは洵に妥当である。

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リボンの騎士 (手塚 治虫) -第5場 なかよし版

2「少女クラブ版」の連載終了から7年- 手塚治虫が「なかよし」に舞台を移し1963年1月号から3年半あまり連載した完全リメイク版。「なかよし版」の連載は1964年の東京オリンピック、新幹線開業を挟んでおり、年率10%以上の経済成長を続ける戦後日本の高度成長の真っただ中。1950年代中盤からの経済成長の成果が既に具現化しており、時代は大きく進歩していた。

私見となるが、「リボンの騎士」は手塚自身にとっても最も強力なコンテンツの一つであるから、映画に例えて云えば当時の「現代感覚」「最新技術」「最新トレンド」で”撮り直したい”という想いが手塚自身にも周囲(出版社やファン)にも募ったのではないだろうか。もちろん「リボンの騎士」のアニメ化が控えていたことも、それを後押ししただろう。

♪♪♪

Photo既に大成功を収めた「少女クラブ版」を下敷きにしているのだから、おもしろくないはずがないわけだが、加えてこの「なかよし版」には”漫画”というものがさらに進化を続け、その旧来のイメージを飛び越えた新しい息吹きを感じられるだろう。





第1に、一層映画的な手法を取り入れた現代的なヴィジュアル表現である。
72多様なコマ割りの使用、クローズアップ或いは逆にロングショットの効果的な使用によりダイナミックで映画的なヴィジュアル表現が駆使されている。もはや現在の漫画作品と比較しても遜色ない。

第2にキャラクターの二次元アイドル化である。
「なかよし版」のサファイアには必ずしもストーリーと連動性の薄い、フォトジェニックなショットが多くみられる。今に通じる二次元アイドルのコンセプトをハッキリと感じ取ることができるのだ。「美しい」「可愛い」を純粋に視覚で伝えるレベルの”漫画”なのである。
サファイアに限らずヘケートやビーナス、はたまたフランツやブラッドについてもその視点からヴィジュアルが研ぎ澄まされているのを感じさせる。

   ※連載時オリジナル版には何と”リボンの騎士のバカンス=ス
         
タイル”という、現代の洋服(夏物のワンピース)に身を包んだ
     サファイアのサービスカットまで掲載されていた!


Photo_3またキャラクターとしては海賊ブラッドウーロン候女剣士フリーベヴィーナスなどを新たに登場させた一方、「少女クラブ版」キャラクターのうち薬屋のポンコや人魚姫は登場させていない。またメフィストの役割はヘル夫人に置き換えられている。
(この置き換えは手塚の述懐によるとやや心残りなようだ。)

尚、詳細は後述するが、「少女クラブ版」と比較し圧倒的に存在感を上げたのは何と言ってもヘケートで、ヴィジュアルも含め突出して秀逸なキャラクターとなっている。

♪♪♪

【なかよし版 概要】
天使チンクの悪戯により、男と女両方の心を持って生まれてきてしまったシルバーランドの王女サファイア。この国には男しか王になれないという掟があり、悪評高いジュラルミン大公が次の世継に自分の息子プラスチックを据えようとしていた。
3ジュラルミン大公の支配を逃れ王位を守るため、サファイアは表向きは王女でなく王子として育てられることとなったのである。かくしてサファイアは15才となり、極めて美麗で優しい王女にして、正義感が強く勇猛果敢な剣の達人たる王子へと成長していた。
謝肉祭の夜、亜麻色の髪の乙女に変装したサファイアは舞踏会で隣国ゴールドランドのフランツ王子と踊り、二人は瞬時に強く惹かれあう。このサファイアとフランツの恋がストーリーの中心である。

150しかし王位を狙いサファイアを殺そうとしたジュラルミン大公やナイロン卿の企みは父王の急逝を招き、フランツに誤解を与えサファイアへの憎悪を抱かせることとなった。
自らの身の上を明かせないために、サファイア王子としてはフランツに激しく憎まれながら、一方で変装した亜麻色の髪の乙女としてはフランツに熱く思慕されるという複雑な構図となり、二人の想いはなかなか通じ合わない。


サファイアの即位式の日、とうとうサファイアが王女であることが露見して王位はジュラルミン大公一派に奪われ、サファイアはお妃(サファイアの母)とともに棺桶塔で囚人の身となった。優しいサファイアを慕うねずみたちから案内され抜け穴を知ったサファイアは、密かに棺桶塔を抜け出しては、仮面をつけて”リボンの騎士”を名乗り、ジュラルミン大公の悪政に苦しむ人々を救うために出没するのだった。


2149その後もサファイアを亡き者にしようとするジュラルミン大公一派に脅かされ、またフランツと娘を結婚させゴールドランドを我物にしようとする魔女ヘル夫人がサファイアの優しい”女の子の心”を奪おうと執拗に狙って来たり、サファイアに嫉妬しフランツの心を得ようとする美神ビーナスなどが登場して、サファイアとフランツの運命を翻弄する。

しかしサファイアから男の心を抜き取り完全な女の子に戻そうと奮闘する天使チンク、忠節な家臣たちや漢気溢れる海賊ブラッド、魔女の娘ヘケートやビーナスの召使いエロース、女剣士フェリーベら善良なる者たちの文字通り献身的な支援を得て、波瀾万丈の展開の末にサファイアとフランツの恋は大団円へと向かう。


♪♪♪

2160尚、上記「なかよし版概要」は手塚自身が改訂を繰返し”完成”した現行単行本のものである。というのは、「連載時オリジナル版」はストーリーが終盤でやや破綻していたという事実があるのだ。この連載当時、実は続編「第2部」の連載が予定され告知もされており、そちらで収束しようという心積もりがあったのかも知れない。或いはその続編での展開を考えて敢えてそうしたのか…。
しかし結果として「第2部」は制作されなかったので、手塚は大幅な改訂を施して「なかよし版」を完成する必要があったのだ。

<連載時オリジナル版の主な問題点>
Photo_4・フランツが自分の命を救
  うためヘケートと結婚す
  ることになったショックか
   ら、サファイアは「男に
  なってしまいたい(そうで
  ないと耐えられない)」と
  望む。ヘル夫人は好都
  合とばかりにサファイア
  に対し、女の心をもらう
  代わりに男の心を与え
  ようと約束する。
 (この時点ではサファイ
  アは女の心 しか持って
  いないためである。)
・賢く生まれ変わったプラ
  スチックがサファイアに
  王位を返還すると言い
  出したことで失望し「尨
  犬にでもなった方がまし
  だ」と愚痴るジュラルミ
  ン大公をヘル夫人は魔
  法で本当に尨犬に変身
  させてしまう。
  それと同時に男の心を
  ジュラルミン大公から抜
  き取り、サファイアに与えるのである。正当化する言い訳めいた台
  詞が付されてはいるが、幾らなんでもジュラルミン大公のような悪
 
辣な男の心がサファイアに入ってしまうなんて…!  違和感ありあ
 りだ。
・男の心を抜かれて尨犬になったジュラルミン大公はヘル夫人が死
 んだことで元の姿に戻るが、「男の心も女の心もない」はずである。
  それなのにキャラクターは全く変わっておらず、ブラッドの運んでき
  た矢傷の秘薬を強奪してプラスチックに与えてしまうありさまで、相
  当不自然。また物語(第一部)が終了した時点で、そんなジュラルミ
 ン大公が変わらず存命しており、サファイアを脅かす存在が解消さ
  れていない。
・何より、連載終了時点ではサファイアの中に男の心が残ったまま!
-この状態でとても話を終わらせるわけにはいかなかったのである。


<その他の連載時オリジナル版の現行版との主な相違点>
Eye_catch・本編のスタート時のサファイアは少女クラブ
  版と同じく12歳であったし、フランツとの出
 会 いも”謝肉祭”ではなく”復活祭”だった。
・ヘケートの指示で白鳥に変身したサファイ
  アのヴィジュアルは白鳥そのものではなく、
 バレリーナ風の人間の姿で描かれていた。
・海蛇島にはやはり海蛇がたくさんいてお妃
 とガマーを脅かすのだが、ガマーが体を張
 って退治してしまう!
・ブラッドとフランツが兄弟であることは明確
  に示され、本人たちにもサファイアにも伝
 えられる。
・北の王国において地下牢からサファイアを
  救出したのはフェリーベであっ
たが、現行
 版ではウーロン候となっている。また、フ
 ェリーベがウーロン候の妹という設定も現
 行版のみ。
・ケープの中に閉じ込められて怒ったフラン
 ツは、ビーナスを口汚く罵るのだが、現行
 版では王子であるフランツの品を失わぬ
 よう台詞が改訂されている。これが典型だ
 が、連載時オリジナル版に比べてキャラク
 ターはその性格付けが徹底され、明確化
 されるよう台詞が変更されている。
  (ビーナスの「愛は残忍なもの 愛はエゴイスティックで…」も元々は
 全く違う台詞であり、これは現行単行本で初めて登場したものであ
 る。)


Og001_2改訂によって海賊ブラッドの登場する部分がかなりカットされたことが伺える。連載時オリジナル版ではフランツとはまた違うタイプのブラッドにサファイアがやや心惹かれる様子がハッキリと描かれており、また海賊船に乗り込んだくだりやさんざしの森のできごと、海賊の仲間としてサファイアが処刑されそうになるあたりなどもかなり丁寧にストーリーが描かれていた。しかし、現行版ではそれらを大胆にカットしつなぎ合わせる改訂が行われている。

ブラッドがサファイアの幸せのためなら、と報われることのない自己犠牲を尽くすキャラクターであることは不変なのだが、改訂にあたり手塚はサファイア・フランツ・ブラッドを所謂”三角関係”からより一層無縁なところに置いた印象がある。

またヘケートが女の心をサファイアに返しにくるエピソードにおいても極めて印象的で”名シーン”と云えるものがあったりと、連載時オリジナル版は確かに瑕疵はあるものの、一方で見どころも非常に多いのである。

    ※左上画像は連載時オリジナル版のもの。見ての通りとても美し
      いコマなのだが、現行単行本では台詞の変更により別の表情
      が必要になったので惜しげもなく挿し換えられている。このよう
       に微妙な表情の違いにこだわり、実際描き分けられていること
      に、つくづく手塚治虫の凄さを感じる。


♪♪♪

「なかよし版」の見どころは…

■完全にアイドル!サファイア
Photo_4前述の通り、なかよし版ではストーリーの合間合間にサファイアのフォトジェニックなカットが随所に織り込まれている。まさにアイドルとして確立したキャラクターになっているのである。女性用のドレスを纏うシーンがたびたび出てくるのも、印象に残るであろう。
Og004_2また全く別の視点だが、連載時オリジナル版ではブラッドの海賊船に乗り込んですぐにナイフ投げの達人ジャックとの対決がある。このシーンでのサファイアの凛々しさ、凄みは全編でも特筆もので、こうしたところにもなかよし版ならではの”突抜け感”がある。

■真の愛を貫く好漢 ブラッド

一言で言って、カッコ良すぎる男だ。
海賊を統括するリーダーシップ、優れた剣の腕…武骨だが実直な男らしさ溢れるキャラクターなのである。
サファイアを深く愛し、自らを犠牲にしてでも彼女の幸せを願う。サファイアの愛が決して自分のものにならないと判っていても、である。愛し合うフランツと結ばれることがサファイアにとって一番の幸せであると思い、そのために全てを捧げるのだから…とても真似できない!

Photo連載時オリジナル版では、悪魔の娘と結婚することとなりシャルネ殿下に勘当されたフランツが「ブラッドはゴールドランドの王子である」という証明書を届けに来て、サファイアのこともブラッドに託し想いを断ち切ろうとする場面が出てくる。それでもブラッドは「サファイアの真の幸せは弟フランツと結ばれること」という思いに一切の影をも差し込ませない。
同じく連載時オリジナル版では、海賊の仲間としてサファイアを処刑しようと企むナイロン卿に捕えられ拷問を受ける場面がある。そこにサファイアが連れて来られて思わずブラッドに声を掛けるや、彼女を守るため「俺はあんたなんて知らねえ!出てってくれ!」と頑として言い放つのである。
そしてサファイアのために矢傷の秘薬を命懸けで届けて果てる、その最期までとにかく男らしい”漢”であった。

■サファイアをも凌ぐ美少女 ヘケート
3悪魔ヘル夫人の娘であるヘケートはサイドポニーの似合う美少女!
快活さが過ぎて奔放・粗野な面もあるが、悪魔なのに優しく真っ当な心根を持った魅力的な娘であり、サファイアを献身的に助けフランツと結ばせようと力を尽くす。当初は自由に遊べなくなるのが嫌でサファイアに協力していたに過ぎなかったのだが、やがてそんな次元を遥かに超えてサファイアの最大の支援者となるのである。

Photo_3連載時オリジナル版では、サファイアに女の子の心を返すシーンがとても素敵!「あなたは女の子として あの隣国の王子さまと愛し合う権利があるのよ それを奪った私のかあさんはひどいわ あなたは王子さまと結婚するべきだわ」とサファイアを諭し、追ってきたヘル夫人が危険度の極めて高いドクガの群れをサファイアへ放った時には、自らが受ける深いダメージにも躊躇なく炎へと変身し、ドクガを集め殲滅することでサファイアを救うのだ。美しい画像とも相まってとても感動的なシーンである。

Photo_44_2フランツに恋心を抱いてからもそれは変わらず、ブラッドと共通する真の愛を示す。その尊い愛の姿を悪魔の娘が示し、真逆の嫉妬に塗れたエゴイスティックな愛の姿を(最終盤で)女神ビーナスが示すという皮肉が興味深い。

連載時オリジナル版ではフランツへの想いを告白するシーンもあるヘケートの健気な最期のシーン…その哀しさは「リボンの騎士」全編の中でも白眉と云えるだろう。

■…なにをするつもりだ、フランツ?
Sweetest文字通り荒波に揉まれてきたブラッドの鋭さとは違い、幾らなんでもニブ過ぎるだろうと云われても仕方ない”王子さま”育ちのなかよし版フランツ。
さんざしの森で、亜麻色の髪の乙女がサファイアであると漸く判った彼が、頬を真っ赤に染めてはじらうサファイアに発した台詞は、どうも特に女性読者たちにあまり評判が宜しくないように見受けられる。^^)
些かHなニュアンスも匂わせかねないこの台詞だが、実は連載時オリジナル版~れお別冊版~現行単行本を通じて全く変わっていない。即ち手塚にとってこの台詞は完全なる”決定稿”だったのだ。私は上から目線のこの甘い台詞に、フランツの覚悟や宣誓も含まれているように感じ、そう悪くはないようにも思うのだが…やっぱりダメ?…なんだろうなァ。

■女剣士フェリーベの恋
Photo死の淵から復活したサファイアは記憶を喪失し、ビーナスの策略によって北の王国へと迷い込んでしまうが、そこで出会った腕自慢の女剣士がフェリーベである。フェリーベは自分の婿となる美麗な剣の達人を捜してウーロン候主催の武術大会に参加しており、サファイアを男と信じて惚れ込んでしまう。(因みにフランツと身近に接したのにフランツに惚れなかった唯一の女性である。)
そして強引に結婚を迫るのだが…。サファイアが実は女であると告白すると激しく悲しみ落込んだのに、それでもサファイアを守り無事に逃がすべく献身的に力を尽くすのだ。フェリーベもまた何とも”イイ奴”なのである!
尚、連載時オリジナル版ではトパーズ王国の王女という設定(後で実はただの平民だったと告白するが、それはおそらくサファイアに気を遣ってついた嘘であろう)、現行版ではウーロン候の妹(=北の王国の王女)という設定となっている。

♪♪♪

私の所有する「なかよし版」は以下の5バージョン。既述の通り、連載時のものと比較すると現行単行本は相当な改訂がなされている。

1.現行電子書籍版
Photo「手塚プロダクション版」と「講談社 手塚治虫文庫全集版」の2種類。「手塚プロダクション版」には連載時の扉絵が収録されておらず、その扉絵欲しさに「講談社 手塚治虫文庫全集版」も購入した次第。
テンポ良く読める一方、連載時オリジナル版の名場面・名カットというべきものも少なからず失くなっているし、かなりギリギリまで切り詰めているので、やや伝わりにくい部分があるのも事実。
しかし物語の核心によりフォーカスし、各キャラクターもより明確な性格付けとその徹底が図られていて、全体としての完成度は格段に高められている。
また、例えばジュラルミン大公がプラスチックの助命を願って自害という最期を迎えたり、ナイロン卿がプラスチックも射貫いてしまったのは事故であったりといったように、ストーリーの品格も更なる高みに達しているのである。

2.月刊てづかマガジン「れお」別冊版 (1971年)
Photo_2虫プロ商事が発刊した5巻から成る「リボンの騎士」単行本。B5の連載時と同じサイズで楽しむことができ、カラーページも新たに彩色されたものも含めかなり含まれていて、これはこれで貴重なもの。
既にほぼ現行単行本と同じ内容へと改訂されているが、女剣士フェリーベのエピソードがばっさりカットされて終盤の展開が急過ぎるし、ジュラルミン大公は尨犬に変わったままその後が不明で曖昧さを残す。また台詞の改訂に不充分な点も見られ、若干ながら齟齬も見られる。
カラーページ(4色及び2色)はとても美しく、現行単行本はもちろん連載時オリジナル版にもなかったフルカラーページ(連載第20回扉絵など)も楽しめる。

3. 別冊少女フレンド増刊版 (1967年)
Photo_2アニメ版「リボンの騎士」が放映中のタイミングに「総集編」として発行されたもので、別冊少女フレンド5月増刊号(前編)・6月増刊号(後編)の2冊から成る。
オリジナル版にかなりの改訂(コマをカットしテンポよく短縮するのが中心)を施してあるが、台詞はまだ確定されていない。ストーリーも未完で、ナイロンの矢を受けたサファイアの命が途絶えてしまい、チンクが神様にサファイアを蘇らせるよう懇願したところそれに応えて神の光が降臨した、というところで終わる。オリジナル版の終盤は収録されていない。この段階で手塚はなかよし版の終結部を固めていなかったことが判る。
表紙は新たなカラーイラストであり、表紙裏に他にはない彩色イラストがいくつか収録されているのが貴重。

4. なかよし増刊版 (1964-1966年発行、2009年復刻)
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「なかよし版」連載中にその増刊として刊行された「なかよし版」最初の単行本。既に連載時オリジナルからはかなり改訂されている。
5巻まで刊行されたのだが、フランツが魔の山ハルツで魔王サターンと出会ったところまでしか収録されておらず、完結はしていない。
2009年の復刻版BOXでは別冊「アーカイブ」に(連載時オリジナル版での)その続き(縮刷版)を収録するとともに、扉絵コレクションなども収録している。
この版で貴重なのは他にはないフルカラー彩色の扉絵が1点あること。そして2巻以降の「これまでのあらすじ」のページにもフルカラー彩色としてはこの版でしか見られないイラストがかなり掲載されていることである。
尚、連載時オリジナル版にはなかった章表題が、この版から加えられるようになったのだった。

5.なかよし オリジナル版
Og「なかよし」連載当時、雑誌掲載されたままのオリジナル版を「復刊ドットコム」が初版限定再発刊したもの。カラーページ(4色/2色)ページもデジタルマスタリングにより当時のまま掲載され、オリジナルの色彩が堪能できる。また当時の連載は別冊附録となることも多かったが、これも忠実に別冊として復刊するという凝りようなのだ。
カットされたエピソードが読めるのはもちろん、現行単行本では見ることのできない名シーンや魅力輝くサファイアの姿を多数見ることができる。ファンにとってその価値の高さに疑う余地はないであろう。

♪♪♪

Og結論的に云うならば、「なかよし版」は「リボンの騎士」の究極の完成形ではない。やはり「リボンの騎士」は手塚の関わった14年-いや、改訂を含めればそれ以上の期間だが、「リボンの騎士」の全てのバージョンから成り立っているのだと思う。

柱となるストーリーやキャラクター…即ち思想は不変である。だからどのヴァージョンにも説得力が備わっている。正直、私自身もどのヴァージョンも大好きである。

私はこの「リボンの騎士」という作品に出会えて、サファイアというキャラクターを愛することができて本当に幸せに思う。

(Revised on 2016.10.29.)

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