のだめカンタービレ #23
「のだめカンタービレ」本編の最終巻である。
”遅れてきたのだめファン”の私としては、もう完結してしまったのかという淋しさは隠しようがない。2001年の連載開始に遅れること5年、私が「のだめカンタービレ」を完全に認知したのは2006年秋のことだったから…。
音楽なしでは生きていけない者の端くれである私にとって、この作品が提示した”音楽の桃源郷”には圧倒的な魅力があった。素晴らしい音楽、素晴らしい演奏は理屈抜きに聴くものの心に忍び込んでしまうものであって、それには誰も抗えない。
-そうした理想、そしてその理想に向かって天賦の才を開花させようとする若き音楽家たちの努力と苦悩。折々にハッと胸を打つ音楽の持つ魅力に鼓舞されながら進んで行くその姿に、自分の夢を重ねながら、熱い気持ちで見守った。
認め合い、喜び合う…。妬みや独尊のない、共通した音楽への愛情の下での真っ直ぐなキャラクターたちの遣り取り。その相互尊重が実に快い。
「のだめカンタービレ」は終始その標榜する”もっと愉快な音楽を”を貫き通した作品だった。
♪♪♪
溢れんばかりであったのだめの才能は、名匠オクレールに鍛え上げられ、そしてこれもまた懸命に研鑽する真一の音楽に常に触発され、遂に鮮やかな開華を迎えた。高次元の音楽の感動と喜びを知り、またその怖さも知ったのだめは迷走を極めることになったが、そののだめをまた引き戻したのも真一の音楽であった。
(「こいつの転機に オレが関わって 受け入れられたことは 一度もない!」とうち震えながら、腹を括ってピアノ・デュオで勝負に出た真一の姿は、全編の中でも最高に”男前”だったと思う!)
思えば「天使は オレか」という真一の独白通り、のだめという規格外才能が化学反応を示すとき、その触媒は初めから常に真一であったということだろう。
真一とのだめが音楽を通じ、一方ではある意味でそれを超越して深く結ばれた結末は、何よりも嬉しくHappyな気持ちにさせられるものだった。しかも、それが実にさりげなく描かれたことは、二ノ宮所長の美学そのものを示すものと思う。
本作の結びが示すのは(連載終了時にも述べたが)、永遠のリフレイン。
未来永劫、喜びと苦悩を繰り返して音楽と向き合い、成長を続けていく音楽家たちの素晴らしい未来、のだめと真一が結ばれ続けることを確信させ、終幕を迎えた。
音楽に例えれば
「拡大された主題が高らかに再現され、ffで高揚する中、ティンパニ・ソロのdon-den-don-denに続き、jahaa-nnnと壮麗な和音を轟かせて終う」
といったエンディングではない。これだけの内容を持ち、人気を博した作品であるから、華々しく満腹感のあるエンディングを期待する向きもあっただろうが、敢えてそうしなかったのが二ノ宮所長の”選択”。所長の美意識と、本作に込められた願いの集大成であったと思っている。
これだけ音楽をめぐる愉快なドラマを見せていただいた、またそこに散りばめられた素敵な音楽と出遭うきっかけを下さった「のだめカンタービレ」には心から感謝をしたい。今、私が思うところはただそれだけである。
本当に愉しかった!
奇しくも、間もなく(2009.12.10.)”番外編”にて「のだめ」と早くも再会できる!
-このことからも判るように、「のだめカンタービレ」は連載をほぼ永遠に続け得る作品になっていた。それを意を決して「完結」とした二ノ宮所長の決断は尊重すべきであるし、時間芸術たる音楽を題材にした作品として、当然の帰結でもあったと考えるべきであろう。
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