« リボンの騎士 (手塚 治虫) -第2場 サファイア | トップページ

2016年7月11日 (月)

リボンの騎士 (手塚 治虫) -第1場 作品概括

42
”漫画の神様”手塚治虫の作品にして、その代表作である。

そんな歴史的金字塔コミックについて、私風情が何を今更語ろうというのか?-さんざん自問自答したのだが…
「俺はリボンの騎士が好きだぁぁ!」と全世界に叫びたい感情と、この名作の途方もない魅力を何としても知らしめたいという使命感とが燃え上がり、どうにもならない。
この際、衝動に身を任せてしまうことにした。

♪♪♪

Topimage_2きっかけはアニメ「リボンの騎士」(1967-1968年 フジテレビ系にて放送)のオープニングテーマに改めて魅了されたことだった。-あれっていい曲だったよなぁ、ふとそう思って聴き直したら完全にハマってしまった!そして改めて原作に興味が湧く…という構図である。
Photo_5あのアニメはあれはあれでもちろんアリだと思うし、時代のことを考えれば尚更だ。ただ私自身は(DVDを買って改めて視聴したりもしたけれど)原作ほどのインパクトを受けることもなければ、焦がれるようにハマることもなかった。
-あのアニメは、神様・手塚治虫が創り出した、私の好きな「リボンの騎士」の世界観とは違うものだったから…。

私が愛して已まないのは、紛れもなく原作=手塚漫画の「リボンの騎士」なのだ。いずれのヴァージョンもストーリー・テンポ・キャラクターなど眩しいばかりの魅力にあふれ、読み始めたならあっという間に夢中になり、ひたすら「おもしろい!」の一言しかない。美しい線が生み出す魅力的な絵柄に華麗な色彩、そして何よりとっても上品で、人間の正しい美意識が充満した作品なのである。

♪♪♪

「リボンの騎士」は手塚が14年間に亘り、4つの作品で制作を続けた作品として知られている。

1.少女クラブ版
V0000168535_0001_3講談社「少女クラブ」1953年1月号-1956年1月号に連載。
手塚自身が語るように「日本のストーリー少女漫画の第1号」である。宝塚に育った手塚は、この日本初のストーリー少女漫画の企画に対し「女の子に人気の高い宝塚歌劇の舞台を漫画におきかえてみたらどうだろう」と着想し、「(宝塚歌劇に慣れ親しんだ自分なら)宝塚歌劇調のコスチュームプレーが漫画で十分表現できる」という確信の下、執筆・連載に踏み切った。連載当初からものすごい支持を受けた、と手塚は述懐している。
(尚、主人公サファイヤのモデルになったのは、1940年代に宝塚歌劇団の娘役として活躍した淡島千景だったそう。)

2.双子の騎士
51owtxgi38l講談社「なかよし」1958年1月号-1959年6月号に連載。
連載当時の題名はこれも「リボンの騎士」で、「双子の騎士」という題名は単行本化された際につけられたもの。少女クラブ版の後日譚として制作されており、少女クラブ版の主人公・サファイヤ姫と、フランツ王子との間に生まれた双子の物語。

3.なかよし版
51xmhswrojl講談社「なかよし」1963年1月号-1966年10月号に連載。
「少女クラブ版」を作者自身が完全リメイク。「少女クラブ版」とはキャラクターの入替えやエピソードの変更が多くみられ、またコマ割りも現代的また映画的なものとなっているほか、サファイアが「二次元アイドル」として確立されるなど、また新しい魅力を発揮した「リボンの騎士」である。
本連載中に準備が進み、連載終了間もなくアニメ放映が始まったこともあり、この「なかよし版」が一般的に最も知られた「リボンの騎士」となっている。

4.少女フレンド版
講談社「少女フレンド」1967年24号-1967年29号に連載。
いわばアニメ放映開始に合わせたタイアップ連載であったが、6週で終了。手塚は原案のみで作画は担当しておらず「明らかに失敗作」と手塚自身が述べた本作は単行本化されることもなかった。

1977年発行の「手塚治虫漫画全集6」のあとがきにて、手塚は「もう二度と『リボンの騎士』は描かず、思い出として心に残しておきたい」と述べたが、その通り上記4作品を以って、「リボンの騎士」は封印されたのである。

20081112054454_2尚、手塚治虫という漫画家は作品の改訂を非常に頻繁に行ったことで有名であり、「リボンの騎士」もその例外ではない。
即ち手塚は上記1~3のバージョンのいずれにおいても単行本化やそしてその再版、全集化の機会があるたびに、相当な改訂を重ねている。台詞や絵の直しにとどまらず、かなりのコマ数をカットしたり逆に書き直したり、場面の順番を入替えたりと尋常でない労力をかけて…。こうした改訂を繰り返しているため、(作品の印象自体を変貌させないよう考えられてはいるが)現行単行本所載のものと連載当時のものとでは、著しく異なっているのである。

   ※主たるものとしては、単行本として読んだ時のテンポ感を上げる
     ために、省略できるコマは可能な限り省略していることが挙げら
     れる。
     手塚が他界した今となってはもはや手の施しようはないが、私の
     見るところでは並べて読んでみると、改訂前の方がベターに感じ
     られるものも結構あるというのが正直な印象ではある。


♪♪♪

Mono_1_2「リボンの騎士」は天使チンクの悪戯により”男の子と女の子二つの心”を持って生まれてしまった王女サファイアが、王位継承争いゆえに実際に王子としても育てられるという設定で始まる。ストーリーの中心はサファイアと隣国の王子フランツとの恋愛である。
そこに国を我が物とせんとするジュラルミン大公一派や、サファイアから女の子の心を奪おうとする悪魔の企みが迫ったり、多彩なキャラクターが登場してさまざまにエピソードが展開する。

26_3世界中の童話やシェイクスピア劇などからエピソードやキャラクターが直接的また間接的に引用されているが、そのことは漫画作品である「リボンの騎士」の価値を下げるものでは全くない。
もしそれをオリジナリティの欠如と指摘するならば、それは手塚の目指した”映画的”漫画作品の価値/意味というものを見立て間違っていると云えよう。

♪♪♪

手塚は単行本化された「少女クラブ版」にこのような文章を寄せている。

「白鳥に変えられた王女さま、下界に降りたかわいい天使の子、空を飛ぶ金の船、ふしぎな魔法使い…こういったおとぎ話は世界じゅうどこの国にもあるようです。
世界じゅうの人たちが小さいときから、おかあさまに聞かされたり、本で読んだりして、胸の中にはぐくみ育てた夢はおなじものだったのでしょう。そして、こうした美しいおとぎ話は、こののち、どんなに世の中が変わっても、いつまでも消えないで、やさしくみんなの心をたのしませてくれることでしょう。
「リボンの騎士」は、そういう昔からの美しい話、おもしろい話を集めて、私が作った絵物語です。きよらかなみなさんの胸を、おなぐさめできればさいわいです。」


Og002_2第1作「少女クラブ版」の連載開始が1953年-かの終戦から未だ8年も経たぬ時代である。
多くのカラーページに彩られたこの「リボンの騎士」は、当時の少女たちの心をどれほどなぐさめたことだろうか。

もちろん手塚だけでも、漫画だけでもなく日本において全てが復興に心を向かわせ、子供たちの喜びと未来に願いを馳せた時代なのだが、この魅力的な”おとぎ話”がもたらしたものは本当に大きかっただろう。


そしてそれは今読んでも、人の心を楽しませなぐさめ、暖かくしてくれる。
「リボンの騎士」もまた、まさに手塚が述べたように
”どんなに世の中が変わっても、いつまでも消えないで、やさしくみんなの心をたのしませてくれる”
決して色褪せぬ、洵に素敵な”おとぎ話”なのである。


♪♪♪

そしてハマってから僅か1ケ月-。
あっという間に、私はこうなりました。^^;)
Photo_7

|

« リボンの騎士 (手塚 治虫) -第2場 サファイア | トップページ

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181124/63686535

この記事へのトラックバック一覧です: リボンの騎士 (手塚 治虫) -第1場 作品概括:

« リボンの騎士 (手塚 治虫) -第2場 サファイア | トップページ