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2016年7月11日 (月)

リボンの騎士 (手塚 治虫) -第4場 双子の騎士

Photo_2少女クラブ版の後日譚として制作されたもので、講談社「なかよし」1958年1月号-1959年6月号に連載された「リボンの騎士」。現在の「双子の騎士」という題名は単行本化された際につけられたもの。
少女クラブ版の主人公・サファイア姫と、フランツ王子との間に生まれた双子であるデージィ王子とビオレッタ姫の物語。

少女クラブよりも低年齢層をターゲットとした雑誌での連載を意識してか、この作品は恋愛ではなく家族愛をストーリーの中心に据えている。もちろん「リボンの騎士」の世界観は承継しており、中世の王国を舞台に邪な重臣の権力欲が王族を陥れ離散させてしまう悲劇に始まり、善良なる者たちの支援を得て幸福が取り戻される大団円までを描く。王子を救け慈しみ育てる小鹿や、バラの精をはじめとするさまざまな妖精、ジプシーの一家など魅力的なキャラクターを登場させ、とてもファンタジックな魅力にあふれた新しい”おとぎ話”を構築している。

この「双子の騎士」も連載時にはほとんどがカラーページであり、当時の少女たちを大いに楽しませたはずだ。また「リボンの騎士」のファンなら、サファイアとフランツが結婚して幸せに暮らし、かくも美しい双子に恵まれたこと、そして母となって登場するサファイアの姿を目にして感慨も一入というものである。

【双子の騎士 概要】
1晴れて結ばれたフランツとサファイアは、シルバーランドの王と王妃として国民に敬愛され幸せな日々を送っている。とりわけ今日は二人が授かった双子- デージィ王子とビオレッタ姫の1歳の誕生日であり、国中が祝賀に沸き立っていた。
そのめでたい日に家臣同士の諍いが起こる。予て国内は世継についてデージィ派とビオレッタ派に分かれていたが、家臣の中には権力を握らんとする者も潜んでおり、その思惑が引き起こした諍いであった。これを収めるためフランツは神に祈り、再び下界へ降りてきた天使チンクの示した天啓によって、世継はデージィ王子に決定する。


ところがビオレッタ派であったダリヤ公爵とその夫人は恐ろしい企みを実行に移す。まだ赤ん坊のデージィ王子を密かに城外へと運び、ズボラという凶悪な獣のいる森に棄ててしまったのである!まるで神隠しのようにデージィを失ったサファイアとフランツの悲しみは深く、そしてここからシルバーランド王家の苦難が始まる。
「双子の騎士」はそうした苦難に健気に立ち向かう、二代目「リボンの騎士」ビオレッタの活躍と冒険を中心に、再びフランツやサファイア、デージィも揃う幸せな日々が戻ってくるまでの波瀾万丈を描いている。

8森に棄てられズボラに襲われたデージィ王子は小鹿のパピに救われる。愛情深いパピは森の沼の女神に願いを聞き入れられ、魔法で夜の間だけ人間の娘の姿となりロニーと名付けたデージィ王子を育てる。10年の間パピはロニーに姉として接してきたが、パピの正体が鹿であることをロニーが知れば、魔法の条件としてパピは命を失うことになるのだ。

一方、世継であるデージィがいなくなったため国民が騒ぎ立てシルバーランドは大混乱、事態を収拾するべくフランツ国王は反対するサファイアを説き伏せ、ビオレッタをデージィに見立てて無事戻ったと発表した。この日から、ビオレッタは1日ごとに王子と王女とを交互に演じることとなった。母の辿った数奇な運命をビオレッタも背負うことになるのである。

デージィ王子遺棄の首謀者であるダリヤ公爵夫妻は、王子と王女が同時に現れることがないのでずっと不審がっている。そんな折、白の王子と黒の王子とがシルバーランド城を訪ねて来た。ズボラの森で怪物ズボラを狩りたいというのである。ビオレッタも参加したこの狩りで、デージィ王子に扮したビオレッタは図らずも黒の王子の恨みを買ってしまう。そもそも黒の王子は邪悪なバラの妖精であり、善良にしてビオレッタに一目惚れした白の王子と対を成す存在であった。この後、黒の王子はビオレッタを脅かし続ける
実に忌まわしき存在となる。

デージィ王子に復讐しようとする黒の王子は、邪なダリヤ公爵夫妻と結びその秘密を探った。そして遂にビオレッタがデージィ王子との二役を演じている秘密を知り、ダリヤ公爵夫妻はこの秘密を公にするぞとフランツ国王を脅迫して、フランツ・サファイア・ビオレッタを北の塔に幽閉する。更に時間をかけて3人を葬り去るべく、食事に毒を盛るよう恐ろしい指示を下すのだった。

12_2かろうじてビオレッタが城のねずみたちの助力により北の塔を脱出した一方、パピの死を乗り越えズボラを倒したロニー(デージィ)は、退治したズボラを携え登城する。ビオレッタに瓜二つであることから、(自分の本当の身の上を知らない)ロニーを傀儡として利用しようとする奸臣
ダリヤ公爵夫妻によって、ロニーは”デージィ王子”に祀り上げられる。ロニーは正義感が強く弱者への思いやりも深い、王にふさわしい人格に育ってはいたが、森で育った彼にとって単に王子を演じる生活は堅苦しいだけのものだった。

ビオレッタは「ズボラの森で小鹿のパピに育てられている」という手掛りだけを頼りに兄デージィを捜すが、パピのお墓を目にして絶望する。この時、号泣するビオレッタに「男らしくない」と絡んできたのがジプシーの頭領の娘・エメラルドである。黒の王子に狙われたビオレッタを匿うかたちでエメラルドはビオレッタをジプシーの仲間に引き入れ、共に旅することとなる。
11_2白の王子・黒の王子のバラの館に迷い込んだり、黒の王子の執拗な追撃で命を危うくしたり、抜け出すことのできないカゲロウの森で遭難したりとビオレッタの苦難は続く。
ビオレッタを支え続けたのは白の王子が愛を込めて贈った金のバラの魔法と、献身的にビオレッタを助けるエメラルドの活躍であった。


しかしある日、苦難と戦うビオレッタの耳に聞こえてきたのは、あろうことかフランツ国王とサファイア王妃の葬儀の報であった。哀しみにくれたビオレッタだが、やがて意を決して立ち上がり、ダリヤ公爵と刺し違える覚悟で城へと向かう。
城内にある王家の墓所に潜入し、果敢にダリヤ公爵に挑むビオレッタはそこで自分にそっくりなロニーと対峙する。しかしビオレッタを助けようとお化けに扮したエメラルドが現れたため、全員が逃げ出し大混乱、ビオレッタには自分とそっくりな少年の正体は判らずじまいだった。
6ビオレッタとエメラルドは二人きりで墓所に閉じ込められたが、フランツとサファイアにまだ息があることが判った。毒消しがあれば助かる…!エメラルドの活躍で墓所の抜け穴から一旦外に出た二人は今度は料理女になりすまし、城内に戻ってきた。正体がばれそうになったビオレッタは”王子の部屋”に逃げ込み、(以前のように)王子の服を着てやりすごす。そこにロニー(デージィ)が戻ってきて鉢合わせに!剣を交わす二人だが、互いにパピのことを知っていたため話が通じた。
-今、双子の兄妹は真実を理解し、遂に再会の喜びに抱き合うのだった。

デージィとビオレッタは力を合わせてダリヤ公爵を倒し、金のバラの力も借りて黒の王子も倒した。黒の王子の黒バラが毒消しになる。その効き目は灼かであり、サファイアもフランツも無事蘇り、シルバーランド王家は久々の再会で歓喜に満たされた。
7後日、国じゅうの祝福を受けてデージィの戴冠式が行われる。ビオレッタは?今でも時にはリボンの騎士となって駆け回ることもあるのかも…。

♪♪♪

「双子の騎士」の見どころは…

■涙なしには…
3デージィを慈しみ育てた小鹿のパピ。最期は惧れていた通り狩人として成長したロニー(デージィ)の手にかかって…もちろん何も知らないロニーに罪はないのだが、こんな哀しいことってあるだろうか。
ビオレッタやエメラルドの身代わりになったお母さんオオカミのくだりも相当哀しい。かげろうのチルンのお話も…少女漫画なのに(というより少女漫画だからこそか)こんな極めつけの悲”劇的”なエピソードを織込むんだよなあ、手塚治虫って。

■おきゃんなビオレッタの活躍
10ビオレッタはサファイアと違って”男の心”は持っていない。なのにサファイア以上に男勝りでおてんばな気質を持った女の子として描かれている。同じように王女と王子を同時に演じることになり、女性に戻りたいと涙にくれる場面もあったけれども、半分は公の場でも本来の王女として振舞えたからかサファイアほどの悲壮感はない。また白い王子への思いはまだ仄かな恋愛に留まり、兄を捜し出し父と母を救い出すことがあまりに目前に迫っていたことから、ビオレッタはある意味迷いなく王子を演じたのである。ジプシー一家に同行した間も”美少年”が堂に入っていた。
 
■ジプシーの女王、エメラルド
5陽気で活発、きっぷのいい性格。やや粗野なところはあるけれど真直ぐな心と深い愛情を持ちとてもチャーミング。
ジプシー一家頭領の愛娘であり、リボンの騎士を名乗るビオレッタを男と信じて好意を寄せるが、ビオレッタが女の子と判ってからもその苦難を思い遣り、献身的にビオレッタを支える大親友に。「なかよし版」の海賊ブラッドに通じる真の愛を持つ素敵なキャラクター。

■サファイアがビオレッタの剣を鍛える!
4_3北の塔に幽閉されてから、毎晩母サファイアは再びリボンの騎士の姿となって、ビオレッタの前に立った。これから悪しき者たちと戦っていくため、自らビオレッタの剣を鍛え直すのである。
打ち負かされても「おかあさま!もう一手!」と立ち上がるビオレッタの姿を見て頬に涙が伝うサファイアに、しみじみ母へと成長したんだなぁと感慨が…。

■「きみがあんまり美しいからさ」
2_2あくまで”デージィ王子”へと発した、白の王子の率直な心からの声。白の王子に下心がないゆえに強く印象に残る台詞だ。いいなぁ。
…私の場合はまず美しい人を見て、ひたすら”純粋に美しい”と他心なく思えるようにならないとね。

♪♪♪

私の所有する「双子の騎士」は以下の2バージョン。本作も例に洩れず、連載時のものと比較すると現行単行本は相当な改訂がなされている。

1.現行電子書籍版
51b4axvx2cl連載時にはなかった「プロローグ」が付与され、まさに宝塚そのものである階段状ステージでのオープニング・シークエンスに始まる。これは連載時オリジナル版では1958年12月号付録の冒頭で使用されたものである。
(続いて手塚キャラクターの代表格、美少年ロック(・ホーム)がタキシード姿で進行役を務めるが、これは台詞の変更はあるもののオリジナル版と不変。)
その他にも連載時オリジナル版と比べ相当な改訂が見られるのだが、改訂された結果、サファイアがチンクと初対面となっている設定にはどうにも違和感が…。

2.なかよし オリジナル版
Photo「なかよし」連載当時のまま復刊したオリジナル版(復刊ドットコム)。大半がカラーページであり、その美しさには心躍らされる。
ビオレッタに白の王子が愛を仄めかすシーンはなく、また最終盤で白の王子が人間になった場面もないなど、恋愛色は現行版より一層乏しい。
またこのオリジナル版ではデージィ王子がパピに育てられている時点からデージィの名となっている。これは不自然であり、後に「ロニー」と改訂されたのは洵に妥当である。

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